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決定論 自由意志の検索結果1 - 40 件 / 65件

  • 弱者男性論マップ

    追記: blogでやれ派がいらっしゃるようなので https://yatimasan.hatenablog.com/entry/2021/05/06/133616 X 党派問わず論拠や目的変数としてよく引用されるものを便宜上ここに配置 X-1 男女の自殺率の比較 X-2 男女の生涯未婚率の比較 X-3 結婚相談所やマッチングサービスにおけるマッチング成立の影響変数 X-4 国家間比較や年代比較における、男女平等指数と生涯未婚率男女差・自殺率差の相関性 X-5 男女・雌雄の生物学的差異や進化論的考察 X-6 社会的な「男らしさ」規範の存在 X-7 養育権の取りやすさにおける男女の偏り、シングルマザーとシングルファザーの数の差 X-8 男女の自殺未遂率の比較 X-9 出生率、出生率への影響変数としての男女平等指数、出生率の国家間比較 X-10 男女平等指数自体の統計的問題点の指摘 X-11 幸

      弱者男性論マップ
    • 【徹底解説】『メッセージ』に隠された世界観の変容を物理学研究者が読み解く | Fan's Voice | ファンズボイス

      ※本記事には映画『メッセージ』のネタバレが含まれます。 まずは簡単に『メッセージ』のあらすじを復習しておこう。 突如地球の各地に来訪した楕円状の黒い宇宙船。地球外生命体の訪問と人類は気づき、彼らとの意思疎通を図るため、世界的言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)が派遣された。始めは、地球外生命体「ヘプタポッド」が扱う異質な言語の難解さに気が滅入っていたルイーズだったが、学ぶにつれて言語が内包していたヘプタポッドの世界認識を理解していく。人間は「原因が結果を生み出す」というように因果論的に世界を認識しているが、ヘプタポッドの認識は過去・現在・未来を同一視する、いわゆる同時的認識様式に基づいていた。同時的認識様式を獲得したルイーズは、自分の娘の死が未来に待ち構えていることを知りながらも、後の夫となる物理学者のイアン・ドネリー(ジェレミー・レナー)と共に過ごしていくことを選択する。い

        【徹底解説】『メッセージ』に隠された世界観の変容を物理学研究者が読み解く | Fan's Voice | ファンズボイス
      • 自分がどう生きるかは、結局自分が決めるしかないのでは?―『21世紀の道徳』批判的書評 - あままこのブログ

        21世紀の道徳 作者:ベンジャミン・クリッツァー晶文社Amazon著者のベンジャミン・クリッツァー氏(id:DavitRice)の論考については以前もこのブログで何度か取り上げたことがあります。 amamako.hateblo.jp amamako.hateblo.jp amamako.hateblo.jp 上記の記事を読めば分かるとおり、僕はクリッツァー氏の豊富な知識量についてはすごいと思っているんですが、そこから示される、社会問題や学問観・人生論にはどうしても同意できないところがあります。ただ、なんでそこで同意できないかはいまいちよく分からなかったんですね。 それは、この本を読んでも正直あまり変わらなかったんですが、ただこうやってまとまった形で論考を読むことによって、そもそもクリッツァー氏と僕には、根本的な考え方の違いがあるんだなと思うようになりました。 学問は「唯一無二の正解」を示す

          自分がどう生きるかは、結局自分が決めるしかないのでは?―『21世紀の道徳』批判的書評 - あままこのブログ
        • スタンフォード大学の科学者が「自由意志は存在しない」とする理論の問題点とは?

          私たちは自分の思うままに考え、何をしたいか自分で選んで行動できるとする「自由意志」を持っていると信じている人は多くいますが、自由意志の存在は科学的に証明されていません。スタンフォード大学の神経生物学者が2023年に出版した著書では「自由意志は幻想である」と断定されており、その理論が注目を集めています。自由意志の理論において重要なポイントや何が議論の的となっているかについて、倫理の専門家が解説しています。 A Stanford professor says science shows free will doesn’t exist. Here’s why he’s mistaken https://theconversation.com/a-stanford-professor-says-science-shows-free-will-doesnt-exist-heres-why-hes-m

            スタンフォード大学の科学者が「自由意志は存在しない」とする理論の問題点とは?
          • 自由や責任についてどう「解釈」するか?(読書メモ:『そうしないことはありえたか?:自由論入門』) - 道徳的動物日記

            そうしないことはありえたか?: 自由論入門 作者:高崎将平 青土社 Amazon 「自由意志は存在するか否か」と言われたら、わたしを含めた多くの人が、「事実」に関する問題だと思うだろう。……つまり、自由意志というものがこの世界には「ある」のか「ない」のか、ということについての話であるような印象を受けるのだ。 また、「決定論についての議論」と言われた場合にも、最初に聞いたときには「世界が決定されているか否か」に関する議論であるように思うはずだ。つまり、(ビッグバンが起こったり神様が作ったりしたとかの理由で)この世界が生じた瞬間からこの世界が終わるまでの全時間の全場所に起こる全ての物理的な現象とか存在とかは確定されており、わたしたちの意識も脳みそとか電気信号とかの物理的なものの所産に過ぎないからいつどこでなにを考えたり計画したりどんな行為をするかまでもが決定されているのか、それともそうではない

              自由や責任についてどう「解釈」するか?(読書メモ:『そうしないことはありえたか?:自由論入門』) - 道徳的動物日記
            • 量子力学を持ち出すだけでただちに自由意志の存在が救われるわけではない、という点について|山口尚|note

