「栄養学を拓いた巨人たち」は、栄養学の歴史を人物史を通じて紹介していく本。そう堅い内容の本でもなく、研究とは直接関係の無い愛憎も紹介されるが、著者の杉晴夫氏が科学者だけに、新発見をどうやって得たか研究手法の紹介にページが割かれており、中高の理科の補助教材としてもお勧めできそうな内容になっている。また色々な失敗談が詰まっており、科学研究にまつわる教訓談としても読めるはずだ。 興味深い逸話だらけで何を紹介すべきなのかも迷うが、第3章の最初に紹介される壊血病からして興味深い。中世には壊血病は良く知られた病気で、柑橘類をとることで予防できることは実は知られていた。しかし、必ずしも柑橘類をとれば予防できるとは限らないことから、その不足が原因だと認識されたのは、ずっと後であった。さらに柑橘類の中にあるビタミンCが洗い出されるまでは、もっと時間がかかった。実験動物のネズミはビタミンCを体内で合成できるこ
献本御礼。 本書は大変面白く読ませていただいた。ただ、どうも日本の漢方診療のトップランナーたちはEBMあるいはエビデンスについて、根本的に誤解しているように思う。 要するに、EBMにおいてWhyとかHowとかはどうでもよいのだ。大事なのは、What, How much, How many, Which といった「ぶっちゃけ」な問題ばかりである。EBMは「なんでそうなるの?」というタイプの疑問には常に沈黙する。その答えるところは、(理由はよく分かんないけど)「どちらの治療がベターか」「何が最適な選択しか」といった、ぶっちゃけな回答ばかりである。 それは、実は漢方診療に親和性が高い。複数の生薬(そして背後にはさらにたくさんの化学物質)が絡む漢方診療において「なぜじゃ」「どうしてじゃ」といった間寛平的疑問に答えるのは困難である。でも、実はEBMもそうであり、EBMが「なぜじゃ」「どうしてじゃ」と
12«1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»02 ※この記事は過去記事の加筆修正版です。だいぶ削って付け加えてなどしたので新記事に。 地球温暖化バッシング 懐疑論を焚きつける正体 レイモンド・S・ブラッドレー著 藤倉良、桂井太郎 訳 化学同人 ¥2000+税 ある業界がバックについた政治家によって、人為的温暖化を支持する見解を出した研究に不正がないかチェックするという名目で、実質的な研究妨害をされた被害側からの一部始終という形で書かれています。 この本を一言で述べるなら「研究活動と政治の距離が極端に縮まるとどうなるか」という内容。ろくな事にならないというのがよく分かります。 研究活動に政治家から圧力かけるとどうなるという分かりやすい本ということで単純なノンフィ
ニコラ・テスラ 秘密の告白 世界システム=私の履歴書 フリーエネルギー=真空中の宇宙 作者: ニコラ・テスラ,宮本寿代出版社/メーカー: 成甲書房発売日: 2013/01/16メディア: 単行本購入: 17人 クリック: 543回この商品を含むブログ (4件) を見る えー、本屋でトンデモな方々の本に混じって並んでいたので、まずこれは本物なのか、というのが気になるところ。テスラの書いたものは三ページだけで、あとはトンデモ陰謀論者の妄想が並んでいたりしないだろうなあ…… ……とこわごわ買ってみたが、まったく問題なし。 本としては、以下の二つの全訳(上のやつは自伝メモ "My Inventions" kindle 版のはずなんだがなぜか表示されない): My Inventions (English Edition) 作者: Nikola Tesla出版社/メーカー: the Philovox発
池谷裕二さんの『脳には妙なクセがある』を読みました。 目次: 1. IQに左右される―脳が大きい人は頭がいい!? 2. 自分が好き―他人の不幸は蜜の味 3. 信用する―脳はどのように「信頼度」を判定するのか? 4. 運まかせ―「今日はツイテる!」は思い込みではなかった! 5. 知ったかぶる―「○○しておけばよかった」という「後知恵バイアス」とは? 6. ブランドにこだわる―オーラ、ムード、カリスマ…見えざる力に動いてしまう理由 7. 自己満足する―「行きつけの店」しか通わない理由 8. 恋し愛する―「愛の力」で脳の反応もモチベーションも上がる!? 9. ゲームにはまる―ヒトはとりわけ「映像的説明」に弱い生き物である 10. 人目を気にする―なぜか自己犠牲的な行動を取るようにプログラムされている 11. 笑顔を作る―「まずは形から」で幸福になれる!? 12. フェロモンに惹かれる―汗で「不安
