9時37分。前方の信号が青に変わると、運転士が声を挙げた。 「二番線第一出発進行!」 そして定刻9時38分、列車は力強く動き出した。 貨物列車が出発する瞬間、運転台には「俺が引っ張っている」という感覚が伝わってくる。貨車一両一両に、連結器を通して順に力が伝わっていく感覚が確かにある。これは電車では味わえない。 新鶴見信号場。その広い操車場の真ん中あたりにある「着発二番線」を発車した列車は、ポイントをいくつも渡って左へ左へと寄っていく。隣接する新川崎駅のホームで、小さな子供が手を振っている。その奥からこちらに望遠レンズを向ける青年もいる。 鉄道貨物の全容を見るべく、東京貨物ターミナル駅へ 「文藝春秋」(2019年1月号)で、「どっこい生きてる 貨物専用『隅田川駅』」というルポを書き、その後発売された『平成の東京12の貌』(文春新書)にも改題収載された。 その取材では、普段一般の人が立ち入るこ