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2009年11月8日のブックマーク (334件)

  • 超映画批評『ティンカー・ベル』100点(100点満点中)

    『ティンカー・ベル』100点(100点満点中) Tinker Bell 2008年12月23日(火・祝)より、ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/79分/配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ 監督:ブラッドリー・レイモンド、キャラクター創造:J・M・バリー 、脚:ジェフリー・M・ハワード 声の出演:メイ・ホイットマン、ルーシー・リュー、アンジェリカ・ヒューストン、アメリカ・フェレーラ もっとも有名な妖精、ティンカーベルが4部作に 08年冬のディズニーはアニメーション二立てだが、先行する『WALL・E/ウォーリー』こそが大命なのは誰の目にも明らか。こちら『ティンカー・ベル』は、アメリカでも小規模にひっそりと公開されたきり。彼らは四部作の壮大なプロジェクトにすると意気込んでいるが、この調子では2以降はビデオのみ、なんてことにもなりかねない。 ネバーランドにある妖精の谷に、元気

  • 超映画批評『REC/レック2』85点(100点満点中)

    『REC/レック2』85点(100点満点中) 2009年10月24日(土)、シネマサンシャイン池袋、新宿シネマスクエアとうきゅう他全国"第2次感染"ロードショー 2009年/スペイン映画/原題:REC2/カラー/85分/ドルビーデジタル/R-15/配給:ブロードメディア・スタジオ 監督・脚:ジャウマ・バラゲロ/パコ・プラサ 撮影: パブロ・ロッソ 出演:ジョナサン・メイヨール オスカル・サンチェス・サフラ マニュエラ・ヴェラスコ 前作よりはるかに面白く、そして怖い 自分がみたままを映像にする、いわゆる主観撮影という技法が流行している。中でも『REC/レック』はスペインで記録的大ヒット、成功例といえるだろう。早々にハリウッドに買われたリメイク権は、誰も気づかぬままいつのまにかビデオスルー作品となっていたが、オリジナルの続編である『REC/レック2』は、無事日でも劇場公開が決定した。

  • 超映画批評『TO(トゥー)』85点(100点満点中)

    『TO(トゥー)』85点(100点満点中) 2009年10月16日(金)、TOHOシネマズ木ヒルズにてプレミア上映 2009年/日/カラー/120分/販売元: エイベックス・マーケティング 原作:星野之宣「2001夜物語」(双葉社刊)監督:曽利文彦 音楽:高橋哲也 声の出演:大塚明夫 朴路美 福山潤 平野綾 これぞSFの醍醐味、技術の特性もマッチした傑作 『TO(トゥー)』は、すでにレンタル中のオリジナルビデオアニメだが、2009年10月16日に六木ヒ ルズの大スクリーンで一夜限りの上映が決まったので、急遽欄で紹介することにした。 地球軌道上に浮かぶ宇宙ステーション、通称「ミッドナイトバズーカ」は、今日も月面基地に向け、物 資の射出作業が行われていた。そんなとき、リーダーのダン(声:大塚明夫)に知らせが入る。15年ぶ りに輸送船フライングダッチマンが帰還し、地上に降りる前に一時寄

  • 超映画批評『バタフライ・エフェクト3/最後の選択』85点(100点満点中)

    『バタフライ・エフェクト3/最後の選択』85点(100点満点中) THE BUTTERFLY EFFECT 3:REVELATION 2009年10月17日(土)より銀座シネパトスにてロードショー 2009年/アメリカ/カラー/90分/配給:リベロ AMGエンタテイメント 監督:セス・グロスマン 制作:J・C・スピング 脚:ホリー・プリクス 出演:クリス・カーマック レイチェル・マイナー ミア・セラフィノ サラ・ハーベル シリーズ一作目に迫る名脚 愛する女を救うため、何度でも過去に戻る男の物語「バタフライ・エフェクト」(04年)は、当サイトでも最高ランクの評価(98点)としたが、実際に見た人たちの満足度もきわめて高い傑作であった。あの映画の何がよかったかといえば、それは誰に聞いても脚と回答がくる。その脚家エリック・ブレスは、偶然にも今週公開の「ファイナル・デッドサーキット 3D」の

  • 超映画批評『ATOM』90点(100点満点中)

    『ATOM』90点(100点満点中) Astro Boy 2009年10月10日(土)より新宿ピカデリー他全国ロードショー!! 2009年/アメリカ/カラー/95分/提供:角川エンタテインメント 配給:角川映画 , 角川エンタテインメント 原作:手塚治虫「鉄腕アトム」 監督:デビッド・バワーズ 脚:ティモシー・ハリス 声の出演:フレディ・ハイモア クリスティン・ベル ネイサン・レイン ぜひ小さい息子さんとご一緒に 手塚治虫の代表作で、日アニメの元祖的存在「鉄腕アトム」は、意外だがこれが初の劇場版となる。製作したのは香港発のアニメ制作会社「イマジスタジオ」。そこにハリウッドスターが声を当て、米国では300スクリーン越えの大規模公開、その他50カ国以上で上映が予定されている。日原産のコンテンツとしては、大命といってよい話題作である。 未来都市メトロシティの科学省長官で天才的科学者のテン

  • 超映画批評『私の中のあなた』85点(100点満点中)

    『私の中のあなた』85点(100点満点中) My Sisters keeper 2009年10月9日(金)より TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー! 2009年/アメリカ/カラー/110分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ Powered by ヒューマックスシネマ 監督:ニック・カサヴェテス 出演:キャメロン・ディアス アビゲイル・ブレスリン 見終わったあとに議論がまきおこる どんなに若くても、女は女。たとえ11歳の子供に見えても、その中には大人をさえうならせるオンナの一片が必ず入っている。 11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)はテレビCMで有名な弁護士を雇った。母親(キャメロン・ディアス)らを訴えるためだ。じつはアナは、白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)のために生まれたデザイナーズベイビー。姉の命を守るため、これまで臓器や血液を提供する事を期待されてきたが、いまそ

  • 超映画批評『あの日、欲望の大地で』80点(100点満点中)

    『あの日、欲望の大地で』80点(100点満点中) The Burning Plain 2009年9月26 日(土)よりBunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマ他にて全国順次ロードショー 2008/アメリカ/英語スペイン語/カラー/シネスコ/SRD・ DTS・SDDS/106分/配給:東北新社 監督・脚:ギジェルモ・アリアガ 音楽:ハンス・ジマー、オマー・ロドリゲス・ロペス プロダクション・デザイン:ダン・リー 出演:シャーリーズ・セロン キム・ベイシンガー ジェニファー・ローレンス ジョン・コーベット 邦題はエロドラマみたいだし、公式資料はネタバレときた 白身魚フライなど、他のおかずが充実していながら「のり弁当」などと控えめに自称する、ほか弁人気メニュー並に良心的な当サイトではそんなことはないが、他メディアによる『あの日、欲望の大地で』の映画紹介には、重度のネタバレが含まれる可

  • 超映画批評『ドゥームズデイ』70点(100点満点中)

    『ドゥームズデイ』70点(100点満点中) Doomsday 2009年9月19日、新宿ミラノほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/105分/提供・配給:プレシディオ、協力:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント 監督・脚:ニール・マーシャル 出演:ローナ・ミトラ ボブ・ホスキンス マルコム・マクダウェル ノーテンキ世紀末アクション 『ドゥームズデイ』は、モヒカン刈りに肩パットをつけてヒャッハー! の世界をあますところなく映像化した痛快アクション劇である。 ぷんぷんとB級カルトのにおいがするが、製作費は堂々の30億円クラス。ニール・マーシャルという監督は「ディセント」(05年)だの「ドッグ・ソルジャー」(02年)といった、微妙なB級C級娯楽映画が得意な人で、来1000万円も与えればそれで十分な映画を作る人物。 そんな男に30億円も与えてしまったからさあ大変。バイクの

  • 超映画批評『サブウェイ123 激突』75点(100点満点中)

    『サブウェイ123 激突』75点(100点満点中) The Taking of Pelham 123 2009年9月4日、TOHOシネマズほか日劇にてロードショー 2009年/アメリカ映画/スコープサイズ/105分/配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 監督:トニー・スコット 原作:ジョン・ゴーディ 脚:ブライアン・ヘルゲランド 出演:デンゼル・ワシントン ジョン・トラボルタ ジョン・タトゥーロ ルイス・ガズマン 今見るなら、オリジナルより面白いかも スタイリッシュな映像とアクション演出で知られるトニー・スコット監督の最新作は、確かに彼らしいおしゃれな見た目の映画だが、どこか「古きよきアメリカ映画」的な懐かしい香りも感じさせる。 もっとも作は、74年の地下鉄サスペンス「サブウェイ・パニック」のリメイクだからその印象も当然かもしれないが、何はともあれ、安心して楽しめるアメリカンエ

  • 超映画批評『96時間』85点(100点満点中)

    『96時間』85点(100点満点中) Taken 2009年8月22日、TOHOシネマズ 有楽座他 全国ロードショー 2008年/フランス/カラー/93分/配給:20世紀フォックス映画 監督:ピエール・モレル 製作・脚:リュック・ベッソ 脚:ロバート・マーク・ケイメン 出演:リーアム・ニーソン ファムケ・ヤンセン マギー・グレイス 史上最強のお父さんが登場 アイデアが枯渇気味で、四六時中知恵を絞ってうんうん唸っているハリウッドのプロデューサーらは、『96時間』を見て目からうろこが落ちたのではないだろうか。 特筆すべきは驚くべきシンプルさ。なんのひねりもない、まっすぐ一直線なストーリー。それなのに、異様に面白い。忘れていた娯楽映画の原点を思い知らされる作は、米国民にも大受けし、見事その週の興行ランキング一位を記録した。 かつて秘密工作員として腕を鳴らしたブライアン(リーアム・ニーソン)

  • 超映画批評『ココ・シャネル』75点(100点満点中)

    『ココ・シャネル』75点(100点満点中) Coco Chanel 2009年8月8日よりBunkamuraル・シネマ、TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館他にて全国ロードショー 2008/アメリカ・イタリア・フランス/138分/カラー/配給:ピックス 監督:クリスチャン・デュゲイ 脚:エンリコ・メディオーリ コスチューム・デザイナー:ピエール=イヴ・ゲロー 出演:シャーリー・マクレーン バルボラ・ボブローヴァ マルコム・マクダウェル ファッション業界一のカリスマの波乱万丈な人生 創業100周年ということで、3のシャネル映画が封切られる予定だが、その先鋒をつとめる作も期待通りの見事なできばえであった。 作は劇映画の形式を取った伝記ドラマで、物語は1954年、久々にファッション界に復帰したココ(シャーリー・マクレーン)の新作ショーが不振に終わり、彼女が過去の栄光を回想するところから

  • 超映画批評『ボルト』85点(100点満点中)

    『ボルト』85点(100点満点中) Bolt 2009年8月1日(土)より、全国ロードショー ※一部劇場にてディズニーデジタル3-D上映 2009年/アメリカ/カラー/103分/配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン 監督:バイロン・ハワード、クリス・ウィリアムズ 脚:ダン・フォーゲルマン、クリス・ウィリアムズ 音楽:ジョン・パウエル 声の出演:ジョン・トラヴォルタ スージー・エスマン マーク・ウォルトン マイリー・サイラス (日語版)佐々木蔵之介 江角マキコ 天野ひろゆき 自分の住む町が撮影所だと知らなかった犬の物語 この次の週には『忠犬ハチ公』の米国リメイクも公開され、さながら日米イヌ対決の様相を呈しているが(いや正確にはどちらもアメリカの犬か)、先攻の『ボルト』は役者犬。しかも、自分が役者だと気づいていない、ある意味幸せな犬が主人公。 白い体に稲

  • 超映画批評『アマルフィ 女神の報酬』90点(100点満点中)

    『アマルフィ 女神の報酬』90点(100点満点中) 2009年7月18日(土)全国東宝系ロードショー 2009年/日/カラー/125分/配給:東宝 原作:真保裕一 監督:西谷弘 主題歌:「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」サラ・ブライトマン 製作:亀山千広 企画・プロデュース:大多亮 出演:織田裕二 天海祐希 戸田恵梨香 佐藤浩市 2009年夏のイチオシ 今年2009年の夏シーズン、忙しい中、たった1だけ映画を見られるとするなら、私は迷わず『アマルフィ 女神の報酬』を選ぶ。夏休みらしいスケールの大きな大作であること、邦画の枠内でなく、世界標準からみても優れたサスペンス映画であることが理由だ。 と同時に、このような意欲作がコケることになったら、もはやマジメに日でエンタテイメントをやろうという人はいなくなってしまうのでは、と危惧する。人気テレビドラマをチョチョイと2時間に引き伸ばし、洗脳のご

  • 超映画批評『サンシャイン・クリーニング』85点(100点満点中)

    『サンシャイン・クリーニング』85点(100点満点中) Sunshine Cleaning 2009年7月11日、渋谷シネクイント、TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/92分/配給:ファントム・フィルム 監督:クリスティン・ジェフズ 脚:メーガン・ホリー 出演:エイミー・アダムス エミリーブラント アラン・アーキン スティーブン・ザーン メアリー・リン・ライスカブ オレはもうだめだ、と思ったらこれを見よう 今のように景気の悪いときは、映画は比較的安価な娯楽として重宝される。そしてこういう時代において、『サンシャイン・クリーニング』のようなルーザームービー、いわゆる弱者応援歌のような作品は、多くの人々を励ます貴重な存在となるだろう。 かつてチアリーダーとして学園のアイドルだったローズ(エイミー・アダムス)も、いまや30代のシングルマザー。仕事はしょぼく

  • 超映画批評『ウィッチマウンテン/地図から消された山』70点(100点満点中)

    『ウィッチマウンテン/地図から消された山』70点(100点満点中) Race to Witch Mountain 2009年7月4日(土)より 全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/98分/配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン 監督:アンディ・フィックマン 原作:アレグサンダー・ケイ 脚:マット・ロペス、マーク・ボンバック 出演:ドウェイン・ジョンソン アンナソフィア・ロブ アレクサンダー・ルドウィグ カーラ・グギーノ アナソフィア・ロブの可愛さは地球最高レベル ゲームの『アステロイド』が映画化決定したり、ドリームワークスのアニメ『モンスターVSエイリアン』がお化けヒットしたりと、最近はUFOネタが流行中。この『ウィッチマウンテン/地図から消された山』もそのひとつで、ロズウェル事件で有名な「エリア51」に並ぶ怪しいスポット、という触れ込みの「

  • 超映画批評『ディア・ドクター』85点(100点満点中)

    『ディア・ドクター』85点(100点満点中) Dear Doctor 2009年6月27日(土)より シネカノン有楽町1丁目他で公開 2008年/日/2時間7分/ヴィスタサイズ/ドルビーSR 配給:エンジンフイルム+ アスミック・エース 原作・脚・監督:西川美和 原案小説:西川美和「きのうの神さま」(ポプラ社刊)より 出演:笑福亭鶴瓶 瑛太 余貴美子 井川遥 八千草薫 西川美和監督のおそるべき手腕 かつてダコタ・ファニングがスーパー子役として鳴らしていたころ、私は彼女の中には40代のベテラン女優が入ってるに違いないと思っていた。あの演技力とインタビューの受け答えの妙は、そう考えないと説明がつかない。 同じように、『ディア・ドクター』を作った西川美和監督(30代、女性)の中には、50代くらいのオッサンが入っているのではないかと、最近私は気で考えるようになってきた。 かつて無医村だった村

  • 超映画批評『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』85点(100点満点中)

    『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』85点(100点満点中) Evangelion: 2.0 You Can (Not) Advance 2009年6月27日、シネマスクエアとうきゅう他にて全国公開!! 2009年/日/カラー/108分/共同配給:クロックワークス、カラー 宣伝:カラー 総監督・原作・脚:庵野秀明 主・キャラクターデザイン:貞義行 主・メカニックデザイン:山下いくと 音楽:鷺巣詩郎 監督:摩砂雪、鶴巻和哉 声の出演:緒方恵美 林原めぐみ 宮村優子 坂真綾 三石琴乃 ファンのトラウマを晴らす感動のラスト この記事を待っている方も多いようなので結論から先に言うと、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』はファン必見の出来栄え、文句なしの傑作と言える。 ユーロとロシアが管理する北極域に、新たな使徒が現れた。迎撃に当たった新型エヴァンゲリオンを駆る真希波(まきなみ)・マリ・イラストリア

  • 超映画批評『呪怨 白い老女』『呪怨 黒い少女』80点(100点満点中)

    『呪怨 白い老女』『呪怨 黒い少女』80点(100点満点中) 2009年/日/カラー/60分/ 配給:東映ビデオ(両作品とも) 『呪怨 白い老女』原案・監修:清水崇 監督:三宅隆太 出演:南明奈 鈴木裕樹 みひろ 『呪怨 黒い少女』監督・脚:安里麻里 原案・監修:清水崇 プロデューサー:一瀬隆重 出演:加護亜依 瀬戸康史 意外な掘り出し物ホラー この2作品は、それぞれ独立したものと見ることもできるが、それぞれが60分間と短く、同時上映されるという事情から、ひとつの記事にまとめて紹介したい。 タイトルでわかるように、清水崇監督の代表作的ホラーシリーズの一篇。「恨みつづけて、10周年」という、気の長い幽霊のセリフのごときコピーにあるとおり、シリーズ誕生10年の節目を飾るイベント作品である。 清水崇監督は今回監修に回り、持ってきた脚が優れていた二人の才能にそれぞれの監督を任せた。まず『呪怨

  • 超映画批評『レスラー』75点(100点満点中)

    『レスラー』75点(100点満点中) THE WRESTLER 2009年6月13日(土) シネマライズ、TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほかにて全国ロードショー 2008/アメリカ、フランス/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/R-15 配給:日活 監督:ダーレン・アロノフスキー 主題歌:ブルース・スプリングスティーン 出演:ミッキー・ローク エヴァン・レイチェル・ウッド マリサ・トメイ プロレス版ロッキー 世界中で54もの映画賞をかき集めたこの話題作は、しかし当初はわずか4館スタート(米国)の小品であった。なぜそんなことになったかといえば、監督のダーレン・アロノフスキーがわがままを言ったからである。 どんなワガママだったかというと、「絶対に主演はミッキー・ロークでいく」という一点。スタジオ側は、とっくに過去の人となったそんな役者より、客を呼べるであろうニコラス・ケイ

  • 超映画批評『宮本武蔵 -双剣に馳せる夢-』90点(100点満点中)

    『宮武蔵 -双剣に馳せる夢-』90点(100点満点中) 2009年6月13日、テアトル新宿、テアトル梅田にてロードショー 2009年/日/カラー/72分/配給:ポニーキャニオン 原案・脚:押井守 原作:Production I.G 監督:西久保瑞穂 キャラクターデザイン:中澤一登 作画監督:黄瀬和哉 アニメによるドキュメンタリー・エンタテイメント アニメーションでドキュメンタリーをつくり劇場公開するなんて、ずいぶんと思い切った企画だ。そうした珍しいアイデアで出資者を説得するには、相当なクォリティの高さが必要になるはず。少なくとも、巷にはびこる原作人気頼りの安直映画とは、まったく違ったものになるだろう。そう読んだ私は真っ先に試写に出向いたが、案の定、まぎれもない力作、傑作であった。 監督は西久保瑞穂。押井守作品の高品質を支える名演出家としても知られる彼だが、今回はその押井守を「うんちく

  • 超映画批評『ハゲタカ』70点(100点満点中)

    『ハゲタカ』70点(100点満点中) 2009年6月6日(土)全国東宝系ロードショー 2009年/シネスコ/ドルビーデジタル/134分 配給:東宝 監督:大友啓史 脚:林宏司 原作:真山仁 出演:大森南朋 玉山鉄二 栗山千明 柴田恭兵 NHK発、愛国経済ドラマ 最近NHKは、看板番組NHKスペシャル「JAPANデビュー」において、内容が反日偏向しているとの批判にさらされている。視聴者からの苦情が、なんと数千件も寄せられているそうだ。インタビューされた台湾人が、「話の主旨を正反対に捻じ曲げられる編集をされた」と怒っているのだから、制作者としても逃げ場がない。放送局設立以来のピンチである。 ところが、彼らがかつて放映したテレビドラマの映画化『ハゲタカ』は、むしろ中国政府の方から苦情がきそうな反共的内容。映画がどんな思想の元に作られていてもかまわないと私は思っているが、今回ばかりは時期が時期だ

  • 超映画批評『スター・トレック』85点(100点満点中)

    『スター・トレック』85点(100点満点中) Star Trek 2009年5月29日(土) 丸の内ルーブルほか全国<拡大>ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/126分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン 監督・製作:J.J.エイブラムス 脚:アレックス・カーツマン、ロベルト・オーチー 出演:クリス・パイン ザッカリー・クイント ゾーイ・サルダナ サイモン・ペッグ エリック・バナ ウィノナ・ライダー 数ある映画版の中でも屈指の傑作 オバマ大統領の登場を機に、ハリウッド映画はネクラからネアカへと変化している。米国民のニーズがそうなっている、あるいは業界がそうした流行を作ろうとしているため、明るい企画が通りやすくなっているわけだが、中でも『スター・トレック』最新作はその典型例というべきエンタテイメント作品だ。 英雄的な艦長を父に持つ若者カーク(クリス・パイン)は、進むべき道が

  • 超映画批評『お買いもの中毒な私!』85点(100点満点中)

    『お買いもの中毒な私!』85点(100点満点中) CONFESSIONS OF A SHOPAHOLIC 2009年5月30日(土)よりロードショー 2009年/アメリカ/カラー/104分/シネスコサイズ/ドルビーSRD/日語字幕:佐藤恵子 配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン 監督:P.J.ホーガン 製作:ジェリー・ブラッカイマー 衣装デザイナー:パトリシア・フィールド 出演:アイラ・フィッシャー ヒュー・ダンシー クリステン・リッター 意外な社会派ロマコメ 世界最強のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマー(「アルマゲドン」「パール・ハーバー」等々)が製作するこのロマコメは、一見スィートな女の子向けでありながら、よく見るといかにも男が作ったような骨太さを感じさせるユニークな一品となった。 レベッカ・ブルームウッド(アイラ・フィッシャー)は、生来のお

  • 超映画批評『重力ピエロ』75点(100点満点中)

    『重力ピエロ』75点(100点満点中) 2009年5月23日(土)より、シネカノン有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー 2009年/日/カラー/119分/配給:アスミック・エース 監督:森淳一 原作:伊坂幸太郎 企画・脚:相沢友子 主題歌:S.R.S「Sometimes」(TOY'S FACTORY)出演:加瀬亮 岡田将生 小日向文世 吉高由里子 泣けないが、感動的な物語 映画界では伊坂幸太郎が大ブームで、こぞって実写化されている。それにしてもこの4ヶ月だけで3もの長編が公開されるというのは、尋常ならざるペースである。この『重力ピエロ』の原作も、直木賞候補となった人気作だが、今回は読まずに鑑賞した。読書仲間の音楽家(乙一嫌いのアラフォー 独身)がこの作家を絶賛するものだから、個人的にはどうも指が動かない(私は乙一を高く評価しているので)。 遺伝子研究をしている大

  • 超映画批評『バンコック・デンジャラス』85点(100点満点中)

    『バンコック・デンジャラス』85点(100点満点中) Bangkok Dangerous 2009年5月9日 渋谷東急 109シネマズ×ユナイテッド・シネマほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/100分/配給:プレシディオ 監督:ダニー・パン&オキサイド・パン 出演:ニコラス・ケイジ、チャーリー・ヤン、シャクリット・ヤムナーム 大人の男のための、格ハードボイルド いつも一人だからさびしいけど、世界中に出かけられて、報酬はいい。ニコラス・ケイジ演じる男がそんな風に自分の仕事を紹介する場面からはじまる作。そんな仕事があったら応募が殺到しそうだが、その業務内容はひとごろし。『バンコック・デンジャラス』は、引退を願う殺し屋の苦悩と恋心を描く、大人の男のためのハードボイルドである。 成功率100%を誇る凄腕の暗殺者ジョー(ニコラス・ケイジ)は、タイ・バンコクで請け負った4件の殺しを

  • 超映画批評『天使と悪魔』75点(100点満点中)

    『天使と悪魔』75点(100点満点中) Angels & Demons 2009年5月15日(金)全世界同時公開 2009年/アメリカ/カラー/140分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 原作:ダン・ブラウン『天使と悪魔』(角川書店刊) 監督:ロン・ハワード 音楽:ハンス・ジマー 出演:トム・ハンクス、ユアン・マクレガー、アイェレット・ゾラー、ステラン・スカルスガルド 宗教知識ゼロでも楽しめる 前作『ダ・ヴィンチ・コード』(06年、米)が世界中で一番ウケたのは、何を隠そうこの日。シリーズの売り物である陰謀論にしても、ローマやヴァチカンの謎めいた秘儀にしても、あるいはその背景となる美しい観光名所の数々も、日人が大好きなものばかり、ということか。 この続編『天使と悪魔』にもそうした要素はふんだんにつめこまれている。おまけに初心者大歓迎のわかりやすさも兼ね備えているから、かなり

  • 超映画批評『セブンティーン・アゲイン』85点(100点満点中)

    『セブンティーン・アゲイン』85点(100点満点中) 17 again 2009年5月16日(土)より、新宿ピカデリー他全国にてロードショー 2009年/アメリカ/カラー/102分/配給:ワーナー・ブラザース映画 監督:バー・スティアーズ 脚:ジェイソン・フィラルディ 出演:ザック・エフロン、レスリー・マン、トーマス・レノン、ミシェル・トラクテンバーグ、スターリング・ナイト じつは最高のファミリー向けムービー 「若いころに戻ってやりなおしたい」とは、12歳から90歳まで、それこそオールエイジの共感を得られるテーマである。たとえ相手が小学生だって、「過去に戻れるなら、いつに戻ってみたい?」と聞けば、大いに盛り上がることは間違いない。それが人間というものだ。 さえない中年マイク(マシュー・ペリー)は、自社製品であるED治療薬のプロジェクト会議で、またもろくでもない目にあい、落ち込んでいた。女

  • 超映画批評『グラン・トリノ』90点(100点満点中)

    『グラン・トリノ』90点(100点満点中) GRAN TORINO 2009年4月25日(土) 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/上映時間117分/6巻/3,198m/シネマスコープサイズ/SRD/DTS/SDDS/字幕:戸田奈津子 配給:ワーナー・ブラザース映画 監督:クリント・イーストウッド 脚:ニック・シェンク 原案:デイブ・ジョハンソン 出演:クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー イーストウッドの暖かい励ましが心にしみる いろいろなテーマやみどころが混ざり、深読みしがいもある『グラン・トリノ』だが、この超映画批評では、これを(例によって?)一風変わった視点からオススメしたい。 自動車メーカー、フォードの元工場員で朝鮮戦争の帰還兵ウォルト(クリント・イーストウッド)。頑固者で通る彼は、年寄り扱いする息子連中や、移民が増えて治安が悪化

  • 超映画批評『おっぱいバレー』90点(100点満点中)

    『おっぱいバレー』90点(100点満点中) 2009年4月18日(土)より、全国ロードショー 2009年/日/カラー/112分/配給:ワーナー・ブラザース映画、東映 原作:水野宗徳 監督:羽住英一郎 脚:岡田惠和 製作:日テレビ、エイベックス・エンタテインメントほか 出演:綾瀬はるか、青木崇高、仲村トオル 綾瀬はるか先生の就任挨拶が、個人的なオススメシーン 『おっぱいバレー』は、じつのところ中高年男性向きのオススメ品である。だが、いい年をしたオジサンが、娘のような年頃の受付嬢に「『おっぱいバレー』、大人一枚!」と、キョドった笑顔で言った日には、末代までの大恥だ。だから私は、いっそ題名を『哀愁の旅路』とかに変えたらいいと、4年ほど前から言ってきた。 というのはもちろん嘘だが、いろいろな媒体で似たようなことを言っていたところ、先日映画会社が「恥ずかしい人は、略語の『OPV』(おっぱいばれ

  • 超映画批評『スラムドッグ$ミリオネア』90点(100点満点中)

