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ブックマーク / honz.jp (42)

  • 『少年ゲリラ兵の告白 ​陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』 - HONZ

    母は沖縄戦の体験者だった。このことが、ある意味ライフワークのように僕が沖縄にこだわる理由になったのだが、実のところ、母がその沖縄戦でどのような体験をしたのか、よくわからないままでいる。 沖縄戦について問うと、母は口を固く閉ざしてしまうからである。住人の4人に1人が亡くなった史上類例のない地上戦が展開された島には、その戦について語らない人たちが多い。「語らない」あるいは「語れない」理由はいうまでもない。戦がまだ夢に現れるほど可視的な過去であるために、心の傷が癒えないからである。 もう少し母の話を続けたい。米軍が沖縄島読谷村に上陸したのは1945年4月1日。来ならその年、彼女は沖縄県立第一高等女学校に入学する予定だったが、戦時教育措置によってすでに授業は停止され、上級生たちはほぼ1週間前の3月23日、南風原陸軍病院に看護要員として動員されていた。 いわゆる「ひめゆり学徒隊」である。学徒隊の

    『少年ゲリラ兵の告白 ​陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』 - HONZ
  • 『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』2019年のNo1新書 - HONZ

    書が2019年ベスト新書になると思う。第二次世界大戦は複数の戦争の集合体だった。日米の太平洋戦争はいうまでもなく、おおまかに分けるとドイツのヨーロッパ侵攻戦争、イタリアからはじまる北アフリカ戦争、そして書のドイツ・ソ連戦争だ。 書によればこの戦争でのソ連の死亡者(軍人+市民)は2700万人。ドイツは独ソ戦以外の戦争も含めて最大800万人。日は最大310万人だったという。 これまでにもイアン・カーショーの『ヒトラー』やアントニー・ヴィーヴァーの各著作などの文献や、NETFLIXNHKBSのドキュメンタリ映像を見てきたのだが、このほど独ソ戦についてコンパクトにまとめられているはない。戦史だけでなく、第3章の「絶滅戦争」では独裁者と権限が分散したナチス官僚機構、ヒトラーに対する国民の支持の源泉などについて極めてコンパクトに解説されている。 ちなみにそのことを含めてヒトラーとナチスが

    『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』2019年のNo1新書 - HONZ
  • 『無冠、されど至強』影のナンバーワンと呼ばれたサッカー集団 - HONZ

    著者は『オシムの言葉』をはじめとしてサッカーを題材にしたノンフィクションを手がけてきた。サッカーを描きながらも大半の作品に通底するのは、政治や組織に翻弄された個人がその矛盾に対峙する側面を切り取る姿勢だ。 大文字の歴史で語られることは少ないが、戦後サッカー史で在日朝鮮人のチームは「影の最強チーム」と称された。 例えば社会人などで結成された「在日朝鮮蹴球団」は1961年に結成され、1980年代まで日のトップチームを相手に9割6分の勝率を残している。時代も舞台も違うが、レアルマドリードがリーガ・エスパニョーラで同チームとして、史上最高勝率を誇った15ー16シーズンでさえ8割5分である。 まぎれもなく日に存在する「最強チーム」であったが、「影」であったのは、公式戦への出場を制限されていたからだ。トップチームだけでなく、そこに多くの選手を輩出した東京朝鮮中高級学校のサッカー部もながらく高校サッ

    『無冠、されど至強』影のナンバーワンと呼ばれたサッカー集団 - HONZ
  • 肥満に至る道はひとつではない──『人はなぜ太りやすいのか――肥満の進化生物学』 - HONZ

    現在の人はかつてないほど太っている。体長を身長の二乗で割って算出されるボディマス指数での評価では、世界人口の5人に1人が肥満あるいは過剰体重となってしまうほどだ。 1900年以前には肥満者は存在はしていたものの、多くはなかった。1700年代、1800年代のヨーロッパでは肥満者は珍奇なものであり、見世物にする人もいたぐらいだ。受け入れられ方も現在とは大きく異なっていた。平均体重より重いことは豊かさを意味し、病気の際に予備的な体力を有しているものと考えられていた。それが今では肥満は自己抑制の欠如の結果だと捉えられ、むしろ数々の病気を引き起こす悪い現象、不名誉な状態であると考えられている。 それにしてもなぜ、わずか100年でそれ程の変化が起こってしまったのか。人はなぜこれほどまでに容易く太るようになってしまったのか。人の肥満に対する脆弱性はどこから来たのか。書は、そうした疑問を中心に置き、人が

