1978年、日中平和友好条約が締結された。その際の政治の駆け引きに利用されたひとりの軍人、それが深谷義治さんだ。深谷さんは、終戦時、当時の上官から「任務続行」の命を受ける。以後、13年間中国に潜伏、中国当局に逮捕され、獄中生活は20年4ヶ月にも及んだ。拷問を受け、生死をさまよい、家族が迫害にあっても守り続けたもの、それは一体何なのか。本書は、義治さんの次男、深谷敏雄さんが6年の歳月をかけて書き上げた一冊だ。 敗戦国である日本が終戦後、「任務続行」という命令をだし、戦勝国である中国にスパイを潜入させたことは、国際法に違反する行為だった。しかし、特殊任務に従事してきた義治さんは、戦中にしろ終戦後にしろ、上官の命令に従いそのまま実行することは、決して辞することの出来ない使命であったのだ。そのため「日本のスパイ」という公安からの嫌疑を認めれば解放を約束されたにもかかわらず、義治さんは日本国名誉のた