    『スラムドッグ$ミリオネア』90点(100点満点中) Slumdog Millionaire 2009年4月18日(土)より、TOHOシネマズシャンテほか全国順次ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/120分/字幕翻訳:松浦美奈 配給:ギャガ・コミュニケーションズ 監督:ダニー・ボイル 脚:サイモン・ビューフォイ 作曲:A・R・ラフマーン 出演:デーヴ・パテル、アニル・カプール、マドゥル・ミッタル アカデミー作品賞は、まさにいまの時代にピッタリな一だった 今年のアカデミー賞は、未曾有の大不況&新大統領(しかも黒人)誕生という大ニュースがあったおかげで、例年に増して予想しやすい年であった。とくに作品賞ほか計8部門受賞した『スラムドッグ$ミリオネア』については、私も100%の自信で選ばれるだろうと考えていた。 もっとも私の場合は、作品の出来不出来でこれが命と読んだわけではなく、この

  • 超映画批評『ある公爵夫人の生涯』75点(100点満点中)

    『ある公爵夫人の生涯』75点(100点満点中) THE DUCHESS 009年4月11日(土) 渋谷Bunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマ、新宿テアトルタイムズスクエア他全国ロードショー 2008年/アメリカ、イタリア、フランス/カラー/110分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン 監督・脚:ソウル・ディブ 出演:キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ、シャーロット・ランブリング 衣装と美しい建築に価値を見出せる人に 人間社会に生きるものに、完全な自由などない。誰もが大なり小なり宿命を背負っている。だからこそ、人一倍重いそれを背負う人々を尊敬する気持ちが生まれる。 たとえ無意識であろうと、それは自然な感情である。日人が皇室を敬うのも、貴族がヨーロッパ社会である種の尊敬を受けているのも、その思いが根底にある。彼らが生まれ持った宿命は、深く、重い。 この映画は、その事を

  • 超映画批評『トワイライト~初恋~』75点(100点満点中)

    『トワイライト~初恋~』75点(100点満点中) TWILIGHT 2009年4月4日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/122分/配給:アスミック・エース、角川エンタテインメント 監督:キャサリン・ハードウィック 脚:メリッサ・ローゼンバーグ 出演:クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、ビリー・バーク、アシュレイ・グリーン ティーン向け恋愛映画がこれほどの高品質とは 米大手ワーナーブラザーズは、翌夏強化のため08年冬公開予定だった『ハリー・ポッターと謎のプリンス』を温存、金庫の奥深くにしまいこんだ。 その代わりに前倒しで公開されたのが、同じ英国のベストセラー小説『トワイライト』の映画化である作。原作同様、10代の女の子の胸をときめかせるイケメン揃いの実写化だが、これが予想を上回る特大ヒット。捨て試合で思わぬ勝利を得たWBC2次ラウ

  • 超映画批評『ザ・バンク 堕ちた巨像』85点(100点満点中)

    『ザ・バンク 堕ちた巨像』85点(100点満点中) THE INTERNATIONAL 2009年4月4日(土)より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー 2009年/アメリカ映画/スコープサイズ/全7巻/3,231m/SDDS・ドルビーデジタル・ドルビーSR/上映時間:1時間57分/字幕翻訳:松浦美奈/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 監督・音楽・トム・ティクヴァ 脚:エリック・ウォーレン・シンガー 出演:クライヴ・オーウェン、ナオミ・ワッツ、アーミン・ミューラー=スタール 格映像で楽しむ銃撃戦 自称「100年に一度」の金融危機とやらで、世界中のお金持ちがヒーヒーいってる今日この頃。そこで、このたび「金融の裏側」を描いた、タイムリーな映画が公開されることになった。 ……とはいえ、じつのところ作は「100年の一度の金融危機」とはほとんど関係がなく、タイムリーでもなんでも

  • 超映画批評『ウォッチメン』98点(100点満点中)

    『ウォッチメン』98点(100点満点中) WATCHMEN 2009年3月28日(土)より、丸の内ルーブルほか全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/163分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン 監督:ザック・スナイダー 原作:デイヴ・ギボンズ 出演:ジャッキー・アール・ヘイリー、パトリック・ウィルソン、ビリー・クラダップ、マリン・アッカーマン やや難解だが、おそるべき大傑作 『ウォッチメン』と『ダークナイト』は、まるでライバルのような関係だ。原作のグラフィックノベルは同時代に発行され、実写映画もまたしかり。そしてその出来栄えも両者まったく譲らず、である。 いわゆるアメコミ(アメリカンコミックス)の中には、上記二つのように完全に大人向けの、ほとんど文学と呼ぶべきものがある。よく、単純明快な勧善懲悪アクションもの、ノーテンキなエンタテイメントをアメコミ映画に求める人が(とくに

  • 超映画批評『ハリウッド監督学入門』70点(100点満点中)

    『ハリウッド監督学入門』70点(100点満点中) Foreign Filmmakers' Guide to Hollywood 2009年3月21日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー 2008年/日/カラー/73分/配給:ビターズ・エンド 監督:中田秀夫 撮影・録音・ライン・プロデューサー:ジェニファー・フカサワ 音楽:川井憲次 メモ片手にみたい、映画業界裏話 ハリウッドと日映画作りにおける違いに興味がある人にとって、『ハリウッド監督学入門』はとても楽しいドキュメンタリーとなるだろう。 作の監督で、ハリウッドの業界関係者たちに自らインタビューするのは『リング』(1998)などでJホラーブームを巻き起こした中田秀夫。『ザ・リング2』(2005)でハリウッドデビューをはたした彼は、米国での企画進行のあまりの遅さに「なぜ? なぜ? なぜ?」が頭に渦巻き、

  • 超映画批評『マダガスカル2』95点(100点満点中)

    『マダガスカル2』95点(100点満点中) Madagascar: Escape 2 Africa 2009年3月14日(土)より、新宿ピカデリー他全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/89分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン 監督:エリック・ダーネル、トム・マクグラス 音楽: ハンス・ジマー 声の出演: ベン・スティラー、クリス・ロック、デヴィッド・シュワイマー、サシャ・バロン・コーエン アメリカ人のしぶとさを感じさせるアニメーション作品 ベン・スティラーやクリス・ロック、そしてジェイダ・ピンケット=スミス母子(ウィル・スミスとの娘ウィロウ・スミス)など、豪華な声優陣をそろえた話題性で引っ張り、米市場で『マダガスカル2』は記録的なヒットとなった。ところがじっさい見てみると、これが単に宣伝や話題性だけで売れたのではないことがはっきりとわかる。『マダガスカル2』は、前作は

  • 超映画批評『ダイアナの選択』80点(100点満点中)

    『ダイアナの選択』80点(100点満点中) The Life Before Her Eyes 2009年3月14日(土)より、シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/90分/配給:デスペラード、日活 監督:ヴァディム・パールマン 脚:エミール・スターン 音楽:ジェームズ・ホーナー 出演:ユマ・サーマン、エヴァン・レイチェル・ウッド、エヴァ・アムーリ 公式サイトを読む前に見に行って 犯人の名前を知ってから推理小説を読むのが好きな人は、『ダイアナの選択』の公式サイトを読むとよい。 高校時代、校内で銃乱射事件に遭遇した経験をもつダイアナ(ユマ・サーマン)の、深い心の傷はいまだ癒えない。あのとき彼女は親友のモーリーン(エヴァ・アムリ)と女子トイレに追い詰められ、犯人にこう問われたのだった。「お前たち二人のうち一人を殺す。どっちを殺すかお前たちが決めろ。さあ、どっちだ

  • 超映画批評『ヤッターマン』85点(100点満点中)

    『ヤッターマン』85点(100点満点中) 2009年3月7日(土)より、全国ロードショー 2009年/日/カラー/111分/配給:松竹、日活 監督:三池崇史、原作:竜の子プロダクション、脚:十川 誠志 出演:櫻井 翔、福田沙紀、生瀬勝久、ケンドーコバヤシ、深田恭子 フカキョンドロンジョは、歴史に残る名ヒロイン 日映画界には妙な癖があって、到底実写じゃ成立しないような漫画・アニメ作品ばかり、なぜか好んで映像化する。ゴルゴ13、ルパン三世、デビルマン、そして二十世紀少年……。 その多くは事前に誰もが予想した通り、まれに見る珍作へと仕上がり、ダメ好きマニアの語り草となる。もはや、この国のお家芸といっても過言ではない。 しかし、ヤッターマンの映画化企画までもが気だったとは、さすがの私も予想だにしなかった。ましてや、興収50億を狙える記録的な大ヒットスタートになろうとは。映画業界は変人ばか

  • 超映画批評『パッセンジャーズ』80点(100点満点中)

    『パッセンジャーズ』80点(100点満点中) PASSENGERS 2009年3月7日(土)より、日比谷みゆき座他にて全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/93分/配給:ショウゲート 監督:ロドリゴ・ガルシア 脚:ロニー・クリステンセン 出演:アン・ハサウェイ、パトリック・ウィルソン、デヴィット・モース、クレア・デュバル 墜落事故生存者の証言がい違う?! この映画は、飛行機墜落事故の現場から始まるが、そのセットのリアルさはなかなかである。カナダの浜辺で撮影したというが、航空機の残骸が燃え盛るのを見つけた近所の住民は、半狂乱になって警察に通報したという。たしかに散歩中にこんなものに出くわしたら、間違いなく腰を抜かすだろう。 セラピストのクレア(アン・ハサウェイ)は、航空機事故の生存者5名の精神的ケアを任される。だがその仕事は簡単ではなかった。事故以来、異様にハイテンションで、専

  • 超映画批評『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』65点(100点満点中)

    『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』65点(100点満点中) ベンジャミン・バトン 数奇な人生 The Curious Case of Benjamin Button 2009年2月7日(土)より、丸の内ピカデリーにて全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/167分/配給:ワーナー・ブラザース映画 監督:デビッド・フィンチャー 脚映画版原案:エリック・ロス 出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、タラジ・P・ヘンソン、ジェイソン・フレミング もし、人生の時間が逆に流れたら? 人生はままならない事の連続だが、この映画の主人公ベンジャミンほど極端な例はない。彼はなんと、80歳の赤ん坊として生まれ、年を経るほどに若返っていく。通常の反対の加齢(減齢?)現象。そんなダークかつファンタジックな架空伝記を見て、観客は何を感じるだろうか。 1918年のニューオーリンズに生まれた赤ん坊

  • 超映画批評『マンマ・ミーア!』60点(100点満点中)

    『マンマ・ミーア!』60点(100点満点中) Mamma Mia! 2009年1月30日(金)より、日劇1ほか全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/108分/配給:東宝東和 監督:フィリダ・ロイド 製作:トム・ハンクス、リタ・ウィルソン、ビヨルン&ベニー 出演:メリル・ストリープ、アマンダ・セイフライド、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルド ABBAの楽曲を使ったミュージカル映画公開の時期が世界でもどん尻の方、ということもあり、この映画最大の宣伝文句は「ミュージカル映画史上、もっともヒットした作品」ということになっている。わが国でも劇団四季の公演が人気を博しているとおり、原作ミュージカルは様々な国で広く受け入れられている。映画化にかかる期待は大きいものがあったわけだが、結果は予想通りの快進撃といったところだ。 ギリシャの美しい小島、カロカイリ島で

  • 超映画批評『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』75点(100点満点中)

    『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』75点(100点満点中) Revolutionary Road 2009年1月24日(土)より、丸の内ピカデリー1他全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/119分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン 監督・製作:サム・メンデス 原作:リチャード・イエーツ 脚色:ジャスティン・ヘイス 出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャスリーン・ハーン、マイケル・シャノン 「タイタニック」のカップル再び?! 「タイタニック」のカップル、レオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレットは、いまや押しも押されぬ大スター。二人とも演技力もすこぶる高い。だが、役者としての特性は正反対といってよい。 レオナルド・ディカプリオは、これはもう彼の顔をひと目見ただけで万人が愛してしまう、好感度の塊をそのまま顔に配置したような、いわば正

  • 超映画批評『感染列島』75点(100点満点中)

    『感染列島』75点(100点満点中) 2009年1月17日(土)より、全国東宝系ロードショー 2009年/日/カラー/138分/配給:東宝 監督:瀬々敬久 出演:夫木聡、檀れい、国仲涼子、田中裕二(爆笑問題)、池脇千鶴 新型インフルエンザ感染爆発か? 最近、感染症に関する映画が増えている件について、危機管理の専門家、青山繁晴氏に聞いてみた。ちなみに氏は映画好きで有名だが、「映画界は(世の流れに)敏感なのではないか」と言っていた。ハリウッド映画業界が政治と強く結びついており、その最新情報を自らのコンテンツに生かしているのはよく知られているが、日映画界も徐々にそれに近づいてきたというわけか。そういう裏事情はちょいと想像しにくいが、ともあれ作は予想以上のオープニング記録を打ち立て、関係者をほっとさせた。 私立病院の救急医師(夫木聡)のもとに、急患が運び込まれてくる。その予想を超えた劇

  • 超映画批評『NIGHT☆KING ナイトキング』75点(100点満点中)

    『NIGHT☆KING ナイトキング』75点(100点満点中) 2009年1月10日(土)より、 Q-AX CINEMA(渋谷)レイトショー 2008年/日/カラー/92分/配給:GPミュージアムソフト 監督:藤原健一 原作:倉科遼 画:河島慶 脚:中井邦彦、桑原周平 出演:いしだ壱成、吉井怜、佐野大樹、千原せいじ(千原兄弟) 大笑い必至のホスト業界コメディ 愛田武氏といえばホスト王。歌舞伎町の業界勢力図を書き換え、ビジネスの健全化にも貢献したという、テレビ番組等でもおなじみのカリスマ社長だ。そんな彼の伝記映画『NIGHT☆KING ナイトキング』は、ホストビジネスの裏側を興味深く見せるコメディ作品。しかもなかなかの傑作で、ホストをテーマにした実写映画としては、相当面白い部類に入る。 昭和43年。女好きがたたってトラブルを巻き起こし、会社をくびになった榎武(いしだ壱成)は、叔父のコネ

  • 超映画批評『ファニーゲーム U.S.A.』1点(100点満点中)

    『ファニーゲーム U.S.A.』1点(100点満点中) FUNNY GAMES US 2008年12月20日(土)より、シネマライズにてロードショー 2007年/アメリカ、イギリス、フランス、オーストリア、ドイツ//111分/PG-12 監督・脚:ミヒャエル・ハネケ 撮影監督:ダリウス・コンジ 出演:ナオミ・ワッツ、ティム・ロス、マイケル・ピット、ブラディ・コーベット 絶対に見てはいけない映画 品のよさげな夫婦と幼い息子がドライブをしている。車内の3人は、クラシック音楽の曲名あてで仲良く遊んでいる。微笑ましいその様子は、しかし激しいパンクロックによって突然中断させられる。そこで映画のタイトルが表れる。 マスコミ向け完成披露試写会でこのオープニングを見て、私は心底ゲンナリとした。またあの『ファニーゲーム』を見なくてはならない。こんな職業に就いていなければ、二度と見ることはなかったであろう作

  • 超映画批評『ラースと、その彼女』85点(100点満点中)

    『ラースと、その彼女』85点(100点満点中) LARS AND THE REAL GIRL 2008年12月20日(土)より、渋谷シネクイント他にてロードショー 2007年/アメリカ/106分/配給:ショウゲート 監督:クレイグ・ギレスピー 脚:ナンシー・オリバー 出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・モーティマー、ポール・シュナイダー、パトリシア・クラークソン 弟がつれてきた恋人は、等身大のリアルドールだった 『ラースと、その彼女』は、リアルドールを恋人だと思い込んでしまった男の物語だ。 私はこの概要だけで興味を引かれた。なにしろ、人間以外の女性に入れ込む男子の多さにかけては、日はトップクラス。マンガや美少女ゲームの登場人物が非処女と判明しただけで大騒ぎになり、ファンが泣きながらキレてDVDを割り、作者を休載に追い込むような国はほかにないだろう。なにしろあの中国でさえ、世界一のエロ

  • 超映画批評『劇場版MAJOR メジャー 友情の一球(ウイニングショット)』85点(100点満点中)

    『劇場版MAJOR メジャー 友情の一球(ウイニングショット)』85点(100点満点中) 2008年12月13日(土)より、全国東宝系ロードショー 2008年/日/カラー/80分/配給:東宝 監督:加戸誉夫 原作:満田拓也(小学館刊 週刊少年サンデー連載中) 脚:土屋理敬 声の出演:くまいもとこ、森久保祥太郎、大浦冬華、釘宮理恵 テレビアニメ映画化としてはまれに見る成功例『メジャー』 NHKで放映している野球アニメ『メジャー』は、求心力の強い作品である。 ハイビジョンの鮮明映像の美しさもさることながら、主人公吾郎のキャラクターがいい。いつでも迷いなく突っ走り、不屈の心と陽気な性格で現実の壁を打ち破る姿は、やや大げさかもしれないが今の日人すべてにとって新鮮で、ある種の憧れすら感じさせる。 原作漫画を知らずとも、あるいはシリーズの途中からたった一話だけ鑑賞したとしても、こちらを瞬間的に魅

  • 超映画批評『WALL・E/ウォーリー』85点(100点満点中)

    『WALL・E/ウォーリー』85点(100点満点中) WALL・E 2008年12月5日(金)より、日比谷スカラ座ほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/103分/配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ・ジャパン 監督:アンドリュー・スタントン サウンド・デザイン、特殊音声、ウォーリーの声:ベン・バート 声の出演:シガニー・ウィーバー、ジェフ・ガーリン、フレッド・ウィラード 地球に一台だけ残ったごみ処理ロボットの数奇な運命 「トロピックサンダー」の記事でも書いたが、最近はひどいネタばらしが目に付く。 だが、『WALL・E/ウォーリー』の場合は、宣伝側が自ら予告編で「事前に知るべきでない設定」を、何億円もかけて全国民へご丁寧に周知させているのだから参る。 もっとも「最大限の利益を出すため」に活動している彼らと、「作品を最大限に楽しんでもらうため」に情報提供

  • 超映画批評『ブラインドネス』95点(100点満点中)

    『ブラインドネス』95点(100点満点中) BLINDNESS 2008年11月22日、丸の内ピカデリー2他全国松竹・東急系にてロードショー 2007年/カナダ・ブラジル・日/カラー/121分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ 監督:フェルナンド・メイレレス 原作:ジョゼ・サラマーゴ 出演:ジュリアン・ムーア、伊勢谷友介、ダニー・グローヴァー、ガエル・ガルシア・ベルナル 全世界が突然失明!? ここ数ヶ月みた映画の中で、私が最も感動したのはこの『ブラインドネス』であった。カンヌ映画祭で、景気付けのオープニング上映のみならず、命コンペ部門にも出品されたというだけのことはある。 街のど真ん中で、日人男性(伊勢谷友介)が運転中の車を急停止させた。彼は、突如として失明してしまったのだ。診断した医師が首をひねる中、世界各地で同様の症状に見舞われる人が続出。この奇病は瞬く間に感染し、政府は患者の

  • 超映画批評『ハッピーフライト』90点(100点満点中)

    『ハッピーフライト』90点(100点満点中) A Happy Flight 2008年11月15日(土)全国東宝系ロードショー 2008年/日/カラー/103分/配給:東宝 監督・脚:矢口史靖 製作:フジテレビジョン、アルタミラピクチャーズ、他 出演:田辺誠一、時任三郎、綾瀬はるか、吹石一恵、岸部一徳 全日空全面協力の、かつてない飛行機映画 『ウォーターボーイズ』(2001)、『スウィングガールズ』(2004)と続けてヒットを飛ばした矢口史靖(やぐちしのぶ)監督は、この最新作では飛行機を飛ばすことになった。取材の過程でマニア級の飛行機好きになった監督としては、前二作とは趣の相当異なる、そして邦画には珍しい「一般ウケするオタク映画」を作り上げた。 ここで来あらすじを紹介するのだが、この映画の場合は必要ない。『ハッピーフライト』は群像劇の形を取っているが、ストーリーを楽しみにいく作品では

  • 超映画批評『イーグル・アイ』95点(100点満点中)

    『イーグル・アイ』95点(100点満点中) EAGLE EYE 2008年10月18日(土)より、丸の内ピカデリー1ほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/118分/配給:角川映画、角川エンタテインメント 製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、エドワード.L.マクドネル 監督:D.J.カルーソー 出演:シャイア・ラブーフ、ミシェル・モナハン、ロザリオ・ドーソン スピルバーグ10年の構想を映画化 『イーグル・アイ』を見終わると、ぐったりと疲れる。アドレナリンだかエンドルフィンだか知らないが、脳内が過剰に活性化されたせいで、この映像体験から開放されたとたん、消費カロリーのあまりの多さに気づく。 コピー店のしがない店員ジェリー(シャイア・ラブーフ )は、突然理解を超えた出来事に巻き込まれる。覚えのない大量の武器や預金。大混乱のさなか、突然かかってきた携帯電話の主は、「30秒後にそこから逃げ

  • 超映画批評『ゲット スマート』95点(100点満点中)

    『ゲット スマート』95点(100点満点中) Get Smart 2008年10月11日(土)より全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/110分/配給:ワーナー・ブラザース映画 監督:ピーター・シーガル 脚:トム・J・アッスル、マット・エンバー 出演:スティーヴ・カレル、アン・ハサウェイ、アラン・アーキン、ドゥエイン・ジョンソン 80億円以上の予算をかけたコメディ アメリカではコメディジャンルが人気があると、ここでは何度も書いている。人気があるということは、そのぶん金をかけられるということ。だからあの国では、『ゲット スマート』のようなお笑い映画に、なんと80億円以上もつぎ込むという無茶な現象がよく見受けられる。 極秘諜報機関"コントロール"の情報分析官マックス(スティーヴ・カレル)は、優れた分析能力があだとなり、長年の夢である現場の諜報員になれずにいた。ところが部が犯罪

  • 超映画批評『私がクマにキレた理由(わけ)』80点(100点満点中)

    『私がクマにキレた理由(わけ)』80点(100点満点中) The Nanny Diaries 2008年10月11日(土)より、日比谷みゆき座他にて全国ロードショー 2007年/アメリカ/106分/提供:博報堂DYメディアパートナーズ・ショウゲート 配給:ショウゲート 監督:シャリ・スプリンガー・バーマン&ロバート・プルチーニ 出演:スカーレット・ヨハンソン、ローラ・リニー、アリシア・キーズ、クリス・エヴァンス NYセレブママの、どこか変なライフスタイル ロマンティック・コメディの良し悪しについて、主演女優のしめる割合はとても高い。女優じたいが魅力的かどうか、演じるキャラクターに共感できるかどうか。観客の性別を問わず、それだけで6割がた決まってしまうといっても過言ではない。これは、私だけが提唱する定説である。 庶民の娘ながら人類学を学び、エリートコースに乗るかと思われたアニー(スカーレット

  • 超映画批評『イキガミ』90点(100点満点中)

    『イキガミ』90点(100点満点中) 2008年9月27日、アミューズCQN、新宿オデヲン、池袋シネマロサにてロードショー 2008年/日/カラー/133分/配給:東宝 原作:間瀬元朗 監督:瀧智行 出演:松田翔太、塚高史、成海璃子、山田孝之、柄明 アナタは24時間後に死にますという「イキガミ」が届いたら? 漫画映画化が最近目立つが、よもやこれほど高く評価できる作品に出会えるとは思わなかった。 現代日に良く似た場所。この国では、「国家繁栄維持法」により安定した社会が実現している。それは全国の18から24歳の中から、1000分の1の確率で無作為に選び死んでもらう制度。通称・逝紙(イキガミ)を当人に配り、24時間後の死亡宣告を行う公務員(松田翔太)は、今日も様々な人間ドラマに立ち会うことになる。 わずかな犠牲で誰もが命の大切さを実感するこの制度により、犯罪も減り、活気あふれる社会が

  • 超映画批評『蛇にピアス』85点(100点満点中)

    『蛇にピアス』85点(100点満点中) Snakes and Earrings 2008年9月20日(土)より渋谷シネマGAGA!他全国順次ロードショー 2008年/日/カラー/123分/R-15 配給:ギャガ・コミュニケーションズ Powered by ヒューマックスシネマ 原作:金原ひとみ 監督:蜷川幸雄 出演:吉高由里子、高良健吾、ARATA、あびる優、ソニン 吉高由里子が舌ピアスに全裸SMと大活躍 2004年の芥川賞は、綿矢りさ&金原ひとみという美少女二人の受賞でちょっとした話題になった。その金原ひとみの受賞作の映画化『蛇にピアス』は、原作者たっての希望により、72歳のベテラン蜷川幸雄(にながわゆきお)監督がメガホンをとることになった。 19歳のルイ(吉高由里子)は、渋谷でピアスだらけの男アマ(高良健吾)にナンパされる。舌先が二股に分かれたスプリットタンに興味を持ったルイは、その

  • 超映画批評『おくりびと』90点(100点満点中)

    『おくりびと』90点(100点満点中) Departures 2008年9月13日(土)より、丸の内プラゼ-ルほか全国ロードショー 2008年/日/カラー/130分/配給:松竹 監督:滝田洋二郎 脚:小山薫堂 音楽:久石譲 出演:木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子 納棺師の仕事を描いた格作品 ヴェネチアが大カントクにリップサービスしているのを真に受けて、日のマスコミはそちらばかり報道していたが、真に注目すべきはモントリオール世界映画祭だった。ここでグランプリを受賞した『おくりびと』こそ、まさしく世界に誇るべき日映画の傑作である。 念願だったチェロ奏者になった途端オーケストラが解散、莫大な借金を残し失業した大悟(木雅弘)は、夢をあきらめ故郷の山形に戻った。それでも優しいけなげなの美香(広末涼子)のため、少しでも高給の仕事を探していた彼は、一つの求人広告に目をとめる。"旅のお手

  • 超映画批評『シャッター』75点(100点満点中)

    『シャッター』75点(100点満点中) Shutter 2008年9月6日(土)よりお台場シネマメディアージュ他全国ロードショー 2008年/アメリカ/1時間30分/PG-12 配給:20世紀フォックス映画 監督:落合正幸 製作:一瀬隆重 撮影:柳島克己 出演:ジョシュア・ジャクソン、レイチェル・テイラー、奥菜恵 奥菜恵が恐怖映画でハリウッドデビュー "日製ハリウッド映画"といわれる作は、美少女幽霊がうらめしやをするホラー作品。女優として低迷していた奥菜恵がはまり役の幽霊を演じ、華々しいハリウッドデビューを果たした。 新婚旅行で日に来たカメラマン夫婦は、ドライブ中の箱根の山道で若い女性(奥菜恵)をはねてしまう。だが死体は見つからず、代わりにその日から彼らは心霊現象に悩まされる。 タイ映画「心霊写真」(04年)のリメイクということで、このかわいい幽霊は主人公の撮影した写真にことごとくお

  • 超映画批評『ハンコック』85点(100点満点中)

    『ハンコック』85点(100点満点中) Hancock 2008年8月30日(土)より、丸の内ピカデリー1ほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/92分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 監督:ピーター・バーグ 脚:ヴィンセント・ノー、ヴィンス・ギリガン、音楽:ジョン・パウエル 出演:ウィル・スミス、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ベイトマン ウィル・スミスが嫌われ者ヒーローを演じるトンデモ作 ウィル・スミスは暑い男だ。暑いというのは、彼が圧倒的に夏に強いという意味で、その出演作は7月初旬の独立記念日シーズン(米国でもっとも映画興行が盛り上がる季節)の歴代ベストテンに4も入っている。そのひとつとなったこの『ハンコック』は、彼の主演作としては8連続初登場1位という華々しい記録も奪取した。 まさにハリウッドのイチロー。いまアメリカでもっとも打率が高く、映画業界から絶対

  • 超映画批評『デトロイト・メタル・シティ』80点(100点満点中)

    『デトロイト・メタル・シティ』80点(100点満点中) 2008年8月23日(土)全国東宝系ロードショー 2008年/日/カラー/104分/配給:東宝 原作:若杉公徳 監督:李闘士男 出演:松山ケンイチ、加藤ローサ、秋山竜次、細田よしひこ、松雪泰子 松山ケンイチが両極端な若者を演じるデスメタル"ギャグ"ムービー こういう仕事に就いているとつい忘れがちだが、人はそれほど大層なものを映画に求めてやしない。 いくらギャスパー・ノエの映画が面白いといっても、あんな気持ち悪いものを普通の人は見たがらないし、また必要としない。忙しい現代人にとって映画とは、旅行に行くほど気構えず、比較的チープに楽しめる気晴らしのひとつに過ぎない。 そんなとき必要なのはコメディ映画というわけで、アメリカでは大人気の定番ジャンルとなっている。しかし、なぜか日ではあまり力の入ったコメディというものを見ない。いたく残念&不

  • 超映画批評『カンフー・ダンク!』75点(100点満点中)

