「パパ、歴史は何の役にたつの、さあ、僕に説明してちょうだい」 これは、フランスの歴史家マルク・ブロックが書いた『歴史のための弁明』という本の冒頭に出てくる、少年の問いです。 歴史を学んで、いったい何の役に立つのか? 個人的には、あまり好きな質問ではありません。 ひとつひとつのことについて、「何の役にたつの?(役に立たないんだったら、意味ないじゃん)」という質問(というか詰問ですね)をつきつける社会というのは、余裕を失った息苦しい社会だと思うからです。 マルク・ブロックがこの本を執筆していたのは、1941年5月。 フランスがナチス・ドイツによって占領されていた時期です。 ユダヤ系であったブロックはフランスからの脱出を試みましたが、失敗。 結局ブロックは、ドイツ軍占領下で抵抗運動に参加し、最終的には逮捕され銃殺されてしまいます。 ブロックがこの問いと向き合っていたのは、そんな切実な状況のもとで