              量子力学はいわゆる古典力学とは本質的に異なる世界像を提示するので、自由意志をめぐる問題を考察するさいにはそれなりに知っておくべきものだと言える。そして優先度は高い。じっさい自由意志の哲学に取り組もうとするさいには、例えば〈決定論的オートマトン〉と〈非決定論的オートマトン〉のパワーの違い、チューリングマシンの仕組み、無意識にかんするフロイトの理論などの、純粋哲学の外部の知見をいろいろと知っておいたほうがいいのだが、量子力学はそうしたリストの上位に入る。それゆえ私は、例えば《停止性問題を解決するプログラム[*]は存在しえない》という命題の証明を見た後などに、「では河岸を変えて量子力学のモデルを構築できるようになることを目指しまずはヒルベルト空間のことや自己共役演算子のことを勉強しよう!」などと提案したくなる――だいたい「波束の収縮」のモデルをつくることができるところまで進めば〈量子力学が自由意

                量子力学を持ち出すだけでただちに自由意志の存在が救われるわけではない、という点について|山口尚|note
              • 時間逆行映画『TENET』の謎とは何だったのか? 映画に魅了された物理学者、橋本幸士が反芻する | bound baw

                現在、大ヒットを続けているクリストファー・ノーランの新作映画『TENET』。ノーランといえば、短期記憶を失う男が主人公のサスペンス『メメント』において、その卓越した構成力と演出で一躍映画界のスターとなった人物だ。その後の大型作品『インセプション』でも、ノーランは「映画と時間」の関係に挑み続けてきたことがわかる。そしていま、“時間逆行映画”を標榜する『TENET』が全国公開中だ。多くの人が「一度観ただけではわからない」と口々に語るこの映画、一体 スクリーン上では何が起きているのか? 本作に魅了された物理学者・橋本幸士が独自の視点で解説する。 世界興行収入が300億円を突破した(日本公開2020年9月の一ヶ月後)ことからも分かる、全世界の映画ファンを魅了している映画『TENET テネット(以下、TENET)』。一人の物理学者である僕も観て来た。一言でいえば、タイムリバーサル(時間逆行)を肉体で

                  時間逆行映画『TENET』の謎とは何だったのか? 映画に魅了された物理学者、橋本幸士が反芻する | bound baw
                • Cakes連載『新・山形月報!』

                  ずいぶん間が空いた山形月報ですが、今回は文学好きの間では話題ながらも難物と言われるコーマック・マッカーシー遺作2部作を中心に、ホームズの格闘術と、財政金融政策の話。文学にネタのような真面目な格闘術、さらには経済話といつもながらバラバラですが、さて、どんな話になるでしょうか! ずいぶん間が開いた (一年以上かよ!)。いつもながら、採りあげるつもり満々の本が一冊あって、それをどう料理しようか考えるうちに、ずるずる先送りになってしまうというありがちな話ではあります。 で、今回扱うのは、それではない。 コーマック・マッカーシーの遺作となる2部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』だ。 マッカーシー『通り過ぎゆく者』 コーマック・マッカーシーは、現代にあって、本当の意味での文学を書けた数少ない作家の一人だ。そして、それは文学というものの意義が変わってきた現代では、決して容易なことではない。 村上龍は

                    Cakes連載『新・山形月報!』
                  • アンドルー・ポター「インテリは穿った見方をするあまり、ウクライナ情勢で奇怪なことを言ってしまう」(2022年10月6日)

                    イーロン・マスクが、数日の間ツイッターの主役となるのは、お馴染みの光景だ。月曜日、マスクは、「ウクライナとロシアの平和」と称する大構想をツイートし、いつもの光景が展開された。彼は、ロシアによるウクライナの併合地域での国連の監督下での投票の実施、クリミアの「正式なロシアの領土」への承認、ウクライナの「中立」国化などを盛り込んだ提唱を行った。 このマスクによる和平案は、当然のことながら素晴らしい外交手腕と称賛されず、ツイッター上で執拗な批判に晒された。そこで、現世で最も裕福なこの男性は、自分の提唱をオンライン投票にかけて賛否を問うた。結果、60対40という大差で否決された。実際、この騒動の終日になって、マスクの構想を強く支持していたインターネット論壇は、2つだけになっていた。(ロシア政府に買収されているわけでもないのに)ロシア政府に同調している人々。そして、特異な主張(「核戦争を避けねばならな

                      アンドルー・ポター「インテリは穿った見方をするあまり、ウクライナ情勢で奇怪なことを言ってしまう」(2022年10月6日)
                    • 『万物の黎明』を読む。 #323|Χ

                      デヴィッド・グレーバーとデヴィッド・ウェングロウによる『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』を読んだ。本書は紙で708ページ、Kindle版で1097ページという大ボリュームであるため、大まかな論旨を追いつつも、個人的に気になった部分を中心に取り上げながら紹介していく。 『万物の黎明』で印象的だった部分不平等は自然状態or文明病?「どうすれば不平等を是正できるのか?」という問いを考えると、「なぜ不平等が発生したのか(平等だった時代や社会はあったのか)?」という問いも浮かぶ。その先駆者と言えばルソーとホッブズだ。 ルソー的な考え方をすれば、「昔は平和だったのに文明のせいで人類は不幸になっている(不平等になってきている)」となる。一方、ホッブズ的に考えれば、「昔は争いの絶えなかった人類は文明のおかげで平和な社会を構築してきた(不平等が解消されてきた)」となる。(ちなみに、二人が言う「自然状