    『カンフー・ダンク!』75点(100点満点中) Kung Fu Dunk 2008年8月16日よりシネカノン有楽町2丁目他にてロードショー 2008年/台湾・香港・中国合作/1時間40分/配給:角川映画 監督:チュー・イェンピン アクション監督:チン・シウトン 撮影監督: チャオ・シャオティン 出演:ジェイ・チョウ(周杰倫)、チェン・ボーリン(陳柏霖)、シャーリーン・チョイ(蔡卓妍)エリック・ツァン(曾志偉) イケメンたちがダンクしまくり カンフー映画が流行中のようである。 思い出すだけでも「カンフーくん」「カンフー・パンダ」「少林少女」と、"枯れ木も山の賑わい"を地で行く魅力的なラインナップ。しかしこのバスケットボール+カンフーアクション『カンフー・ダンク!』だけは別だ。 カンフー学校の師父に拾われ育てられた孤児のファン(ジェイ・チョウ)は、夜の公園でさえない中年男リー(エリック・ツァン

  • 超映画批評『この自由な世界で』80点(100点満点中)

    『この自由な世界で』80点(100点満点中) it's a free world… 2008年8月16日(土)より、渋谷シネ・アミューズほか全国順次公開 2007年/イギリス/カラー/96分/配給:シネカノン 監督:ケン・ローチ 脚:ポール・ラヴァティ 撮影:ナイジェル・ウィロウビー 音楽:ジョージ・フェントン 出演:キルストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス ケン・ローチが描く「奪い合う労働者」 弱肉強の新自由主義は格差社会を拡大し、この日でも最底辺の労働者の危機感は相当なものがある。 私は仕事柄、たまにその手の集会を見に行くことがあるが、たいていは盛況である。そこで語られる派遣労働者やシングルマザー、障がい者や引きこもりたちの現状の訴えは深刻で、聞いているだけで怒りで涙が出てくる。 そんなとき、どうしても労働者は善人で支配側は極悪守銭奴といった単純化をしてしまいたくなるが、も

  • 超映画批評『闇の子供たち』85点(100点満点中)

    『闇の子供たち』85点(100点満点中) 2008年8月2日(土)より、シネマライズほか全国順次ロードショー 2008年/日/カラー/138分/配給:ゴー・シネマ 監督・脚:阪順治 原作:梁石日 主題歌:桑田佳祐「現代東京奇譚」 出演:江口洋介、宮崎あおい、夫木聡、佐藤浩市 児童買春、臓器売買を痛烈批判する社会派の日映画 『闇の子供たち』は、「年度日映画界最大の問題作」と宣伝されているが、そのコピーに偽りはない。生半可な気持ちで見ては痛い目にあう、きわめて重い社会派ドラマである。 タイ・バンコクの支局で働く新聞記者、南部浩行(江口洋介)は、タイ闇ルートで行われている子供の生体臓器移植の取材を始める。その過程でフリーカメラマンの与田(夫木聡)、NGO職員の音羽恵子(宮崎あおい)らと出会い、協力して調べを進めていくが、その先には彼らの想像を超えたおぞましい現実と、裏社会からの制

  • 超映画批評『敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~』70点(100点満点中)

    『敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~』70点(100点満点中) MON MEILLEUR ENNEMI(仏)/MY ENEMY'S ENEMY(英) 2008年7/26、銀座テアトルシネマほか全国ロードショー 2007年/フランス映画/1時間30分/Dolby SR-SRD/日語字幕:寺尾次郎 配給:バップ、ロングライド 監督:ケヴィン・マクドナルド プロデューサー:リタ・ダゲール ナレーション:アンドレ・デュソリエ リヨンの虐殺者といわれたナチスの戦犯の数奇な人生 能力の高い人材は職場を問わず活躍できるので、不況になってもいっぱぐれることがない。諜報の分野にもどうやらその法則は当てはまるようで、裏社会の人脈に通じ、たくさんの拷問法を知っていて、かつ自分の手でそれを実行できるような才能はそう簡単に裁かれる事はない。 ナチスの中でも極悪と称される戦犯でありながら、戦後

  • 超映画批評『スターシップ・トゥルーパーズ3』65点(100点満点中)

    『スターシップ・トゥルーパーズ3』65点(100点満点中) Starship Troopers3 2008年7月19日(土)より 新宿ジョイシネマほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/105分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 監督・脚:エド・ニューマイヤー 撮影:ロレンツォ・セナトーレ 出演:キャスパー・ヴァン・ディーン、ジョリーン・ブラロック、ボリス・コジョー スターシップ・トゥルーパーズ、一作目の正当なる続編 『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズは日では特別な人気がある。国ではDVD販売用だった超低予算のパート2も劇場公開されたし、この3作目も世界に先駆けて一番早く映画館で見ることができる。 なんといってもハインラインの原作『宇宙の戦士』に登場するパワードスーツのアイデアは、ガンダムをはじめとするロボットアニメとして日で花開いたのだ。しかもこの

  • 超映画批評『クライマーズ・ハイ』70点(100点満点中)

    『クライマーズ・ハイ』70点(100点満点中) 2008年7月5日(土)より、丸の内TOEI ① ほか全国ロードショー 2008/日/145分/配給:東映×ギャガ・コミュニケーションズ Powered by ヒューマックスシネマ 監督:原田眞人 原作:横山秀夫『クライマーズ・ハイ』(文春文庫刊) 脚:加藤正人/成島出/原田眞人 出演:堤真一、堺雅人、尾野真千子 日航機墜落事故を前にした新聞記者たちのドラマ 1985年8月12日に起きた日航空123便墜落事故は、世界の航空機事故史上でも未曾有と表現される大事故で、当時を知る世代にとっては忘れられぬトラウマといえる。 その衝撃は事故を報じたジャーナリスト、記者たちにとっても同じで、事故当時、墜落現場となった群馬県の地方新聞記者だった作家・横山秀夫は、実体験を基にした小説を後に残している。それが作の同名原作である。 ときは1985年8月。

  • 超映画批評『告発のとき』85点(100点満点中)

    『告発のとき』85点(100点満点中) In The Valley of Elah 2008年6月28日(土)より有楽座ほかTOHO系全国ロードショー 2007年/アメリカ/カラー/121分/配給:ムービーアイ 監督・脚:ポール・ハギス キャスト:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン イラク帰還兵が巻き込まれた驚愕の事件映画化 『告発のとき』は、"実話を基にした映画"。つまり、映画にしたくなるほどビックリする何かが、コトの真相に含まれているわけだ。だがそのネタの良さに安心して工夫のない仕事をすれば、単に過去の事実を再現しただけの退屈な後書きが出来上がるだけ。じっさい「実話の映画化」の中には、そうした凡作、時間のムダ的失敗作が少なくない。しかし、それなら優秀な記者が書いた1ページの記事を読んだほうがはるかにマシなのだ。 04年11月、軍警察を定年退職したハ

  • 超映画批評『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』75点(100点満点中)

    『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』75点(100点満点中) Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull 2008年6月21日(土)全国超拡大ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/124分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン 監督:スティーブン・スピルバーグ 製作総指揮: ジョージ・ルーカス、キャスリーン・ケネディ 音楽:ジョン・ウィリアムズ キャスト:ハリソン・フォード、ケイト・キャプショー、シャイア・ラブーフ ロッキー、ランボーに続き、インディ・ジョーンズも復活 ハリウッドでは、ご存知のとおり一年の間に数え切れないほどの話題作が生み出されている。その中でも、この年一番期待された超ド級の注目株がこれ。"パートタイム考古学者"『インディ・ジョーンズ』19年ぶりの最新作だ。 舞台は1957年のアメリカ、砂漠

  • 超映画批評『JUNO/ジュノ』90点(100点満点中)

    『JUNO/ジュノ』90点(100点満点中) JUNO 2008年6月14日(土)、初夏 日比谷シャンテシネほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/カラー/96分/配給:20世紀フォックス映画 監督:ジェイソン・ライトマン、脚:ディアブロ・コディ キャスト:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー 16歳で妊娠した女の子はどんな行動をとるか? 『JUNO/ジュノ』はアメリカ映画業界にとって、間違いなく年度を代表する作品のひとつである。 わずか数館から始まった上映は、口コミや効果的なプロモーションで最終的には2千数百もの劇場へと拡大。製作費10億円足らずの低予算映画ながらその十数倍の興行収入をたたき出す作品なんてのは、さすがの米国においてもめったにあるものではない。 これはプロ野球で言えば、プロテストの補欠で一応取っておいた最低年収の選手が、いきなりホームラン王になるよ

  • 超映画批評『シークレット・サンシャイン』80点(100点満点中)

    『シークレット・サンシャイン』80点(100点満点中) Secret Sunshine 2008年6月7日(土)シネマート六木ほか、全国順次公開 2007年/韓国/カラー/142分/配給:エスピーオー 原作:イ・チョンジュン「虫の物語」 脚・監督:イ・チャンドン キャスト:チョン・ドヨン、ソン・ガンホ シングルマザーが味わう未曾有の苦しみ 脳性麻痺の女性の恋愛物語「オアシス」(02年、韓国)は、このサイトで絶賛したから覚えている方も多いかも知れない。『シークレット・サンシャイン』はそのイ・チャンドン監督の最新作で、これまた心に響く格ドラマだ。 夫を亡くしたシネ(チョン・ドヨン)は、幼い息子を連れソウルから夫の故郷へやってきた。この小さな田舎町で再出発をはかろうというのだ。最初に知り合ったジョンチャン(ソン・ガンホ)は、しょぼくれた自動車修理工場を経営するさえない中年男だったが、シネに

  • 超映画批評『今、愛する人と暮らしていますか?』70点(100点満点中)

    『今、愛する人と暮らしていますか?』70点(100点満点中) 2008年5月25日(日)より、TOHOシネマズ木ヒルズにてモーニング・ロードショー 2007年/韓国/116分/配給:ツイン 二組の夫婦が互いの相手と不倫してしまったら? 「他人の奥さんはかわいく見える」という人は、他人から自分の奥さんがかわいく見られているという事実に案外気づいていない。 建築会社の副社長ヨンジュン(イ・ドンゴン)と照明デザイナーのソヨ(ハン・チェヨン)は誰もが認めるセレブなカップル。一方彼らとビジネスでつきあう事になったファッションアドバイザーのユナ(オム・ジョンファ)とその夫でホテルマンのミンジェ(パク・ヨンウ)は、長い恋愛の末一緒になった仲良し庶民夫婦。ひょんな事から互いのパートナーに惹かれあってしまう両カップルの行く末は……? 六木ヒルズのモーニングショーで公開されるこの映画。いいトコの奥様が集

  • 超映画批評『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』70点(100点満点中)

    『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』70点(100点満点中) Charlie Wilson's War 2008年5月17日(土)より、日劇1ほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/97分/配給:東宝東和 トム・ハンクスの新作は、世界を変えたエロ代議士のお話 "事実は小説より奇なり"というが、こと政治テーマにおいてはその"小説より奇なる事実"さえ、疑ってかかる必要がある。 ときは80年代の冷戦時代。テキサス州選出の民主党下院議員チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)は、女と麻薬に目がない不良代議士。ただ、テキサス男らしいおおらかな性格で、どこか憎めない男だった。ある日彼は、巨乳ギャル二人を含む4P状態のジャグジーで、ソ連が侵攻したアフガニスタンの悲惨な現状を知る。 さて、そのニュースで何かに目覚めたチャーリーは、セフレでパトロンの大富豪夫人(おまけに反共闘士の)ジョアン・ヘリング(ジ

  • 超映画批評『ミスト』90点(100点満点中)

    『ミスト』90点(100点満点中) THE MIST 2008年5月10日(土)より、有楽町スバル座ほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/125分/配給:ブロードメディア・スタジオ スティーブン・キングの原作を変更、凌駕した大傑作 フランク・ダラボン監督とスティーヴン・キング原作のコンビには、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」という傑作がある。鬼門とさえ言われるほど難しいキング作品の映画化を、ほとんど唯一成功させているのがこの監督なのだ。だから、ファンに人気の中篇『霧』をフランク・ダラボンが手がけたのはある意味必然。そしてその期待に彼は、三たび完璧にこたえた。映画『ミスト』は、必見の衝撃作である。 メイン州の田舎町。荒れ狂った台風が去った翌朝、物資の買出しに地元のスーパーマーケットに集まった住民らを、今度は視界ゼロの霧が襲う。ちょうど買い物に来ていた主人公デヴィッド(トーマス

  • 超映画批評『スパイダーウィックの謎』75点(100点満点中)

    『スパイダーウィックの謎』75点(100点満点中) The Spiderwick Chronicles 2008年4月26日(土)より、全国ロードショー 2008年/アメリカ/96分/配給:パラマウント ジャパン ゲームブックやファンタジー小説でおなじみのモンスターが 『スパイダーウィックの謎』は、やたらと大風呂敷を広げたがるファンタジー映画が多 い中、身の程をわきまえた堅実なつくりの好編。小学生くらいの子供たちはもちろん、 TRPGゲームブック世代のファンタジーファンにもすすめられるいくつかの要素を持っ ている。 双子の兄弟ジャレッドとサイモン(フレディ・ハイモア二役)、そして姉のマロリー (サラ・ボルジャー)。彼らは母親と4人で森の奥の屋敷に引っ越してくる。そこは行 方不明になった大叔父スパイダーウィックが残した家で、彼の娘にあたる叔母も今では 離れたサナトリウムで一人暮らしている。

  • 超映画批評『プルミエール 私たちの出産』85点(100点満点中)

    『プルミエール 私たちの出産』85点(100点満点中) LE PREMIER CRI 2008年4月19日、シャンテシネ他にてGWロードショー 2007年/フランス/98分/配給:クロックワークス、コムストック・グループ 出産とはかくも感動的なのか 『プルミエール 私たちの出産』は出産ドキュメンタリーだが、撮影しているのはフランスのイケメン監督である。 映画は、出産に詳しい人ほど度肝を抜かれるショッキングなシーンからはじまる。メキシコのある30代女性が挑んだ、世にもびっくりな出産方法。これを皮切りに、カメラは5大陸10カ国の女性たちのさまざまな「生み方」を追う。 10人を順に見せるわけではなく、あちこちに飛びまくるので誰が誰だかわからなくなりそうだが、各人の出産はなんとも個性的でバラエティに富んでおり驚かされる。 ジル・ド・メストル監督は、かつてテレビ仕事で同テーマを扱った際あまりに感動

  • 超映画批評『王妃の紋章』75点(100点満点中)

    『王妃の紋章』75点(100点満点中) CURSE OF THE GOLDEN FLOWER 2008年4月12日(土)より東劇他全国ロードショー 2007年/中国/カラー/114分/配給:ワーナー・ブラザース映画 中共プロパガンダ崩れ 中国きっての人気監督チャン・イーモウは、同時に北京政府の大イベントによく関わる事でも知られている。北京五輪の開会式も、もちろん彼が手がけている。 さて、そんな大事な年に、中国史上最も絢爛といわれる五代十国時代の王家を描く超大作が公開ときた。聞けば06年の香港を皮切りに、欧米各国を経ていよいよ日公開ということだ。間違いなくオリンピック開催を念頭に置いた、海外向け中共プロパガンダの一環であろうと察しがつく。 ところが、いざ鑑賞するとそう単純に言い切れぬ奇妙な点が目に付いた。はたしてこの、見るからにいかがわしい大作映画の正体は何なのか。 後唐時代の中国。世に君

  • 超映画批評『うた魂(たま)♪』80点(100点満点中)

    『うた魂(たま)♪』80点(100点満点中) 2008年4月5日(土)よりシネクイント、シネ・リーブル池袋、新宿ジョイシネマほか全国ロードショー!! 2007年/日映画/120分/配給:日活 ≪女子高生とヤンキー合唱部の対決≫ 『うた魂(たま)♪』を見ていると、映画なんてものは普遍性を追求するばかりが能ではないとつくづく感じる。ときには時代を切り取るような、フレッシュだが賞味期限の短いものが何より心に届く事もある。 北海道のとある高校。合唱部リーダーのかすみ(夏帆(かほ))は、自分のルックスと歌声に陶酔するちょっと勘違いな女子高生。ところがある日、憧れの生徒会長(石黒英雄)から歌唱中の表情を「産卵中のサケみたい」と笑われてしまい自信喪失。退部を決意する。 素直なのかバカなのか?! 絶妙な性格設定のヒロインが魅力的な青春学園合唱ドラマ。合唱という「誰もが経験してるけど、好きな人はほとんどい

  • 超映画批評『悲しみが乾くまで』85点(100点満点中)

    『悲しみが乾くまで』85点(100点満点中) Things We Lost In The Fire 3月29日(土)より、恵比寿ガーデンシネマ、シネカノン有楽町一丁目ほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/119分/配給:角川映画・角川エンタテインメント ハル・ベリー&ベニチオ・デル・トロを圧倒する才能 『悲しみが乾くまで』に主演するハル・ベリーとベニチオ・デル・トロは、ともにオスカー受賞経験がある実力者で、その演技力に死角はない。だが、それでも作は彼らがかすむほどに、別のある人物の圧倒的な才能を感じさせる。 オードリー(ハル・ベリー)の幸せな生活は、ある日夫が殺されて一変する。葬儀当日、夫の親友ジェリー(ベニチオ・デル・トロ)と久々に再会した彼女は、彼が相変わらずドラッグ中毒の後遺症により、廃人同様の暮らしをしている事を知る。これまでジェリーを快く思っていなかったオードリーだが、子

  • 超映画批評『ザ・フィースト』85点(100点満点中)

    『The FEAST/ザ・フィースト』85点(100点満点中) FEAST 2008年3月22日(土)、シアターN渋谷、新宿ジョイシネマ他にて全国順次ロードショー 2006年/アメリカ/86分/R-15/配給:(株)アートポート 上級者ほどいなされる「過去のどの作品にも似ていない」ホラー映画 ホラームービーを大好きなアナタがこの『ザ・フィースト』を見ると、予測を裏切る展開の数々に感心することになるだろう。 舞台はテキサスの片田舎のしょぼくれた一軒家のバー。ここに突然、ショットガンを抱えた男が血相を変えて飛び込んでくる。文字通り血まみれのその男は、急いでバーを封鎖しろと怒鳴る。今しがた外で正体不明の怪物に襲われ、しかもすぐそこまで迫っているというのだ。 登場人物全員と観客は、こうして唐突に命がけのサバイバルバトルに巻き込まれ、わずか86分間の上映時間すべてを、ハラハラドキドキしてすごす事にな

  • 超映画批評『口裂け女2』70点(100点満点中)

    『口裂け女2』70点(100点満点中) 2008年3月22日(土)より、シアターN渋谷、ワーナー・マイカル・シネマズ板橋ほか全国順次ロードショー 2008年/日/98分/配給:ジョリー・ロジャー これが第一作目ならよかったのに パート1の威光を受けた二作目は、興行面の有利さと反比例して、評価の面では苦戦を強いられるのが普通である。しかし、『口裂け女2』の前作にはそもそも高評価なるものが存在しないため、いわゆる「二作目のジンクス」は通用しない。 1970年代の岐阜。三姉妹の末っ子・真弓(飛鳥凛)は、陸上部の先輩を密かに想う元気で純朴な女子高生。結婚する長女・幸子(川村ゆきえ)、美容師として独立したばかりの次女(岩佐真悠子)とも仲良く、幸せに暮らしていた。しかしある夜、逆恨みした幸子の元彼が、暗がりで幸子と勘違いした真弓の顔面に硫酸をかける。 復讐相手の顔くらいきちんと確認しなさいというほか

  • 超映画批評『魔法にかけられて』85点(100点満点中)

    『魔法にかけられて』85点(100点満点中) Enchanted 2008年3月14日(金)より日劇3ほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/108分/配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン ディズニーによるセルフパロディ 『魔法にかけられて』は、ディズニー映画やTDR大好きなアナタがみたら、ショックで椅子から転げ落ちるか、腹を抱えて大笑いするかのどちらかという大問題作だ。 魔法の国"アンダレーシア"の森で暮らすジゼル(声:エイミー・アダムス)。やがて夢に見た王子(声:ジェームズ・マースデン)と出会い、結婚を目前にした彼女は、魔女(声:スーザン・サランドン)にだまされおそろしい国へと続く穴の中へ突き落とされてしまう。 伝統回帰の手描きフルアニメーションはさすが天下のディズニー、うっとりするような美しさ。だが、かわいらしいお姫様が魔女に追いやられた「

  • 超映画批評『バンテージ・ポイント』95点(100点満点中)

    『バンテージ・ポイント』95点(100点満点中) Vantage Point 2008年3月8日(土)より、サロンパス ルーブル丸の内ほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/90分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 凝った構成と完璧な脚政治サスペンス 冒頭、いきなりアメリカ大統領がスペインの大群衆の前で狙撃される。ほぼ同時に大爆発も起こり、集まった人々はパニックに。全力ダッシュで始まり、ペースを落とすことなくそのまま90分間駆け抜ける、大興奮サスペンスアクションの登場だ。 テロ撲滅の国際サミットのため訪れたスペインのサラマンカの広場で、米大統領が何者かに狙撃される。大混乱の中、ベテランシークレットサービス(デニス・クエイド)は居合わせた観光客(フォレスト・ウィッテカー)のビデオカメラやテレビ局の中継車をチェック、そこに驚愕の真実が写っていることに気づき、追跡を開始する

  • 超映画批評『ファーストフード・ネイション』80点(100点満点中)

    『ファーストフード・ネイション』80点(100点満点中) Fast Food Nation 2008年2月26日、ユーロスペース他、全国順次ロードショー 2006年/アメリカ、イギリス/108分/配給:トランスフォーマー 宣伝・配給協力:ザジフィルムズ ダイエットに最適な映画 ハンバーガーやフライドポテトが大好きなお子さん、もしくはメタボ気味の旦那様をもつ奥さんは、迷わずこの映画に連れて行くとよい。これを見終わってもまだべたいというならば、それはもはや病気だ。 大手バーガーチェーンのある幹部は、パテから大腸菌が検出された件で、自社の肉加工工場に調査にやってきた。愛想よく案内された工場の様子からは、雑菌が混入する余地はあまりないように思える。だが、周辺で聞き込みを続けるうち、その恐るべき実態が明らかになってくる。 脚も書いているエリック・シュローサーの原作『ファストフードが世界をいつ

  • 超映画批評『ラスト、コーション』75点(100点満点中)

    『ラスト、コーション』75点(100点満点中) Lust,Caution/色・戒 2008年2月2日、シャンテシネ/Bunkamuraル・シネマ/新宿バルト9/TOHOシネマズチェーン他全国拡大ロードショー! 2007年/中国アメリカ/158分/配給:ワイズポリシー 過激な濡れ場が話題 『ブロークバック・マウンテン』(05年、米)でアカデミー監督賞を受賞した台湾の人気監督アン・リーの最新作は、ある事情により世界中で物議をかもすことになった。 舞台は1942年、日占領下の上海。女子学生ワン(タン・ウェイ)は、思い人のクァン(ワン・リーホン)に感化され、過激な抗日運動に身を投じていく。やがて彼女は日軍と通じる特務機関長、イー(トニー・レオン)を暗殺するため、ハニートラップを仕掛けるよう言い渡される。だが、二人はやがて当に惹かれあってしまうのだった。 監督にとっては、前作に引き続いての禁

  • 超映画批評『テラビシアにかける橋』70点(100点満点中)

    『テラビシアにかける橋』70点(100点満点中) Bridge to Terabithia 2008年1月26日(土)、渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー 2007/アメリカ/95分/提供:東北新社、ポニーキャニオン 配給:東北新社 ダコタ・ファニングのライバル女優の魅力大爆発 『テラビシアにかける橋』は、VFXをたくさん使ったまるで『ナルニア国物語』のごときファンタジックな映画だが、根底には比較にならないほどシリアスな何か、言ってみれば"死"の空気が流れている。 その理由は、原作者で米国児童文学の第一人者キャサリン・パターソンが、執筆当時癌にかかっていた事と、息子の周辺で起こったある悲劇にショックを受けた直後だったため。この映画版も、その空気感をよく表現しており、心温まるドラマを描きながらも、全編に異様な緊張感が張り詰めている。 小学五年生の少年ジェス(ジョシュ・ハッチャーソン

  • 超映画批評『凍える鏡』80点(100点満点中)

    『凍える鏡』80点(100点満点中) 2008年1月26日よりシネマ・アンジェリカほかにて全国順次ロードショー 2007年/日/100分/配給:「凍える鏡」製作事務所 不器用な人間たちの、優しい再生物語 タイトルの「鏡」は、オーストリアの精神分析学者ハインツ・コフートの心理学理論からの引用で、端的に言うと母親のこと。子供にとって親は自分を投影する鏡であり、それを見ながら自己を育成するという。この映画の登場人物にとっては、その「鏡」が、凍えるほど冷たい存在というわけだ。 路上で自分の絵を売る若者・瞬(田中圭)と、年老いた女性童話作家・香澄(渡辺美佐子)が、あるとき出会い、やがて意気投合した。行き場のない野良犬のような目をした瞬は、わずかな事ですぐキレる若者だった。香澄は一人娘で臨床心理士の由里子(冨樫真)に、彼のカウンセリングを任せてみるが……。 登場人物はほぼこの3人。実の母娘とひとりの

  • 超映画批評『28週後...』75点(100点満点中)

    『28週後...』75点(100点満点中) 28 WEEKS LATER 2008年1月19日、お台場シネマメディアージュほか全国ロードショー 2007年/イギリス/スペイン/104分/配給:20世紀フォックス映画 おばかさん、ピンポン感染で世界を滅ぼす オリジナル脚による終末ホラー「28日後...」(02年)は、ヨーロッパ(イギリス)の監督らしくシニカルなテーマ性と、万人向けな娯楽性を併せ持った佳作であった。 なんといっても、感染すると正気を失い周りを襲いまくるゾンビ菌の恐怖、というアイデアがわかりやすい。それを最初に野に放つのが、動物愛護団体ってなあたりもブラックでよろしい(感染した実験動物を、その危険を指摘されながらも身勝手に逃がしてしまう)。 『28週後...』はその続編で、最初の感染からたった28日でグレートブリテン島が壊滅状態になった英国の、28週後の様子を描く。 RAGE(

  • 超映画批評『勇者たちの戦場』75点(100点満点中)

    『勇者たちの戦場』75点(100点満点中) Home of the Brave 2008年1月5日より銀座シネパトス他、全国ロードショー 2006年/アメリカ/105分/配給:日活 イラク帰還兵が、米土で直面する地獄の日々 アメリカ戦争映画が立て続けにコケている。 それはそうだ、いま作られているのは、テロリストに一定の理解を示したり、自軍の過ちに言及する(反戦ならぬ)"反省映画"ばかり。これから際限ない不景気~覇権国家転落への道をたどろうという時に、敵様の事情なんぞ気にする余裕が、米国民にあろうはずがない。 この『勇者たちの戦場』もそうした反省映画のひとつで、「イラク戦争からの帰還兵」という、きわめてホットなテーマを扱う戦争ドラマ。そしてここが重要なポイントだが、「アメリカ人が見たがらない戦争映画」というのは、えてして外国人たる我々が見ると面白い。 イラク駐留中のマーシャル軍医(サミュ

  • 超映画批評『ルイスと未来泥棒』80点(100点満点中)

    『ルイスと未来泥棒』80点(100点満点中) Meet the Robinsons 2007年12月22日、丸の内ピカデリー2ほか全国公開 2006/アメリカ/102分/配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン ピクサーパワーを得て蘇ったディズニーアニメ 現在アメリカ映画界の巨人ディズニーは、『トイ・ストーリー』シリーズや『ファインディング・ニモ』の制作で知られる3DCGアニメ界の雄ピクサーを子会社として取り込み、大きく変化している最中だ。そんな中、日公開される『ルイスと未来泥棒』は、ピクサー社の設立メンバーで代名詞的存在である映画監督ジョン・ラセターを製作総指揮に迎えた、初めての(ピクサーではなく)ディズニーアニメーション作品となる。 孤児院で暮らす発明少年ルイス(声:ダニエル・ハンセン)は、生後まもない自分を捨てた母親のことを知りたくて、古い記憶を覗け

  • 超映画批評『俺たちフィギュアスケーター』70点(100点満点中)