    肥満に至る道はひとつではない──『人はなぜ太りやすいのか――肥満の進化生物学』 - HONZ
  • 『祖国の選択 あの戦争の果て、日本と中国の狭間で』 - HONZ

    何という人生の数々だろうか――。 書を読みながら、思わず天を仰ぎたくなるように、何度もそう感じた。 著者の城戸久枝さんが「あの戦争」と呼ぶ70年前の時代の混乱の中で、祖国を自らの意志によって選ばなければならなかった6人の体験が、丁寧な聞き取りによって描かれていく。 冒頭で滔々と語られる小林栄一氏の半生を読み始めたときから、私はその「語り」の重みに一気に引き込まれた。彼は満州への開拓団に参加した両親のもとに生まれ、終戦時のソ連侵攻からの逃避行の最中に家族と生き別れたという。弟とは別々の中国人に引き取られ、7回も家をたらい回しにされる。差別的な扱いを受けて育ちながら、ほぼ独力で人生を切り拓き、日への帰国を果たす。 あるいは、同じく開拓団の1人として大陸に渡った富満ていこさんもまた、15歳でたった1人、中国に取り残される。彼女の語る敗戦後の逃避行は、自らの子供を親が手にかける光景が繰り広げら

    『祖国の選択 あの戦争の果て、日本と中国の狭間で』 - HONZ
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    不倫SF漫画の結末はハッピー?バッド?『あげくの果てのカノン』米... 2018年11月17日 2018年7月23日(月)漫画『あげくの果てのカノン』完結記念イベント「ハッピーエンド(もしくは地獄のはじまり)の作り方」が開催されました。  イベントに登壇されたのは『あげくの果てのカノン』作...

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  • 『本当はひどかった昔の日本 古典文学で知るしたたかな日本人 』文庫解説 by 清水 義範 - HONZ

    私は、大塚ひかりさんには恩を受けている。大塚さんの仕事の中に、ひとりで全訳をした『源氏物語』(ちくま文庫)があるのだが、そののおかげで私は初めて『源氏物語』の全巻を読み通すことができたのだ。 それより前には、いろんな作家の現代語訳で挑戦したのに、ついにすべてを読み通すことができなかった。谷崎潤一郎訳では、全10巻のうち第1巻(「若紫」まで)しか読めなかったし、その後、円地文子訳でも、瀬戸内寂聴訳でも読もうとしたのだが、半分くらいまでで挫折してしまっていたのだ。『源氏物語』を通読するのは私には無理なのかと思ったくらいだ。 ところが、年を取って図々しくなっている私は、よくわかっているような顔をして『源氏物語』について、解説するようにしゃべったりしていた。あの物語の中のヒロインたち何人かを題材にして大いにパロディ化してみた『読み違え源氏物語』(文藝春秋)という短編集まで出しているのである。ある

    『本当はひどかった昔の日本 古典文学で知るしたたかな日本人 』文庫解説 by 清水 義範 - HONZ
  • 『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』常識を嗤い続けた男 - HONZ

    1989年、日人がやり投げで「幻の世界記録」である87メートル68センチを投げたことを覚えている人はいるだろうか。「疑惑の再計測」の結果、87メートル60センチに記録は改められたが、当時の世界記録に6センチ差にせまる大記録であった。その後はWGP(ワールドグランプリ)シリーズを日人で初めて転戦し、総合2位の成績を収めた。 男の名は溝口和洋。世界記録更新も期待され、人気、体力も絶頂にありながら、翌シーズン以降に忽然と姿を消す。 やり投げでは小柄な180センチほどの身長で溝口はなぜ世界と互して戦えたのか。そして、突然表舞台から去ってしまったのか。書は、学生時代に円盤投げの選手でもあった著者の18年に及ぶ取材の集大成だ。 高校のインターハイにはアフロパーマで出場。一日二箱はタバコをふかし、酒も毎晩ボトル一は軽い。ナンパした女性と朝方まで過ごし、二日酔いで日選手権に出て優勝。陸上投擲界で

    『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』常識を嗤い続けた男 - HONZ
  • 『兵士は戦場で何を見たのか』 - HONZ

