周囲を暗闇に包まれていても、はっきりと風を感じる。 自分はおそらく空中にいるのだろう、それもかなり高い位置に。 ――うかつだった。 油断があった。 状況の把握のために仲間を方々へ派遣したあと、拠点に残ったのはわずかな人員のみ。みずから孤立する状況をつくってしまった。 ユーグがいたら諫めたのだろうが、他のみんなもどこか冷静さを欠いていたのだろう、反論の声はまるでなかった。 しばらく待っても連絡がない。城のことがどうしても気になることもあって、こらえきれなくなった自分がそちらへ移動しようとしたときだった。 突然、背後から口を押さえられた。『なんだ!?』と思った次の瞬間には気を失っていた。 そして気がつけば、この状態。独特の匂いからして麻で編まれた袋に入れられているらしい。 無礼な振る舞いにかっと頭が熱くなるが、今ここで暴れても意味がない。それよりも、可能なかぎり周囲の様子を探った。 自分は誰か
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