山本義隆『福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと』(みすず書房、2011年)を読む。大学アカデミズムの世界を去ってのち、社会批判は科学史を通じてのみ発信してきた山本氏だが、ここにきて、福島原発事故をテーマにした書を出した。私も驚き発売を心待ちにしていた。もともと薄い雑誌『みすず』に寄稿する予定であった、短いものである。それだけに、全て極めて真っ当で正鵠を射ており、かつ、原子力を科学技術の原理と歴史のなかに位置づけてみせるのは著者ならではだ。怒りをもって山本氏が前面に出てきた理由は何か、おそらくは声をあげずにはいられなかったのだろう。読んでいると泣きそうにさえなってくる。千円と廉価な小冊子、あらゆる人に読んでほしい。こんなことが書かれている。○「原子力の平和利用」を錦の御旗にした日本への原子力導入は、当初から、核兵器技術の保有を視野に入れたパワー・ポリティクスそのものであった。メデ