    『俺たちフィギュアスケーター』70点(100点満点中) Blades of Glory 2007年12月22日 渋谷シネマGAGA!、なんばパークスシネマ他全国順次ロードショー 2007年/アメリカ/1時間33分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ キモい男二人がフィギュアスケートでペアを組む?! アイデアを聞いただけで「これは見たい」と思わせる映画がある。飲み屋で思いついてメモ用紙になぐり書きした企画書が、一発で通ってしまうようなパターンだ。『俺たちフィギュアスケーター』は、(企画書がペラ紙一枚だったかは知らないが)その典型例。 フィギュアスケート男子シングルで、常にトップ争いをしているチャズ(ウィル・フェレル)とジミー(ジョン・ヘダー)。実力は拮抗するも犬猿の仲の二人は、同点優勝の表彰式で乱闘騒ぎを起こしてしまう。事態を重く見たアメリカフィギュア界は二人を永久追放。しかし彼らは規約の穴

  • 超映画批評『カンナさん大成功です!』90点(100点満点中)

    『カンナさん大成功です!』90点(100点満点中) 200 Pounds Beauty 2007年12月15日、シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQN、新宿バルト9 他 全国ロードショー 2006年/韓国/120分/配給:ワーナー・ブラザース映画 2007年韓国映画のベストワン いま韓国映画界では、"日流"なんて言葉があるくらい日の原作ものが大人気だが、彼らが鈴木由美子の少女漫画『カンナさん大成功です!』を映画化すると聞いたときは、思わずお茶を吹いた。 高見盛級のデブで、かつ不細工なカンナさん(キム・アジュン)は、大好きな歌の世界に飛び込んだものの、回ってきた仕事は人気歌手アミ(ソ・ユン)のゴーストシンガー。歌の下手なアミの代わりにレコーディングしたり、コンサートでは口パクに合わせて舞台裏で歌うのだ。そんなカンナはイケメンプロデューサー、サンジュン(チュ・ジンモ)に片思い中だったが

  • 超映画批評『スリザー』75点(100点満点中)

    『スリザー』75点(100点満点中) Slither 2007年12月8日(土)、有楽町スバル座ほか全国ロードショー 2006年/アメリカ/95分/提供:ポニーキャニオン、東宝東和 配給:東宝東和 ナメクジを全裸美少女のお口に ホラーはもっとも様式化されたジャンルの一つであり、精通した監督の手にかかればオリジナリティなどなくとも、相当面白いものができる。『スリザー』はその最高のお手のひとつだ。 アメリカ南西部の田舎町の山中に、隕石が落下した。現場近くで女性といちゃついていたグラント(マイケル・ルーカー)が見に行ってみたところ、卵のような未確認生物に襲われ、体内に侵入されてしまう。命は取り留めたものの、その日からグラントの体に醜い腫れ物が現れ、成長をはじめる。 これはほんの導入部。このあと大増殖したナメクジ生物が人々を侵。やがて脳を乗っ取られた人間たちが次々と周りに襲い掛かる。ヌメヌメと

  • 超映画批評『XX エクスクロス 魔境伝説』70点(100点満点中)

    『XX エクスクロス 魔境伝説』70点(100点満点中) 2007年12月1日、全国東映系にてロードショー公開 2007年/日/89分/配給:東映 スリラーではなく、天然ギャグ映画 アクション映画の名手、故深作欣二の息子、健太監督は、真面目に作ってもカルトやギャグにしてしまう、ある種の天然監督だと私はずっと思っていた。とくに前作『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』は、記録的大コケではあったものの、バカ映画ギリギリのアクション映画としてなかなかの出来栄えであり、彼の"才能"を生かすにはやはりこの道だなと予感させた。この新作『XX エクスクロス 魔境伝説』は、同じ娯楽映画としてさらに良い出来で、その成長ぶりは嬉しい限り。 親友の愛子(鈴木亜美)に誘われ、ひなびた温泉地、阿鹿里村(あしかりむら)を訪れた女子大生のしより(松下奈緒)。彼氏の浮気で傷ついた心を癒すべくやってきたが、村人の様子は

  • 超映画批評『沈黙の報復』65点(100点満点中)

    『沈黙の報復』65点(100点満点中) Urban Justice 2007年11月24日、東京・銀座シネパトス、大阪・天六ユウラク座ほか全国順次ロードショー 2007年/アメリカ/95分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 会話で笑わせる、沈黙シリーズ中でもかなりの佳作 全主演作で、無敗の大活躍を見せるスティーヴン・セガールの強さは、もはやギャグの粋に達している。実生活で、犯罪組織とのつながりを指摘されたFBIに対して、事実無根との抗議声明をだしたときにも、むしろ誰もが「これでFBIも壊滅だな」と思ったに違いない。 『沈黙の報復』は、そのセガール映画のあまりに非常識なムテキさ加減を、上手い具合に笑いに取り込んだ、ファンなら大ウケの一品。もちろん今回も、ストーリーやキャラクター設定そっちのけで、"スティーヴン・セガール"が大暴れするアクション映画であることは言うまでもない。 し

  • 超映画批評『ウェイトレス ~おいしい人生のつくりかた』70点(100点満点中)

    『ウェイトレス ~おいしい人生のつくりかた』70点(100点満点中) WAITRESS 2007年11月17日(土)よりシャンテシネ他全国順次ロードショー 2007年/アメリカ/108分/配給:20世紀フォックス映画 望まない妊娠、彼女の選択は……? 作品はエイドリアン・シェリーが監督した、はじめての日公開作品であると同時に、悲劇的な理由により最後のそれとなってしまった(後述)。 アメリカ南部の田舎町。小さなダイナーのウェイトレス、ジェンナ(ケリー・ラッセル)はパイ作りの名人。隣町のパイコンテストで優勝して、その賞金で人生を変えるのが夢だが、嫉妬深く乱暴なダメ亭主に自由を奪われていた。それでも長年少しずつ貯金をし、いよいよ町から逃げ出そうというとき、望まない妊娠が明らかになる。 ユーモアと女性の音に満ちた、幸福感溢れるドラマだ。ヒロインのジェンナはしょぼくれた田舎町で、お互い何の精彩

  • 超映画批評『フライボーイズ』80点(100点満点中)

    『フライボーイズ』80点(100点満点中) Flyboys 2007年11月17日 シアターN渋谷、ユナイテッドシネマ豊洲ほか全国順次ロードショー 2006年/アメリカ/138分/配給:プレシディオ 往年のヒコーキ映画の魅力を、最新の映像技術で 第一次世界大戦のころ、かたくなに中立を守っていたアメリカ合衆国の中に、様々な理由でフランス軍に参加した若者たちがいた。彼ら義勇軍の中には、当時まだ発明されたばかりの航空機のパイロットとなったものもおり、ラファイエット飛行隊と呼ばれ活躍した。 『フライボーイズ』は、そんな実話をもとにしたスカイアクション&歴史ロマンであり、独立系の作品でありながら製作費70億円という、堂々たる体躯の大作だ。 1916年、ドイツと激戦を繰り広げるフランス軍の宣伝映画に触発された米国人青年ローリングス(ジェームズ・フランコ)は、フランス空軍に志願。彼はテキサスのカウボーイ

  • 超映画批評『ボーン・アルティメイタム』85点(100点満点中)

    『ボーン・アルティメイタム』85点(100点満点中) The Bourne Ultimatum 2007年11月10日、日劇1ほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/115分/配給:東宝東和 このスパイ、速すぎ&強すぎ 『ボーン・アイデンティティー』(2002)『ボーン・スプレマシー』(2004)に続く三部作の完結編。ものわすれの激しい超人スパイが活躍する、ロバート・ラドラムのベストセラーの実写化だ。 さて、その主人公ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は、いよいよ失った記憶を取り戻しつつある。しかし、この職業にリクルートした理由やその前の人生について、なにより名など肝心の部分がいまだ思い出せない。殺し屋として多くの人を殺めてしまった罪の意識にさいなまれ、恋人の命を奪われる苦しみにも耐えながら、彼は自分探しの旅の終着点へとやってくる。 このシリーズはリアリティを感じさせる瞬殺の格闘

  • 超映画批評『ディスタービア』80点(100点満点中)

    『ディスタービア』80点(100点満点中) Disturbia 2007年11月10日(土)、スバル座ほか東宝洋画系にて全国ロードショー 2007年/アメリカ/1時間44分/配給:角川映画 角川エンタテインメント共同配給 宣伝:角川エンタテインメント DW劇場宣伝グループ 隣の女の子の着替えを覗いていたら、とんでもないモノが見えてしまった 隣の家に毎日ビキニで泳ぐ美少女が住んでいる。手元には双眼鏡もビデオカメラもある。家族は夜まで帰ってこない。さて、残された10代の少年は何をするでしょうか? そんな興味深い設定の『ディスタービア』は、徹底して若者向けに作られたスリラーで、その明快なコンセプトが全米で大いに受けた。確かにこれ、サイコーに面白い。 教師を殴って3ヶ月の自宅謹慎をくらった主人公ケール(シャイア・ラブーフ)は、自室から30メートル離れると自動的に通報、即警察がやってくる監視システム

  • 超映画批評『ALWAYS 続・三丁目の夕日』70点(100点満点中)

    『ALWAYS 続・三丁目の夕日』70点(100点満点中) 2007年11月3日(祝・土)全国東宝系ロードショー 2007年/日/カラー/146分/配給:東宝 昭和しあわせ博物館・第二幕 日々進歩するVFX。多くの映画監督はこれを未来世界など、見たことがないものを描くために使おうと考える。やがて一部の人々は、実在した過去を映像化するためにこそ、役に立つ技術だと気づく。しかしこのテクノロジーの専門家である山崎貴監督は、さらに一歩進んで、「どうせならその映像を最大のウリにしよう」と考えた。 その狙いは前作の大ヒットという形で大当たりした。当然である。それこそが、過去を舞台にした映画来あるべき姿だからだ。映画でなければ決して出来ない、丁寧に作られた、あるいは集められた調度品。広い撮影所いっぱいに立てられたオープンセット。美術スタッフの職人芸が遺憾なく発揮されたそういうものが、かつては映画

  • 超映画批評『タロットカード殺人事件』70点(100点満点中)

    『タロットカード殺人事件』70点(100点満点中) Scoop 2007年10月27日、シャンテ・シネ、Bunkamuraル・シネマ他にてロードショー 2006年/アメリカ、イギリス/96分/配給:ワイズポリシー このくらいで十分と思わせる良質なミステリ映画 最近のウディ・アレン映画は、面白いか否かより、ほとんど好きか嫌いかで評されるようなところがあったが、『タロットカード殺人事件』は久々に"面白い"一であった。 休暇でロンドンに来ているアメリカ人の女子大生サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、たまたま鑑賞した手品ショーで老マジシャンのシド(ウディ・アレン)から舞台上に呼ばれ、人体消失マジックのモデルにさせられる。巨大な箱に入れられたサンドラは、しかしそこでなぜか先日急死した有名記者の幽霊と遭遇、いま巷を騒がせている"タロットカード連続殺人事件"の犯人の名を告げられる。その後、なりゆき

  • 超映画批評『ヘアスプレー』90点(100点満点中)

    『ヘアスプレー』90点(100点満点中) Hairspray 10月20日(土)丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて公開 2007年/アメリカ/116分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ 近年最高のミュージカルムービー 入場者全員にサントラCDを配るわ、試写会招待状は派手にばらまくわと、宣伝GAGAの異様なまでの太っ腹ぶりが目立った作。東京を見下ろす、映画会社中ナンバーワンの瀟洒な試写室に招待された一般のお客さんも多かろう。公開までに見たいヤツは全員みちまうんじゃないかと思うほどの勢いは、しかしそれだけ作品の出来(今回はサントラのそれも)に自信があるということだ。一般に、期待はずれの作品の試写は少なく(知名度がある場合はいっそ行わず)、知名度はないがいい作品の場合は口コミ効果を期待して多くの人に見せたくなるものだ。 1962年、ボルチモア。超ポジティブでおデブな女子高生トレーシー(

  • 超映画批評『クワイエットルームにようこそ』75点(100点満点中)

    『クワイエットルームにようこそ』75点(100点満点中) 2007年10月20日より、シネマライズほか全国ロードショー 2007年/日/118分/配給:アスミック・エース 松尾スズキ監督の非情さが炸裂する怖い映画 女優は、私生活が波乱万丈なほど芸に深みが出るなどといわれる。もしそれが真実ならば、結婚生活で心身ともに苦労したといわれる内田有紀は、今の若手女優の中では今後の成長が見込まれる一人であろう。結婚引退後、離婚を経て復帰後初の主演作となるこの『クワイエットルームにようこそ』は、彼女のおそるべき演技力によって傑作として花開いた。 独身のフリーライター(内田有紀)は、人間関係や締め切りのストレスから、わずか数百文字の原稿が書けず行き詰っていた。やがて目覚めるとそこは一面、白い部屋。おまけに身体は完全に拘束されている。どうやら彼女は発作的に睡眠薬を大量摂取し、この精神病院の隔離病棟"クワイ

  • 超映画批評『キングダム/見えざる敵』75点(100点満点中)

    『キングダム/見えざる敵』75点(100点満点中) The Kingdom 2007年10月13日 全国東宝系にて一斉ロードショー 2007年/アメリカ/110分/配給:UIP映画 気軽な大作映画の中に真実をこめた必見作 中東において、米国のきわめて重要なパートナーのひとつに、サウジアラビアという国がある。なぜ短期間で占領が終わったイラクがいまだにグダグダしているのかなど、この地域での米国の不可解な政策行動を説明するために、絶対に欠かせない存在であるものの、これまでこの国を扱ったアメリカ映画はあまりに少なすぎた。 そんな中『キングダム/見えざる敵』は、格的な軍事アクションの形で中東情勢の質をさりげなく教えてくれる、良質な娯楽映画である。ちなみに今ハリウッドは中東ものが熱く、同様の作品が今後何も企画されているというから楽しみだ。 サウジアラビアで、外国人居住区を狙った自爆テロが発生、ア

  • 超映画批評『ストレンヂア -無皇刃譚-』70点(100点満点中)

    『ストレンヂア -無皇刃譚-』70点(100点満点中) 2007年9月29日、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー 2007年/日映画/カラー/102分/配給:松竹 シナリオは平凡だが、演出には光るものあり 劇場用アニメーションにおける時代劇アクションは、まだまだ開拓の余地があるジャンルの一つだ。少なくとも、ファンタジーやロボット、近未来ものに比べたら、ただそれだけで新鮮さを感じさせるだけの鮮度がある。『ストレンヂア -無皇刃譚-』を制作したアニメ会社のボンズは、そのあたりを重々理解したうえで、自分たちの作風をしっかりとこの個性的な映画に反映させた。 ときは戦乱の世。中国大陸から一人の孤児、仔太郎(声:知念侑李)がある禅僧に連れられ日にやってきた。同時に、仔太郎に隠されたある秘密を求め、明国の軍団も追ってきた。彼らと利害の一致を見た赤池城領主による連合軍に追われる途中、仔太郎はなぜか

  • 超映画批評『プラネット・テラー in グラインドハウス』70点(100点満点中)

    『プラネット・テラー in グラインドハウス』70点(100点満点中) Robert Rodriguez's Planet Terror 2007年9月22日よりTOHOシネマズ木、日比谷みゆき座系ほか全国順次ロードショー 2007年/アメリカ映画/上映時間:105分/配給:ブロードメディア・スタジオ タランティーノ版とセットで見比べるのも一興 9月1日から公開されている『デス・プルーフ in グラインドハウス』(クエンティン・タランティーノ監督)に続く、「往年のB級アクション映画の復刻版」第二弾。来この2は同時上映するために作られたが、日ではディレクターズカットとして長めに再編集され、おのおの単独で上映されることになった。こちらの監督はタランティーノの盟友、ロバート・ロドリゲス。 舞台はテキサスの田舎町。陸軍部隊長(ブルース・ウィリス)と怪しげな科学者による生物兵器の取引中、ト

  • 超映画批評『題名のない子守唄』85点(100点満点中)

    『題名のない子守唄』85点(100点満点中) La Sconosciuta 2007年9月15日、シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほか全国順次公開 2006年イタリア映画/121分/提供・配給:ハピネット/宣伝:ザジフィルムズ 衝撃的なオープニングと至福のラスト 『ニュー・シネマ・パラダイス』(89年、伊/仏)は、公開当時都内のミニシアターで驚異的な長期間上映が行われ、単館系の作品としては例外的な大ヒットを記録した。その名監督ジュゼッペ・トルナトーレによる、格的なミステリードラマがこの『題名のない子守唄』。邦題を見て、どうせテレ朝の長寿番組にあやかった流行のクラシック音楽映画だろと考えていた私は、あやうくこの傑作を見逃すところであった。 舞台は北イタリア。ウクライナからやってきたイレーナ(クセニア・ラパポルト)は、なぜかある金細工工房の向かいのアパートに入居を決める。しかも彼女は工房の経営

  • 超映画批評『ホステル2』70点(100点満点中)

    『ホステル2』70点(100点満点中) Hostel: Part II 2007年9月8日(土)より渋谷シアターN、新宿K's cinemaにて公開 2007年/アメリカ映画/94分/配給:デスペラード 怖さから面白さへチェンジ 全身を金粉メイクした芸人が"皮膚呼吸"できずに死んだとか、中国の見世物小屋で両手両足を切断されたダルマ女性が日語で助けを求めてきたとか、殺人場面を収録したスナッフビデオが高額で取引されているといった数々の都市伝説。そのほとんどは根拠のない嘘っぱちだが、「もしかしたらあるかもしれない」シンプルなリアリティが、我々の興味をひきつけてやまない。 そんな不気味ネタのひとつ、「金持ちの拷問同好会に、生贄となる若者を提供するホステル経営者」を、荒唐無稽さを抑えてホラームービーにしたイーライ・ロス監督『ホステル』の続編がこれ。万が一、都市伝説を信じてしまう純情な方が見たら、前

  • 超映画批評『デス・プルーフ in グラインドハウス』70点(100点満点中)

    『デス・プルーフ in グラインドハウス』70点(100点満点中) Quentin Tarantino's Death Proof 2007年9月1日、みゆき座系ほか全国順次ロードショー 2007年/アメリカ/113分/配給・宣伝:ブロードメディア・スタジオ 70年代B級アクション映画のレプリカ 米国と、日でも先月六木ヒルズで公開されたイベント上映『グラインドハウス』は、B級映画マニアとしてのクエンティン・タランティーノ(およびその仲間たち)らしい、遊び心に富んだ企画だった。 "グラインドハウス"とは、アクションやバイオレンス、セックスの要素を盛り込んだ安っぽいB級映画を2~3立てで短期間公開する興行形態の映画館のこと。今ではほぼ全滅したが、日にもかつては町にひとつくらいそんな映画館があった。ゴミひとつ落ちていない、総入れ替え制の綺麗なシネコン世代には想像できないかも知れないが、や

  • 超映画批評『シッコ』96点(100点満点中)

    『シッコ』96点(100点満点中) Sicko 2007年8月25日、シネマGAGA!他全国ロードショー 2007年/アメリカ映画/123分/提供・共同配給・ギャガ・コミュニケーションズ×博報堂DYメディアパートナーズpowered by ヒューマックスシネマ 今度は世の中を変えられるか? マイケル・ムーア監督の最新ドキュメンタリー「シッコ」は、期待を上回る物凄い映画であった。 左翼活動家兼ドキュメンタリー作家として社会問題を追い続ける彼の今回のテーマは「アメリカの健康保険制度」。先進国の中で最悪といわれる、悪名高いかの国の制度について、まずはなぜひどいのか、実例を示すところから映画は始まる。 成熟した国民皆保険制度の恩恵を受けている日人としては、到底信じられないような悲劇が何例も示され、「うわさには聞いていたがここまでひどいのか……」とショックを受ける。 しかもそうした悲劇は低所得層に

  • 超映画批評『ベクシル 2077 日本鎖国』65点(100点満点中)

    『ベクシル 2077 日鎖国』65点(100点満点中) VEXILLE 2007年8月18日全国ロードショー 2007年/日/カラー/109分/配給:松竹 こういう意欲作がどんどん増えたらいい かつて『Returner リターナー』(02年、山崎貴監督)と『ピンポン』(02年、曽利文彦監督)をみたとき私は、明らかに世界レベルのエンターテイメントを志向するこの二人の監督が、やがて邦画界を変えてくれるかもしれないと大いに期待した。 作品はまだ荒削りではあったが、ともにCGなどVFXの専門畑から監督業に進出してきた彼らからは、従来の映画監督にはない発想と、それを形にするだけの実力が感じられたものだ。なにより既存の枠組みから脱することをいとわぬ怖いもの知らずな勇気、面白いものを見せてやろうというサービス精神が作品からにじみ出ていた。 その後、山崎貴監督のほうは『ALWAYS 三丁目の夕日』で、

  • 超映画批評「ブラッド」65点(100点満点中)

    『ブラッド』65点(100点満点中) Rise: Blood Hunter 2007年8月11日、シアターN渋谷ほかにて公開 2007年/アメリカ/98分/R-15/配給:リベロ 擬似父娘関係がせつないホラードラマ 世に吸血鬼映画は数あるが、『ブラッド』は父と娘の独特の距離感による愛情を描くことをベースにしたことで、大人の観客が注目するに足る一になった。 敏腕記者セイディー(ルーシー・リュー)が、過去にカルト教団について取材した若い女性が殺された。不審に思ったセイディーは再度調査を始めるが、逆に教団関係者に拉致され殺されてしまう。だが、何らかの理由で吸血鬼として蘇生した彼女は、殺された娘の父親で刑事のローリンズ(マイケル・チクリス)と協力しながら、教団への復讐を開始するのだった。 この映画のみどころは、小型のボウガン片手にルーシーが跳び回るホラーアクションとしての立ち回りとか、あるいは彼

  • 超映画批評『トランスフォーマー』80点(100点満点中)

    トランスフォーマー』80点(100点満点中) Transformers: The Movie 2007年8月4日(土)全国一斉ロードショー 2007年/2時間25分/翻訳:松崎広幸/配給:UIP映画 父子で楽しめるカッコイイ軍隊&戦闘スペクタクル映像展 『トランスフォーマー』のような、超ド派手ノーテンキ超大作を見に行くということは、年に何度か遊園地に行って頭をリフレッシュするのと目的は同じだ。一見、大人がいくような場所(映画)には見えないかもしれないが、こういうものは現代人にとって定期的に必要なビタミン剤のようなもの。ただ、それを作るのは予想以上に難しいもので、良く効くビタミン剤は意外と少ない。 火星方面からやってきた謎の物体が、世界各地で人類を脅かそうとしていた。中東のカタールでは軍事ヘリが突然二足歩行ロボットに変形、米軍基地を壊滅に追いやった。一方、気弱な男子高校生サム(シャイア・ラ

  • 超映画批評『レミーのおいしいレストラン』85点(100点満点中)

    『レミーのおいしいレストラン』85点(100点満点中) Ratatouille 2007年7月28日、日劇3系公開 2007年/アメリカ/カラー/90分/配給:ブエナビスタ もっとも重視する"物語"を、圧倒的な技術力で支えるピクサーらしい作品 ディズニーの完全子会社となったピクサー・アニメーション・スタジオ最新作『レミーのおいしいレストラン』の主人公レミーはネズミであり、あろうことか親会社のメインキャラクター、ミッキーマウスと完全にかぶっている。 美味しいものが大好きで、天才的な料理の腕前を持つドブネズミのレミー(声:パットン・オズワルト)。彼は、いつかシェフとして腕を振るってみたいと夢見ながら、今は亡き有名シェフ、グストーの料理を愛読している。一方、そのグストーの店の新米料理人リングイニ(声:ルー・ロマノ)には、まったく料理のセンスがない。あるとき、リングイニの失態で店の大事なスープ

  • 超映画批評『アズールとアスマール』95点(100点満点中)

    『アズールとアスマール』95点(100点満点中) AZUR ET ASMAR 2007年7月21日(土)より渋谷シネマ・アンジェリカ他にて公開 2006年/フランス/99分/配給:三鷹の森ジブリ美術館 ドロドロした社会問題を、最高に美しい子供向けアニメに仕上げた恐るべき映画 全国公開される大作や、単館系の話題作をちょくちょく見ている、といった程度の映画好きの人に「オススメ教えて」といわれると、私は98年製作のフランスのアニメーション『キリクと魔女』あたりを教えることにしている。そして、たいていの相手から好評を得ている。 『キリクと魔女』は日でも03年に公開され、このサイトでも絶賛した記憶があるが、『アズールとアスマール』はそれと同じミッシェル・オスロ監督の新作。おのずと期待は高まる。 舞台はとあるヨーロッパの国から始まる。そこで暮らす金持ち領主の子アズール(声:シリル・ムラリ)と、そのア

  • 超映画批評『Genius Party ジーニアス・パーティ』70点(100点満点中)

    『Genius Party ジーニアス・パーティ』70点(100点満点中) Genius Party 2007年7月7日(土)シネリーブル池袋、渋谷シネ・アミューズ他 全国順次ロードショー!! 2007年/日/104分/配給:日活 日アニメの魅力がつまったオムニバス 短編を集めたオムニバスという形式は、全部が好みでなくとも楽しめるという点で、飽きっぽい人に向くと私は思っている。たとえ興味がなくとも15分待てば次が始まるのだ。120分間苦痛が続く可能性がある長編作品を見るよりは、圧倒的にリスクが少ない。 『Genius Party ジーニアス・パーティ』は、適度に前衛的・実験的な作品あり、万人ウケしそうな娯楽作品ありと、幅広いジャンルを誇るオムニバスアニメーション作品。真っ先に感じるのは、これだけいろいろなジャンルを平然と作ってのける日アニメ界の層の厚さと、これまたそれを平然と受け入れ

  • 超映画批評『屋根裏の散歩者』75点(100点満点中)

    『屋根裏の散歩者』75点(100点満点中) 2007年7月7日から13日、シアターN渋谷にてレイトショー 2006年/日/87分/配給:アートポート 嘉門洋子の演技とプロポーションは絶品 先週の「人間椅子」に続く、エロチック乱歩シリーズ第二弾。ミステリの古典である江戸川乱歩の原作を、現代風にアレンジした怪奇&エロティックなドラマだ。同名短編の映画化としては94年以来となる。 編集者の奈緒子(嘉門洋子)は、不気味な作風で知られる有名画家の取材で、彼が生前身を寄せていた東栄館なる洋館を訪れた。そこには一癖もふた癖もある人々が住んでいたが、唯一まともそうな少女マドカ(清水萌々子)の話によると、画家は屋根裏を好んでいたという。奈緒子は好奇心を抑えきれず、屋根裏を伝って住民らの部屋を覗きに行くが……。 のほほんと劇場の椅子に座っていると、冒頭から驚かされることになる。男性ではなく、女性主人公が他の

  • 超映画批評『ダイ・ハード4.0』90点(100点満点中)

    『ダイ・ハード4.0』90点(100点満点中) Live Free or Die Hard 2007年6月29日(金)、日劇プレックス他全国超拡大ロードショー 2007年/アメリカ/129分/配給:20世紀フォックス映画 CGの進化によるアクションシーンの迫力の違いが歴然 30代くらいの人に聞くと、ダイハード第一作目こそアクション映画の最高傑作と推す人が多い。ブルース・ウィリスの出世作となったあの88年の傑作には、確かに文句の付け所がない。今見たら私も100点を献上するだろう。 だが、この4作目も相当なものだ。コンセプトが違うので単純に比較はできないが、期待すべき点を誤らなければこれだけ面白い映画はそうない。 久々に会う愛娘ルーシー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に冷たくあしらわれたジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)は、部から近所に住む若いハッカーのマット(ジャスティン

  • 超映画批評『サイドカーに犬』85点(100点満点中)

    『サイドカーに犬』85点(100点満点中) 2007年6月23日(土)、シネスイッチ銀座、アミューズCQNロードショー 2007年/日/94分/配給:ビターズ・エンド、CDC 竹内結子最高傑作 竹内結子の結婚出産を経た復帰作となる『サイドカーに犬』は、これまでの主演作と同じく彼女の魅力にあふれているが、その中でも現時点における最高傑作ではないかと私は思う。 30歳の薫(ミムラ)は弟の結婚披露宴に、離婚した両親も出席すると知らされる。20年前、母が出て行った日のことを彼女は思い出した。と同時に、母と入れ替わりにやってきた不思議な女性ヨーコさん(竹内結子)の事も。ヨーコさんはカッコイイ自転車に乗った豪快な女の人で、まじめで厳しかった母とは対照的な性格。幼かった薫は、彼女から多大な影響を受けたのだった。 誰にとっても忘れられない人というのはいるものだが、この映画は80年代を舞台に、「出て行った

