東京と埼玉を結ぶ東武東上線の各駅を舞台に、沿線住民らの何気ない哀歓を描いた短編小説集「東上線各駅短編集」を、小説家曠野(ひろの)すぐりさん(44)が出版した。 東武鉄道が運行するほかの日光線などと比べて、「いま一つパッとしない路線だが、それがかえって魅力」と話している。 曠野さんは2009年には、JR中央線沿線を舞台にした小説を今回の出版社「まつやま書房」から自費出版した。その後、担当編集者との間で、同じ東武鉄道でも伊勢崎線は東京スカイツリー、日光線は日光など沿線固有のイメージがあるのに、東上線は特色があまりないと話題になった。肉卸売会社を営む一方、電車に乗って駅周辺を歩き、思い浮かんだストーリーや情景をメモに書き留めながら書き進めた。東京都東村山市在住だが、妻の実家が東上線沿線にあり、親しみをもっていた。 小説は、志木や坂戸など主に駅ごとに1話完結で、計39編。志木駅の物語は、税理士の男