◆大学1年生のときに読みたかった 量子力学の教科書 ◇「線形代数がわかれば量子力学もわかる」――私が書いた本 私は昨年(2021年)11月に『量子力学10講』という題の本を名古屋大学出版会から出しました。タイトルどおり10回の講義で量子力学を解説するような形で書いた本です。読者としては現代の理系の学部1年生を想定しており、学生が初めて独習する量子力学の本として使えるようにと思って書きました。また、本の正誤訂正と補足ノートをネットに公開しています。 「線形代数がわかれば量子力学もわかる」をスローガンに、本書では線形代数の延長として量子力学を捉えるというスタイルを採りました。竹内外史氏の『線形代数と量子力学』(裳華房)が、まさにそういう方針で書かれた本だと思います。『線形代数と量子力学』は、たんに線形代数に量子力学を「味付け」した本ではなく、ヒルベルト空間と射影作用素・自己共役作用素・ユニタリ