写真: 前野ウルド浩太郎博士 このブログやメルマガでもたびたびフィーチャーし、コアなファンを獲得しつつあるバッタ博士・前野ウルド浩太郎氏が、11月20日にバッタの本を出版することになった。 孤独なバッタが群れるとき<サバクトビバッタの相変異と大発生>: 前野ウルド浩太郎 著 (東海大学出版) 338ページにもおよぶボリュームもさることながら、そのキてる目次が嫌でも目を引く。 目次 はじめに 第1章 運命との出逢い 一縷の望み 師匠との出逢い サバクトビバッタとは? 黒い悪魔との闘い−絶望と希望の狭間に 相変異 コラム バッタとイチゴ コラム バッタ注意報 第2章 黒き悪魔を生みだす血 白いバッタ ホルモンで変身 授かりしテーマ ホルモン注射 触角上の密林 論文の執筆 コラム バッタのエサ換え コラム 伝統のイナゴの佃煮 第3章 代々伝わる悪魔の姿 相変異を支配するホルモン 補欠人生に終止符
実は他の方に以下の内容で書いたら・・・無視されたんで書き方悪かったかなあ?とか思うのですが。 書いてる内容は割りと間違ってないと思ってましたので再チャレンジします。 先ず、結論からいうと近々での実現はかなり困難です。 どれくらい困難かというとたぶん貴方が生きている間は無理だと思います。 ですが不可能とは言い切れません。 のっけから否定的な意見で申し訳ありませんが。 最近のMMO、例えばFFなどのような綺麗な映像を見て、 じゃあ、ナーヴ・ギアなんかも割りとすぐ出来るんじゃ?と思うかもしれないのですが。 高精細でリアルなグラフィックを作るのと網膜を通さずに脳に直接思い通りの映像を投影するのとでは全く異なる技術的基盤が必要になります。 そして、現状では後者が非常に難しい技術になります。(というか現時点では不可能です。あくまでも現時点ではですが。) 質問にある機器は五感を電磁波により大脳に認識させ
今、世のビジネスマンが一番多く見聞きするキーワードは「ビッグデータ」というものではないだろうか。巨大なデータを収集・分析してパターンやルールを見つけ出す。その上で、今を描き出したり、異変を察知したり、近未来を予測するために活用されるものだ。世界中で生成されるデータの増加とともに、ビッグデータへの注目度は一気に上がってきた。 本書で描かれている内容も、ある意味においてはビッグデータの活用ということになるのかもしれない。とは言っても、ネットの普及以降に集められた20年分くらいのデータ量によるものではない。我々人類の来し方、行く末を語るためには、1万年くらいのスパンによる情報が必要であったのだ。このとてつもなく長い歴史をデータマイニングした結果こそが、本書の成果になっていると言える。 約1万年ほど前、その先の何世代も後にまで影響をもたらすような種が蒔かれた。ヒトは定住を始め、農耕を編み出したので
まず、科学というのは「方法」である。そして、その方法とは、「他者によって再現できる」ことを条件として、組み上げていくシステムのことだ。他者に再現してもらうためには、数を用いた精確なコミュニケーションが重要となる。また、再現の一つの方法として実験がある。ただ、数や実験があるから科学というわけではない。 個人ではなく、みんなで築きあげていく、その方法こそが科学そのものといって良い。 森博嗣 『科学的とはどういう意味か』 P107 森博嗣による、「科学とは」「科学的とは」どういったものか、に関して自らの経験に基づいて書かれたエッセイ。言わずと知れた「理系作家」の書いたものであり、個人的にも一番好きな作家であるので、刊行前から注目していた。 本書では、エンジニアとしての森(彼は自身を「科学者」とは言わない)の、大学教員としての生活――教育や研究の経験――などが踏まえられ、「科学」とはどういったもの
