菅義偉首相は30日の記者会見で、東京五輪を中止しない考えをあらためて示した。だが、本紙が開幕前の4月以降、首相の会見で繰り返し質問した感染拡大につながるリスクへの認識や、開催の可否を判断する基準は一度も正面から説明していない。国民の不安と疑問に向き合わず、感染拡大を抑えることもできず、自ら「異例」と認める緊急事態宣言下の五輪に突入した責任にも言及しないままだ。(木谷孝洋)
九州と朝鮮半島を結ぶ「日韓海底トンネル」は1910年の日韓併合後から提唱されたが、1世紀たっても実現していない。幻の計画と化してきたが、韓国の保守系野党が4月の釜山(プサン)市長補選を前に、建設を検討すると気炎を上げた。日韓関係が悪化した中、文在寅(ムンジェイン)政権は否定的だが、全くの絵空事なのか。 (ソウル・相坂穣) 「韓日海底トンネルを積極的に検討する。54兆ウォン(約5兆円)の経済効果、45万人の雇用誘発を期待できる」。韓国の最大野党「国民の力」最高幹部の金鍾仁(キムジョンイン)氏が2月上旬、市長補選を控えた釜山の視察に訪れ、近郊の加徳島(カドクド)での新空港建設案とともに、トンネル構想に言及したことで新たな論争を呼んだ。 与党「共に民主党」報道官は「韓日トンネルは、日本の利益がより多くなる“親日的”な議題。日本が先に提案もしない未成熟な論点を、首長選を控えて突然持ち出したのは、無
米モデルナ製の新型コロナワクチンから異物が見つかった問題で、製造したスペインの工場は、異物混入の原因となる製造ラインの部品取り付けミスを2回していた。初回のミスでは異物混入に気付かないまま、ワクチンを日本へ出荷。2回目のミスの後、別のロットのワクチンを製造中に異物混入に気付いたが、日本に連絡しなかった。スペインの製造ラインの管理が不十分だった可能性がある。(沢田千秋) 国内での異物混入を受け、3つのロットのワクチンが回収中だが、既に50万回の接種が行われたとされる。スペインから連絡があれば、接種を中断できた可能性がある。問題のロットのワクチンを接種後、男性3人の死亡が報告された件について、10日の厚生労働省の専門部会は「接種との因果関係は評価できない」とした。 厚労省や国内でのワクチン供給を担う武田薬品工業などによると、異物混入はスペインの製薬会社ロビの工場で起きた。この工場はモデルナの欧
鈴木俊一財務相は9日の防衛力強化に関する政府の有識者会議で、防衛費を増額する場合は国債に頼らず恒久的な財源を確保すべきだと主張し「税制上の措置を含め多角的に検討する」と強調。財務省は同会議への提出資料で「幅広い税目による国民負担が必要」との方針を鮮明にした。自民、公明両党の幹部からも、所得税や法人税を数年後から引き上げ、増税で財源を確保すべきだとの意見が続出している。 財源を巡っては当初、安倍晋三元首相が「防衛費は祖国を次の世代に引き渡していくための予算だ」と位置づけ、借金である国債を提案したが、死去後は下火になり、増税論が台頭している。2023年度の予算案や税制改正大綱が決定される年末までに、政府・与党が一定の方向性を打ち出す見通しだ。
過激なポーズや未成年の出演が確認された「水着撮影会」が埼玉県営プールで開かれていた問題で、所沢市の市民団体が2日、市内で「若い女性の半裸を撮影するイベントが公共施設で開催されていることを知って、県に意見を出してほしい」と街頭で呼びかけた。 街頭活動をしたのは「所沢市民が手をつなぐ会」。メンバーの荻原みどりさん(75)は「女子中学生のモデルに、男性が何十人も群がって撮影する様子をネットで見て驚いた。性を商品化した営利目的の撮影会を、なぜ県の施設でやらせるのか疑問だ。県民として恥ずかしい」と話した。荻原さんらの呼びかけに「今度中学生になる娘がいるので関心を持った」と話す通行人の男性もいた。 撮影会が開かれていた3カ所の県営プールを管理する県公園緑地協会は昨秋、有識者の検討会を設置。検討会がまとめた提言をホームページで公開し、県内在住・在勤の人を対象に6日まで意見を募集している。その後、新ルール
