■土蔵群の道 父母の面影 鳥取県出身の漫画家谷口ジローさんの「遥かな町へ」(1998年)は同県倉吉市が舞台。日本中が東京五輪にわいた60年代半ばを描いた作品だが、作中の風景は今なお健在だ。主人公と一緒にタイムスリップ気分に浸ろうと漫画を片手に街を巡った。(西村圭史) 玉川沿いに白い漆喰壁や赤い瓦が並ぶ。江戸、明治時代の酒蔵の外観をそのままに物産店などに改装した「白壁土蔵群・赤瓦」だ。国の重要伝統的建造物群にも選ばれている。 その一角の倉吉観光案内所に立ち寄り、漫画と観光パンフレットが入った「探訪アイテムセット」(1900円)を買った。作中の風景を探しながら散策するための必需品だ。 「遥かな町へ」は、東京で働く48歳の主人公が生まれ育った倉吉に中学生としてタイムスリップし、失踪した父や若くして死んだ母と向き合う物語。1999年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞、2003年にはフ