史上初の延期、無観客で開催された異例ずくめの東京オリンピックは8日、閉幕を迎えた。日本オリンピック委員会(JOC)の元事務局長で1998年長野冬季五輪などに携わってきた笠原一也氏(83)は「本来の五輪の理念とは遠くかけ離れてしまった」と強調する。【構成・村上正】 笠原一也氏 メダルを獲得した選手たちは国旗を持って会場を走り回り喜びを表現していた。ここまでは過去大会と同じ光景だった。しかし、街中ではその選手たちの姿が見られない。選手たちの中で生まれた交流が、日本の国中にも広がり、互いの文化を共有し、理解することができるのが五輪だった。本来の価値を国民が肌で感じる機会がなかったのは非常に残念だった。 長野五輪では各国・地域の選手団が異文化を持ち帰った。象徴的だったのが各国のゲストハウスだった。各国はレストランや居酒屋、お寺をゲストハウスとして借り、地元住民を招き、食べ物などを振る舞って自国をア