東日本大震災の報道では、学童が放射線被害から逃れるために他の地域へ避難したことを「疎開」と表現していたメディアがあった。 戦争でもないのに、なぜ「疎開」なのだろうかと思った。それに、すでに「疎開」という用語を知らない世代の方が人口が多いのではないか? 太平洋戦争中、攻撃されやすい都市部から田舎へ学童を避難させることを「学童疎開」といった。 「疎開」とは元来、軍事用語である。敵に向かって進軍するときに敵が火器で攻撃してきた場合には、集団隊形は危険である。いったん、集団をバラバラにするのが兵法の常套手段で、これを「疎開隊形」と呼んだ。隊形を疎に開くという意味である。 戦時中、学童を田舎に避難させるときに、軍部は「避難」という用語を嫌った。「逃げる」というニュアンスがあるからである。そこで「疎開」という軍事用語を用いたというわけである。 以上のことは、戦争体験がある母も知らなかった。