                        『万物の黎明』を読む。 #323|Χ
                      • モラルを捨てたら儲かるか?『不道徳な経済学』読書会【闇の自己啓発会】|ひでシス

                        闇の自己啓発会は4月25日、『不道徳な経済学』読書会を行いました。初の完全リモート読書会ということで、当初は「いつものように話せるのか?」との懸念がありましたが、やってみると普段と同じ感覚で話すことができました。今回は、コロナ自粛中に考えたこと、ネオリベラリズム、コミュニティについてなど、色々な話題が展開。その模様を紹介していきます! ■参加者一覧役所【暁】 編集者。外出自粛中にしているゲームは、プチデポット『グノーシア』。 【木澤】佐登志 文筆家。外出自粛中に見ているアニメは『ミッドナイトゴスペル』。 【江永】泉。外出自粛中にプレイ動画を視聴したホラーゲームは『GO HOME』。 【ひで】ひでシス。外出自粛中に作ったWebアプリは Magwatta ■外出自粛中、どう過ごしていますか?【ひで】 皆さん、コロナ自粛はどうですか? う〜ん、僕は自分のことを引きこもりって思ってはいましたが、こ

                          モラルを捨てたら儲かるか?『不道徳な経済学』読書会【闇の自己啓発会】|ひでシス
                        • ダーウィンの自然選択説が学問に与えた、革命的な影響とは?(木島 泰三)

                          私たちは「自分の意志」で、あらゆる行動をしている——多くの人はそう思っているでしょう。しかし、私たちの行動は「遺伝子」あるいは無意識の「脳」に操られているのではないかという論争が昔から繰り広げられてきました。このような「自由意志」の問題に革命的な影響を与えたのが、ダーウィンの「自然選択説」だったと、新刊『自由意志の向こう側──決定論をめぐる哲学史』(講談社選書メチエ)著者の木島泰三氏は言います。 ダーウィン主義の失墜 リチャード・ドーキンスは1976年の『利己的な遺伝子』で、「哲学と『人文学』と称する分野では、今なお、ダーウィンなど存在したことがないかのような教育が行われている」と嘆いた。 この状況はその後大きく変化したが、僕が哲学専攻の院生だった1990年代前半頃はまだ、少なくとも僕の周囲では、ダーウィンといえば博物学者であり、深遠な哲学的議論で引き合いに出されるような名ではない、と思っ

                            ダーウィンの自然選択説が学問に与えた、革命的な影響とは?(木島 泰三)
                          • 人生はトランプゲームに似ている。 - アラフィフ主婦、社労士を目指す

                            いつもご覧いただきありがとうございます。 このブログは2022年の社労士試験に向けての記録になります。 今日の題は「人生はトランプゲームに似ている」です。この後に「配られた手は決定論を意味し、どう切るかはあなたの自由意志です。」と続きます。 娘は今日模擬試験を受ける為に、朝早く出かけました。娘も頑張っているので私も負けてられません。 ゲームはまだまだ続きます。 今日勉強したこと 4章 業務災害に係る保険給付:どのように規定されているか? 5章 復習業務要因災害に関する保険給付:どのように規定されているか? 感想 法律の学習について 労基法の振り返り 使用者はどのような書類を作成しどれくらいの期間保存すべきか? 労働者名簿とは 労働者名簿の記入事項 労働者名簿との違い 今日のひとこと 今日勉強したこと 4章 業務災害に係る保険給付:どのように規定されているか? 業務災害に係る保険給付にはどの

                              人生はトランプゲームに似ている。 - アラフィフ主婦、社労士を目指す
                            • 【氏と育ち】発達障害は遺伝なのか、それとも教育なのか - アスペルガー大学生

                              社会ダーウィニズムと社会ラマルキズム 社会ダーウィニズムはナチス? 遺伝の影響について議論するのはタブー? 【環境決定論】環境と人間の関係を議論することがタブーだった時代 社会ダーウィニズムと社会ラマルキズム 人間の知能は、 身体能力は、 センスは、 「遺伝」なのか「環境・育ち」なのか? これは誰でも一度は考えることだと思います。 この話題については分野問わず様々な説がある印象ですが、その根幹にあり、そして一番有名なのは ダーウィンの自然選択説(自然淘汰説) ラマルクの用不用説 と言っていいでしょう。 簡単に言うと、自然選択説を唱えたダーウィンの主張は 「遺伝」こそが全てを決める 用不用説を唱えたラマルクの主張は 「環境」がすべてを決める となります。 自然選択説(しぜんせんたくせつ、英: natural selection)とは、進化を説明するうえでの根幹をなす理論。厳しい自然環境が、生

                                【氏と育ち】発達障害は遺伝なのか、それとも教育なのか - アスペルガー大学生
                              • ゼロ年代から加速して 海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる』読書会|江永泉

                                闇の自己啓発会は、6月23日に都内某所で、海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる』読書会を行いました。引き続き木澤佐登志さんも参戦し、雑談(ゼロ年代から加速主義の話など)が大変盛り上がりました。ゆえに前置きが非常に長くなりましたが、その模様をお伝えしていきます。 ※追記:これまでの活動については、こちらをご覧ください! 初回記事「品川の中心で不平等を語る 『不平等との闘い ルソーからピケティまで』読書会記録」(『ひでシスのめもちょ』2019年1月29日) ※なお、編集の都合で、前回予告していた『ニュー・ダーク・エイジ』読書会より先の掲載となります…。こちらも追々掲載する予定です。 ■参加者役所暁:政治学や思想などをやっていた(?)、しがない編集者(文化的な生活ができる程度のおちんぎんを頂ける転職先募集中)。最近のマイブームは『装甲悪鬼村正』。江永泉:文学理論や批評などをやっていた、しがないや

