「失敗学」という学問がある。その失敗はなぜ起こったのか、背景にはなにがあったのかなどを探るもので、第一人者は原発の事故調査・検証委員会の長を務めた。日本シリーズで、ジャイアンツの松本哲也のプレーを見て、頭に浮かんだのはこの言葉。野球における失敗の本質、野球の失敗学といったものを考えさせられた(といっても、粗雑な思いつきですが)。 完全にバントが読まれている状態で、完璧なバントを決めた松本。 松本はこのシリーズで6本の送りバントを成功させた。これは日本シリーズのタイ記録だ。失敗は一度もなかった。ジャイアンツはずいぶんしみったれた野球をしたなあとか、そういう感想もないではないが、1点が重くなる日本シリーズのような舞台で、一度も失敗なくバントを決めるのは簡単ではない。 ほとんどが一発で決めるみごとなものだったが、中でもあざやかだったのは第6戦の7回裏に決めた1本だ。 同点で先頭打者の長野久義が四