【ロンドン=鶴原徹也】英国で野火のように広がった暴動は、英国を揺るがした1980年代の一連の暴動と類似点もあるが、本質は異なる。 80年代の暴動が警察による人種差別に対する地域社会の反抗という政治性を帯びていたのに反して、今回の暴動には政治性がうかがえず、破壊と略奪を目的としているようだ。 今回の暴動の発端となった貧困地区トッテナムなど、暴動が起きた地域の多くは、80年代に暴動が起きた地域でもある。黒人を含む移民やその子孫が多く住む貧困地域で、失業率は全英平均の7・9%や22%近い若者失業率をさらに上回るとみられる。 だが、80年代は暴動の起きた地域ごとに警官による住民虐待事件が発生するなど、それぞれに具体的な原因があった。また、暴動は数千人規模に拡大し、人種差別を対立軸とした「警察対地域社会」という敵対構図が鮮明だった。 今回、トッテナム暴動の遠因は警官による黒人男性射殺事件だが、大半の