この本で紹介するアイディアのたいていは、つきつめれば、懐疑的に考えるくせをつけてみようというところに行き着く。この社会では、「懐疑的」「懐疑派」という言葉は評判がわるい。ひねくれて、何を見てもあらばかりさがすんだろうと思っている人が多いのだ。でも実態はちがう。懐疑主義者とはただ単に、いきなり信じるのを好まない人、先に証拠を見て、どの程度あてになる証拠かを値踏みしたがる人にすぎない。本来の意味での懐疑主義者なら、いつだって心の広さを失わないはずだ。ただ、何かを信じるからには、まずは厳密な調査がいるよねと思うだけのこと。 知的で思慮深い人間になりたかったら、何かを信じるに至る途中経過、推論の質こそがものをいう。そして、問題が重要であればあるほど、また、主張がとっぴであればあるほど、証拠は説得力を要求される。もし、何かを信じるかどうかはそうやって決めているよという人がいれば、あなただってりっぱな