毎年8月になると戦争関連の番組や記事が増える。まるで季節の風物詩のような扱いにはちょっと微妙な気持ちにもなるけれど、終戦から80年近くが過ぎ、戦争体験を持つ人も少なくなるなか、どんな形であれ歴史と記憶の継承は必要だろう。というわけで、当連載でも戦争を描いたマンガをご紹介したい。 戦争マンガというと、水木しげる『総員玉砕せよ!』や松本零士の戦場まんがシリーズ、最近では武田一義『ペリリュー 楽園のゲルニカ』などを思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、今回はそういった戦場が舞台のものではなく、いわゆる「銃後」の庶民から見た戦争の姿を描いた作品にスポットを当てる。 ■怖いのは原爆だけじゃない 中沢啓治『はだしのゲン』(汐文社)1巻p67より 何といってもまずは、中沢啓治『はだしのゲン』(1973年~85年)を挙げねばなるまい。広島出身の作者が自身の被爆体験をベースに反戦・平和を訴えた歴史的作品