    2007年4月、ワシントン・ポスト紙の元記者でピュリツァー賞受賞者デイヴィッド・フィンケルは、バグダッド東部にあるラスタミヤという、だれも行きたがらないアメリカ軍前線基地に赴いた。そこは、「すべてが土色で、悪臭に覆われ」、「風が東から吹けば汚水の臭いがし、西から吹けばゴミを焼く臭いがし」、「外に出るとたちまち頭からブーツまで埃まみれになる」場所だった。 2007年1月にブッシュ大統領が、「バグダッドの治安維持とイラクの自由のために」さらに2万人の兵士をイラクに送ると発表したのを受け、カンザス州フォート・ライリーを拠点にしていた第一歩兵師団第四歩兵旅団第十六歩兵連隊第二大隊がイラクに派遣されることになった。フィンケルが赴いたのは、この大隊に密着取材し、大隊の指揮官のラルフ・カウズラリッチ中佐を中心に、戦場における兵士たちの実情をレポートするためだった。 そして書(原題「The Good S

    『兵士は戦場で何を見たのか』 - HONZ
  • 『耳鼻削ぎの日本史』”やさしさ”から”見せしめ”まで - HONZ

    “耳鼻削ぎ”とは穏やかではない。というか、野蛮。現代人はそう感じるだろう。日歴史上で耳や鼻を削ぐといえば、戦国時代の話かな。敵の首をいくつとったか戦功を証明するのに、首だと持って帰るには重いから耳。いや耳だと左右二つ削いで数をごまかせるので鼻になったんだっけ。いやはや、戦国時代は血腥い…。 著者は日各地の“耳塚”“鼻塚”を訪ね歩き調査する。無惨に討たれた武士たちの耳や鼻が何百と葬られたというのなら、さぞや怨念が染み付いているだろう、怨霊話もあるだろう。耳や鼻を削ぐという行為の意味もみえてくるだろう、と思いきや。 なぜかどこへいっても「耳の神様が耳の聞こえをよくしてくださるところ」という話ばかりだったのだという。 私は日中の耳塚・鼻塚を訪ねてまわり〜(中略)けっきょくのところ、どこの耳塚・鼻塚からも不気味な怨霊譚が聞かれることはなかった。それどころか〜(中略)土地の人から愛され、ご利

    『耳鼻削ぎの日本史』”やさしさ”から”見せしめ”まで - HONZ
  • 地場の小売店が地域の一員として商売を続けていくことのヒント『まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』 - HONZ

    地場の小売店が地域の一員として商売を続けていくことのヒント『まちの屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』 この人を見よ。 縮みゆく出版市場、実家の倒産、東日大震災…かずかずの苦難をへて、なお前進しつづけるそのバイタリティの秘密とは?地方で生きていくということ、そしてと人が出会うことの意味を問う、生ける伝説の書店員、初の著作! このが入荷した日、東京、八重洲ブックセンター店にはこんな文言のパネルが掲げられた。 この人を見よ。東京駅の前に位置する日有数の有名書店が、発売初日に伝えたかった言葉。日中から人の集まるこの書店で、お客様に伝えたかった言葉。この人を見よ。 そんな言葉が添えられたこのは、さわや書店フェザン店店長田口幹人氏が著したものだ。さわや書店は、岩手県盛岡市に店を持ち、2県10店舗を構える中堅地方チェーンである。さわや書店は書店業界内では知られた書店だが、大手ナショナル

    地場の小売店が地域の一員として商売を続けていくことのヒント『まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』 - HONZ
  • 『第三帝国の愛人』アメリカ大使一家が見た、ナチスの暗い真実 - HONZ

    1933年1月、ヒトラーがヒンデンブルク大統領の任命により首相になってから、翌1934年8月、ヒンデンブルクの死と同時にあらゆる権能を掌握し、絶対的な権力者・総統となるまでの2年弱。ヒトラーとナチスの「権力掌握の総仕上げ」が成され、日常生活に潜んでいた恐怖政治の実体が一気に表面化して世を覆い尽くすこの時代を、ヒトラー政権下で初めてベルリンに赴任したアメリカ大使とその一家が残した日記や手記、膨大な文書や歴史資料をもとに再現したのが書である。 シカゴ大学の教授で著名な歴史学者でもあるウィリアム・D・ドッドは、就任したばかりの大統領・ローズベルトから「政府に奉仕する気があるか聞きたい。ドイツに大使としていってもらいたいのだ」という電話を受ける。「ドイツリベラルアメリカ人の手を示してもらいたい」と。このときすでに4ヶ月も駐独大使の席は空席だった。が、ドッド自身にとっても、周囲の人々にとって