                                  ゼロ年代から加速して 海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる』読書会|江永泉
                                • カオスから自由意志へ

                                  Psyche(aeon)より。 物理学の大雑把な理解では、宇宙は決定論が働いていると見ています。幸いなことに、分子の不確実性はこれがそうではないことを保証しています ジョージ・エリス フランスの数学者ピエール・シモン・ラプラス(1749-1827)は、宇宙は機械の一部であり、物理学がすべてを決定すると考えていました。ラプラスの研究を読んでいたナポレオンは、彼の理論に創造主が存在しないと対立しました。ラプラスは、「私の書物にそのような仮説は必要ありません」と答えました。ラプラスは自由意志についても同じことを言ったかもしれません。機械的な宇宙には必要ありません。 ラプラスの時代から、科学者、哲学者、神経科学者までも、彼にならって自由意志の可能性を否定してきました。これは、物理系を特徴付ける変数の初期値と、これらの変数が時間とともにどのように変化するかを説明する方程式を知っていれば、系の状態を後

                                  • ベル不等式の破れに与えられたノーベル賞|Masahiro Hotta

                                    2022年にノーベル物理学賞を与えられたベル不等式の破れの実験結果は、実在論を信じることを不可能にはしないですが、実在論を信じないことは可能にします。つまり量子力学は情報理論であるということです。仮に実在論を信じたい場合には、それは「陰謀論的実在論」というかなり変わった理論しか生き残りません。 量子力学は操作論的な意味で、完全に局所的理論です。無信号条件のみならず、情報因果律まで満たすという驚異的な局所性を持っています。量子もつれは非局所性を示すというアインシュタイン以来の古い見方は、実証のみに基づいた現代的な量子力学で、もう意味を失っていると考えています。 もちろん量子力学の予言と一致するように、非局所的実在(宇宙の果てと果てが瞬間に影響しあうもの)を形而上学的に考え続けることもできますが、そのような理論全ては、人類に量子力学という幻覚を見せ続けているという陰謀論とも、実験的に区別が付か

                                      ベル不等式の破れに与えられたノーベル賞|Masahiro Hotta
                                    • 量子力学の新解釈、QBismとは何か(H. C. フォン・バイヤー『QBism』松浦俊輔 訳、木村元 解説)【解説公開】|森北出版

                                      量子力学の新解釈、QBismとは何か(H. C. フォン・バイヤー『QBism』松浦俊輔 訳、木村元 解説)【解説公開】 2018年3月発行、『QBism:量子×ベイズ――量子情報時代の新解釈』への、木村元氏による「解説」の全文です。 解説:QBイズム解体著:木村元(芝浦工業大学 システム理工学部) 客観:人間の行動・思惟には関係なく独立に存在する物質・自然。 主観:外界を知覚、意識する主体。 ――『講談社国語辞典 第三版』量子力学ほど奇妙な学問は存在しないと思う。「思う」とは書いたが、これは私の主観ではなく、科学史上、客観的な事実であると言っても過言ではない。もっとも、「奇妙という感覚自体が主観である」という指摘がくるであろうから、客観的な史実を説明した方がよいだろう。まずはじめに断っておくと、量子力学は、現代物理学の支柱であり、現代科学技術の欠かせない基盤でもある。あらゆる素粒子現象、

                                        量子力学の新解釈、QBismとは何か(H. C. フォン・バイヤー『QBism』松浦俊輔 訳、木村元 解説)【解説公開】|森北出版
                                      • 『あたらしいサハリンの静止点』読書会レジュメ(その2)

                                        この記事についてこの記事は、文芸同人・ねじれ双角錐群メンバーで行われた読書会のレジュメを公開するものです。課題本は文芸同人・第三象限によるSFアンソロジー『あたらしいサハリンの静止点』。前半3作品/後半3作品の2回に分けて開催したうち、本記事では後半3作のレジュメを公開します。 前回の記事はこちら レジュメは、事前に共有編集状態にして参加メンバー全員で自由に書き込む形式で作成しています。読書会はKindle電子書籍版に準拠して実施し、ページ数などの位置情報はKindleで開いたときの「位置No.」で示しています。 『あたらしいサハリンの静止点』についてはこちら グラス・ファサード筆者自身による創作メモ: https://saitonaname.hatenablog.com/entry/2020/08/31/225109 「プロットを書かない代わりに大量の脱線文章を書くことでメインとなるプロ

                                          『あたらしいサハリンの静止点』読書会レジュメ(その2)
                                        • TENETメモ:『TENET』世界から生還するための「あら探し」 - 重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)

                                          ずっと、『TENET』のことを考えている。 私だけではないようだ。日本での公開から3週間ほど経つが、『TENET』についての記事・ブログが書かれ続けている。「難解」と言われるプロットを解説するもの、科学的視点から面白さや矛盾を指摘するもの、ノーランの過去作を引き合いに出した作品論など。これほどみんなが語りたくなる映画が、近年あっただろうか。 『TENET』を語る人はよく、「この映画で○○は本質じゃないんだよ、本質は××にあるんだよ」という話法を使う。○○や××に入るのは、「物理学との矛盾」や「プロットの辻褄」や「映画表現の追究」や「ノーラン監督の宗教観」など。私もまた、自分なりの角度から、『TENET』に深く魅せられた。 私の『TENET』の見方、私への『TENET』の刺さり方は、広い共感を得られるものではないかもしれない。でも、だからこそ書いてみたい。書かずにはいられない。 ネタバレは控

