これほどの政治ショーは滅多(めった)に見られるものではない。国の生き残りを懸けた、まさに息を呑(の)む駆け引きである。チキンレースの末に米軍の軍事作戦が現実味を帯びてきた年末以降、案の定、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)氏は韓国を使ってアメリカの動きを封じる作戦に出た。 「韓国との対話を続けている間は、米軍の攻撃はない」という確信の下での揺さぶりだ。果たして平昌五輪に悠然と現れたのは、金正恩氏の妹で、実質ナンバー2の金与正(ヨジョン)氏だった。そして、彼女は兄の親書を文在寅(ムン・ジェイン)大統領に手渡し、南北首脳会談を持ちかけたのだ。 度重なる経済制裁で、北は悲鳴を上げている。しかし、あとわずかで悲願の核ミサイル開発が成就する。北が欲しいのは、四半世紀に及ぶ闘いの末の「完成までの少しの時間」なのだ。つまり南北対話という言葉は、そのまま「核ミサイルを完成させる」と同義語なので