東浩紀/批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役この記事の写真をすべて見る ※写真はイメージ(gettyimages) 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。 * * * あまりのことに呆然としている。中日新聞と西日本新聞が16日報じたリコール不正問題だ。 出発点は2019年に愛知県で開かれた国際芸術祭。展示内容を問題視した医師の高須克弥氏が呼びかけ人となり、昨年8月から2カ月余りのあいだ、大村秀章知事の解職を求めて署名が集められた。 高須氏は右派のカリスマで大きな影響力をもつ。署名運動でも強気の発言を繰り返し多くの著名人を巻き込んだが、11月7日に突然署名運動の停止を発表。同時点で集まっていた43万5千筆強が選挙管理委員会に提出されたが、必要数の半分にとどまり、リコールは不成立となった。 ところが事態はその後急