                                            TENETメモ:『TENET』世界から生還するための「あら探し」 - 重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)
                                          • 【考察】細かすぎて伝わらないゼノブレイドシリーズ小ネタ集 : 記号論研究所 マンガ・アニメ・ゲーム考察

                                            ポケモン剣盾に続く、細かすぎて伝わらない小ネタ集、 第2弾はゼノブレイドシリーズの考察です。 ゼノブレイド、ゼノブレイドクロス、ゼノブレイド2の3作品から、 厳選した15個の小ネタをお届けしていきます。 それでは、行ってみましょう。 ジオコスモス~エーテルで満たされた大地世界 エーテルとは、かつてアリストテレスの自然科学が キリスト教義および宇宙観の中心定義であった中世の時代に、 ルネ・デカルトが物体が運動する力の源として考えた媒質の事です。 ゼノブレイドの巨神界では、デカルト力学を踏襲した天才数学者、 ゴットフリート・ライプニッツの学説を盛り込み、 ニュートン力学とは異なる世界を現出させています。 ゼノブレイドのストーリー序盤で挿入される「巨神還し」のイベントは、 巨神界がデカルト力学から出来ている事を説明しており、 ライプニッツが『プロトガイア』に記したジオコスモス論をモデルに、 マク

                                              【考察】細かすぎて伝わらないゼノブレイドシリーズ小ネタ集 : 記号論研究所 マンガ・アニメ・ゲーム考察
                                            • 平沢進の音楽世界観を多角的に紐解く - Music Synopsis

                                              ※当記事は文字数が9万字以上ある記事になります。 そのため、時間がある時に閲覧すること、また字数の関係上スマートフォンでの閲覧よりもパソコンやタブレット端末での閲覧を併せて強く推奨します。 ・はじめに これまで久石譲・菅野よう子といったメジャーでありながら知名度も抜群であり多大なフォロワーがいる、いってみれば名実ともに全員が納得できる偉大な大家について書きました。つまり大衆が愛すべき作曲家に焦点を当てました。しかし今回はすこし捻った特集を組みました。 マイナーだけど何故かメジャーアーティストとして有名という音楽版の諸星大二郎とでも形容すべき人物、つまりは平沢進です。まず音楽版の諸星大二郎とはどういう意味なのか、という点についてです。 同業者からは絶大な支持があるもののより広域的な範囲では知られていないという存在を形容するものとして「ミュージシャンズ・ミュージシャン」という単語があります。

                                                平沢進の音楽世界観を多角的に紐解く - Music Synopsis
                                              • 『テーマ別英単語 ACDEMIC』でアカデミックな英文の読解力を高めよう!【英検準1級~1級の長文対策にも】 - 崖っぷち舞台役者が婚活を始めたら英語がペラペラになりました

                                                ! こんにちは。すっかり更新が滞ってしまっていました。というのも先日、英検1級の一次試験を受けてきたんです。初受験ということで、ブログそっちのけで対策に集中していました。 準1級取得から2年。「元々読解は得意だし、リーディングはなんとかなるだろう。」と若干なめていたのですが、過去問を解いてみて、あまりの難しさに焦りました。 そんな手強い英検の長文対策に使ってみたのが、『テーマ別英単語 ACADEMIC』シリーズです。ひと月ほど毎日読み続けた結果、抜群の効果を発揮し、リーディングパートで満点を取ることができました! 文脈で単語を覚えるタイプの教材なのですが、英検やTOEFLなど、アカデミックな内容の文章が出題される試験を受ける方にとってもオススメの教材です! そこで今日は、『テーマ別英単語 ACADEMIC』シリーズを、それぞれのレベルや特長とともにご紹介します。 『テーマ別英単語 ACAD

                                                  『テーマ別英単語 ACDEMIC』でアカデミックな英文の読解力を高めよう!【英検準1級~1級の長文対策にも】 - 崖っぷち舞台役者が婚活を始めたら英語がペラペラになりました
                                                • 分析哲学者のためのベルクソン『時間と自由』入門|山口尚

                                                  『時間と自由』という邦題が与えられることの多いベルクソンの著書 Essai sur les données immédiates de la conscience、いわゆる『〈意識の直接与件〉論』、の内容を分析哲学者が容易にアクセスできるような仕方で提示する、というのが以下の目標です。分析哲学者がつまずきがちな点をそのつど指摘するよう努めたいと思います。 引用に際しては、合田正人・平井靖史訳『意識に直接与えられたものについての試論――時間と自由』(ちくま学芸文庫、2002年)を用います。また以下においてこの本を指示する際には『時間と自由』という短い呼び名を用いることにします。 はじめに前置き的なことを書きます。 ベルクソンの自由論を分析哲学者が読む際には、彼/彼女は《ベルクソンがやろうとしていることが、そもそも分析哲学者がやろうとしていることと異なる》という点を押さえねばなりません。例えば

                                                    分析哲学者のためのベルクソン『時間と自由』入門|山口尚
                                                  • サミュエル・バトラー『エレホン』を読む 反ダイバーシティと反シンギュラリティの世界 - HONZ