    『第三帝国の愛人』アメリカ大使一家が見た、ナチスの暗い真実 - HONZ
  • 読み終えたが最後、徹夜はできなくなるだろう──『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』 - HONZ

    多くの人間は一日に6〜8時間ほどの睡眠をとる。そうなると、ごくごく単純に計算して人生の4分の1から3分の1を睡眠に費やしていることになる。それなのに睡眠のことはあまり意識されない。あって当たり前、時にはちょっとぐらいすっとばしても構わないものだと思われている。 しかし、かつて安眠が今ほど保証されていない時代のことを考えれば、6〜8時間も睡眠をとるのはとてつもなく危険だったはずだ。その上、睡眠は人間だけではなく、動物界に広く行き渡った機能である。多くの動物がわざわざ多大な危険をおかしてまで行っているのだから、当然そこには「睡眠が生命を維持するに必要不可欠な理由」があるに違いない。そうでなかったらこれほど深刻なバグはなかなかないだろう。その理由とはいったいなんなのだろうか? 書『眠っているとき、脳では凄いことが起きている: 眠りと夢と記憶の秘密』はその書名通り、眠っている時に脳で起こっている

    読み終えたが最後、徹夜はできなくなるだろう──『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』 - HONZ
  • 『コーランには本当は何が書かれていたか?』 - HONZ

    イスラムを深く知るためには、「コーラン」を避けて通ることができない。ジハードで死ぬと、楽園の72人の乙女という報酬があると書かれているのは当か? そして過激派たちによってどのように曲解され、利用されてきたのか? 今あらためて問われる、コーランに書かれている内容の質。(HONZ編集部) 書はカーラ・パワー(Carla Power)著If the Oceans Were Ink――An Unlikely Friendship and a Journey to the Heart of the Quran(『たとえ海がインクであっても――奇妙な友情とコーランの心髄への旅』)(2015年 ヘンリーホルト刊)の邦訳です。 副題にある「奇妙な友情」とは、著者である気鋭のアメリカ人女性ジャーナリスト、カーラ・パワーと、書における彼女の対話の相手、イスラム学者のモハンマド・アクラム・ナドウィー師と

    『コーランには本当は何が書かれていたか?』 - HONZ
  • 『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』 - HONZ

    ベトナム戦争終結から、今年でちょうど40年。その間、この戦争について多くの研究書や回顧録、ルポルタージュが刊行され、映画もたくさん制作されてきた。もちろん、これを主題とする小説も書かれた。わたし自身も何度かベトナム帰還兵の登場する作品を訳し、この戦争について学ぶ機会を得ている。英日翻訳を専門とする出版翻訳家なら、誰もが一度は向き合わざるをえないテーマかもしれない。 最近はベトナム戦争についてよく知らない若い人が増えていると聞くが、安全保障問題への関心が高まるなか、年配の世代でも、祖国の今後を考えるためにもいま一度、この戦争について知識を整理し直したいとお考えのかたもいらっしゃるだろう。きちんと知るには、フランス、そして日による植民地支配からベトナムの歴史をおさらいすべきだろうが、そんなふうに身構えずとも、ふと目を惹かれたを手にとってみることで、思わぬ興味が広がり、理解が深まることもある

    『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』 - HONZ
  • カレーライス成立の謎に迫る食文化ミステリー!『カレーライスと日本人』 - HONZ

    先日、友人カレーべに行った。和風の店構えに「インドカレー」の看板、だけどメニューにはパキスタンカレーと書かれている、たぶん、パキスタンカレーのお店だ。寿司屋を居抜きでそのまま使っているらしい。店内には小上がりもある。でもそんなことはどうでもいい。鮮烈なスパイス、油がたっぷり使ってあるはずなのに、後味は爽やかだ。うまい。35年生きてきたが、ジャパニーズ・カレーライス以外のカレーべたのは初めてであった。 大学では東洋史研究室に所属し、ついていた先生は東南アジア史がご専門、友人はインドネシア・マレー史を学び、当時付き合っていた彼氏は北インド史を学んでいたにもかかわらず、スパイスに縁のない人生を送って来た。そのことを大いに悔やんだ一であった。なぜだろう。皆、研究旅行のお土産は煙草か茶葉かドリアンキャンディー。カレー粉であったなら、と、セットのラッシーを飲みながらずうずうしく考えた。 そ

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  • 『気仙沼ニッティング物語 いいものを編む会社』 - HONZ

