谷沢永一氏がお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りします。文献考証的な面で僕の研究分野と接点があるいくつかの研究がありますが、やはり最も注目したものは、03年に出た『高橋亀吉 エコノミストの気概』です。以下ではこの著作の内容を振り返りたいと思います。 この著作は、評論家として筆一本で生活し、戦前から戦後まで長い時代に活躍したエコノミスト高橋亀吉の事跡を追うことで、おそらく谷沢氏自身の生活、評論活動を自省する試みであった。 「世には評論家と呼ばれたり名乗ったり、数え切れないほど同業者は知られているけれども、実際のところそのほとんどは、大樹の陰に宿って固定給にありついている」 だからサラリーマンの気楽な稼業として評論をやっている。それに対して高橋亀吉は身銭をきって眼光を光らせて、資料を精査し、「高橋学派」とでもいうべき彼個人だけの主張を構築したのだ。 「私は独立独歩の高橋亀吉を敬愛する。そして
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