今夏はご多分に漏れず、山形も猛暑に泣かされた。「フルーツ王国」を標榜(ひょうぼう)する県だけに、影響は大きかった。果物は色落ちし、米は出穂(しゅっすい)時期が平年より早まって早刈りを余儀なくされている。 山形といえば、サクランボだ。サクランボの中でも、「女王」とされる「佐藤錦」は同県東根市で生まれた。桐(きり)箱にきれいに並べられた真っ赤な粒は、時に1個数千円で取引され、「赤い宝石」ともいわれる。 同市のホームページによると、佐藤錦の生みの親は、故佐藤栄助氏。政府は明治の初め、全国20県にサクランボの苗木を配布し、栽培を試みていたが、収穫時期がサクランボの嫌う梅雨と重なるため、山形で細々と栽培されているだけだった。山形は梅雨の降雨は少ないが、それでも、赤く熟す前の「黄色いサクランボ」で納得するしかなかった。 佐藤氏はそんな苗木を買い取り、10年以上も交配を繰り返し、ようやく「食味が良くて、