  • 超映画批評『ブリッジ』85点(100点満点中)

    『ブリッジ』85点(100点満点中) THE BRIDGE 2007年6月16日より恵比寿ガーデンシネマ他にてロードショー 2006年/アメリカ/93分/配給:トルネード・フィルム 映画史上有数の問題作 『ブリッジ』をすこぶる気に入った私は、すでにテレビや雑誌等いくつかの媒体で紹介してきたが、今日はここ超映画批評で初めて知ったという方のためだけに、まったく新しい形でこの映画の記事を書こうと思っている。 映画のタイトルは、サンフランシスコの観光名所ゴールデンゲートブリッジのこと。この作品は、あの美しいデザインのつり橋についてのドキュメンタリーである。 ……と、ここまでが私が作鑑賞前に知っていた予備知識のすべて。この映画がいったいどういう内容か、すでに知っている人は私が編をみたときどう感じたか、想像するだけでニヤニヤしてしまうことだろう。 じじつ、建設保守の苦労や感動秘話でたっぷり泣かせる

  • 超映画批評『きみにしか聞こえない』70点(100点満点中)

    『きみにしか聞こえない』70点(100点満点中) 2007年6月16日、池袋サンシャイン他全国ロードショー 2007年/日/107分/配給:ザナドゥー 加えたものはすばらしく、削ったものは致命的 乙一というミステリ作家の小説は、文章や構成はライトノベル的な子供向けの印象だが、その発想はなかなか鋭く、必死に読者を楽しませようというエンターテナー精神も旺盛なので個人的には好感度が高い。この映画の同名原作「きみにしか聞こえない」は彼の代表的短編のひとつだが、まさに上記の特徴が如実に現れた見所ある一篇だ。 リョウ(成海璃子)は学校で孤立しがちな女子高生。友達がいないからクラスでただひとり、ケータイを持っていない。ある日彼女は公園でおもちゃの携帯電話を拾うが、驚くべきことにそこに着信がはいる。恐る恐る出た電話の相手はリサイクルショップ店員を名乗るシンヤ(小出恵介)。やがて念じあうだけで通話できるこ

  • 超映画批評『あるスキャンダルの覚え書き』90点(100点満点中)

    『あるスキャンダルの覚え書き』90点(100点満点中) Notes on a Scandal 2007年6月2日、シャンテ シネほか全国順次ロードショー 2006年/イギリス/配給:20世紀フォックス 他人を支配する面白さをサスペンス仕立てに 密室殺人やアリバイトリックに縁のない、ごく普通の人々の生活の中にも、スリリングな局面というものは存在する。そんな「何も事件がおこらない」日常で、サスペンス映画を一作ってしまった、それが『あるスキャンダルの覚え書き』だ。 舞台はロンドン郊外にある労働者階級の中学校。頑固な性格で、毒舌と世間を斜に見る態度で孤立気味だったベテラン女教師バーバラ(ジュディ・デンチ)は、新任の若き美術教師シーバ(ケイト・ブランシェット)に目をつける。豊かな家庭の幸せなでもあり、高い教養と素直な性格をもつシーバとなら、友情を築けると直感したのだ。 さて、ホントは友達がほしか

  • 超映画批評『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』70点(100点満点中)

    『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』70点(100点満点中) Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan 2007年5月26日、渋谷シネ・アミューズほかにて公開 2006年/アメリカ/84分/配給:20世紀フォックス映画 単なるドッキリカメラにとどまらない社会派 作は、アメリカで爆発的な話題を呼んだ映画だ。しかしその特殊な性質から、日では公開すらしないのではないかと危ぶまれた一でもある。お国柄の違いといってしまえばそれまでだが、そのくらい"アメリカ人向け"に特化して作られた作品ということだ。 『ボラット』は、ジャンルで言えばモキュメンタリーということになる。モキュメンタリーとは、ドキュメンタリー"風"に撮られた作品のこと。事実を追いかけ

  • 超映画批評『イノセントワールド 天下無賊』75点(100点満点中)

    『イノセントワールド 天下無賊』75点(100点満点中) 天下無賊/ A world without thieves 2007年4月28日より渋谷Q-AXシネマにて公開 2004年/中国/1時間56分/配給:キネティック、アルゴ・ピクチャーズ 現代中国にたとえたがごとき構図と感動的なストーリー 国では記録的な大ヒットをしたにもかかわらず、日では話題にも上らないという映画は意外に多い。2004年に作られ、05年のお正月映画として中国でダントツの人気だった『イノセントワールド 天下無賊』もそんな一だ。しかし、そういう作品にこそ各国の大衆の当の好みが出ていると見るべきであり、鑑賞すれば彼らと同じ空気を味わえるという意味でたいへん興味深いといえる。 ワン・ポー(アンディ・ラウ)とその恋人ワン・リー(レネ・リウ)は、カップルで協力して詐欺や盗みを働くことを生業としている。しかし、リーは悪党稼

  • 超映画批評『ロッキー・ザ・ファイナル』70点(100点満点中)

    『ロッキー・ザ・ファイナル』70点(100点満点中) Rocky Balboa 2007年4月20日 TOHOシネマズ木他全国ロードショー 2006年/アメリカ/103分/配給:20世紀フォックス スタローンが命をかけて作った一 おそらく30代以上の男性にとって、ビル・コンティ作曲によるこのシリーズのテーマ曲『Gonna Fly Now』ほど心を奮い立たせるメロディはないだろう。あれが流れ、画面に巨大な「ROCKY」の文字がスクロールすれば、もはやそれだけで感無量、というほどほれ込んだファンも少なくない。 そんなロッキーシリーズもいよいよこれで大団円。前作パート5もそううたってはいたが、このシリーズを生み出したシルベスター・スタローン自身が「あれは失敗作、だからこれを作った」と語るとおり、さすがにこれ以降はなさそうだ。 ボクシングを引退したロッキー(シルベスター・スタローン)は、愛

  • 超映画批評『明日、君がいない』97点(100点満点中)

    『明日、君がいない』97点(100点満点中) 2:37 2007年4月21日、渋谷アミューズCQNにてロードショー 2006年/オーストラリア/99min./配給:シネカノン ほかのどんな巨匠にも作れない映画を目指した点が立派だ この職業をやっていると、毎日各社から膨大な数の試写状が届く。ためしに今手元にあるのを数えてみたら40枚以上あった。非常に残念だが、物理的な時間不足によりそのすべてを見ることは出来ない。やむなくスケジュールに合う中から、何か気になる作品を選ぶことになる。 私が『明日、君がいない』の試写会に行こうと思い立った最大の理由は、この映画の監督ムラーリ・K・タルリは、なんとこの映画を19歳のときに作り始めたという一点にあった。しかも、カンヌ国際映画祭で好評だったという。アカデミー賞よりカンヌの評価に共感する事が多い私としては、どうしてもこの作品を見ておきたかった。 舞台は現代

  • 超映画批評『リンガー! 替え玉★選手権』85点(100点満点中)

    『リンガー! 替え玉★選手権』85点(100点満点中) The Ringer 2007年4月21日より、シアターN渋谷にて過激にロードショー! 2005年/アメリカ/95分/配給:20世紀フォックス映画 明るい障がい者映画 『リンガー! 替え玉★選手権』は、五輪に合わせて開催される、知的障がい者たちによるスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス」を題材にした映画だ。 ……といっても、いま皆さんが想像したものと作は、恐らく大幅に異なるであろう。この映画は、一歩間違えばおそろしく不謹慎で失礼千万な、危険極まりないタブーすれすれを突っ走る作品である。 主人公の好青年(ジョニー・ノックスヴィル)は、自分の責任で友人が大怪我をしてしまい、莫大な治療費を何とか工面したいと思っている。そこで叔父に相談するが、ギャンブルで借金まみれのどうしようもないダメ男なので頼りにならない。それどころか、「スペシャル

  • 超映画批評『ツォツィ』75点(100点満点中)

    『ツォツィ』75点(100点満点中) TSOTSI 2007年4月14日より全国ロードショー 2005年/イギリス・南アフリカ/95分/配給:日活、インターフィルム 絶望の中で輝く希望の光 泥棒がひょんなことから誘拐した赤ちゃんの世話に振り回され、やがてそのピュアな微笑みに癒され更正していく……。アカデミー外国語映画賞を受賞した『ツォツィ』は、先週紹介したコメディ『プロジェクトBB』とまったく同じストーリーである。 舞台は南アフリカ、ヨハネスブルグのスラム街。主人公の少年ツォツィ(プレスリー・チュエニヤハエ)は仲間数名と窃盗団を組み、周りからも一目置かれるいっぱしのワルだ。ある日彼は、高級住宅街の主婦から強奪したBMWの後部座席に乳児を発見する。 当初は捨て置こうかと考えたツォツィは、しかし放っておけずに自分のあばら家に連れ戻る。とはいえスラム育ちの孤独な彼に、赤ん坊の世話などできるはずも

  • 超映画批評『ブラッド・ダイヤモンド』85点(100点満点中)

    『ブラッド・ダイヤモンド』85点(100点満点中) BLOOD DIAMOND 2007年4月7日(土)、サロンパス ルーブル丸の内他全国ロードショー 2006年/アメリカ/143分/配給:ワーナー 世界史最上級のタブーに切り込んだ勇気ある一 ダイヤモンドという宝石は希少で高価かつ透明に輝くピュアなイメージで、世界中の女性の憧れとされてきた。しかしその一方、採掘現場では奴隷同然の過酷な労働がまかり通っていたり、一部はテロリストたちの資金源でもあるという闇の部分も厳然と存在する。ダイヤモンドの原産地のほとんどで内戦など武力紛争が起きているのは、もちろん偶然ではない。 成功と美の象徴であると同時に、死と紛争の象徴でもあるこの宝石について、その闇の部分に鋭く切り込んだのがこの『ブラッド・ダイヤモンド』。しかし、マスコミやエンタテイメント業界にとって巨大なスポンサーである宝石業界を敵に回すことは

  • 超映画批評『プロジェクトBB』75点(100点満点中)

    プロジェクトBB』75点(100点満点中) Rob-B-Hood 2007年4月7日(土)より 六木シネマート・新宿オデヲンほか全国ロードショー 2006年/香港/126分/配給:UIP映画 泣ける度の高さは過去最高レベル ジャッキー・チェンは、30年以上にわってすべての主演作が日公開されている不世出の大スターだが、近年じつは尻に火がつき始めていた。それは、タイのアクションスター、トニー・ジャーの出現による。彼は『マッハ!』や『トムヤムクン』で、全盛期のジャッキーを上回る物凄いリアルスタントを見せ、ジャッキー・チェンに引導を渡すのは間違いなくこの男だろうと、全世界のアクション映画ファンに思わせた。 しかしジャッキーは男であった。新世代のスターの登場を受け彼が手がけたのは『香港国際警察/NEW POLICE STORY』。原点であり古巣の香港映画界に戻り、自身の最高傑作であるポリススト

  • 超映画批評『鉄人28号 白昼の残月』60点(100点満点中)

    『鉄人28号 白昼の残月』60点(100点満点中) 2007年3月31日より新宿武蔵館ほか全国順次ロードショー 2006年/日/95分/配給:メディアスーツ イメージを壊さず昔ながらの鉄人の魅力を伝えてくれる 横山光輝による漫画「鉄人28号」は何度も映像作品になっており、上は50代から下は10代まで幅広いファン層を持つ。こうしたコンテンツは、たいへん貴重かつ優良だ。たとえば、普段は映画など見ない家庭で子供がケロロ軍曹を見に行きたいと言っても、お父さんはなかなか重い腰を上げようとはしないだろう。しかしそれが鉄人28号であれば、「ほう、そういえばオレが子供の頃もやってたな。どうせ子供につき合わされるならこっちの方を見るか」となる。そんなわけでこうした吸引力のあるコンテンツは、大事に大事に育てていかなくてはならない。 しかし、最新のCG技術をふんだんに使い、満を持して公開された2004年の実写

  • 超映画批評『ホリデイ』60点(100点満点中)

    『ホリデイ』60点(100点満点中) The Holiday 2007年3月24日より日劇3ほか全国一斉ロードショー 2006年/アメリカ/135分/配給:UIP映画 主演4人の誰かのファンの人に いまどきラブストーリーなどというものは、その骨格はどれも同じであとはどう装飾するかだけが勝負といっても過言ではない。とくにハリウッドには、この手の映画にぴったりな世界的人気のあるスターが多数いるから、あとはいかに変わった(ロマンティックな)シチュエーションを用意するかが問題となる。 当代きっての4大人気俳優によるWカップルラブストーリー「ホリデイ」は、その題材として「ホームエクスチェンジ」を前面に持ってきた。これは、遠く離れた他人同士がインターネットを介在し、お互いの家を一定期間交換しあうという旅行形態の事だ。 ヒロインの一人アイリス(ケイト・ウィンスレット)はロンドン郊外に住む新聞記者。便利な

  • 超映画批評『デジャヴ』85点(100点満点中)

    『デジャヴ』85点(100点満点中) Deja Vu 2007年3月17日(土)より全国超拡大ロードショー 2006年/アメリカ/2時間8分/配給:ブエナ・ビスタ・インターナショナルジャパン ハイテク衛星システムの運用にローテクが必要という面白さ デジャヴとは、「一度も経験したことのないことが、いつかどこかですでに経験したことであるかのように感じられること」(三省堂・大辞林)という意味だが、実際のところ作の内容とそれはほとんど関係がない。 ではどんな映画かというと、一歩間違うと重大なネタバレにかかわるのでなかなか説明が難しい。間違っても言ってはいけない"ある一言"が、感想を投稿するサイトなどではフツーに書かれてしまっており思わず目を覆いたくなるが、一応マスコミ関係者には「ここから先のストーリーは絶対書かないでね」と通達が出ている。私も確かにそれは必要だと思う、そんな映画である。 海軍関係

  • 超映画批評『パラダイス・ナウ』70点(100点満点中)

    『パラダイス・ナウ』70点(100点満点中) Paradise Now 2007年3月10日より、東京写真美術館にて公開 2005年/仏・独・蘭・パレスチナ/90分/配給:アップリンク テロリストの最後の一日のすごし方 『パラダイス・ナウ』は、私たちがいわゆるテロリストと呼んでいる存在、とくに自爆テロを行う人間が、最後の一日をどう過ごすかを詳細に描いた異色のドラマだ。 テロは問答無用の悪だと考える人々にとって、人間としての彼らの行動原理を理解しようという試みはすべて受け入れられないものと見え、この映画に対しても激しい反対の署名運動が繰り広げられた。それが影響したのかその年(2005年)のアカデミー外国語映画賞は逃したものの、作が優れた映画作品であることに違いはない。 主人公の若者二人は長年の親友同士。彼らはパレスチナのイスラエル占領地ナブルスで自動車修理の仕事をしている。ロードプロックと

  • 超映画批評『秒速5センチメートル』85点(100点満点中)

    『秒速5センチメートル』85点(100点満点中) 2007年3月3日よりシネマライズにて公開 2007年/日/60分/配給:コミックス・ウェーブ 山崎まさよしの主題歌の歌詞を笑えない人に 『秒速5センチメートル』は、一言で言うとアニメ版『時をかける少女』を気に入った人なら、まず間違いなく満足する映画だ。 内容は、一人の少女を思い続けた男の十数年間を三話構成で綴った連作短編もので、上映時間は60分間。第一話は主人公の貴樹(声:水橋研二)と明里(声:近藤好美)の小学生時代から始まる。 舞台は東京の小学校。転校を繰り返してきた二人は、互いの境遇の類似からやがて特別な思いを寄せ合うようになる。明里が栃木の中学校に入ってからも仲良しのまま文通を続けていたが、1学期の終わりに貴樹の鹿児島への転校が決まる。貴樹は最後に明里に会うため、栃木県の小山の先まで向かうが、彼の乗るJR宇都宮線は記録的な豪雪に見

  • 超映画批評『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』90点(100点満点中)

    『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』90点(100点満点中) 2007年2月10日、日劇PLEXほか 2007年/日/配給:東宝 楽しめる層はかなり限定されるが、当てはまれば敵なしの面白さ この映画は「期待せずに見たら大当たり」という典型例のような作品であった。 とうとう破綻のときを迎えた日経済を救うため、ある 財務官僚(阿部寛)はタイムマシンでその発明者(薬師丸ひろ子)を1990年に送り込むことを決めた。バブル崩壊の引き金となった大蔵省通達、いわゆる総量規制を止めるためだ──というあらすじ自体は、なかなか面白そうと思ったものの、日立製作所とのタイアップによる「ドラム型洗濯機タイプのタイムマシン」などというバカげた設定をみて、どうせろくでもないバカ映画だろうと、高をくくっていたのだ。 むろん、上記ストーリーから一瞬連想するような社会派SF、すなわち経済問題等を過去からシミュレー

  • 超映画批評『守護神』80点(100点満点中)

    『守護神』80点(100点満点中) The Guardian 2007年2月10日、日劇1他全国ロードショー 2006年/アメリカ/139分/配給:ブエナビスタインターナショナル(ジャパン) 主演二人のどちらかのファン向け 日で大ヒットした『海猿』がハリウッドでリメイクされるという話をどこかで聞いて、それが頭の片隅にあったので、『守護神』のあらすじを聞いたときは「ああ、これがそうか」とずっと思っていた。……が、どうやらそれは違うらしい。沿岸警備隊の鬼教官に鍛えられる若き訓練生の訓練風景を主に描き、救命士としてデビューしたとたん、恐るべき難題に対峙するクライマックス。マジンガーZとテコンV程度のかすかな類似性は見受けられるものの、一応別物ということのようだ。 もう少し詳しく筋書きを書くと、ケヴィン・コスナー演じるこの教官は、これまで数百名を救ったと噂される伝説のレスキュー隊員。ところがある

  • 超映画批評『Gガール 破壊的な彼女』75点(100点満点中)

    『Gガール 破壊的な彼女』75点(100点満点中) My Super Ex-girlfriend 2007年2月10日(土)、日比谷みゆき座他全国ロードショー 2006年/アメリカ/95分/配給:20世紀フォックス ユマ・サーマン36歳のアイドル映画 この映画の魅力を知ってもらうにはどこかで予告編を見てもらうのが手っ取り早いのだろうが、残念ながら編の面白いところをほとんど出してしまっているので、先に見るのはよしたほうがいい。予告編を事前に見るなとは矛盾もいいところだが、映画体をより楽しむためには仕方がない。 いまニューヨークには、あらゆる事故、事件から市民を守る謎のスーパーヒーロー、いやヒロインがいる。Gガールと呼ばれる彼女(ユマ・サーマン)は、長身にブロンドヘアをなびかせ、音速並の速さでどこかから飛んでくる。そして無敵のパワーですべてを解決してしまうのだ。そんなGガールも普段は地味な

  • 超映画批評『世界最速のインディアン』80点(100点満点中)

    『世界最速のインディアン』80点(100点満点中) The World's Fastest Indian 2007年2月3日より全国ロードショー 2005年/アメリカ、ニュージーランド/127分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 骨董品のごときバイクで無謀な記録に挑戦したオヤジの物語 最近、実話の映画化が多いような気がするがコレもそのひとつ。バイクいじり暦ウン十年、三度のメシよりバイクが好き。近所から変人扱いされているそんな爺ちゃんが、あろう事か世界最高峰のスピードレースに挑戦するという話。映画はロードムービー風味の、心温まるさわやかな感動ドラマになっている。 舞台は60年代、ニュージーランドの片田舎インバカーギル。ガラクタだらけの家に独り暮らす初老の男バート・マンロー(アンソニー・ホプキンス)は、今日も隣に住む少年と一緒にバイクの改造に精を出す。少年から借りた肉切り包丁でタ

  • 超映画批評『幸せのちから』85点(100点満点中)

    『幸せのちから』85点(100点満点中) The pursuit of Happyness 2007年1月27日(土)より全国東宝洋画系にて 2006年/アメリカ/120分/配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント 結末を知ってると面白さ半減 手遅れかもしれないが、この映画に興味を抱いた人に、私からひとつ重要事項をアドバイスしたい。それは、もしアナタがこの作品の元となったクリス・ガードナーという男の実話の、とくに結末について何も知らないのならば、何も読まず聞かず 先に映画館に行ってきなさいということだ。 この記事では映画の後半部分についての言及は避けているが、世間に出回っている作の紹介記事は、なんの疑いもなく無邪気に結末まで書いてあるんだから参る。そりゃ、そこをアピールすれば多くの人が興味を持つだろうが、その代償として鑑賞時の満足度は著しくそがれていまう。 この映画で儲けたい宣伝会

  • 超映画批評『ルワンダの涙』75点(100点満点中)

    『ルワンダの涙』75点(100点満点中) Shooting Dogs 2007年1月27日(土)より全国順次公開 2005年/イギリス・ドイツ/115分/配給:エイベックスエンタテインメント 白人視点から描くルワンダ事件 昨年話題になった『ホテル・ルワンダ』と同じルワンダ虐殺事件を、別の切り口で描いた劇映画。あれだけの傑作の後発という厳しい立場ではあるが、なかなかどうして見ごたえのある一であった。 海外青年協力隊の一員としてルワンダにやってきた英国人青年(ヒュー・ダンシー)は、人格者で知られるクリストファー神父(ジョン・ハート)のもと、公立技術専門学校で英語を教えている。そんなある日、フツ族出身の大統領暗殺事件を契機として、ツチ族皆殺し作戦が開始された。この学校には国連軍が駐留し治安を守っていたため、彼らと神父を頼る膨大な数のツチ族住民らが逃げ込んでくるのだった。 別の切り口とは言うが、

  • 超映画批評『それでもボクはやってない』98点(100点満点中)

    『それでもボクはやってない』98点(100点満点中) 2007年/日/カラー/2時間33分/配給:東宝 すべての男が見るべき大傑作 2006年の総評でもちらと触れたが、昨年私が見た数百映画の中で、もっとも面白かった映画がこれである。痴漢冤罪という、誰にでも実感できる切り口で日の刑事裁判の抱える問題点を描いた社会派映画。しかしながら堅苦しさはゼロで、娯楽度満点。先が気になる度がきわめて高いストーリーと、へぇ連発のディテール。どこをとっても完璧に限りなく近い、まさしく年度を代表する傑作といえる。 主人公のさえないフリーター(加瀬亮)は、満員電車から降りたとたん女子中学生に手首をつかまれた。駅員室に連れて行かれた彼は、覚えのない痴漢を頑強に否定。すると警察がやってきて留置され、そのまま裁判を闘うことになるのだった。 この映画の上映時間は147分。一見長大に思えるが体感時間はその半分程度、

  • 超映画批評『鉄コン筋クリート』75点(100点満点中)

    『鉄コン筋クリート』75点(100点満点中) TEKKON KINKREET 2006年12月23日(祝)、渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー 2006年/日/カラー/111分/配給:アスミック・エース 難しい原作を違和感なくアニメ化した アニメーションというものが面白い理由は、ひとえに絵が動くから。実写では何の感動もない人物の単純な動作でさえ、それなりに面白く見られるのは、この"絵が動く"という原始的な驚きをいまだに我々が感じるからといっても過言ではない。 むろん、そんな単純化ができるほど現在のアニメーション作品は簡単なものではないが、それでも『鉄コン筋クリート』のような(そう簡単にアニメ化できそうにない)個性的な絵柄をいとも簡単に動画にしてしまった作のような映画を見ると、そんな娯楽性の原点を意識せずにはいられない。 昭和的な懐かしさを擁しながらも非現実的な架空の街「宝町」

  • 超映画批評『硫黄島からの手紙』90点(100点満点中)

    『硫黄島からの手紙』90点(100点満点中) 「Red Sun, Black Sand」2006/アメリカ/配給:ワーナー映画 2006年12月9日(土)丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー 見終わって大いに考えさせられる一 米国を代表するスターであり映画監督のクリント・イーストウッドは、保守的な思想を持つ人物として広く知られている。しかし意外にも彼が作る映画は、思想的に極端に偏ることがなく、公平かつ冷静な視点で物事を見たものが多い。 今回二部作として映画化される史実、"硫黄島の戦い"は、私たち日人も当事者の一方であるが、彼のような監督が撮るという事には、一種の安堵感すら感じられる。とくに、プロパガンダくさい戦争映画を嫌う観客(例:『パール・ハーバー』のトンデモ度の高さに閉口した皆々様)にとっては、なおさらだ。 さらに、現在公開中の序章にあたる『父親たちの星条旗』を観

  • 超映画批評『007/カジノ・ロワイヤル』80点(100点満点中)

    『007/カジノ・ロワイヤル』80点(100点満点中) リアル志向のスパイ映画に立ち返り大成功 英国の紳士的なスパイの活躍を描く『007シリーズ』は、これまで色々なやり方でマンネリ打破に挑んできた。それは007が、イアン・フレミングによる原作からの根強いファンを多く抱えるとはいえ、すでに年間有数のビッグバジェットシリーズとなった以上、その期待にこたえつつも、常に若い新しいファンを取り込んでいかねばならない宿命にあるからだ。オジサン相手の古臭い古典と思われたら、そこでシリーズの命運は尽きるのだ。 そのため、主人公のジェームズ・ボンド役を数作ごとに変更、リフレッシュしたり、話の展開を派手にするなど様々な試みが行われた。しかし、ボンドが宇宙にまで進出したり、VFX満載で人間離れした動きを見せるアクションシーンは、スパイムービーとしての質を大きく逸脱しており、主演俳優の変更とてその手法自体がマン

  • 超映画批評『イカとクジラ』75点(100点満点中)

    『イカとクジラ』75点(100点満点中) あまりに鋭すぎる人間観察眼、そして心温まる結末 タイトルから内容がまったく想像できない映画だが、アカデミー脚賞にノミネートされるなど、その細やかな人間描写が米国で高く評価された一。万人向けではない内容だから公開規模も小さいが、その質の高さから私も強くこの作品を買っている。 舞台は1986年のニューヨーク。主人公一家は、夫婦ともに作家。しかし、脚光を浴び始めた(ローラ・リニー)に対し、夫(ジェフ・ダニエルズ)は現在まったくなかず飛ばず、長いスランプに陥っていた。しかしかつての栄光のせいでプライドだけは異様に高く、彼女を認めてやることができない。やがて二人は離婚、父に心酔する息子ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ)と、母親っ子のフランク(オーウェン・クライン)を巻き込み、家族は真っ二つに分かれてしまう。 この4人の心理を徹底したリアリティで描く優

  • 超映画批評『暗いところで待ち合わせ』75点(100点満点中)

    『暗いところで待ち合わせ』75点(100点満点中) 田中麗奈の演技力と魅力によって傑作となった 一人暮らしする盲目の女性の家に、犯罪者が侵入して一方的な同居生活をはじめる。そんな斬新で実感の伴う魅力的な設定を持つミステリの映画化。原作の乙一は17歳という若さでデビューした人気作家で、この原作も彼が23歳のころに出したものだ。 ヒロインは事故で視力を失った若い女性ミチル(田中麗奈)。やがて最愛の父(岸部一徳)も死に、住み慣れた一軒家で一人暮らしをすることになる。そんなある日、家のすぐ前の駅のホームで、男が突き落とされ死亡する事件がおきる。そしてその直後、警察から追われる在日中国人のアキヒロ(チェン・ボーリン)がミチルの家に忍び込み、彼女の知らぬままその部屋の片隅に息を潜めて座り込むのだった。 盲目のヒロインが知らぬうちに、殺人事件の容疑者と同居するという奇妙な物語だ。侵入者はしかし彼女の暮ら

  • 超映画批評『パプリカ』75点(100点満点中)

    『パプリカ』75点(100点満点中) 高いアニメーション技術と演出力、声優による、世界レベルのジャパニメーション 今敏(こんさとし)監督と、アニメ制作会社のマッドハウスは、これまで数々の良質な大人向けアニメーションを発表してきた。ホームレスたちの感動ドラマ『東京ゴッドファーザーズ』(2003)、アイドル界を舞台にした異色のサイコホラー『PERFECT BLUE』(1998)、そして衝撃のラストで観客を突き放す『千年女優』(2001)と、ひとつも外れがない傑作ばかり。そんなわけで私が、日の劇場用アニメ監督の中でもっとも打率が高いと考えているのがこの監督だ。 そんな彼の最新作は、映像化は困難といわれつづけてきた筒井康隆の同名小説をアニメ化した『パプリカ』。これもまた、期待を裏切らないハイレベルな作品であった。 患者の見ている夢を映像化し、潜入できる画期的な機器"DCミニ"。精神医療研究所の研