                                                    エレホン国はどこにある? このところ、昔の本をいくつか読みました。300年前に書かれたモンテスキューの『ペルシア人の手紙』。100年前に書かれたバージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』。そしてこのたび読んだのが、150年前に書かれたサミュエル・バトラーの『エレホン』です。共通点は、いずれも初訳ではなく新訳だということ。現代の読者のために、われわれに伝わりやすい言葉でよみがえった作品、と言えるかと思います。 この3冊のうち、とりわけバトラーの『エレホン』は、SFのはしりとも言われるらしいのですが、奇妙な力で現代人の心に波を立て、脳みそに負荷をかける、特異な作品だと思いました。そこでこの作品の不思議さについて、私なりに少し書いてみたいと思います。 そもそも「エレホン」というタイトルですが、綴りは Erewhon 。英語のnowhere を、(ほぼ)逆から綴った言葉です。そう、それは「どこでもない

                                                      サミュエル・バトラー『エレホン』を読む 反ダイバーシティと反シンギュラリティの世界 - HONZ
                                                    • 弱者男性論マップ - yatimasan

                                                      X 党派問わず論拠や目的変数としてよく引用されるものを便宜上ここに配置 X-1 男女の自殺率の比較 X-2 男女の生涯未婚率の比較 X-3 結婚相談所やマッチングサービスにおけるマッチング成立の影響変数 X-4 国家間比較や年代比較における、男女平等指数と生涯未婚率男女差・自殺率差の相関性 X-5 男女・雌雄の生物学的差異や進化論的考察 X-6 社会的な「男らしさ」規範の存在 X-7 養育権の取りやすさにおける男女の偏り、シングルマザーとシングルファザーの数の差 X-8 男女の自殺未遂率の比較 X-9 出生率、出生率への影響変数としての男女平等指数、出生率の国家間比較 X-10 男女平等指数自体の統計的問題点の指摘 X-11 幸福度の自認に関する統計の男女比較 X-12 男女の所得の比較、管理職の男女比率 X-13 STEM教育に関する男女比較 A 男性固有の社会的圧力はあるし問題だよ派(

                                                        弱者男性論マップ - yatimasan
                                                      • 『息吹』創作の秘密が明らかに! テッド・チャン インタビュー|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                                        12月4日の発売後即重版が決定した、テッド・チャン17年ぶりの最新作品集『息吹』。チャン氏が2009年に2度目の来日をした際に、『息吹』収録作について語ったインタビューを再録します。『息吹』で扱われているテーマについて、詳細に語った必読のインタビューです。 ※書影はAmazonにリンクしています 【書誌情報】 ■書名:息吹 ■著者:テッド・チャン ■訳者:大森 望 ■発売日:2019年12月4日発売 ■価格:本体1900円+税 ■判型:四六判上製 ■出版社:早川書房 テッド・チャン インタビュー in Japanインタビュアー&構成:大森望 ――2007年のワールドコンに続き、2度めの来日ですね。 チャン 富川(プチヨン)国際ファンタスティック映画祭(PiFan)に合わせて講演してほしいと、ネットワーク・オブ・アジア・ファンタスティック・フィルム(NAFF)から韓国に招かれたんだけど、前回

                                                          『息吹』創作の秘密が明らかに! テッド・チャン インタビュー|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                                        • 目次 - 進撃の巨人・自由論

                                                          0 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』 一覧 0.1 [バーリン、ミル] 0.2 積極的自由 (エレン)[バーリン] 0.3 積極的自由の光と影 (エレン、アルミン、エルヴィン、フロック)[バーリン、マキャヴェリ] 0.4 自由と「毒親」 (グリシャ、ジーク)[バーリン、カント] 0.5 自由と優生思想 (グロス曹長、ジーク)[バーリン] 0.6 実存的自由 (エレン、リヴァイ)[サルトル] 0.7 実存的自由の群像劇 (エレン、エルヴィン、ハンジ、ヴィリー・タイバー、ライナー、104期生)[聖書、プラトン、サルトル] 0.8 エレンに自由意志はあったのか (エレン、ユミル)[ホッブズ、スピノザ、アウグスティヌス、エピクテトス、アリストテレス、サルトル] 0.9 わたしは他人とともに自由でありうるか (エレン、ミカサ、調査兵団)[カント、サルトル] 1 ニヒリズムと実存的自由 一覧

                                                            目次 - 進撃の巨人・自由論
                                                          • [解説] 映画「HELLO WORLD」を1回見た人向けに簡単にポイントを解説してみるよ|ALL TALE(おーるてーる)

                                                            記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。 (ネタバレあり)映画『HELLO WORLD』、1回見て「!?」となった人は結構多いのではないかと思います。しかしそこで終わってしまってはあまりにもったいない。結構観客に「背伸びを強いる」作品で、ガッツリSFなところもあるのでちょっとハードル高い部分もありますが、そこを乗り越えると本当に面白くなってくるんです。 この記事では、初見だとちょっとわかりにくい部分を自分なりに解説してみようと思います。 自分自身、3回くらい観てもまだわからなくて、原作とスピンオフと解説記事を読んでようやくわかったという人間です(笑)。でも2回目、3回目を観たときの「そういうことだったのかー!」という発見の快感がこの作品は本当にすごい。だからこそ皆さんにも、何度でも繰り返し鑑賞してその境地を味わってほしい

                                                              [解説] 映画「HELLO WORLD」を1回見た人向けに簡単にポイントを解説してみるよ|ALL TALE(おーるてーる)
                                                            • Amazon.co.jp: 自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史 (講談社選書メチエ): 木島泰三: 本

                                                                Amazon.co.jp: 自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史 (講談社選書メチエ): 木島泰三: 本
                                                              • ララビアータ:スピノザ解説 - livedoor Blog(ブログ)

