◆講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見11 事件の深層』講談社文芸文庫、2003年6月 第11巻は、「事件の深層」ということで犯罪にまつわる小説が集められた。この巻は、読み応えのある小説が多い。 武田泰淳「空間の犯罪」…○、上から下を見下ろす視線。 松本清張「火の記憶」…○、清張らしい物語。 三島由紀夫「復讐」…○、家族がほっと胸をなでおろしたときに、その雰囲気に水を差すような最後の一言がよい。 椎名麟三「寒暖計」…○、これは現代風に言うならば、ロリコン小説の一つ。 倉橋由美子「夏の終り」…○、恋人を共同所有する姉妹。 大岡昇平「焚火」…○、松本清張の作品も「火」の記憶が重要なモチーフになっていたけれど、この作品も「火」が主人公の運命を決定づけている。「火」の反復。 野坂昭如「童女入水」…◎、この巻でもっとも優れている作品ではないだろうか。独特の語りが、小説を「物語」へと昇華させる。 中上
![講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見11』 - Sound and Fury.::メルの本棚。](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/cbe5d2f81c2a1d948ccec91dec811aa63839dfe7/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F415K5JNH5JL._SL160_.jpg)