  • 超映画批評『トゥモロー・ワールド』90点(100点満点中)

    『トゥモロー・ワールド』90点(100点満点中) 8分間ワンカット、映画史に残る衝撃の映像体験 環境ホルモンや電磁波の影響と思われる若い男性の精子の減少、女性の社会進出による晩婚化、そして格差社会による低所得者層の増加に伴い、少子化が叫ばれて久しい。しかしながらこの『トゥモロー・ワールド』の世界は、少子化を飛び越えて"無子化"になってしまった近未来だ。 舞台となるのは西暦2027年。この時代の人類最年少はなんと18歳。つまり18年間、新生児は誕生していない。原因は不明で、希望を失った世界には内戦やテロが頻発し、国家はことごとく壊滅状態に。ほぼ唯一、強力な軍隊で国境を守る英国だけが、ぎりぎりの秩序を保っている状況だ。 さて、主人公の官僚(クライヴ・オーウェン)は、かつて共に学生運動を戦った元(ジュリアン・ムーア)率いる反政府組織に拉致される。聞くと、彼女らが保護する移民集団のひとり、ある黒

  • 超映画批評『父親たちの星条旗』70点(100点満点中)

    『父親たちの星条旗』70点(100点満点中) イーストウッドらしい、静かでセンスのいい戦争映画 日米が戦ったあの戦争の中で、もっとも重要かつ激戦だった戦場のひとつに、硫黄島の戦いがある。第二次大戦を通して、米軍側の勲章のほとんどがこの戦闘の功労者に与えられたことからもわかるとおり、硫黄島は両国にとって重要な戦略拠点であった。 映画の中でも説明されているが、簡単にいうと日にとっての硫黄島は、土爆撃に向かう米軍側長距離爆撃機に対する警戒基地の役割を果たしていた。このおかげで日軍は、土で十分な迎撃・避難体制をとることができていたのだ。ところが硫黄島が落ちてからは、この場所が米軍の重要な補給、そして爆撃機を護衛する戦闘機の基地となり、日土はみるみる焼け野原と化していった。 この戦いを、二部作として描くことを決めたのが、いまや米国を代表する巨匠クリント・イーストウッド(「ミリオンダラー・

  • 超映画批評『ホステル』95点(100点満点中)

    『ホステル』95点(100点満点中) 空腹時に見て吐きそうになったほど怖い映画だが、きっと満腹時でもヤバいだろう 『ホステル』は久々に味わったすごい映画だ。単純に筋書きが面白いだけでなく、その演出の巧さにも舌を巻く、すばらしい映画作品であった。 欧州をバックパッカーとして貧乏旅行している米国人の大学生コンビは、途中で陽気なアイスランド人と知り合い、3人でオンナ漁りのバカ旅行を楽しんでいた。あるとき彼らは、スロバキアの田舎町に、目くるめくような快楽を得られるホステル(若者向きの安宿)があるという噂を聞く。麻薬とオンナには目のない彼らが早速訪れてみると、そこは予想を越えたキモチイイ異文化があった。 なんとも不気味な、東欧独特の雰囲気の漂うそのホステルにつくと、あいにく相部屋だといわれる。意気消沈して3人が部屋に向かうと、なんとそこには着替え中の巨乳ギャルがおり、ルームメイトだと告げる。しかもこ

  • 超映画批評『スネーク・フライト』70点(100点満点中)

    『スネーク・フライト』70点(100点満点中) B級パニックアクションのキモを完璧に理解したつくり 飛行機という乗り物は、人間が能的に恐れる乗り物のひとつだ。あの鉄の塊が、いかなる技術でもって空を飛ぶのか、理解できない人間はもちろん、わかっていてもなんとなく怖い。なにしろ墜落事故はおきたが最後、老いも若きも一巻のおわりなのだから。 そして蛇。これも人間が能的に嫌う動物の代表格といえる。てらてらと光る表面。くねくねと、手も足もないくせに異様にすばやい動き。おまけに一撃必殺の毒をもち、自分より巨大な獲物を丸呑みする常識はずれな習性……。 では、この二つが同時に襲ってきたらどうなるか。墜落の危機に瀕した空の密室、旅客機内に、数え切れないほど多数の毒蛇が放たれる。まさに、パニック必至。そんな映画が「スネーク・フライト」だ。 腕利きのFBI捜査官(サミュエル・L・ジャクソン)は、重要証人(ネイサ

  • 超映画批評『トリスタンとイゾルデ』75点(100点満点中)

    『トリスタンとイゾルデ』75点(100点満点中) 見ごたえたっぷり、さすがの王道 恋愛というものは、たいてい障害があるほど燃える。背徳は最高の媚薬といわれる通り、他人から反対されればされるほど、その恋の価値も上がるというもの。ときには障害がなくなったとたん、恋心もさめてしまったなんていう、意味不明な経過をたどることも少なくないが、それはまさに質を見失うほど"障害=媚薬"が魅力的だった、ともいえるわけだ。 さて、中でも最高なのが"決して許されぬ立場同士の恋"。これはもう、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をはじめとする、古今東西のあらゆる恋愛物語の基形。しかし、それらの悲劇物語に"オリジナル"がある事をご存知だろうか。 それこそが『トリスタンとイゾルデ』。1500年以上も前のケルトの伝説をもとにまとめられたこの物語が、いよいよ映画化された。 イングランドの若き騎士トリスタン(ジェー

  • 超映画批評『16ブロック』75点(100点満点中)

    『16ブロック』75点(100点満点中) ラストショットがうますぎる 平凡な映画でも、はっとさせるワンシーンがあると、すべてをチャラにしてあげたくなる場合があるが、もっとも重要とされるラストシーンがそうした「至福の瞬間」であった場合、評価に与える影響はより大きい。『16ブロック』はまさしくそんな作品で、これはもう、最後のワンカットを味わうためにすべてが作られているかのような、そんな映画である。 ニューヨーク市警のベテラン警官(ブルース・ウィリス)は、捜査中の事故で足を悪くし、今では酒びたりの堕落した日々を送っているが、ある日裁判所まで、証人(モス・デフ)の護送を頼まれる。目的地まではわずか16ブロック。15分もあれば済む用事のはずだったが、彼らは途中で猛烈な攻撃を受け、命がけの逃亡劇を繰り広げることになるのだった。 映画のテンプレートとしては、おしゃべり黒人のお調子者のチンピラと、気難しい

  • 超映画批評『ワールド・トレード・センター』70点(100点満点中)

    『ワールド・トレード・センター』70点(100点満点中) あきらかに時期尚早なわりには、なんとか見ごたえある大作に仕上げた アメリカ同時多発テロ事件から5年、事件を直接の劇映画として描く試みが、続々行われている。この『ワールド・トレード・センター』もそのひとつ。 実体験を元にベトナム戦争の過酷な現実を描いた『プラトーン』(86年)、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件を、陰謀論の観点から追った『JFK』(81年)など、社会派作品で知られるオリバー・ストーン監督が、大掛かりな予算をかけて作った作品だ。 2001年9月10日。普段どおり勤務についた港湾警察のジョン・マクローリン巡査部長(ニコラス・ケイジ)。やがて彼の耳に、WTCに航空機が突っ込んだとの信じがたい報告が入る。わけもわからず現場に急行した彼は、部下のウィル・ヒメノ(マイケル・ペーニャ)らとともにビル内に救出作業に向かうが、そのとき建

  • 超映画批評『カポーティ』70点(100点満点中)

    『カポーティ』70点(100点満点中) 他人の人生にかかわる怖さを描いた、見ごたえあるドラマ トルーマン・カポーティという人は、ノンフィクション小説のパイオニア。彼が、1959年におきたカンザス州一家4人惨殺事件の犯人に獄中取材し書き上げた『冷血』は、大ベストセラーとなり、世間に衝撃を与えた。映画『カポーティ』は、その執筆過程を丹念に追った伝記ドラマだ。 1960年、殺人犯スミス(クリフトン・コリンズ・Jr)の存在を知った作家カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、彼が起こした事件を次回作の小説にすべく、何度も接触を試みる。彼は、親身になって話を聞いてやり、やがてスミスに心を開かせることに成功する。ところがカポーティはその裏で、彼を信頼して真実を打ち明けたスミスを裏切るような内容の小説を書いていた。 できれば題材となっているカポーティの小説『冷血』や、彼の盟友であるネル・ハーパー・

  • 超映画批評『天軍』60点(100点満点中)

    『天軍』60点(100点満点中) 外国映画を見る醍醐味を味わえる一 近代的装備を身につけた現代の陸軍が、16世紀にタイムスリップしたらどうなるか。そんな、いまだかつてない斬新なアイデアを、ミン・ジョンギ監督は(千葉真一の映画ではなく)朝鮮の古い歴史書から思いついたという。彼はやがてそれを、歴史SF軍事アクションとして映画化した。それが韓国の『天軍』だ。 この映画、冒頭から凄い。北朝鮮韓国歴史的和解をし、金正日と金大中が仲良くしている映像から始まるのだが、その後なんと彼らは、南北連合軍として極秘地下施設で核ミサイルの共同開発に成功する。やがてその、米国の早期警戒システムでさえ探知できない(!)世界最高のハイテクミサイルシステムの完成を知った悪の大国、日米中は、強大な軍事力に物を言わせ、その引渡しを要求してくるのだ。相変わらず韓国映画界は、妄想のスケールがでかい。もちろん、反日、反米発言

  • 超映画批評『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』65点(100点満点中)

    『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』65点(100点満点中) いかにもアメリカ人が作った、いいかげんなニッポン描写が楽しい 『ワイルド・スピード』シリーズは、一言でいえばハリウッド製ヤンキー映画。毎回どこぞの街を舞台に、チョイワルな若者たちが改造車の公道レースに命をかける。シリーズのどれを見ても、ピカピカのカラフルなレースカーが爆音をあげる、迫力満点のチェイスシーンが見所になっている。クルマ好きのカップル向き娯楽映画だ。 このパート3最大の話題は、舞台が東京ということだろう。アメリカ映画界が日を舞台にした映画を作ると、妙な勘違いによる独特の奇妙なムードが生まれることがよくあるが、この映画もまさにそれ。この映画を世界で一番楽しめるのは、おそらく日人、それも東京をよく知る人だろう。 主人公はカリフォルニアの高校生(ルーカス・ブラック)。無類のクルマ好きを自認する彼は、今日も引

  • 超映画批評『X-MEN:ファイナルディシジョン』85点(100点満点中)

    『X-MEN:ファイナルディシジョン』85点(100点満点中) デパ地下を楽しむがごとく、キャラの魅力をつまみい アメコミ映画といえば、『スーパーマン』の最新作がかなりの出来栄えで好評公開中だが、この『X-MEN』シリーズも華やかさの面では負けていない。いや、一人一人がスーパーマンに匹敵するくらい奇抜な能力を持つキャラクターの群像劇である作は、派手さの点ではアメコミ映画の頂点に位置するといってもよい。そんな『X-MEN』の最終第3章、あまりに切なく、そしてドラマティックな『ファイナルディシジョン』がいよいよ公開となる。 ミュータントとの全面戦争を避けたい人類は、ついに治療薬、キュアを開発した。これを使えば、ミュータントたちは完全に普通の人間に戻るのだ。能力を失う事を恐れるマグニートー(イアン・マッケラン)とその仲間たちは、すぐにキュア生産のカギとなる少年の拉致に動く。 『X-MEN』の

  • 超映画批評『グエムル-漢江(ハンガン)の怪物-』75点(100点満点中)

    『グエムル-漢江の怪物-』75点(100点満点中) 韓国らしい、すこぶる面白い怪獣映画 この映画には、久々に腹が痛くなるほど笑った。「ほえる犬は噛まない」「殺人の追憶」といった佳作で知られるポン・ジュノ監督による韓国製怪獣映画『グエムル -漢江の怪物-』のことだ。 この映画の舞台、漢江とはソウルを南北に分けるように流れる穏やかな河川。観光スポットなので、休日には家族連れやカップルがたくさん集まる。主人公はその川っぺりで売店を営む一家。まったく勤労意欲のないダメ父(ソン・ガンホ)がダラダラしていると、突然漢江からカエルの化け物のような怪獣=グエムルが現れ、人々をぱくぱくべはじめる。逃げ惑う中、父は娘(コ・アソン)がグエムルに連れ去られるのを見る。 さて、ここから先は、頼りにならぬ軍や警察に代わり、一家が怪物と対決するという予想通りのストーリーが展開されるが、父親を無敵のヒーローにしてしまい

  • 超映画批評『40歳の童貞男』70点(100点満点中)

    40歳の童貞男』70点(100点満点中) 下ネタで笑いまくろう 近年、比較的高年齢な男性の童貞率が話題になっている。週刊誌などで見たところによると、40歳の約10%が童貞なのだそうだ。カトリックのような厳しい戒律がある宗教とはほとんど縁のない日では、とくに童貞という事実は重荷となって男性の背中にのしかかる。そこで公開されるのが『40歳の童貞男』。秀逸な邦題が話題の、アメリカ製コメディ映画だ。 テレビゲームやフィギュア収集が趣味のアンディ(スティーヴ・カレル)は、マジメすぎる性格がたたって40歳の今も童貞。しかも、悪いことに職場の悪友3人組に、その事実を知られてしまう。翌朝には、早くも職場全員に知れ渡ってしまった上、なんとか童貞喪失させてやろうという周囲の余計なお世話に悩まされる羽目に。アンディとしては、彼らが紹介するナンパな女性たちより、誠実でやさしい向かいのショップ店員(キャサリン・

  • 超映画批評『イヌゴエ』90点(100点満点中)

    『イヌゴエ』90点(100点満点中) 楽しくて心温まる、幸せになれる映画 犬の考えていることが人間の言葉でわかったら、どんなに面白いだろうという妄想は、犬好きなら一度はしたことがあるはずだ。そして、それをそのまま映画にしたのがこの『イヌゴエ』。登場する無愛想なフレンチブルドッグの「心の声」が、主人公に聞こえてくるというのがメインアイデアだ。 この主人公は、臭気判定士(この資格は実在する)として働く青年(山浩司)。彼は、人間としてはずば抜けた嗅覚を持ち、鋭敏過ぎて普段はマスクをしていないと生活できないほどだった。そんなある日、彼は父親から、拾ったフレンチブルドッグを旅行の間預ってくれと頼まれる。臭いに敏感な彼にとって、犬などとんでもないと断ったが、父は勝手にアパートに犬を置いて出かけてしまった。 ここから彼と犬の共同生活が始まるのだが、この主人公、なんとこの犬の心が「声」として聞こえること

  • 超映画批評『ハイテンション』85点(100点満点中)

    『ハイテンション』85点(100点満点中) おどろくほどテクニカルな構成の高品質ホラー マンネリ化していたスプラッターホラー界に、フランスから切れ味鋭い新鋭監督が現れたと大変な話題になったのがこの『ハイテンション』。大味なハリウッドものとは違って、フランス映画らしい緻密な恐怖描写とプロットで、高い評価を得た作品である。 女子大生のマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、郊外にある親友のアレックス(マイウェン)の実家に滞在して、試験勉強をする予定だった。ところが到着したその晩、不気味な中年男の殺人鬼(フィリップ・ナオン)が現れ、家族を惨殺し始める。いち早く男の侵入に気づいたマリーは、アレックスの身を心配しつつも、別の部屋にいる彼女へ知らせることもできず、ひとり物陰に隠れて息を潜めるのだが……。 くると思わせなかなかこないショックシーン、血しぶき大量なのに笑いゼロ(スプラッター映画はときにギャグ映

  • 超映画批評『スーパーマン リターンズ』85点(100点満点中)

    『スーパーマン リターンズ』85点(100点満点中) クリストファー・リーヴもこれなら満足に違いない スーパーマンは、アメコミにおけるヒーローの元祖であり、その代名詞的存在だ。日では、70年代~80年代にかけて、クリストファー・リーヴ主演で映画化された作品がもっとも印象に残っている映像化と思うが、作はそれを引継いだ、正当なる続編にあたる。 アメコミが続々と映画化されているハリウッドにおいても、スーパーマンだけは別格。この巨大なプロジェクトの完成までには、監督や脚家、主演、助演俳優候補が何人も現れては消え、ストーリーも何年間もかけ、じっくり練られていった。 スーパーマン(ブランドン・ラウス)が地球を去ってから5年。彼が再び戻ってきたとき、地球は変わっていた。犯罪は急増し、善良な人々もヒーローの存在を忘れ、恋人のロイス(ケイト・ボスワース)は別の恋人を作り、子供もいた。失意の彼を、やがて

  • 超映画批評『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝』75点(100点満点中)

    『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝』75点(100点満点中) 日が誇るアクションスター2人の初対決 千葉真一と倉田保昭。彼らは、国内はもとより、それぞれ欧米やアジアで高い評価を得ている日人アクションスターだ。たとえば千葉真一は、出演した「キル・ビル」でタランティーノ監督から最大級の敬意を捧げられているし、和製ドラゴンこと倉田保昭は、かのブルース・リーに、のちに彼の代名詞的存在となるヌンチャクを紹介した人物としても有名だ。 そんな二人が共演し、なんとスクリーン上で対決する。これは、史上初めてのことである(共演自体は過去にもある)。『マスター・オブ・サンダー』は、そのことの価値がわかるアクション映画ファンこそが最大のお客さん、という作品である。 倉田保昭が演じるのは、1400年間怨霊(松村雄基)を封じ込めてきた五重塔を守る和尚。永き戦いの末、仲間たちは倒れ、今では彼が最後の砦と

  • 超映画批評『紙屋悦子の青春』80点(100点満点中)

    『紙屋悦子の青春』80点(100点満点中) 黒木和雄監督の遺作は、素晴らしい"日映画"だった 『美しい夏キリシマ』『父と暮せば』といった映画で平和と反戦を訴えてきた、黒木和雄監督の遺作。劇作家の松田正隆が、自らの母親の体験談を元にした戯曲が原作となっている。 昭和20年の鹿児島。両親を亡くした紙屋悦子(原田知世)は、兄夫婦とつつましく暮らしていた。彼女は、兄の後輩である海軍航空隊の明石少尉(松岡俊介)に想いを寄せていたが、よりにもよってその親友、永与少尉(永瀬正敏)との縁談が持ち上がる。 快活な性格の明石は、悦子を大切に思っている。彼とは反対に、女性の前では何も話せなくなるウブでオクテな永与も、心やさしい悦子へ好意を寄せている。悦子は明石に想いを寄せながらも、そんな永与を人間的に好いている。 3人の思いは、それぞれとても美しいもので、見ていて心洗われる思いである。戦時下のつつましい暮らし

  • 超映画批評『ハード キャンディ』70点(100点満点中)

    『ハード キャンディ』70点(100点満点中) ナンパ経験者の男性に観てほしい 『ハード キャンディ』は、全世界の男性にとって猛烈に恐ろしい映画だ。低予算で作られてはいるが、安っぽさは微塵も感じさせず、その面白さは100億円クラスの超大作をはるかに上回る。とくに、合コンやら出会い系やらで、女の子と遊んだ経験のある男性ならば、グイグイと引き込まれてしまうに違いない。 主人公はカメラマンの30代男性(パトリック・ウィルソン)。彼の趣味は、出会い系サイトで少女を引っ掛けること。今日も見事14歳とアポとりに成功、しかも、面接してみたらこれがなかなかの美少女(エレン・ペイジ)、おまけに頭の弱そうなガキだから楽勝だ。適当に誉めそやし、口車に乗せ、見事自宅に連れ込む彼。少女は年の割になかなか乗り気で、SMプレイなんかもいける口らしい。ところが、緊縛プレイに付き合って、テーブルに縛り付けられた彼の股間=タ

  • 超映画批評『ハチミツとクローバー』70点(100点満点中)

    『ハチミツとクローバー』70点(100点満点中) 一般人ウケを捨て、ファン向けに特化した潔さ 今年の夏映画は、アニメーション作品や漫画が原作の映画が目立つが、この『ハチクロ』も、羽海野チカ作の少女漫画の実写化。美術大学を舞台に、等身大の若者たちを描く群像劇で、『NANA』と並び話題に上ることが多い人気作だ。 美大教師、花修司(堺雅人)の研究室に入り浸る美大生、竹(櫻井翔)は、先生の親戚の少女、はぐみ(蒼井優)に一目ぼれする。しかし、変人ながら圧倒的な才能を誇る先輩、森田(伊勢谷友介)も、どうやら彼女に思いを寄せているようだ。竹は、はぐみに強く好意を寄せながらも、はぐみと森田、二人の天才同士の世界に入り込めず、疎外感を感じていく。 『ハチミツとクローバー』は、よく引き合いに出される『NANA』に比べると、やや低年齢向きという印象を受ける。それは、登場人物から性欲というものが一片も感じら

  • 超映画批評『ラブ★コン』85点(100点満点中)

    『ラブ★コン』85点(100点満点中) 世界に通用する素晴らしい出来栄えのラブコメ 映画『NANA』が見事にヒットを飛ばしたおかげで、同じく少女漫画映画化である『ハチミツとクローバー』やこの『ラブ★コン』も大いに期待されている。各原作の愛読者でもある私が、この3作品を見て共通すると感じるのは、どれも非常にうまく映画化できているということだ。 『ラブ★コン』は、背の高い女子と背の低い男子が主人公の、学園ラブコメドラマ。ヒロインのリサ(藤澤恵麻)も、その相方の敦士(小池徹平)も、それぞれ身長を理由にフラれた経験者で、ヒジョーにコンプレックスに思っている。そんな、妙に似たもの同士の二人は、クラス内で毎日絶妙なノリツッコミを見せ、"オール阪神・巨人"などとあだ名されている。いつも「デカ女!」などと、自分が気にしている高身長をバカにする敦士に対し「絶対アイツだけはヤダ」と思っていたリサだったが、や

  • 超映画批評『幸せのポートレート』85点(100点満点中)

    『幸せのポートレート』85点(100点満点中) 物の感動ドラマ、変人はいかにして変人になるのか 『幸せのポートレート』は、素晴らしい映画なのだが、何気なく見るとその良さがわかりにくい。しかし私は、この作品を見て号泣するほど感動したし、同時にこれに感動する心が残っていて当によかったと思った。汚れたこの心にも、まだ一寸のピュアな部分があったというわけだ。 海外ドラマ『SEX and the CITY セックス・アンド・ザ・シティ』でブレイクしたサラ・ジェシカ・パーカーが演じる主人公は、NYで活躍するキャリアウーマン。このたびめでたく結婚が決まり、その相手の実家へ挨拶に行くところだ。ところが彼の家族は、彼女の想像を越えるトンデモ一家。自由奔放で、家族内に隠し事はゼロ。距離を取って適度につきあうという、都会的な彼女のやり方は一瞬で見抜かれ、軽蔑され、家族皆から総すかんをらう。 気の強いヒロイ

  • 超映画批評『時をかける少女』70点(100点満点中)

    『時をかける少女』70点(100点満点中) 現代を舞台にしているのにどこか懐かしい、優れた映画作品 この映画に声の出演をしている谷村美月は、悪名高いあの「海賊版撲滅キャンペーン」のCMで、黒い涙を流すかわいい子だが、作の試写会では、偶然私の横の方の席に座っていた。ご人を横にして、あのドクロのCMを見るのは妙な気分であったが、編では彼女、立派な演技を見せていた。 さて、そんな『時をかける少女』、筒井康隆の同名原作は、原田知世や内田有紀、南野陽子などアイドル主演で何度もテレビドラマ、映画化されているから皆さんもご存知とは思うが、今回は初の長編アニメーション、しかもオリジナルストーリーで映画化である。アニメーションの製作は、『千年女優』や『東京ゴッドファーザーズ』など、高品質で手作り感あふれる作品で世界的な高評価を得ているマッドハウスによる。 ヒロインは、これまでの『時をかける少女』の主人

  • 超映画批評『サイレントヒル』75点(100点満点中)

    『サイレントヒル』75点(100点満点中) 今夏最高の格ホラームービー コナミのゲームソフト『サイレントヒル』といえば、カプコンの『バイオハザード』と並ぶ、プレステ時代の傑作ホラータイトルだ。しかし、ゲーム的な、ライトなアクションホラーとして映画化された『バイオハザード』とは、映画化のコンセプトが大きく異なる。 ストーリーは、ゲーム版のパート1を元にしている。ゲーム版では父親だった主人公が、母親に変更されている。これにより、テーマが母子愛という、誰の目にもわかりやすい、普遍的なものとなった。この方が、アメリカでの受けはよいだろうし、なにより、演技力を備えた美人女優で知られるラダ・ミッチェルがヒロイン(しかも妙に体の線丸出しな薄着)なら、世界中の男性客が喜ぶ。商業面でも一石二鳥というわけだ。 主人公ローズ(ラダ・ミッチェル)は、情緒不安定な9歳の娘シャロンが口走る「サイレントヒル」という地

  • 超映画批評『ゆれる』80点(100点満点中)

    『ゆれる』80点(100点満点中) 男同士の兄弟の内面を鋭くえぐる、スリリングなドラマ 映画業界にとって、一番の稼ぎ時である夏休みシーズン。内外の大作が居並ぶ中で、地味なドラマ映画ながら、屈指の傑作なのが『ゆれる』だ。まるで、ぽつんと紛れ込んだようなこの作品は、とくに派手な大作映画を敬遠するタイプの方には、真っ先に見てほしい一だ。 女にモテ、カメラマンとしても成功し、東京で派手に暮らす弟(オダギリジョー)。家業のちっぽけなガソリンスタンドを継ぎ、女に縁がなく、老いた父と二人で暮らすさえない兄(香川照之)。この二人が久しぶりの法事に、故郷で再会するところから物語は始まる。 弟は、兄が面倒な実家のもろもろを背負い込んでくれたから、東京で好きなことをやっていられるのだと薄々気づいていながら、何でも許してくれる優しく面倒見のよい兄に、無意識に甘えている状態だ。この日もあろう事か、兄が思いを寄せて

  • 超映画批評『カーズ』90点(100点満点中)

    『カーズ』90点(100点満点中) 他の追随を許さない、圧倒的な完成度の高さ 『ファインディング・ニモ』『Mr.インクレディブル』に続く、ディズニー/ピクサーによる3D-CG長編アニメーション。冬に公開された前二作と違い、今年は満を持して、最激戦区たる夏シーズンにぶつけてきた。今回の内容は、擬人化された車たちが繰り広げるファンタジードラマだ。 主人公は、天才新人レースカーのマックィーン(声:オーウェン・ウィルソン)。圧倒的な才能を持ち、自己中心的な性格の彼は、ひょんなことから地図にも載っていない田舎町ラジエーター・スプリングスに迷い込んでしまう。 『カーズ』は、実在のルート66の物語からヒントを得て作られている。それは、わずかな時間を短縮するため建設されたバイパス道路のせいで、うち捨てられた小さな町の衰亡の物語だ。その町をモデルに作られたラジエータースプリングスには、あらゆる場所にノスタル

  • 超映画批評『母たちの村』70点(100点満点中)

    『母たちの村』70点(100点満点中) 女子割礼を真っ向から批判した社会派映画 アフリカやアラブ諸国、アジアの一部では、現在でも女子割礼が行われている。女子割礼とは、女性器切除(FGM)のこと。具体的には性感帯となる性器の一部を切除したり、ひどい場合には膣口を縫合したりする。不衛生な環境で行われる事も多く、手術が原因で亡くなる事も多い。運良く生き延びたとしても、その後一生、排泄、生理、そして性交時などに苦痛を伴い、分娩時の死亡率も(母子ともに)大きく高まる。 割礼などというと宗教儀式と思われがちだが(現地の人々もそう誤解している)、イスラム教にもキリスト教にもそんな決まりはなく、土着の慣習であることが明らかになっている。 『母たちの村』は、アフリカ映画を代表する83歳の映画作家、ウスマン・センベーヌが、この悪しき風習を痛烈に批判した劇映画だ。 映画は、4人の少女が割礼手術から逃げてくるショ

  • 超映画批評『インサイド・マン』90点(100点満点中)

    『インサイド・マン』90点(100点満点中) 大人が楽しめる、格的な犯罪娯楽映画 銀行強盗を描く映画は数あれど、この映画の犯行の手口にははっとさせられる。なんとこの犯人は、人質全員に自分たちと同じ服を着せてしまうのだ。 白昼堂々と、ニューヨークのマンハッタン信託銀行を襲った犯人(クライヴ・オーウェン)とその仲間たちは、人質全員の服を脱がし、自らと同じ没個性な黒スーツを着せる。前例のない犯行に翻弄される警察だが、現場を指揮する刑事(デンゼル・ワシントン)は出口を固め、犯人たちを完璧に閉じ込めることに成功する。しかし、犯人と人質の区別がつかないため、下手に突入できない状況が続いていた。そんな中、銀行の会長は、やり手の弁護士(ジョディ・フォスター)を呼び出し、犯人たちとある交渉をさせるべく、現場に送り込むのだが……。 『インサイド・マン』は、アメリカ映画らしい重厚な大傑作をみたと満足できる、す

