両親から相続した小さな二階建てをリフォームしてひとりで住んでいる。空き部屋があるので、ときどきそこに人を住まわせる。たいていは自分の住居を見つけて出て行くから、わたしはまたひとりになる。しばらくひとりでいて、また別の人を住まわせる。わたしのそのような癖を知る友人は「人を拾うなんてよくないことだよ」と言う。 わたしは楽器メーカーが運営する教室にピアノ教師として雇われている。それからときどき演奏の仕事をする。ディナーショーの伴奏とか、そういうやつだ。忙しくはない。嫌いな仕事ではない。しかし心躍ることもさほどない。 だからたぶんわたしは暇なのだ。暇でさみしいからときどき人を拾うのである。礼子はわたしのそういうところを見抜いていたように思う。礼子をわたしに紹介したのは音大時代の同級生である。「才能があって生活力がないから空き部屋に置いてやって」ということだった。ピアノを弾かせてみると、おそろしく明