(1)スキャンティー命名、算盤の才覚もつ“作家”…から続く 鴨居羊子(かもい・ようこ)は1925(大正14)年2月12日、大阪府豊中市で生まれた。 生きていればまもなく89歳。大正年間に生まれた人はまだまだ元気で活躍している人も多い。同い年に作家の三島由紀夫がいると聞けば時代を感じるが、周辺の同年配の女性を見渡せば、実に時代を先取りした人だったのだと合点できる。いやいや、今でもついていける人はさほどいないだろう。時代は「前衛」にそう簡単に追いつくことはできないのだ。 大阪生まれではあるが、生粋の大阪人というわけではない。鴨居羊子は新聞記者だった父と母のもとに、2男1女の長女として生まれた。上と下に男きょうだいがいる、兄は昭和19(1944)年にレイテで戦死、弟はのちに画家となる鴨居玲だ。 両親はともに長崎の出身。父方の家系は平戸藩の藩士だったことを知り、鴨居羊子とも弟の玲とも親しく接した司