毎回この連載では、覚醒植物カートを食べて盛り上がったとか、カートを食い過ぎて頭を打ったとか、入国を拒否されて「やけカート」を食ったなど、愚にもつかない話を書き連ねている。これでは私が知性のない享楽的な人間に思われそうなので、たまには文化や歴史について語ってみたい。 最近、機会があってイブン・バットゥータの『大旅行記』(東洋文庫、全8巻)を読んだ。 イブン・バットゥータは14世紀の人で、現在のモロッコ・タンジェ出身。ちなみに足利尊氏の1歳年上である。尊氏が鎌倉幕府を倒し、室町幕府を打ち立て、後醍醐天皇とちまちま戦いを繰り広げていたとき、イブン・バットゥータは北アフリカから中東、インドを経由し、インドネシア、さらには中国に至る大旅行を行っていた。イブン・バットゥータの活動域は世界地図をひろげないと把握できないほど広大で、その地図上では尊氏の活動域はほとんど点のようである。南北朝の争いなんて「と
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