食材偽装表示は、プラセボ効果placebo effect の全国規模の自然実験である。 プラセボとは偽薬。ぎやく。にせぐすり。外観的には本物の薬と区別がつかないが、中身はただの粉を固めただけ。 プラセボ効果とは、薬理効果がないはずなのに効果が出ること。プラセボを飲むことで、症状がよくなる。治ってしまう。 つまりプラセボ効果は気持ちの問題。偽物でも本物だと信じれば、本物と同じ効果が得られるのである。 精神科の領域では、特にうつ病について、プラセボ効果がかなり見られることが知られている。 だがいくら気持ちの問題だといっても、現に効果が出る以上、脳の中に何らかの変化が発生していることは間違いない。うつ病は脳の病気だから、うつ病が治ったということは、脳の中に必ずそれに対応する変化が発生しているのである。抗うつ薬はその変化を発生させる薬である。ところがプラセボでもうつ病が治ることがある。薬でなく、気