江川紹子 びわ湖ホールが4年がかりで取り組む「ニーベルングの指環(リング)」。今年は「ワルキューレ」が上演され、ダブルキャストの2公演を鑑賞してきた。 ミヒャエル・ハンペさん(演出)、ヘニング・フォン・ギールケさん(美術・衣装)、齋藤茂男さん(照明)による舞台は、ト書き通りの写実的な作りで、どの場面も名作絵画のように美しい。 第1幕で、冬の嵐の中をフンディング宅に避難したジークムント。敵の手中に落ちたと分かり、危機に陥った夜に、ジークリンデと語り合い、心を通わせる。その時、舞台はいきなり春になる。「突如、満身に月光を浴びたふたりは互いの姿をはっきり認め合う」という、むちゃとしか思えないワーグナーの指示を、ハンペ演出は、プロジェクションマッピングの技法と巧みな照明で、忠実に実現した。木々に花が咲き誇り、月明かりに照らさ…