鞍山へ行く前には、昔昭和製鋼所があり日本人がたくさんいたこと(終戦時7万人ほどだったそうだ)、天津から連れ出された溥儀が満州国成立まで潜んでいた湯崗子温泉が近くにあることぐらいしか知らなかった。来てすぐに地図は入手したが、ガイドブックもないしツーリストインフォメーションもない。鞍山についての情報源は、この地図と、戦前ここに住んでいた人の回想記にあった略地図のコピーしかない状態だった。 週末は暇だから散歩に出る。ところが、日本人が100年ちょっと前に造った新しい町で、その後は共産党の支配を受けているのだから、寺廟というものがない。1996年創建のごく新しい玉仏寺しか見たことがない。戦前には日本仏教の寺が複数あったと帰国後に知ったが、そんなものはもちろん取り壊されている。鉄西区に中国人のために娘々廟(興盛廟?)が作られたそうだけども、今も残っているのかどうか。鉄西区はあまり歩かなかったので、現
今の天皇は、戦後まもないころ、アメリカ人に英語を習っていたとき、「ジェイムズ」と呼ばれていたと何かで読んだことがある。気持ちのいいことではない。今の英語ネイティブの教師が日本人に対してそういうことをしているのかは知らない。しかし、中国人は英語名を名乗ることに抵抗がないようで、アメリカに渡ったブルース・リーは当然としても、ジャッキー・チェンなど香港ではふつうの習慣だし、中国本土でも英語科の中国人学生はみな英語名をもっている。それならばと思い、日本語科の学生にも日本名をつけるよう促してみた。もちろん強制ではなく、クラスに1人ぐらいはつけない者もいるけれど、ほとんど全員が嬉々として日本名を名乗っている。 それは悪くないことだと思う。日本人は漢字を使っているので、漢字名は日本語読みする。「習近平」なら「しゅうきんぺい」であって、「Xi Jinping」とは言わないし、言えない。中国人にすれば、「し
ヨーロッパ人の偏見につきあってはいられない。消えた敗者ではマニ教や墨子教団などが好例だが、マニ教といえば「邪教」と烙印が押されている。一方で、兼愛非戦の墨子の教えは「古代の知恵」と見なす。マニ教にまとわりつく危険な邪教のイメージは、正統派キリスト教の対抗者として信者を奪い合う強力な「異端」「異教」であり「敵」であったからだ。そのあたりの事情を探ると、非寛容で戦闘的なキリスト教の実像がよくわかる(それは対イスラムについても同じだ。マニ教と違い、勃興ののち圧倒的な地位を築き、18世紀以降衰微の相を示してはいても、今なお一大勢力でありつづけているので、そうあからさまに荒唐無稽な攻撃はしないが、隠微な悪罵は西洋の骨髄にある。英語の受け売りを業とする者のイスラム論は、すべて悪性菌に感染しているものとして疑ってかからねばならない)。 墨子の場合は、西欧とまったく関係のないところで興亡し、ヨーロッパ人に
先日、たまたま降りた小さな駅でトイレに行ったら、誰もいない無人のトイレで、機械の声がエンドレスで流れていた。 ここが、トイレです。右が男性用、左が女性用です。 ここが、トイレです。右が男性用、左が女性用です。 誰もいないトイレで、意思をもたない機械が、その電源が続く限り、ここがトイレだと、世界に向かってつぶやき続けている。その言葉が誰かに届くかどうか思い悩むこともなく、誰かに届けと祈ることもなく、ただここがトイレですよと、右が男性用で、左が女性用だと教えているのだ。 そして、視覚障害者の方だけでなく、そのときの私のような、たまたま通りがかった者もまたこの声を聞き、そうか、ここがトイレか、そして右が男性用で、左が女性用なのだなと、知ることができる。 あのトイレの声は、今日もまた、これを書いている今も、ここがトイレですと、誰もいない宇宙に向かって、大事な言葉を送っているのだろう。 そういう言葉
彼の国には龍が棲んでいる── 神話によれば、古の人々との契約により、龍は人を助け、人は龍を助けるという… 舞台は “龍の国”。 主人公は、国の守護神 “龍”を虫歯菌から守る新米・歯医者の野ノ子。 隣国との戦争が激化する中、ある日彼女は、龍の歯の上で気絶した敵国の少年兵を見つける。 少年の名はベル。 大きな災いの前に龍が起こすと言われる不思議な現象で、巨大な歯の中から生き返ったものだった。 自らが置かれた状況に戸惑うベル。そして彼を励まし、彼を龍の歯医者として受け入れる野ノ子。 激しい戦いに巻き込まれながら、二人はやがて自らの運命を受け入れて行くことに… かつてない壮大なスケールで描かれる冒険ファンタジー! ©舞城王太郎,nihon animator mihonichi LLP. / NHK, NEP, Dwango, khara ■キャスト 岸井野ノ子:清水富美加 ベルナール・オクタビアス
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