<岩波「科学」 2006 年5月号 フォーラム 現代の被曝 原稿> 1 チェルノブイリ原発事故の「死者の数」と想像力 今中哲二 (京都大学原子炉実験所、原子力工学) チェルノブイリ原発事故が起きてから、この 4 月 26 日で 20 年になった。昨年 9 月、IAEA や WHO など国連関係8団体とウクライナ、ベ ラルーシ、 ロシア政府の専門家で構成される 「チ ェルノブイリ ・ フォーラム」 がウィーンの IAEA 本部で国際会議を開き、 「チェルノブイリ事故に よる放射線被曝にともなう死者の数は、今後発 生するであろうガン死も含めて全部で4000人」 という報告を行った(1)。これを受けて日本の新 聞は、 「数万~数 10 万人と言われていた従来の 死者の数に比べ大幅に減った」と報道した。こ のフォーラム報告は、 「チェルノブイリは原子力 開発史上最悪の事故ではあったが、その被害は