文化庁の登録美術品調査研究協力者会議の座長を務めていた佐藤康宏東大名誉教授が、菅義偉首相が日本学術会議の推薦した新会員候補6人の任命を拒否したことに抗議し座長を辞任していたことが分かった。(望月衣塑子) 佐藤氏によると、10月1日に報道で任命拒否を知り、同3日午後、文化庁の担当者らにメールで「専門家を専門家として尊重しない政府のために働くつもりはない。今後は政府関係の仕事はすべてお断りする」「会議直前で迷惑をかけるが、多少とも迷惑をかけなければ抗議の意味もない。よろしく御理解願う」などと辞意を伝えたという。5日に担当者から電話で慰留されたが、意思は固く、別のメンバーを座長にしてもらうことで合意し、7日付で辞任した。 佐藤氏は「菅首相や杉田和博官房副長官は、一貫して戦争目的の科学研究に慎重な姿勢を示してきた学術会議を邪魔な存在とみなし、特定秘密保護法や安保関連法に異を唱えてきた6人を意図して
名古屋刑務所(愛知県みよし市)で刑務官22人が受刑者3人に暴行などを繰り返していた問題で、刑務官による不適切な処遇は400件以上に上り、うち暴力を伴う行為が100件を超えることが法務省への取材でわかった。一部の刑務官は暴行が常態化していたとみられ、同省は調査を進めた上で、関係者の処分などを検討する。 同省によると、22人は昨年11月上旬〜今年8月下旬、40〜60代の男性受刑者3人に、計400件超の不適切な処遇をしていた。うち100件超は暴行で、胸ぐらをつかんだり、顔にアルコールスプレーを噴射したり、顔や手をたたいたりするなどの行為をしていた。暴行以外では、暴言を吐いたり、部屋に物を投げ入れたりするなどの行為が確認された。
男性によると、同チェーンの店舗で週四、五日働いてきたが、三月から勤務が減り、四月以降は営業停止で勤務ゼロに。正社員には六割の休業手当が出ているが、学生バイトには補償が何もない。 男性は、父親が亡くなり、母親も病気。月約十万円のバイト収入や奨学金借り入れで生活費や授業料を工面している。「バイト収入がないと生活に困る」として個人加盟の労組「首都圏青年ユニオン」に加盟。六月九日に会社と団体交渉を行ったが、会社は支払う方針を示さなかった。幹部は「当社での勤務が生活の基盤になっている人なら手当を出すが遊ぶ金なら出さない」とも言ったという。 同ユニオンが四月末に学生バイトを対象に緊急電話での相談を受け付けたところ、寄せられた七十七件ののうち、五十九件は「勤務が全部カットされたが補償が全くない」との内容だった。多くの企業が「バイトには休業補償しなくてよい」と誤った認識を持っていることが分かった。法律では
政府のヒアリングは、内閣府の「国葬儀事務局」が主体となって実施。9月27日に行われた国葬の経費約12億4000万円について、支出の妥当性や法的根拠を検証している。 「こちら特報部」はまず、対象となるのはどの分野の有識者か聞いてみた。担当者は「憲法や行政法、政治、外交などの専門家20~30人を想定している」と説明。具体的に誰を選んだのか尋ねたが、「差し控える」とし、基準も明らかにしなかった。意見と論点を整理した上で公開し国会にも報告するというので、その時期を聞いたが、「現時点ではできるだけ早期にとしか言えない」。 非公開とした理由は「静かな環境で進めることが重要」と、松野博一官房長官と同様の説明に終始。既に終わった国葬について有識者の氏名や意見を公開すると、どんな不都合があるのか。重ねて質問したが、「会議で一度に意見を聴くわけではないので、個別の発言が報告前に外部に漏れることがないようにする
東京都の新型コロナウイルスのモニタリング会議が12日あり、都内の感染状況について専門家から「制御不能な状況だ。災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態」と報告された。医療提供体制については「深刻な機能不全に陥っている」とコメントされた。 現在のペースで感染増加が続くと、2週間後の25日には、1日当たり5113人となるとの予測を示した。国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は「もはや災害時と同様に自分の身は自分で守る感染予防のための行動が必要な段階である」と強調した。 東京都医師会の猪口正孝副会長は、医療体制は「ひっ迫している」とした上で「重症患者が急激に増加しており、救急医療や予定手術などの通常医療も含めて医療提供体制が深刻な機能不全に陥っている。現状の感染状況が継続するだけでも、医療提供体制の維持が困難になる」と述べた。 重症者が11日現在で197人と過去最多となっている