                                                                最近、仕事でスピノザについて少々語る機会があった。それで、以前書いたことをごくかいつまんでまとめてみた。別に真新しいものではない。ただ、スピノザに興味はあるがとっつきにくくて困っているという人のために、以下掲載しておく。 スピノザはどうしてあのように激しい指弾にあったのか? 彼が生前に出版したのは、ほぼ『神学・政治論』だけである。この一書だけで、すでにスピノザは世界中の憎しみの的になっていた。それは、彼が異端的な倫理やエキセントリックな主張をしたからではない。それどころか、彼は聖書のすべての主張が、我々の常識的道徳と少しも違わないことを説いており、その点でその解釈は凡庸とさえいえるほどだ。それがどうして世界中の怨嗟を招いたのか?この点を理解しないスピノザ解釈は、まったく的を外しているのだ。 神の言葉が、もし我々から見て非道徳的なことばかりを含んでいたとしたら、殺人や窃盗や偽証、強姦などを善

                                                                • 自然主義のソフトランディングのために―地動説から監視社会まで― - 梶ピエールのブログ

                                                                  bigcomicbros.net ビッグコミックスピリッツに連載されている『チ。―地球の運動について―』は連載を楽しみにしているマンガの一つだ。15世紀の、科学革命以前のヨーロッパにおいて、まさに命がけで「真理」を追究しようとする名もなき知性たちに焦点を当てた作品だが、最近になって印象的に登場したと思ったらすぐに最期を迎えたピャスト伯をはじめ、敵役の天動説を信じている人々の描写も素晴らしい。 このマンガを読むとき、僕たちは、主人公たちが「なぜ命を懸けてまで地動説を追求しようとするのか?」という点に目を奪われがちだが、むしろ問うべきなのは「当時の人々はなぜ地動説をそこまで危険視していたのか?」ということではないかと思う。それには恐らく当時の神学と一体になっていた、「運命論」を含む目的論的自然観を理解することが不可欠になるだろう。天動説は「神の意志」を反映した目的論的な自然観から導かれたもので

                                                                    自然主義のソフトランディングのために―地動説から監視社会まで― - 梶ピエールのブログ
                                                                  • スピノザの自然主義プログラムとは何か?(前編):必然主義と目的論批判|じんぶん堂

                                                                    記事:春秋社 Spinoza, Excommunicated by Samuel Hirszenberg, 1907 書籍情報はこちら 自然主義プログラム――自由意志も目的論もない世界の中で人間を理解する そもそも「スピノザの自然主義プログラム」とは何か。これはスピノザの言葉ではなく僕なりの命名だが、スピノザ思想の中に見いだされる、次の2点を柱とする構想である。 (1)自由意志概念の否定を伴う決定論または必然主義、およびその帰結としての唯現実論(アクチュアリズム) (2)目的論的自然観の徹底的な否定 この構想の背景として想定しているのは、17世紀科学革命による、近代的な力学的自然観の成立である。近代力学は、中世までの目的論的自然観を退け、「目的」とは無関係な法則に従って運動する微粒子の総体として自然を説明する。 このような自然観を踏まえた上でスピノザは、目的なき自然法則を乗り越えられるよう

                                                                      スピノザの自然主義プログラムとは何か?(前編):必然主義と目的論批判|じんぶん堂
                                                                    • タイラー・コーエン「職業的な哲学者がとってる説を予測する要因はなんだろう?」(2021年5月2日)

                                                                      [Tyler Cowen, “What predicts professional philosophers’ views?” Marginal Revolution, May 2, 2021] この記事は最初から最後まで面白いけれど,とくにこの箇所が目を引いた: なお,この研究によれば,政治的に右寄りであることは,いくつかの哲学説を採ることと相関しているという.たとえば,有神論,自由意志リバタリアニズム,心の哲学における非物理主義的な各種の説,真理の対応説がそうなっている. Justin Weinberg の記事全文はこちら.ちなみに,強い決定論を信じることは,幸福度が低いのと相関してる. ぼくに言わせると,これはシュトラウスの相対的な地位を大いに高める.ほんとの事実がどうなっていようと,人は特別で主体性をもっていると信じるのが重要なんだ.〔※訳した者より:この箇所が言わんとしていること

                                                                        タイラー・コーエン「職業的な哲学者がとってる説を予測する要因はなんだろう?」(2021年5月2日)
                                                                      • 静止した闇の中で──『闇の自己啓発』書評|倉津拓也 | 週末批評

                                                                        “闇” と不自由 2021年初頭に刊行された『闇の自己啓発』(江永泉+木澤佐登志+ひでシス+役所暁著、早川書房)は、Amazonの「現代思想」カテゴリーでベストセラー1位を獲得するなど、商業的に大きな成功を収めた。その要因の一つとしては、本書が現代の日本における“売れる哲学”の潮流と共鳴していたことが挙げられる。 哲学者の山口尚は『日本哲学の最前線』(講談社現代新書、2021年)のなかで、日本の哲学界には世界に伍する普遍的な哲学として「J哲学」という営みが存在し、現在のJ哲学の特徴は「不自由」論である、とする。 J哲学の二〇一〇年代は「不自由論」の季節であった。ただしその議論は、人間の不自由を強調してばかりの悲観的露悪ではなく、真に自由であるために不自由を無視しないという〈自由のための不自由論〉である。1 ここで山口は國分功一郎、青山拓央、千葉雅也、伊藤亜紗、古田徹也、苫野一徳を代表的な「