    100年続く会社を作ること。100年続く老舗をめざすこと。100年続く事業を育てること。書には100年という言葉が何回も出てくる。学ぶべき先輩企業は創業180年目を迎えようとしているエルメスや、室町時代からつづく和菓子の虎屋だという。この気宇壮大な目標を持つ会社の名前こそ、書のタイトルにもなっている「気仙沼ニッティング」である。 ニッティングの広義は編み物一般だが、狭義はおもに2の長い棒を使う棒針編みのことだ。両手に棒を持ち、人差し指を器用に動かして、マフラーやセーターを作る手芸だ。アマゾンの売り場で「編み物」を検索すると5786点もの書籍や雑誌がヒットする。日ヴォーグが発行する季刊誌「毛糸だま」の発行部数は56,000部だ。多くの人々にとっては家庭内での実益を兼ねた趣味だ。しかし、気仙沼ニッティングはそれを生業にする会社として2013年6月6日に誕生した。 古来6歳6月6日は習

    『気仙沼ニッティング物語 いいものを編む会社』 - HONZ
  • 『私は中国の指導者の通訳だった』日中友好に奔走した対日工作員 最後の証言 - HONZ

    中国に関する書籍は数あれど、書は出版までの経緯からしてユニークだ。テーマは戦後の日中関係についてであり、中国人の著者が中国人の読者を想定して書いたものである。だが守秘義務の関係で何度も検閲が入り、香港を除き未だ中国土では発売されていないという。そんな曰く付きの一冊がこの度日語に翻訳され、中国に先んじる形で出版されることになった。 著者は北京大学で日語を学び、対日工作のために共産党によって育て上げられ、日中双方の首脳の通訳を務めるまでになった、中国における日語研究の第一人者である。 これまでに通訳として関わった要人は、中国側は周恩来、華国鋒、鄧小平、林彪、胡耀邦といった共産党の大物がずらりと並ぶが、日側も、田中角栄、大平正芳、三木武夫、福田赳夫といった歴代首相が顔を揃えている。まさに日中首脳外交の現場を生で目撃し、双方の政治家達の意思疎通を担ってきた生き証人と呼ぶに相応しい。 日

    『私は中国の指導者の通訳だった』日中友好に奔走した対日工作員 最後の証言 - HONZ
  • 戦時の嘘 『戦争プロパガンダ10の法則』 - HONZ

    最近、戦争を身近に感じる出来事が続いている。書は、国家が“国民を戦争にかりたてるために”どんな嘘をついてきたかを、歴史上の事実を列挙してつまびらかにしただ。ベースにあるのは、1928年にロンドンで出版された名著『戦時の嘘』。この比較的薄い文庫は、私たち日人が今まさに見つめ直すべきテーマについて、考えを深める契機をたくさん与えてくれる。ぜひ、ともに過ごして欲しいだ。 想像すればわかるが、戦時の嘘が通用した時代と現代では、生活者を取り巻く環境は大きく違っている。もう同じ手はうまい。そんな思いもわかる。しかし、日ごろの自分を振り返ってみると、メディアの報道やネットの情報に踊らされることがよくあることに気づく。思い起こせば恥ずかしながら、昨今相次いでいる捏造事件について、私は当初最大限の賛辞を贈った。書巻末では、現代の「洗脳」技術について、ベルギーのある漫画の言葉を引用している。 現

    戦時の嘘 『戦争プロパガンダ10の法則』 - HONZ
  • 『日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族』 - HONZ

    1978年、日中平和友好条約が締結された。その際の政治の駆け引きに利用されたひとりの軍人、それが深谷義治さんだ。深谷さんは、終戦時、当時の上官から「任務続行」の命を受ける。以後、13年間中国に潜伏、中国当局に逮捕され、獄中生活は20年4ヶ月にも及んだ。拷問を受け、生死をさまよい、家族が迫害にあっても守り続けたもの、それは一体何なのか。書は、義治さんの次男、深谷敏雄さんが6年の歳月をかけて書き上げた一冊だ。 敗戦国である日が終戦後、「任務続行」という命令をだし、戦勝国である中国にスパイを潜入させたことは、国際法に違反する行為だった。しかし、特殊任務に従事してきた義治さんは、戦中にしろ終戦後にしろ、上官の命令に従いそのまま実行することは、決して辞することの出来ない使命であったのだ。そのため「日のスパイ」という公安からの嫌疑を認めれば解放を約束されたにもかかわらず、義治さんは日国名誉のた

    『日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族』 - HONZ