WT座長には石原伸晃元幹事長、事務局長に西村明宏氏が就く。この2人と党内の関連部会長の冨岡勉、奥野信亮両氏の計4人であらかじめ論点をまとめる。 下村博文政調会長は10日の記者会見で「ニュートラル(中立)な方に幹部になってもらった」と話し、女性議員が論点整理に加わらないことに理解を求めた。党内や国民の間に多様な意見があることを踏まえ「拙速な議論はしない」と、期限を設けずに検討する考えを示した。 選択的夫婦別姓を巡っては、昨年末の第5次男女共同参画基本計画策定の際に党内で議論が紛糾。政府原案では、民法の夫婦同姓規定により96%の女性が結婚で姓を変更している現状に触れていたが、党内の慎重意見を踏まえ、この部分や原案にあった「選択的夫婦別姓(別氏)」の文言が削られるなど記述が大幅に後退した。(川田篤志)
東京都は30日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が8月末まで延長されるのに伴い、対策本部会議を開き、延長後も引き続き飲食店に酒類提供停止を要請する感染防止策を決定した。小池百合子知事は「これ以上の感染拡大を食い止めなければならない」と強調。一方で、当面の感染急増を抑えるための新たな措置は盛り込まなかった。 30日に報告された都内の新規感染者数は3300人で、3日連続で3000人超。入院者数も3100人を上回り、自宅療養者数も9800人近くに達している。 小池知事は30日の定例会見や本部会議後の取材で「病床の確保や宿泊療養施設の拡充を進めている」とし、自宅療養者の健康観察を担う看護師を増強する方針を表明。人出の抑制については、テレワークの徹底などを求めていくとした。 また「ワクチンが行き渡るまでが勝負。この夏を最後のステイホームに」としてあらためて外出自粛を要請。一方で、感染者が増加して
学術書専門の老舗出版社で6月30日に解散した「創文社」(東京都千代田区)が世に送り出してきた全書籍について、大手出版社の講談社(文京区)が刊行を引き継ぐことが決まった。神学者トマス・アクィナスの「神学大全」(全45巻)などの良書が絶版を免れる。一つの出版社の書籍を丸ごと別の出版社が引き継ぐのは業界では異例。良書を残したい、という両社の思いが結実した。(小佐野慧太) 講談社は創文社の全書籍1500点以上のうち、権利者から同意を得られた書籍について、読者から注文があれば、そのつど製本するプリント・オンデマンド(POD)出版や、電子書籍の形で届ける。「創文社POD叢書(そうしょ)(仮称)」シリーズとして刊行する。
LGBT法案、対象狭める方向で調整 「差別は許されない」→「不当な差別は許されない」に 自民・保守派の異論で理念後退 性的少数者(LGBTQ)の人権保障法制に関し、自民党は、超党派議員連盟がまとめた理解増進法案の「差別は許されない」という表現を「不当な差別は許されない」に見直すなどした独自の法案を5月前半にも国会提出する方向で調整に入った。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を控え、議長国として多様性を尊重する社会の実現に前向きな姿勢を示す狙い。だが、自民を含む超党派で合意した法案より保護すべき対象を実質的に狭め、理念を後退させる内容で、当事者や野党の反発は必至だ。 修正を検討しているのは、超党派の法案の目的や理念に盛り込まれた「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」という表現。2021年の東京五輪・パラリンピック開催に先立つ自民党の法案審査では、保守系議員から「差別の内容が曖
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