著者の伊東乾氏は、地下鉄サリン事件の実行犯の一人・豊田亨と大学時代(東大理学部物理学科)の同級生だったという。氏は、拘置所内の豊田と接見や文通をしながら、なぜいかにしてあの事件が起きたのか、そして「豊田と私を分けたものはなんなのか?」を問い続けてきた。氏の目的は、「二度とああいう事を繰り返してはならない」ということ。同じような事件の「再発防止」の道を明らかにし、「オウムもサリン事件も知らない、若い世代」の人々に訴えるにはどうすればよいか。氏は2000年より東大助教授の職を得て、そこで「情報処理」の科目を担当し、「豊田に協力してもらって「再発防止カリキュラム」を作り、毎年300〜400人ほどの学生を指導している」という。だが、「もっと間口広く、ひとりひとりに語りかける」ためにこの原稿を書き、「開高健ノンフィクション賞」に応募するというルートで出版に漕ぎつけたということらしい。 この本にはたし