四年ぶりの長篇 第三作『魔女の子供はやってこない』(角川ホラー文庫、2013)は、前作『保健室登校』(同、2009)からちょうど四年ぶりに刊行されました。技巧と物語が高度に洗練されたこの小説は、おそらく矢部嵩的世界の現時点での頂点を極める作品で、私もうまく読むことができたかどうか、紹介するに自信がないんですけれど、とりあえずは、これまでのように語ってみることにします。 本作は「魔女っ子もの」を企図して書かれたとされていますが、ジャンルものとして一般的なそれとは大きく異なっていると思います。魔法で願いを叶えることのできる人物(魔法少女ぬりえ)が異界からやってくるという設定はドラえもんを、彼女の相棒を務める平凡な小学生が語り手(安藤夏子)という形式はシャーロック・ホームズものを思わせると、ひとまずはいえるかもしれません。でも、相変わらず頻出するグロテスクな描写もさることながら、しかしふつうの子