止まらない治安の悪化、はびこる汚職、変わらない貧富の格差。メキシコは長年にわたり、こうした問題に直面してきた。大統領選を制した左派のロペスオブラドール元メキシコ市長(64)は、問題を解決できない既存政党への不信感を募らせ、変化を求める国民の受け皿となった。 メキシコ市の南約50キロ、モレロス州にある集落トラルネパントラに続く道で、住民による自警団が検問所を作っていた。男性ばかり30人ほどが銃を持ち、集落に入る車を険しい顔でチェックしていた。 数日前の夜、麻薬組織のメンバー5人が集落に現れ、銃で脅しながら住民から「みかじめ料」を集めるという事件が起きた。集落に住む農家のエルメネヒルド・アルボラダさん(53)は「犯罪増加に政府の対策が追いついていない。殺されないためには、住民自身が守るしか仕方がないんだ」とため息をついた。 警察も事件に関与、容疑者すぐ釈放 国内で昨年の殺人件数は2万5339件