昨年のディーン・ブラントとインガ・コープランドのライヴを見ていなかったら、本作を買ったかどうか......。あのときのライヴには本当に衝撃を覚えた。あれほどぶっ飛んだことは、記憶を探ってもなかなか見あたらない。彼らは限界まで連れて行ったし、電子ノイズとサブベースの彼方から聞こえるポップ・ソングの倒錯の具合もハンパなかった。退屈で意味がないと思っていた彼らの音楽の奥底に隠されている強い感情を、僕はまざまざと感じ取った。 ディーン・ブラントの『ナルシスト』に次ぐ新作は、『ザ・リディーマー(救世主)』。アートワークは合掌。こうしたヒネりはハイプ・ウィリアムス名義の最後のアルバムとなった『ワン・ネイション』から続いている。 反核マークがレーベル面にデザインされただけの真っ白な『ワン・ネイション』、「エボニー」と記されただけの真っ赤な『ブラック・イズ・ビューティフル』。意味ありげなスローガンとそのパ
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