【佐々木隆広】「おかあと結婚する」。5歳の息子は、口癖のように繰り返した。こっそりと用意したランドセル。背負ったら、どんなに喜ぶことだろう――。なのに母親は、その姿に接することもなく、息子に家庭用のごみ袋をかぶせ、命を奪ってしまった。 連載「きょうも傍聴席にいます。」 9月25日午前10時、東京地裁の715号法廷。傷害致死罪に問われた重田史都(しづ)被告(42)の姿があった。 裁判員裁判での審理。初公判の傍聴席は、ほぼ満席だ。 被告「私がしたことで…… 滉史(こうし)が亡くなったことに間違いありません」。 黒のカーディガンとパンツ姿。消え入りそうな声で起訴内容を認めた。 検察側の冒頭陳述や弁護側の主張にもとづく事件の構図は、こうだ。 重田被告は東京・目黒の自宅で、夫と4人の子どもの6人で暮らしていた。 昨年9月1日。土曜の夜だった。子どもたちが、遊んだおもちゃを片づけない。重