                                                                          静止した闇の中で──『闇の自己啓発』書評|倉津拓也 | 週末批評
                                                                        • 青土社 ||現代思想:現代思想2021年8月号 特集=自由意志

                                                                          ‟自由な決定”は希望か、それとも幻想か? 「人間は自由に意志決定しうるか」というのは古くからある問いである。しかし近年の脳神経科学をはじめとする自然科学の発展により議論は多様化し、「自由意志は存在しない」という意見も無視できないものになりつつある。本特集では新たな時代を迎えた自由意志をめぐる問題系、その再編と進化の途上を一望する。 【目次】 特集*自由意志――脳と心をめぐるアポリア​ 【討議】 幻想を超えて世界のありかたを語るために / 青山拓央+岡ノ谷一夫 【自由意志を哲学する】 自由意志の有無について考える前に考えるべきこと / 古田徹也 「決定論」のヒストリー / 木島泰三 媒介された自由――媒介論的現象学の観点から  / 田口茂 【ハードプロブレムの正体】 この私に自由意志があると信じる(信じたい)理由  / 須藤靖 自由意志問題の建設的な取り組み方 / 谷村省吾 圏論的人工知能と

                                                                          • ウィトゲンシュタインがまるで目の前で語り出したかのよう――【寄稿:池田 喬】古田徹也・著『はじめてのウィトゲンシュタイン』について|本がひらく

                                                                            ウィトゲンシュタインがまるで目の前で語り出したかのよう――【寄稿:池田 喬】古田徹也・著『はじめてのウィトゲンシュタイン』について 大型連休に、話題の人文書を読むのもお勧めです。学術系の入門書として『はじめてのウィトゲンシュタイン』が異例の売れ行きを見せています。著者・古田徹也さんをよく知る池田喬さんに、寄稿していただきました。池田さんは気鋭のハイデガー研究者として知られ、現在、ハイデガーの主著『存在と時間』の革新的な入門書を執筆中です。古田徹也さんが「本当に感激した」という池田さんの評文を掲載します。 ウィトゲンシュタインは、20世紀以降の現代哲学の最重要哲学者の一人だと言われているし、「語りえないことについては、沈黙しなければならない」といったフレーズや「言語ゲーム」のような概念はかなり広い範囲に知られている。こうしたフレーズや概念からしてそうだが、ウィトゲンシュタインは実に気になる存

                                                                              ウィトゲンシュタインがまるで目の前で語り出したかのよう――【寄稿:池田 喬】古田徹也・著『はじめてのウィトゲンシュタイン』について|本がひらく
                                                                            • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                                              ラヴジョイ、ちょろちょろ続いております。 cruel.hatenablog.com で、第5章にやってきました。この章はライプニッツとスピノザという大物が登場するのでなんかすごい哲学的な大バトルが出て、存在の大いなる連鎖という思想そのものに関わる話になるんじゃないかなー、と期待していたら、意外につまんなくてちょっとがっかり。 (ライプニッツとスピノザ) まあ、まずは訳を読んで下さい。もう章ごとに切るのは面倒だからやめた。全文あげておくから読んでね。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』(山形浩生訳) パワポも一応つくりました。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ by @8721924829 しかしこれは、パワポ見るまでもなく実はかなり中身はシンプルです。この章の基本的な話は次の通り。 ライプニッツは、充満の原理から、宇宙の万物は理由があって必然的存在するという「充

                                                                                ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                                              • 《人間が自分の行為に責任をもつことは不可能だ》と主張するG・ストローソンの議論をどう理解するか?|山口尚

                                                                                イギリスの哲学者ゲーレン・ストローソンは〈自由意志や道徳的責任の存在の不可能性〉を示すことを目指す論証――それはしばしば「基本論証(Basic Argument)」と呼ばれる――を提示している。彼が来日したとき私は直接会話したのだが、G・ストローソンは「この論証を公表したことが原因となって脅迫を受けたことがある」と言っていた。本ノートは、基本論証の内容を、そしてG・ストローソンの立場の要点と重要性を説明する。 本ノートの議論の流れは以下である。はじめに――具体的事例として――G・ストローソンの理路が大雑把な形で提示された裁判の実例を見る(第1節)。そのあと、上述の基本論証の内実を確認し(第2節)、それに対する(業界では)有名なクラークの応答に触れる(第3節)。最後に、G・ストローソンの議論の意義の、彼自身による説明を追いたい(第4節)。 第1節 議論の前に――クラレンス・ダロウの演説 はじ

                                                                                  《人間が自分の行為に責任をもつことは不可能だ》と主張するG・ストローソンの議論をどう理解するか?|山口尚
                                                                                • 書評 「善と悪の生物学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

                                                                                  善と悪の生物学(上) 何がヒトを動かしているのか 作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon善と悪の生物学(下) 何がヒトを動かしているのか 作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon 本書は,ストレスについての神経生理と行動の研究者で,アフリカで長年ヒヒの観察をしたことで知られるロバート・サポルスキーによるヒトの行動(特に暴力と攻撃と競争)についての一冊.進化生物学,脳神経科学,心理学の至近要因,究極要因の両方を含む広範な知見が簡潔に紹介され,著者自身の様々な考察が述べられている重厚な一般向け啓蒙書だ.サポルスキーは2001年に自伝的な回想録「A Primate's Memoir: A Neuroscientist's Unconventional Life Among the Baboons」を出しており(邦訳書は「サルなりに思い出すことなど」で2014年刊行)

                                                                                    書評 「善と悪の生物学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など