「高橋留美子の『重力』を超えて」 「ゼロ年代の想像力」宇野常寛から。 著者は、東浩紀は「母性の暴力」とでもいうべきものに関してあまりにも無頓着だと指摘します。 東が高く評価する『新世紀エヴァンゲリオン』においても「すべてを飲み込む肥大した母性」が直接的に扱われ、『AIR』においてもヒロインとその義母の関係が至高のものとして描かれ、たびたび言及される『うる星やつらビューティフルドリーマー』においても敵を排除し、味方を胎内に取り込んで逃がさない、という「母性の重力」が描かれているにも関わらず、東はそれらをほぼ完全に無視している、とのこと。 この時代に決定的な影響力を持った批評家(=東浩紀)が、父性の抑圧を語りながらも、母性の抑圧には無防備だったという事実から、新たな分析を始めるべきだ、としています。 著者は、現在、この母性のディストピアというテーマにもっとも肉薄しているのは高橋留美子だと指摘し