科学哲学は、哲学の中でも特に「科学とは何か」といった問題や、生物学などの個々の科学にまつわる哲学的問題を取り扱う分野である。哲学の中でもやや特別な分野なので、今回の記事では科学哲学に絞って、本を見ていきたいと思う。 科学とは何か 科学哲学の最初の一冊としては、A.F.チャルマーズ・著『改訂新版 科学論の展開——科学と呼ばれているのは何なのか?』(高田紀代志たかだきよし、佐野正博さのまさひろ訳、恒星社厚生閣)は広範なトピックスをバランスよく取り扱う入門書であり、お薦めしたい本である。初版はやや古い(1976年出版)ので、本書の前半部分の構成もそれに伴って一昔前[1]に主流だった書き方になっているが、改訂新版で後半部分が大幅に拡充され、新しい話題も手広くカバーされた。そのため本書からは、少し古い視点と新しい視点をともに学ぶことができる。 本書前半は、帰納主義→反証主義(ポパー)→パラダイム論な