東大文芸部 ※東大文芸部の他の作品はこちら→http://slib.net/a/5043/(web担当より) 「明日、大事な話があるから」 放課後、いつもと同じように並んで昇降口へと向かった、その直後だった。 低い、押し殺したような声は、それでも、ミナの小さな肩をぴくりと震わせた。 はっ、となって、思わず下に向けていた視線を跳ね上げる。その間に、彼は傍らからそっと離れて、既に五メートル先を歩いていた。六メートル、七メートル、距離はどんどん開いていく。けれど、それが十メートルほどになったところで、彼はぴたりと立ち止まった。その一瞬、周りには二人のほか、誰もいなかった。 「悪いけど明日、ちょっと早めに来てくれないかな」 うん、とミナが小声で頷くと、彼はばいばい、とも言わずに、再び歩き始めた。ミナは、その後ろ姿が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしている。 そしてそれは、その日二人が交わし