(英エコノミスト誌 2012年3月10日号) 地震、津波、原発メルトダウンという3重の災害は、多くの制度機構に対する日本国民の信頼を粉々に打ち砕いた。 福島県浪江町請戸(うけど)地区で生まれ育った横山和佳奈さん(13歳)は、世界が足元から崩れ去ったあの日からちょうど1年になる3月11日に、同じ請戸の人々とともに伝統の田植え踊りを披露することになっていた。 この日は楽しい1日になる。今では滅多に会えない以前の学校の友達と一緒にいられるからだ。だが、悲しみも入り混じるはずだ。請戸の人々はいても、もう請戸という集落は存在しないからだ。 二度と住めない古里の伝統を残す 1年前の身を切るような寒さのあの日、請戸地区は津波の直撃を受けた。1800人の地区住民のうち、和佳奈さんの祖父母を含む約180人が死亡した。救助活動をすれば助けられた人もいたかもしれないが、近くの福島第一原子力発電所1号機の原子炉建