某テレビ番組の密着取材を受けたとき、私が何でも言えるようにと、毎晩宴会が開かれた。私は警戒しつつ、まずは相手のことを知ろうと、遠慮なく質問する。そして私も、酒の酔いも手伝って、自分のことを話さざるをえなくなる。結局、カメラマンのSさんとディレクターのKさんの三人で、お互いの胸の奥にある大切な経験や考えの多くをさらけ出すことになった。大人になってからそのような出会いはなかなかないはずで、他人、しかも二人もの人生の一端を知ることができたのは、今でも人生の宝物になっている。やはり他人の人生をほど興味深いものはない。 その際、カメラマンのSさんから聞いた言葉で、今でも胸に焼き付いているものがある。それは、「カッコ悪くてもいいから、ダサイ奴にはなりたくない」である。50過ぎのおじさんが卑猥な冗談の合間に何度も口に出したのだが、これを言うときだけは真顔になるのを私は見逃さなかった。「カッコ悪い」も「ダ