2020年度(2020年4月~2021年3月)の国民医療費が、前年度から2~3%台の幅で減少しそうだ。このような大きな低下は、国民皆保険となった1961年4月(1961年度)からの60年間で初めてである。 この理由は、「新型コロナウイルス感染症の流行に伴う病院の受診控え」とされているが、実際にはそれほど単純ではない。背景には、新型コロナウイルス感染症対策の結果、ほかの感染症が大きく減少するなど、疾病構造が急激に変化したほか、受診の一部にあった「不要不急」のものが顕在化したことがある。 その結果として、特定の診療科の受診、特定の年齢層の受診が減少している。また、国民医療費がマイナスになるということは国民の医療費負担も減るわけであり、これを否定的に見る必要もない。このような状況を、今後の医療にどう生かせばよいのか、そのような観点から2020年度の国民医療費のマイナス傾向について、分析していこう