2010年代日本における,図書館利用・非利用を分ける人口統計学的な特性を明らかにすることを試みた。第一回SSP調査データの二次分析となる。変数として,性別,年齢,学歴,個人年収,世帯年収,持ち家の有無,家族数,配偶者の有無,小学生以下の年齢の子どもの有無,出身階層,父学歴,母学歴,職業,居住地域の都市規模を採り上げた。これらと図書館利用頻度との関係を順序プロビット回帰分析によって検証した。その結果,女性,学歴の高さ,個人年収の低さ,世帯年収の高さ,持ち家の保有,幼い子どもがいること,父学歴の高さ,ホワイトカラー職,これら八つの特性が図書館利用頻度との高い相関を示した。さらに高学歴層と低学歴層に分けて分析を行ったところ,高学歴層では性別および職業との相関が弱まり,個人年収と母学歴との相関が強まった。これら特性が持つ意味は,ライフステージ,社会階層,読解力,機会費用と関連付けて解釈できた。