  • 超映画批評『ステイ』75点(100点満点中)

    『ステイ』75点(100点満点中) 最後の最後に明らかになる、あまりにリアルな感動 『ステイ』はネタバレ厳禁、とんでもない結末を持つ映画だが、その結末は他のミステリ映画のように、観客を驚かせるためのものではない。 主人公は、精神科の医師(ユアン・マクレガー)。今日からちょいとやっかいな患者(ライアン・ゴズリング)の担当になった。その患者は悲しげな瞳をした青年で、もうすぐ自殺すると、その日時まで指定して去っていった。最初は戸惑う主人公だったが、前任者の医師が急に引きこもってしまったり、この患者が雹が降ることを正確に予知するなど、不思議な出来事を目の当たりにするにあたり、狂言自殺の類ではないと確信する。彼の命を救うべく、必死にその行方を探す主人公だが……。 この映画をみると、意味不明なシーンの挿入や、カットのつなぎ方のヘンさ、こちらを落ち着かなくさせる映像へのエフェクトなど、とにかく見た目のわ

  • 超映画批評『バッシング』70点(100点満点中)

    『バッシング』70点(100点満点中) 弱者の立場を想像してあげて、と語りかける イラク日人人質事件。インターネットを利用する皆さんにとっては、特に記憶に新しい事件ではないだろうか。ジャーナリスト志望の少年、市民ボランティアの女性、フリーカメラマンの男性3人が戦時中のイラクで拉致監禁され、犯行グループが自衛隊の撤退などを日政府に要求した事件のことだ。 このとき日では、とくにインターネット上で激しい被害者バッシングが巻き起こり、自己責任論なるものも噴出、やがてその論調で報道するマスコミまでも現れた。映画『バッシング』は、この一連の事件をヒントに、おそらく被害者の一人、ボランティア活動のためイラクに入国した女性をモデルにして作られた劇映画である。 北海道の海辺の町で暮らす高井有子(占部房子)は、中東でボランティア活動中、武装グループに拉致監禁され、その後無事帰国して以来、激しいバッシング

  • 超映画批評『ピンクパンサー』80点(100点満点中)

    『ピンクパンサー』80点(100点満点中) シリーズを知らなくても、笑いまくりな一 ピンクパンサーといえば、中高年の方には名喜劇役者ピーター・セラーズによる実写映画版が、もうちょい若目の方にはアニメーションシリーズが、そしてもっともっと若い方には、個性的なキャラクター商品の絵柄として、おなじみのシリーズといえる。 このリメイク版『ピンクパンサー』は、そのうち実写映画版を再現したもので、クルーゾー警部の活躍(?)を描く、コメディ映画である。(……とはいっても、この場合のリメイクというのは、旧シリーズのどれかを忠実に再現した、という意味にあらず。枠組みを借りた新シリーズ、というイメージが強い) 世界的に有名な歌手(ビヨンセ)の恋人でもあるサッカー監督が、競技場で何者かに暗殺される。同時に、その指にはめられていたダイヤモンドも失われていた。世界最大級のダイヤモンド、"ピンクパンサー"の行方をめ

  • 超映画批評『LIMIT OF LOVE 海猿』80点(100点満点中)

    『LIMIT OF LOVE 海猿』80点(100点満点中) 荒っぽい点はあるが、見ごたえ十分の海洋パニック大作 今週はゴールデンウィーク真っ最中というわけで、公開作品数が少ない。このサイトで紹介できるのも、これ1ということになり少々寂しいが、訪問してくれた全員が読んでくれると思えば嬉しくもある。 さて、この作品は、いわずと知れた人気漫画の実写版。同じキャスト、スタッフによって04年に劇場版第1作が公開され、その後テレビで連続ドラマにもなった。『LIMIT OF LOVE 海猿』は、そのシリーズの完結編だ。 ただし、東宝のマーケティングチームは、あえて作のタイトルに、パート2とか3といった数字をつけなかった。その理由は、作が、単独で見ても問題なく楽しめる一話完結的なつくりであることがひとつ。そして、続編であることを明記して間口を狭めても十分な収益を見込めるほどのパワーが、まだこのシリ

  • 超映画批評『隠された記憶』90点(100点満点中)

    『隠された記憶』90点(100点満点中) ショッキング映画、妊婦その他心臓の弱い人は絶対鑑賞禁止! 凄い映画が現れた。万人向けではないが、たいへん知的で、インパクトの強い傑作の誕生である。 カンヌ国際映画祭でも絶賛された、このフランス映画『隠された記憶』は、ジャンルでいえばスリラーという事になろう。テレビキャスターとしてそこそこ成功し、や息子と幸せに暮らしている男の元へ、1のビデオテープが送られてくるところから話は始まる。 そのテープの内容は、延々と自宅の玄関が映されているだけという、意味不明なものだった。しかし、やがて第2弾、第3弾が届くにつれ、家族の恐怖は増してゆく。そういうストーリーだ。 観客には、差出人が誰なのかも、その目的もわからない。非常に不気味で落ち着かない。この映画、一切の音楽を流さない演出で作られており、緊張感がまったく途切れず進む。 実際問題として、犯行可能な人間が

  • 超映画批評『トム・ヤム・クン!』95点(100点満点中)

    『トム・ヤム・クン!』95点(100点満点中) プロの職人芸に圧倒される、完璧な出来のアクション映画 今週、『トム・ヤム・クン!』があって当によかったと思う。同日公開だが、同じアクション映画でも『デュエリスト』とはまさに月とすっぽん。アチラでガッカリした人も、これを見れば癒されるはず。もしくは、現在のアクション映画界における最高と最低を、同時に楽しむという、マニアックなやり方もありかもしれない。 主人公は王族に献上する象を育てながら、山で幸せに暮らしている青年。これを『マッハ!!!!!!!!』で全世界を驚愕させた、次世代のアクションスター、トニー・ジャーが演じる。やがて、いよいよ献上する日がやってくるが、手塩にかけて育てた象は、悪者たちの手により騙し取られてしまう。 かくして怒りの追跡劇が始まるというわけだ。監督は『マッハ!!!!!!!!』のプラッチャヤー・ピンゲーオ。前作の儲けをつぎ込

  • 超映画批評『タイフーン/TYPHOON』70点(100点満点中)

    『タイフーン/TYPHOON』70点(100点満点中) 予想を越えるスケール感 朝鮮半島は、1950年から巻き起こった朝鮮戦争により南北が分断され、今に至る。その結果、北朝鮮韓国の間では、離散してしまった家族が多数発生した。その数700万以上ともいわれる彼らは、いまだ、国境をはさんで南北に分かれ、再会を果たせずにいる。 そんなわけで、南北分断の悲劇をテーマにした韓国映画は数多い。また、多くの人の関心を集めるテーマであるため、予算もつきやすく、大作も多い。北のスパイと南の捜査官の恋を描いたアクションドラマ『シュリ』が大ヒットした事により、このテーマの娯楽映画は、韓国映画界では、ヒットの方程式と認識されているのだ。 したがって、南北分断エンタテイメント悲劇であるこの『タイフーン/TYPHOON』も、韓国映画史上最大の製作費(……といっても15億円程度だが)をつぎ込んで作られた、ブロックバスタ

  • 超映画批評『連理の枝』70点(100点満点中)

    『連理の枝』70点(100点満点中) マーケティングの賜物のようなラブストーリー 皆さんは、韓国映画というものに何を求めているだろうか。私が思うに、「冬のソナタ」に始まる最近の韓流作品のファンの多くは、「ストレートになける悲恋ドラマ」、昔でいうメロドラマを求めているのではないかと予測する。 だとするならば、この「連理の枝」は最高のチョイスである。「連理の枝」は、まるで東アジア各国の韓流ファン10万人にアンケートを取り、好きなキャスト、好きな演出方法、好きなストーリー展開、すきなBGMの統計をとって、それを貼り合わせたような作品だからだ。 物語は単純明快。(女性客が感情移入しやすい)いかにも平凡な女主人公が、イケメンの男と偶然に出会い、恋に落ちるというもの。男は例によって大金持ちの社長。女は庶民でルックスも普通だが、不治の病という最強の金看板を持っている。脚を書いている人も、書きながら苦笑

  • 超映画批評『ファイヤーウォール』80点(100点満点中)

    『ファイヤーウォール』80点(100点満点中) 短所がないということが長所 ネットバンクが普及し、一般預金者にとっても、オンライン上の数字を動かすことに抵抗がなくなってきた昨今、銀行のセキュリティも大きく変化している。昔は、どれだけ金庫室の壁を分厚くするか、頑丈なドアをつけるかといったハード面が重要で、映画の中の銀行やぶりも、どうやって金庫室に進入するかが大きな見せ場であった。 しかし、今は違う。コンピュータ上の数字イコール現金である現在、強盗も金庫室を破る必要はない。それよりは、ネットワークへの侵入、ハッキングをした方がよほど早くて確実だ。というわけで、銀行のセキュリティも、クラッカー(悪意ある不正侵入者)を防ぐ、ファイヤーウォール(不正進入防止ソフト)が重要になってくる。 この映画の主人公は、銀行のそうしたセキュリティソフトの開発担当者。演じるハリソン・フォードは、アメリカ映画における

  • 超映画批評『バイバイ、ママ』70点(100点満点中)

    『バイバイ、ママ』70点(100点満点中) ケヴィン・ベーコン監督の優しい視点が心地よい ケビン・ベーコンといえば、ハリウッドきっての個性派俳優。悪役から善人まで、その幅広い演技力は高く評価されている。そんな彼が、初めて長編映画を撮った。それが『バイバイ、ママ』だ。 ユニークな両親により、完全な放任主義で育てられたヒロイン(キラ・セジウィック)は、少女時代の経験から、男性を信用できない女性へと成長した。しかし、異様に子育てに執着する彼女は、行きずりの男から子種だけもらい、狙い通り息子を出産する。しかし、シングルマザーとなった彼女は、息子が6歳になっても全く子離れができず、異常なまでの愛情を注ぐのだった。 ヒロインを演じるキラ・セジウィックは、ケヴィン・ベーコン監督の奥さんで、このほかにも彼らの実の息子や兄らが、出演者やスタッフに名を連ねる。また、監督人も大事な役柄で出演している。つまりこ

  • 超映画批評『キンキーブーツ』80点(100点満点中)

    『キンキーブーツ』80点(100点満点中) 田舎町の工場が一念発起して、ドラッグクィーン専用ブーツを制作 イギリスで大人気を博した『キンキーブーツ』は、いかにも彼ら英国労働者階級が好みそうな「はぐれものバンザイ、庶民バンザイ」的な、見ると元気が出る心温まるドラマだ。 主人公(ジョエル・エドガートン)は、父の工場を相続したばかりの跡取り息子。長年勤めた技術力ある職人たちのおかげで、製品の品質は高いものだったが、儲けより従業員や消費者の満足を重視した先代の経営は、近年の安い輸入品に太刀打ちできず、倒産寸前だった。 そんなある日、主人公は偶然知り合ったド派手なドラッグクイーン(女装した男性)のローラ(キウェテル・イジョフォー)が、窮屈そうに女物のブーツを履いているのを見てひらめく。誰も作らない、男性用のキンキーブーツ(SM女王様用のハデハデブーツ)を作れば売れるんじゃないか? かくして彼と

  • 超映画批評『サウンド・オブ・サンダー』75点(100点満点中)

    『サウンド・オブ・サンダー』75点(100点満点中) 見方を間違えなえれば楽しめる 『サウンド・オブ・サンダー』は、まさに「超映画批評」のような事前レビューサイトの役割を問われる一といえる。というのも、この映画を予告編や、雑誌の無難な紹介記事の印象だけで期待して観に行くと、かなりの確率で外すと思われるからだ。 しかし、適切な内容の事前レビューを読んで、期待すべき点を間違えずに劇場に出かければ、じつはこれ、けっこう満足できる作品なのである。今これを読んでいる皆様に、そのあたりを適切に伝えられるよう、私としても全力を尽くしたい。何しろ今週は、ただでさえ公開作品が少ない上、たまたまTV出演や取材が重なり、私自身、ほとんど試写会場に出向くことができず、紹介できるのがこれ1きりなのだから(次週からは元に戻ります)。 この映画の舞台となるのは近未来、西暦2055年だ。この時代、金持ちの流行といえば

  • 超映画批評「マンダレイ」90点(100点満点中)

    『マンダレイ』90点(100点満点中) 前作より単純明快、ぜひ『ドッグヴィル』を見たあとに 『マンダレイ』は、あの斬新な佳作『ドッグヴィル』の続編だ。ちなみに『ドッグヴィル』最大の特徴は、床に白線を引いただけで壁も屋根も無い、だだっ広い体育館のような場所をひとつの村に見立て、そのセット内のみで3時間の映画を作りあげた点。役者たちがパントマイムで玄関のドアを開けると、キィとドアがきしむ効果音が挿入される。じつに斬新な演出の映画であった。 この『マンダレイ』も、まったく同じ手法で、ヒロインも同じ(ただし演じる女優は変更された)。彼女が別の場所(マンダレイという名の農園)で、別のドラマを繰り広げるPART2だ。 ときは1933年のアメリカ。ドッグヴィルを出たグレース(ブライス・ダラス・ハワード)は、ギャングのボスである父らと共に、南部のマンダレイという農園にたどりつく。そこはなんと、いまだに白人

  • 超映画批評『機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛』80点(100点満点中)

    『機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛』80点(100点満点中) 映画として成立しており、3部作では最高の出来 2005年5月と10月に公開された前2作は、かなりの好成績を残し、Zガンダム人気の根強さを印象付けた。テレビ版とは違うと噂される結末と、大幅に増やされた新カットが期待される、新約=劇場版の最終章がこの『機動戦士Zガンダム Ⅲ -星の鼓動は愛-』だ。 この3作目では、ティターンズの権力掌握を狙う木星輸送船ジュピトリスのシロッコ(声:島田敏)が活躍。いわゆるラスボスとして、カリスマ的な魅力を発揮する。そして、彼らティターンズと、カミーユ(声:飛田展男)、シャア(声:池田秀一)らが所属する反地球連邦組織エゥーゴの間で、キャスティングボードを握るのが、旧ジオン軍残党アクシズのハマーン・カーン(声:榊原良子)。物語はこの3者の視点でそれぞれ展開する。 早速だが、『機動戦士ZガンダムIII

  • 超映画批評『県庁の星』70点(100点満点中)

    『県庁の星』70点(100点満点中) 誰でも楽しめる、堅実なつくりのロマンティックコメディ 『県庁の星』は、関係会社からは最大級の期待をかけられている一だ。何しろ、日映画界最大の集客力を持つとされる織田裕二と、ファッションリーダー柴咲コウのロマコメという、売れセンど真ん中の作品なのだから。 主人公は、出世意欲満々の、とある県庁のエリート公務員(織田)。大手建設会社の社長令嬢と婚約し、担当した数百億円単位のビッグプロジェクトの成功も目前と、その未来は前途洋々だ。そんなある日、彼は民間交流の一環として、あるスーパーに派遣される。そこは、賞味期限切れ近い材で惣菜を作り、バックヤードの整理もままならない、3流店だった。お役所のルールがまったく通じない民間ならではの現場にあきれた彼は、教育係として自分の担当になったパート職員(柴咲)との対立も深めていく。 読んでおわかりのとおり、エリート勝ち組

  • 超映画批評『ダイヤモンド・イン・パラダイス』70点(100点満点中)

    『ダイヤモンド・イン・パラダイス』70点(100点満点中) アメリカ版、湯けむり連続殺人事件 『ダイヤモンド・イン・パラダイス』は2004年のアメリカ映画で、日でも昨年の秋ごろ公開される予定だった。ところが、やんごとなき事情で延期となり、今にいたる。かくいう私もこれを試写でみたのはなんと、昨年の10月である。 世界に3つしかないとされる、皇帝ナポレオンのダイヤモンド。そのうち2つを見事盗み出した大泥棒(ピアース・ブロスナン)とその(サルマ・ハエック)。彼ら夫婦は、それをもって泥棒稼業から引退、バハマの島で幸せに暮らしていた。ある日、彼らのもとに長年の宿敵であるFBI捜査官(ウディ・ハレルソン)が現れる。彼は、現在島に停泊中の豪華客船にある最後のダイヤを、二人が必ず狙うはずだと当たりをつけて、けん制しにやってきたのだった。 引退したものの、最後のひとつが目と鼻の先にあると聞いて泥棒のプラ

  • 超映画批評『東京大学物語』65点(100点満点中)

    『東京大学物語』65点(100点満点中) 原作者でなければ絶対できない凄まじい実写映画漫画『東京大学物語』といえば、江川達也の代表作にして、コミック史上に残るトンデモ最終回が大評判(大不評?!)の問題作。リアルタイムで週刊スピリッツを読んでいた私のような人間にとっては、あのすさまじい終盤の展開は、ある種のトラウマである。 もともと江川達也は、変化球好きというか、反骨精神たくましい漫画家で、毒のない『ドラえもん』へのアンチテーゼとして『まじかる★タルるートくん』という子供向け(?)漫画を描いたと言われるくらいの人物。その彼が渾身の力で送り出した漫画『東京大学物語』は、それはそれは凄い作品であった。萌えの原点だの、究極のエロ漫画だの、色々といわれているが、確かにそれは真実であろう。 その『東京大学物語』が、ついに実写映画となった。しかも、監督は江川達也人。そして製作はアダルトビデオ界の雄

  • 超映画批評『燃ゆるとき THE EXCELLENT COMPANY』75点(100点満点中)

    『燃ゆるとき THE EXCELLENT COMPANY』75点(100点満点中) 生きる方向を失いつつあるサラリーマンに見てほしい 『燃ゆるとき』は、マルちゃんブランドで知られる品会社の実話を元にした映画だ。80年代から90年代にかけて、まだ、アメリカ市場における数々の恐ろしいルールを知らなかった「うぶな」日企業が、何度も煮え湯を飲まされながらも、果敢に立ち向かっていく熱血企業ドラマである。 主人公の営業マン(中井貴一)は、韓国の安い商品に押されつつあった米国のカップ麺工場の再生のため、カリフォルニアに派遣される。その工場は、黒人やヒスパニックなど、現地雇いの従業員を中心に稼動していたが、派遣早々、主人公は彼らをレイオフしなければならない厳しい現実にさらされる。日米の消費者の味覚の差や、セクハラなど社会環境の違いに悩まされながらも、彼は米国市場に戦いを挑んでゆく。 タイトルどおり、と

  • 超映画批評『スキージャンプ・ペア』85点(100点満点中)

    『スキージャンプ・ペア』85点(100点満点中) アイデアと企画の勝利 もともと「スキージャンプ・ペア」というのは、CG作家の真島理一郎による、カルト的人気をもつDVD作品である。冬季オリンピックでもおなじみの、スキーのジャンプ競技をなんとペアで跳び、そのとっぴなポーズや飛び方によって点数をつけ、まじめに実況するという発想が笑いを誘う。テレビの深夜番組などでも紹介され、今では知る人ぞ知る人気商品なのだ。 そして、それをなんと実写で映画化しようという、いわば一発企画がこの映画版『スキージャンプ・ペア』。テレビのドキュメンタリー番組風に演出された、遊び心たっぷりのバカ映画である。 内容は、この競技の誕生秘話から幾多の研究開発、そして、ついにトリノ五輪正式種目への採用までと、その決勝戦の模様からなる。前半のニセドキュメンタリー部分では、アントニオ猪木や、物のジャンパーでオリンピックメダリスト、

  • 超映画批評『スタンドアップ』90点(100点満点中)

    『スタンドアップ』90点(100点満点中) 観るべき価値のある、物の映画 今になってみると、この「スタンドアップ」が果たして社会派映画として当に優れていたのかどうか、その点についてだけはどうも自信がない。なにか、うまく騙されたような、そんな気もするのである。しかし映画作品としては、よい脚家、よい監督、よい俳優がパワーを出し切った、紛れもない傑作である事だけは確かだ。 舞台は80年代終わりのアメリカ。ミネソタの鉱山に、炭鉱夫として就職したヒロインの苦難を描いた物語。 長年、男の職場として存在してきた鉱山に、男女平等と法律の名のもと、女性が入り始めてきた時代。秩序を乱された職場の男たちの態度は、当然冷たい。早速、猛烈ないじめが始まる。いや、いじめやセクハラもどきを通り過ぎて、ほとんど犯罪である。それほど強烈な虐待、差別に、彼女をはじめとするわずか数名の女性労働者はさらされる。 しかもシャ

  • 超映画批評『ホテル・ルワンダ』95点(100点満点中)

    『ホテル・ルワンダ』95点(100点満点中) スリリングなサバイバルドラマ 『ホテル・ルワンダ』は、奇妙な経緯をたどった映画作品だ。もともと作品の評価は高かったが、オスカーレースに絡んだため買い付け価格が上昇、日における人気スターなど皆無の地味な社会派作品だったため、採算が取れないと判断され、日公開はこれまで実現しなかった。 ところが、インターネットを中心にした公開嘆願の署名運動が行われ、ようやく公開が決まったというわけである。署名規模は数千名と、絶対数自体は少ないものだが、観てもいない映画の公開を求める人がそれだけいるというのは、ある意味すごい事である。そして、この作品が、その人たちの期待を裏切ることは、まずないだろう。良い映画である。 1994年、アフリカのルワンダ。主人公のポール(ドン・チードル)は、この国でもトップクラスのホテルの支配人だ。彼は、や子供たちを愛する心やさしい家

  • 超映画批評『輪廻』80点(100点満点中)

    『輪廻』80点(100点満点中) 抜群に怖い、"物"のホラー映画 近年、ハリウッドで最も目覚しい活躍を見せた日人監督といえば清水崇だ。彼は自身の代表作『呪怨』のリメイク『THE JUON』で、日人監督として史上初の、全米興行ランキング第1位(しかも2週連続)という快挙を成し遂げたのだ。 そんな、勢いに乗る清水監督の最新作がこの『輪廻』。2004年の『感染』『予言』に続いて、日の誇るホラー映画監督6人の競作レーベル「J-ホラーシアター」から発表された、格派の恐怖映画だ。 35年前に、群馬県のホテルで起こった大量殺人事件映画化を狙う映画監督(椎名桔平)は、そのヒロインに新人女優(優香)を抜擢する。やがてその事件の詳細を知るうち、彼女は奇妙な幻覚を見るようになる。そんな彼女の前に、前世が35年前の事件の被害者だと語る女性(松まりか)が現れる。 『輪廻』は非常にすぐれたホラー映画だ。

  • 超映画批評『男たちの大和 YAMATO』75点(100点満点中)

    『男たちの大和 YAMATO』75点(100点満点中) 思想色は薄い、感動の戦争ドラマ 2005年は戦後60周年ということで、『ローレライ』『亡国のイージス』『戦国自衛隊1549』といった、軍事大作の公開が続いた。しかし、大東亜戦争(太平洋戦争)を真っ向から描いた戦争大作は、今年最後を締めくくるこの『男たちの大和 YAMATO』だけだ。製作発表時から、大いに期待されてきたこの作品の出来は、いったいどうなのか。 戦艦大和の生き残りを父に持つヒロイン(鈴木京香)は、父の生き様を知るため、漁船を借りて大和の沈没地点に向かう。そしてその道すがら、父の同僚だった船長から、大和の沖縄水上特攻作戦の真実を聞かされる。 さて、沖縄水上特攻作戦とは、史上最強かつ最大だった戦艦大和最後の作戦の事だ。当時の日は、すでに敗色が濃厚。だが、土たる沖縄を守るため、彼らは航空支援が無いにもかかわらず、上陸した米軍を

  • 超映画批評『キング・コング』90点(100点満点中)

    『キング・コング』90点(100点満点中) 筋肉はT-レックスの牙よりも強し 『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の監督、ピーター・ジャクソンは、9歳のときにテレビで見た、『キング・コング』(1933)に衝撃を受け、映画監督を志したという。その情熱は、12歳のときにミニチュアを用意して、自らリメイクをはじめたほど。やがて彼は30年の時を経て、作品を監督、ついに長年の夢を実現させたことになる。 この、ピーター・ジャクソン監督によるリメイク版『キング・コング』をみて、最も私が素晴らしいと感じる点は、まさにその、作品に対する愛情の深さにある。随所にキングコング、そしてオリジナル作品への思いの深さ、敬意が感じられるし、全身全霊をかけたと思わせるほどのパワーも感じられる。さすがは「33年のオリジナルが一番好きな映画」と公言しているだけのことはある。 舞台は1930年代、不況真っ只中のアメリカ。野心家

  • 超映画批評『ロード・オブ・ウォー 史上最大の武器商人と呼ばれた男』85点(100点満点中)

    『ロード・オブ・ウォー 史上最大の武器商人と呼ばれた男』85点(100点満点中) 押し付けがましくない社会派映画 この映画は、実在した伝説的な武器商人数名のエピソードをまとめ、架空の男の一生として描いた、半実話の劇映画だ。主演は「ナショナル・トレジャー」等で活躍中の人気俳優ニコラス・ケイジ。彼ほどの役者が主演する大作ドラマにもかかわらず、題材があまりにデリケートだったため、イラク戦争真っ只中だった米国内では資金調達できなかったという、いわくつきの作品だ。結果、配給会社のあるカナダなど、外国からの投資で製作資金をまかなった。 主人公は、ソ連崩壊前のウクライナで生まれ、家族ともども米国に移住したユーリー(N・ケイジ)という男。彼は、あるレストランでのギャング同士の銃撃戦を見たことで開眼し、弟と二人で武器ビジネスをはじめる。その後、"人生最大の幸運"、ソ連が崩壊し、膨大な武器が彼ら闇商人の手へと

  • 超映画批評『DEAR WENDY ディア・ウェンディ』80点(100点満点中)

    『DEAR WENDY ディア・ウェンディ』80点(100点満点中) 特徴的な演出技法と、素晴らしい銃撃戦を持つ映画 ラース・フォン・トリアーという映画作家がいる。「イマドキの映画界の軽薄な流行はけしからん」とばかりに、「オールロケ、音楽や人口照明は禁止、カメラは手持ち撮影で」などの独自ルール(ドグマ95と呼ばれる)を提唱したり、『ドッグヴィル』という映画では、セットの代わりに床に白線を書くなどの演劇的手法を大胆に取り込むなど、なかなか風変わりな人である。 そして、その彼が脚を書き、ドグマ95仲間のトマス・ヴィンターベアが監督した、これまたかなり風変わりなドラマが『DEAR WENDY ディア・ウェンディ』だ。これは、既存の映画にちょっと飽きている、といった方にぜひすすめたい、個性的な作品。 アメリカのどこか、寂れた炭坑街にすむ少年(ジェイミー・ベル)は、ひ弱なために炭坑の仕事が続けられ

  • 超映画批評『ザ・コーポレーション』75点(100点満点中)

    『ザ・コーポレーション』75点(100点満点中) 企業の裏側を暴く、娯楽性の高いドキュメンタリー 現在、資主義……というより、アメリカ式のグローバリズム、自由経済の弊害が、世界中で非難を浴びるようになってきた。そうした問題を扱ったドキュメンタリー、それがこの『ザ・コーポレーション』だ。 タイトルにもなっている"企業"とはいったい何なのか。その行動原理や、現在地球にどのような影響を与えているかを、まずは順に分析する。企業は"法人"という擬似人格を与えられているくらいなのだから、人間に対する診断手法も当てはまるはず、というユニークな視点から、企業を分析し、彼らを"サイコパス"と診断する。この冒頭がかなり面白く、一気に引き込まれる。 その後は、現在グローバル企業の犯している様々な犯罪、非道徳的な所業の数々を紹介していくわけだが、つまりはこうした、企業犯罪に対する批判こそがこの映画質であろう

  • 超映画批評「映画 ふたりはプリキュア マックスハート2 雪空のともだち」70点(100点満点中)