みんなが知りたい化石の疑問50 ■みんなが知りたい化石の疑問50 北村雄一(著) 2011年初版。著者の北村雄一は、カバーによれば、「フリージャーナリスト兼イラストレーター」と紹介されている。おそらくは中学生〜高校生向けに書かれたのだろう。文章は平易で読みやすい。カバーに「Webリサーチで集めた疑問をもとに、化石が具体的になにを解き明かしてくれるのかを、写真や復元図を交えながら解説していきます」とある。タイトルにあるように、化石についての疑問、たとえば、「化石と鉱物はどう違うの?」「いつの時代の化石ってどうすればわかるの?」「人工的に化石をつくることは可能?」などといった疑問に答えていく形式だ。オールカラーで写真も豊富である。黄鉄鉱化したアンモナイト、建物の壁の石灰岩に含まれる化石の写真などが美しい。 この手の本は、どうかすると、とんでもないハズレのときがある。ライターが不勉強で、手抜きで
01«1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.»03 本来Newtonの様な一般向けではない化学同人の化学ですが、今月号は一般の方も手に取られてみる事をお勧めします。 ***** 本当はNewton7月号が手に入ってから震災特集読み比べ第二弾を書く予定だったのですが、昨日発売された化学6月号の震災特集が良い内容だと思ったのでフライングで紹介いたします。 本号の特集は全体の半分を割いてます。一般誌のNewtonは7月号で引き続き一冊まるまるつかった特集のようですが、化学は一応その名の通り化学専門誌でありかつ一般向けではない(意欲のある高校生あるいは大学化学系以上がターゲット)中で半分を特集に割り当てたというのは英断の気がします。 肝心の内容は「福島第一原発事故の衝撃」という特集
『野宿労働者の原発被曝労働の実態』を匿名有志の方がテキスト化してくださいました。OCRの作業をしてくださった方、ほんとにどうもありがとうございました。 以下は、約15年ほど前に出した、原発での被曝労働を体験した野宿の仲間の話をまとめたパンフレットの一部をテキスト化したものです。寄せ場の日雇い労働者や、野宿の仲間たちの中には、原発での労働で被曝し体をボロボロに壊している人達がいます。私たちが原発の問題を考えるとき、これら最末端で働く(働かざるを得ない)人々の視点は不可欠であると考えます。以下、パンフレットの被曝労働の部分の抜粋です。 松本さん(被曝労働体験者)の話 司会:では、次に移りたいと思います。新宿で野宿している労働者の松本さんをご紹介したいと思います。 いま、藤田さんのお語にあったように、下続け孫受けの業者が、清掃等の形でくるわけですが、はじめから原発の仕事だって公募することはまずあ
「すべて分析化学者がお見通しです!」の「第2章 食品を分析する」の中のフタル酸エステルと塩ビ手袋の部分に、小比良さん からtwitterで次のようなご指摘をいただきました。 私もあの部分については少し違和感のようなものを感じました。知らない人が読むと「環境ホルモン」は怖いもので、その使用が分析によってストップしたと読めそうな気がしました。 (twitterはページがいくつにも分かれてしまって全部をリンクするのはたいへんです。この他の部分はecochemさん作成のまとめ 「すべて分析化学者がお見通しです!」@Togetter の3月5日周辺を読んでください。) 小比良さんにダイレクトメッセージでより詳しくご意見をおききしました。たしかに、次のように間違って読まれるかもしれないと思われました。私の見解とともに書いておきます。 A DEHP(フタル酸エステルの一つ)は環境ホルモンだから規制された
これは読むべき良書、目から鱗だ どこどこから輸入したホウレン草から基準値の50倍の残留農薬がみつかった という報道を聞くと、凄く危ない気がするが、元々基準値は人が摂取しても大丈夫な量の100分の1以下に設定してあるので、一度食べてしまったくらいなら余り問題はないらしい それを一口でも食べれば命に危険があるように騒ぎ立てるメディアもある その方が注目されるし、色んな人の目に止まりやすくなるしね たとえ普段食べてる塩でさえ一日に1キロ摂取し続ければ病気になるし、死の危険があるわけで 発がん性があるからといって、何でもかんでも食べてはいけないと言うと何も食えなくなる 要は一日にどれくらいなら良いのか、という正しい知識が必要ということ 作用と副作用があるのは当たり前で、作用を上手く使いつつ、副作用を抑えるように管理するのが大事 健康に良いとされる食品も食べ過ぎれば毒になる テレビの健康番組は色んな
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