中国に関する書籍は数あれど、本書は出版までの経緯からしてユニークだ。テーマは戦後の日中関係についてであり、中国人の著者が中国人の読者を想定して書いたものである。だが守秘義務の関係で何度も検閲が入り、香港を除き未だ中国本土では発売されていないという。そんな曰く付きの一冊がこの度日本語に翻訳され、中国に先んじる形で出版されることになった。 著者は北京大学で日本語を学び、対日工作のために共産党によって育て上げられ、日中双方の首脳の通訳を務めるまでになった、中国における日本語研究の第一人者である。 これまでに通訳として関わった要人は、中国側は周恩来、華国鋒、鄧小平、林彪、胡耀邦といった共産党の大物がずらりと並ぶが、日本側も、田中角栄、大平正芳、三木武夫、福田赳夫といった歴代首相が顔を揃えている。まさに日中首脳外交の現場を生で目撃し、双方の政治家達の意思疎通を担ってきた生き証人と呼ぶに相応しい。 日