    映画 ふたりはプリキュア マックスハート2 雪空のともだち』70点(100点満点中) 子供アニメとしては文句なしの出来 いま、女児の間でとても人気のある日曜の朝アニメ、それが『ふたりはプリキュア マックスハート』だ。4月に満を持して映画化したと思ったら、早くも第2弾が公開というので、このページを楽しみにしているこどもたち(一部オトナ含む)のため、私も早速見に行ってきた。 藤P先輩や志穂ら、おなじみの面々と雪山にやってきた主人公、美墨なぎさ(声:名陽子)と雪城ほのか(声:ゆかな)、そして九条ひかり(声:田中理恵)。スポーツ万能なはずのなぎさは、意外にもスノボーに大苦戦。その目の前を、憧れの藤P先輩と親友ほのかが、二人きりで親しげに滑っていくのを見て、複雑な気分になる。一方、タコカフェ臨時店を手伝っていたひかりは、雪上で可愛らしい卵からひながかえるのを発見する。だがその直後、まるでその鳥を

  • 超映画批評『七人のマッハ!!!!!!!』85点(100点満点中)

    『七人のマッハ!!!!!!!』85点(100点満点中) 世界中のあらゆるアクション映画の中でも、トップクラスに位置する タイのアクション映画は、『マッハ!』の成功により世界中の映画ファンの注目を浴びることになった。そりゃそうだ。あの傑作アクションムービーは、それまでCGやワイヤーを使ったインチキくさい動きに辟易していた人々に、卓越した肉体の動きだけがもつ迫力を思い出させてくれたのだから。 たしかにCGやワイヤーワークを使えば、わずかな訓練期間で、どんなにドンくさいアイドルの女の子を使っても、そこそこのアクション映画を作ることができる。しかし、人々が求めていたのはそんなまがいモノではない。並外れた運動神経を持つ者による、物の動き、物のアクションなのだ。 そして、再びその期待にこたえてくれるのがこの『七人のマッハ!!!!!!!』。とてつもなく安直な邦題はともかく、作は『マッハ!』のアクシ

  • 超映画批評『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』80点(100点満点中)

    『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』80点(100点満点中) このクォリティで、いわゆる"萌え"場面が続出?! 映画版『ハリーポッター』は、監督は変わっても、大まかな雰囲気は変わらずに続いている大人気シリーズだ。基的には子供たち向けの、大ベストセラーファンタジー小説が原作だが、大人のファンも多数存在する。日にも、わざわざ原著を訳しながら読む熱烈なファンがいる。 この『炎のゴブレット』は映画版の第4弾。メインキャストは前作までと共通。監督は、シリーズ初の英国人マイク・ニューウェル(「モナリザ・スマイル」など)だ。ハリーポッターはもともと英国の原作であるから、彼にかかる期待は大きい。シリーズ最大最長の原作を、いったいどうやって2時間37分間にまとめるのか? 主人公のハリー(ダニエル・ラドクリフ)、その親友のロン(ルパート・グリント)、女友達ハーマイオニー(エマ・ワトソン)は、魔法学校の4

  • 超映画批評『フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い』70点(100点満点中)

    『フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い』70点(100点満点中) つくりのいい定番商品といった感じが好ましい この『フォー・ブラザーズ』は、派手なスターが出ているわけでもないし、有名監督による作品というわけでもない。ストーリーにも特筆すべき点はなく、要するに何も目を引く要素がない。映画会社の宣伝マンたちにとっては、恐らくかなり頭を悩ます部類の作品ではないかと思う。 ところが、えてして掘り出し物というのはこの手の作品に多いのである。私としてもまったくノーマークで、珍しく時間が空いたうえに手近な試写室でやっていたから見た、というパターンであったが、結果的には実にラッキーだった。 舞台は感謝祭前のデトロイト。労働者たちが暮らす町の一角にあるスーパーで、ある中年女性が強盗の巻き添えになり射殺される。そして、彼女の葬儀に集まった中に、この物語の主人公となる4人兄弟がいた。彼らは兄弟といっても血がつながっ

  • 超映画批評『イントゥ・ザ・ブルー』70点(100点満点中)

    『イントゥ・ザ・ブルー』70点(100点満点中) バハマの風景を気楽に楽しめるアクション映画 人気急上昇中の女優ジェシカ・アルバ主演の海洋アドベンチャー&サスペンス。 バハマでダイビング・インストラクターをしている主人公(ポール・ウォーカー)は、いつか沈没船を発見し、億万長者になることを夢見ている。そんなある日、彼が、まじめで美しいガールフレンド(J・アルバ)、親友カップルの4人とダイビングをしていると、前夜のハリケーンで海底から顔を出した中世の沈没船を偶然発見する。ところが隣には、先日墜落した、麻薬満載のマフィアの航空機も沈没していたのだった。 さて、4人は無事、マフィアや警察、ライバルのトレジャーハンターの目をくぐりぬけ、無事沈没船の権利を手にすることができるのか?! という楽しいアドベンチャー映画だ。 この映画の見所は、まず美しい水中撮影があげられる。前作「ブルー・クラッシュ」でサー

  • 超映画批評『SAW2/ソウ2』80点(100点満点中)

    『SAW2/ソウ2』80点(100点満点中) あの傑作のパート2で、ここまでやれれば上出来 2004年のサンダンス映画祭で絶賛を浴びたシチュエーションスリラー『ソウ』の正統なる続編。監督は新人のダーレン・リン・バウズマンに交代し、前作の監督らは製作にまわった。 前作で明らかになった連続殺人事件の犯人、通称"ジグソウ"がまた例の殺人ゲームをはじめた。しかし、現場に残された手がかりからアジトが判明、主人公の刑事(ドニー・ウォールバーグ)はSWATとともに突入、見事ジグソウを拘束する。ところがジグソウは、まるで警察の突入を予期していたかのように不敵な態度を崩さない。その直後、隣の部屋に数々のモニターが発見される。そこには不気味な部屋に監禁された8人の男女が写っていた。そして、まったく理不尽なことに、その中には主人公刑事の息子が含まれていたのだった。 『ソウ2』の物語は、ここからジェットコースター

  • 超映画批評『ティム・バートンのコープスブライド』90点(100点満点中)

    『ティム・バートンのコープスブライド』90点(100点満点中) オトナが泣ける、優れたファンタジー 現在大ヒット中の「チャーリーとチョコレート工場」の監督・主演コンビによる、ストップモーションアニメの長編。 舞台は19世紀のヨーロッパ。主人公の内気な青年(声:ジョニー・デップ)は、ある成りあがり一家の息子。彼は親同士の都合で、没落貴族の娘(声:エミリー・ワトソン)と結婚することになっていたが、それでも彼女の清楚な美しさを何より愛していた。ところが式の前夜、慣れない「誓いの言葉」を森の中で一人練習していた主人公が、彼女の薬指に見立てた枯れ枝に結婚指輪をはめた瞬間、地中から半分腐りかけた花嫁の亡霊(声:ヘレナ・ボナム=カーター)が現れ、「喜んでお受けいたします」と嬉しそうにつぶやくのだった。 「ティム・バートンのコープスブライド」は、「チャーリーとチョコレート工場」の予想以上の大ヒットにより、

  • 超映画批評『旅するジーンズと16歳の夏』75点(100点満点中)

    『旅するジーンズと16歳の夏』75点(100点満点中) 美しい風景の中で展開する4つの感動物語 アン・ブラッシェアーズのベストセラー『トラベリングパンツ』の映画化。 16歳になる4人の少女は、母親同士がマタニティ教室で一緒になって以来の大親友。彼女らはこの夏、初めて離れ離れになる。リーナは祖父母の住むギリシャへ、カルメンは別居中の父と過ごし、ブリジットはメキシコのサッカーキャンプに参加、そしてティビーは地元のスーパーでバイトする。そんな4人はある日不思議なジーンズをお店で見つける。それは、体型のまったく違う4人にフィットする魔法のジーンズ。彼女らは早速入手すると、一人1週間の期限を設け、まわし穿きするルールを定める。 4人の少女の一夏の物語をそれぞれ追いかけた、切なく感動的な青春ドラマ。この映画に登場する「ジーンズ」は、全員のお尻にフィットする不思議なジーンズであるが、それ自体は特別何かフ

  • 超映画批評『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』90点(100点満点中)

    『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』90点(100点満点中) オリジナルの魅力をよく理解した素晴らしいリメーク 少年野球映画の不朽の傑作『がんばれ!ベアーズ』(76年)のリメイク。 かつてはメジャーリーガーだったが、いまやアル中の害虫駆除業者に落ちぶれた主人公(ビリー・ボブ・ソーントン)に、リトルリーグのチームのコーチの依頼がくる。単に金のために引き受けた彼だったが、そのチーム"ベアーズ"の恐るべきダメさに愕然とする。悪ガキやいじめられっ子、英語すら話せない外国人、車椅子の少年など、メンバーはやる気のない連中ばかり。案の定、なんの練習もせず挑んだ初戦において、ベアーズは想像を絶する大敗を喫してしまう。 いやはや、素晴らしいリメイクである。オリジナルの魅力をよく理解し、少しだけ新しさを加えた忠実なつくり。やはり、あれだけ完成度の高い脚は、そうそう変えられるものではない。また、変えるべき

  • 超映画批評『ファンタスティック・フォー 超能力ユニット』70点(100点満点中)

    『ファンタスティック・フォー 超能力ユニット』70点(100点満点中) 日人の趣向に合う健全アメコミ映画 マーベル社から61年に発表された、老舗アメコミの映画化。ダークさはなく、コメディタッチで明るく仕上げた全年齢向け娯楽作品だ。 主人公の科学者たちは、ある実験のため宇宙ステーションに滞在した際、事故で強力な宇宙嵐の放射線に晒されてしまう。そのため彼らのDNAは変化し、それぞれが特殊な能力をえることになる。やがて主人公たち4人は、その能力で人助けをすることになる。しかし、当時ステーションに居合わせ、実験の失敗で大損害を受けたスポンサーの男だけは、ひとり邪悪な存在へと身を落としていくことになる。 ひょんな事から超能力を身につけたヒーローたちが大活躍する、いかにもアメリカ的な楽しいヒーローアクションだ。彼らのもつ能力とは、手足が自在に伸びるリーダーの男、体が岩石のように硬化して怪力をえた男、

  • 超映画批評『チャーリーとチョコレート工場』70点(100点満点中)

    『チャーリーとチョコレート工場』70点(100点満点中) ≪あまり教育によろしくない子供向けファンタジー 主演ジョニー・デップ、監督ティム・バートンという個性派コンビによるファンタジックなブラックコメディ。ロアルド・ダールによる世界的な子供向けロングセラー『チョコレート工場の秘密』の、二度目となる映画化。 ジョニー・デップ演じるウィリー・ウォンカは、"世界一おいしい"チョコレート工場の経営者。その斬新な新作お菓子の数々は、子供たちの心をつかんで放さない。ある年の冬のこと、これまで謎のベールに包まれてきた彼のお菓子工場を見学できる権利を、世界中の子供たちの中から抽選で5人に与えるとウォンカは発表した。そのゴールデンチケットは、世界中で販売される板チョコの中に無作為に同封されているという。 てなわけでさあ大変、チョコ好きの子のチョコ消費量はさらに増えるわ、金持ちによるチョコの買占めが始まるわで

  • 超映画批評『NANA ナナ』75点(100点満点中)

    『NANA ナナ』75点(100点満点中) 人気漫画映画化としてはまれにみる成功例 累計2200万部を売上げ、現在も連載中の大ヒットコミックの映画化。矢沢あいによるこの原作は、幅広い年齢層の女の子に絶大な人気を誇る。 成功を目指すロックバンドのボーカリスト大崎ナナ(中島美嘉)と、遠距離彼氏を追いかけてきた小松奈々(宮崎あおい)。同じ名前を持つ二人は同じ上京列車の中で出会い、意気投合する。やがて部屋探しの折に偶然再会した二人は、その部屋で共同生活をはじめる。性格は正反対の二人だが、それでも強く引かれ合い、やがてお互い不可欠な存在となっていく。 映画『NANA』は良かった。原作を知らない者も原作のファンも、どちらも恐らく楽しめるであろうなかなか優れた青春友情ドラマとして成り立っている。 『NANA』は、二つのライバルロックバンドと二人のナナを中心にした狭いコミュニティの中で、あちらこちらで恋

  • 超映画批評『ランド・オブ・ザ・デッド』75点(100点満点中)

    『ランド・オブ・ザ・デッド』75点(100点満点中) 幾多の類似品とは違う、これぞゾンビ映画のオリジナル 60~70年代から始まるゾンビ映画の始祖ジョージ・A・ロメロ監督による最新作。幾多の粗悪な類似品とは明らかに一線を画す、これぞまさにオリジナル、元によるゾンビ映画だ。 舞台は地上を生ける屍に支配されたアメリカ。生き残った人々は川に囲まれたわずかな地域をフェンスで囲み、ゾンビから身を守って生きている。しかしその“町”は一人の権力者(デニス・ホッパー)により支配され、人々は搾取され、貧しい暮らしを余儀なくされていた。主人公(サイモン・ベイカー)は、仲間とともに特殊な装甲車デッド・リコニング号で外の世界に繰り出し、ゾンビを蹴散らしながら廃墟の街に残った物資を収集してくる傭兵。そして彼の右腕チョロ(ジョン・レグイザモ)は、密かに上流階級への仲間入りを企んでいた。 のっけからゾンビとの激し

  • 超映画批評『愛についてのキンゼイ・レポート』45点(100点満点中)

    『愛についてのキンゼイ・レポート』45点(100点満点中) 邦題はマヌケだが、いたってマジメな伝記映画 セックスに関する様々な調査結果をまとめた「キンゼイレポート」で知られる実在の動物学者アルフレッド・キンゼイ博士を描いた伝記映画。 インディアナ大学の動物学の助教授、アルフレッド・キンゼイ(リーアム・ニーソン)は、教え子のクララ(ローラ・リニー)と結婚したが、童貞&処女の二人はうまくセックスすることができない。なんとか専門家の助言でその危機を乗り越えたものの、キンゼイはこの分野の知識がいかに未開拓なものか思い知る事になる。やがて彼は、膨大な数のアメリカ人をインタビューし、性についての徹底調査を行うべきだと考えるようになる。 この作品はいたってマジメな伝記映画であり、ついてはこの邦題はアホとしかいいようのないセンス無きものである。感動のドラマでもなければ恋愛モノでもない、これはキンゼイ博士の

  • 超映画批評『ノロイ』70点(100点満点中)

    『ノロイ』70点(100点満点中) 綿密な取材で明らかになった怪奇実話作家の失踪事件、驚愕の真実 ある怪奇実話作家の失踪事件の謎に迫る、ドキュメントタッチのオカルト映画。 2004年4月、ある怪奇実話作家の自宅が全焼し、の焼死体が発見される事件がおきた。作家人もそれ以来行方不明となった。この事件の謎を探るため、彼が完成させたばかりのビデオ「ノロイ」の検証がはじまった。 映画はこの作家、小林雅文のこれまでの仕事の軌跡をたどるとともに、最後のビデオ作品「ノロイ」を詳しく観客とともに検証する形になっている。小林雅文という作家(ビデオには出演もしている)の独特の落ち着いたムードがなかなか魅力的で、各地のオカルト現象を彼がカメラマンを引き連れ探求していくビデオの内容自体が非常に面白い。 この映画を見る観客は、彼が謎の自宅全焼事件の後に失踪し、2005年の今になっても発見されていない事実をすでに知

  • 超映画批評「劇場版 NARUTO 大激突!幻の地底遺跡だってばよ☆」70点(100点満点中)

    『劇場版 NARUTO 大激突!幻の地底遺跡だってばよ☆』70点(100点満点中) テレビアニメの映画版としてはかなり格的な出来 週刊少年ジャンプに連載中で、TVアニメも大人気の『NARUTO-ナルト-』映画版第二弾。 舞台は“火の国”と“風の国”の国境。主人公のうずまきナルトは迷子のペットをある村に届けるという、いつにもまして間抜けな任務の途中、何者かに襲われる。激しい戦闘の末、敵とナルトはがけ下に転落する。残された仲間の奈良シカマルと春野サクラは、ナルト捜索に出かけるが、そこで巨大な移動要塞に遭遇する。 さて、短編をあわせると3目の劇場版NARUTOだが、今回はかなり格的な冒険アクションを送り出してきた。ちなみに前作で大活躍だったカカシ先生は今回登場せず、その代わりに風の国「砂隠れの里」の我愛羅、カンクロウといったシリーズキャラクターの忍者たちが登場する。普段のライバルたちと、よ

  • 超映画批評『妖怪大戦争』65点(100点満点中)

    『妖怪大戦争』65点(100点満点中) ビックリするほどセクシーな栗山千明に驚かされる 水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆきら妖怪に縁の深い作家たちがプロデュースする、製作費13億円の大作映画。監督は海外でも人気の高い三池崇史(「着信アリ」ほか)。 日を魔界から支配しようとたくらむ男(豊川悦司)とその軍勢に、日古来からの妖怪たちが、その年の祭りで少年戦士=麒麟送子に選ばれた10歳の少年(神木隆之介)を先頭に戦いを挑むという物語。迫力バトルの見せ場を、両親が離婚したばかりで落ち込み、クラスにもなじめない主人公少年の成長を絡めて描く。 出演者もプロデュースチームの面々も、妖怪が大好きなんだなあとよく伝わってくる作品だ。妖怪役には数々の有名人が登場するが、みなリラックスして楽しみながら演技しているように見える。そうした妖怪たちは、最新VFXのお化粧はしているものの、基的には昔ながらの着

  • 超映画批評『チーム★アメリカ ワールドポリス』75点(100点満点中)

    『チーム★アメリカ ワールドポリス』75点(100点満点中) この上ない不謹慎さと意外なド迫力映像のあわせ技 過激でブラックなアニメシリーズ『サウスパーク』で知られるトレイ・パーカーとマット・ストーンによる、マリオネット(操り人形)アクション大作。 テロを根絶するため、国際警備組織“チーム・アメリカ”が結成された。彼らはハリウッドを拠点とし、強力な武器と車両で世界中のテロリストを虐殺、いや退治していた。ある日彼らは独裁者が大量破壊兵器を取引しようとしている情報をキャッチ、おとり捜査のため俳優のゲイリーをスカウトすることにきめた。 人形劇である。それも糸であやつるマリオネット。CGなどのこじゃれた最新技術は使わない。ところが、えらく精巧なセットと格的な音響効果、『マトリックス』シリーズや『スパイダーマン2』で知られる撮影監督らの力によって、とんでもない迫力のアクション映画に仕上がっている。

  • 超映画批評『魁!!クロマティ高校 THE☆MOVIE』60点(100点満点中)

    『魁!!クロマティ高校 THE☆MOVIE』60点(100点満点中) クロマティ選手が怒り狂うほどのバカらしさがお見事 週刊少年マガジンで連載中の野中英次の人気ギャグ漫画を、『地獄甲子園』などおバカ映画作りに定評のある山口雄大監督が実写映画化したもの。 誰よりも真面目な少年神山高志(須賀貴匡)は、中学時代のカツアゲの危機を救ってくれた山(坂口拓)に憧れ、彼と同じ都立クロマティ高校に入学した。だがそこは、高校生、いや人間とは思えない連中の巣窟であった。 山口監督らしい、ぶっとんだお馬鹿映画だ。今回はVFXも多用して、ふざけた笑いを連発する。とくに前半はコミック版の雰囲気をうまく生かしたギャグの切れがよく、原作ファンなら腹が痛くなるほどの爆笑を実現している。 特に、主演の須賀貴匡(「仮面ライダー龍騎」)が役柄にぴったりで、演技も良い。彼を起用できたことはこの映画にとって幸いであった。フレディ

  • 超映画批評『0:34 レイジ 34 フン』70点(100点満点中)

    映画批評『0:34 レイジ 34 フン』70点(100点満点中) 日常的な舞台で繰り広げられる恐怖演出に腰が抜ける 地下鉄を舞台にしたイギリス製現代ホラー。マイナーな作品だが、舞台設定と恐怖演出がうまく、相当恐ろしい一だ。 舞台はイギリスのロンドン。パーティーを抜け出したヒロイン(フランカ・ポテンテ)は、地下鉄の駅にやってきた。ところが彼女は、思わずベンチで居眠りをして終電を逃してしまう。あきらめて外にでようとするが、かたく閉ざされた入り口をみて自分が閉じ込められてしまったことを知る。だがそこへ、なぜか一の電車がやってくる。彼女は不思議に思いながらも乗り込んでしまうのだが……。 ガチで怖いホラー映画である。特にこの映画の前半の恐ろしさといったらない。まぶしいほど明るい地下鉄駅構内と、光の届かないトンネル内の落差。もしくは普段、人にあふれる駅内と、終電後、駅員すらいなくなってしまった無

  • 超映画批評『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』75点(100点満点中)

    『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』75点(100点満点中) 一度じゃとても見切れない圧倒的な情報量 ジョージ・ルーカスが28年間に渡り作り上げてきた壮大なSFシリーズの完結編。スター・ウォーズは来9部作で、まだエピソード7~9が作られるのではと期待されているが、ルーカス人はもう作らないといっている。そうは言ってもたぶんそのうち作るとは思うが、実際にどうなるかはわからない。 激化する共和国と独立惑星連合との戦いを軸に、主人公アナキン(ヘイデン・クリステンセン)がダークサイドに落ちていく過程を悲劇的に描く。その流れの中で、愛するパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)との恋の行方、師匠であり友であるオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)との別れなど、あらゆる登場人物の運命を一気に描く2時間21分。見ごたえたっぷり、文句なしの超大作だ。 『スター・ウォーズ エピソード3 シス

  • 超映画批評『HINOKIO ヒノキオ』65点(100点満点中)

    『HINOKIO ヒノキオ』65点(100点満点中) 米国以上のCGと、すばらしい子役のハーモニー 引きこもりの少年が、遠隔操作のロボットを通じてガキ大将との友情を深めていく子供向け感動ドラマ。 主人公の男子小学生(郷奏多)は、研究者の父親が試作した遠隔操作ロボット、ヒノキオを操作して、学校に代理出席してもらっている。彼は過去に事故で母親を失ったトラウマから引きこもりになってしまっており、父親はそんな息子になんとか心を開いてもらいたくてこのロボットを与えたのだが、一向にその気配はなかった。 そんな主人公が、学校で出会った乱暴なガキ大将とヒノキオを通して交流するうちに、物の友情を知り、成長していくドラマである。まさに子供向けの健全なお話だ……と思うなかれ、「ヒノキオ」は大人が見ても十二分に楽しめる、非常に見ごたえある映画だ。 まず、CGを使って描かれるヒノキオがすごい。ヒノキオとは、軽量

  • 超映画批評『逆境ナイン』70点(100点満点中)

    『逆境ナイン』70点(100点満点中) 原作を読んでない人でも楽しめる楽しいギャグ映画 熱血スポ根マンガの傑作(?)とされる島和彦の同名原作を、突き抜けたお馬鹿映画として実写映画化したもの。超映画批評ブレーンの、とある島和彦ファン(21歳大学生 男)によると、「ムダに熱い漫画を描き続けている熱血漫画家」による、「無理とデタラメから構成され、女子供はすっこんでろ! といわんばかりの世界を熱く描いた伝説的な原作」の実写化だ。 校長(藤岡弘)から廃部勧告をうけた全力学園野球部キャプテン不屈闘志(玉山鉄二)は、持ち前の逆境に強い精神から猛反発、思わず甲子園出場を宣言してしまう。彼の熱い魂に感化された野球部員たちも、よくわからない猛練習を重ね、いよいよ試合当日を迎えるのだが……。 映画版『逆境ナイン』は徹底したおバカ映画として実写化された。とはいえ、漫☆画太郎原作の『地獄甲子園』のような異様なま

  • 超映画批評『オープン・ウォーター』85点(100点満点中)

    『オープン・ウォーター』85点(100点満点中) トラウマ確実な恐るべき怖さ、勇気ある人のみ見ること 低予算で作られた海洋恐怖映画。総予算は1500万円以下、上映時間はたったの79分間だが、そこにつめこまれたエンタテイメントはその100倍の製作費の映画にも劣っていない。 ストーリーは単純明快、休暇でスキューバダイビングに出かけた若いカップルが、たっぷり楽しんで海面に浮上したところ、そこにいるはずのボートがいないという悲劇である。ツアー客の人数を数え間違えたボートが、彼らを置き去りにして帰ってしまったのだ。さあさあ大変ここは海のど真ん中、しかも悪いことにその海域は有名なサメの生息地でもあるのだった。ありゃー。 そこから先はただただ海に浮かぶ二人の会話劇。次から次へと困難と不安と恐怖が観客と二人を襲い、落ち着くひまはまったくない。上映時間が79分間なのは、それ以上この緊張感に誰も絶えられないか

  • 超映画批評『50回目のファースト・キス』70点(100点満点中)

    『50回目のファースト・キス』70点(100点満点中) ネタバレらう前に早く見に行きましょう 日ではさほどでもないが、アメリカでは文句なしのトップスター、アダム・サンドラー主演のロマンティックコメディ。物語のアイデアの核となっている特殊な役柄を演じるヒロインは、ドリュー・バリモア(「チャーリーズエンジェル」ほか)。 ハワイで働くプレイボーイの獣医(A・サンドラー)は、ある朝カフェで魅力的な女の子(D・バリモア)を見かける。いつものゲーム感覚で見事に彼女の気を引くことに成功し、楽しい時間を過ごした彼は、いつしか彼女に特別な魅力を感じていた。翌朝も約束どおりカフェで待ち合わせた彼だったが、一夜明けた彼女は別人のように冷たい態度をとるのだった。 はてさて、どうして彼女は一変してしまったのか。その日彼は、彼女に隠されたあまりにも悲しい事実を知るのだった。 これはいける。笑えてなける、さわやかな

  • 超映画批評『バットマン ビギンズ』75点(100点満点中)

    『バットマン ビギンズ』75点(100点満点中) シリーズ最高傑作 DCコミックス不滅の人気キャラクター、バットマンを映画化したシリーズ最新作。監督は時系列を逆にした異色作「メメント」のクリストファー・ノーラン。渡辺謙が出演しているのも話題だ。 作はシリーズパート1よりさらにさかのぼった時代を描いたもので、目の前で両親を殺された若き主人公が、ヒマラヤへの一人旅で心身ともに成長、特殊能力も修行の末に獲得し、やがてバットマンとしてゴッサムシティを守るようになるまでの話である。バットマンはスーパーマンやスパイダーマンと違い、超能力を持たないただの生身の人間であるが、彼がそれでもなぜ強いのか、その秘密が明らかになる。このあたり、へぇ~の連続である。 最初に言っておくと、作はシリーズ中では最も面白く、そしてカッコいい。このバットマン誕生編は、予想外のすばらしい出来映えであった。 「バットマン」を

  • 超映画批評『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』70点(100点満点中)

    『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』70点(100点満点中) 何も信じられなくなった男の悲劇 70年代におきたハイジャック事件をもとにした人間ドラマ。主演はアメリカを代表する演技派ショーン・ペン。 一年前から別居中の子と再びやり直すため、主人公(S・ペン)は事務機器の営業マンという慣れない仕事に就いた。しかし、思うように成績をあげられぬ彼は、職場や上司、やがてはこの不公平な社会を作った国に対する不満を募らせていく。 しかしそれでも主人公は最後まで必死に適応しようとし、親友との起業など、なんとか世間の不公平から逃れて、まっすぐに生きる道を模索する。そんな不器用きわまる彼が、徹底的に追い詰められ、テロ行為を決意するまでの様子をじっくりと描いたドラマだ。 といっても、暗殺だのテロだのといった話はほんの少しで、ほとんどはこの、社会に適応できなかった哀れな男の姿を温かみある視点で描いている。 製

  • 超映画批評『電車男』75点(100点満点中)

    『電車男』75点(100点満点中) インチキな偽善的純愛モノよりずっといい 初恋の悩みを2ちゃんねる相談した、あるオタクの実話(掲示板の書き込みなので信憑性は100%ではなかろうが)を映画化したもの。 主人公は22歳の同人オタク(山田孝之)。彼は今日もアキバ(秋葉原)のフィギュアショップなどを覗いた後、私鉄で帰路につこうとしていた。そのとき目の前で中谷美紀似のお嬢様(中谷美紀)が酔っ払いに絡まれ、彼は思いもかけず彼女を助けてしまう。後日お礼にエルメスのティーセットが届いたことから、彼は自分の高まる恋心を匿名掲示板2ちゃんねる」に相談するのだった。 さて、普段は罵詈雑言の嵐を浴びせる2ちゃんねるの名無しさんたちであるが、あまりに切実かつ純情な主人公の様子に、やがてマジレスが飛び交うようになる。ハンドルネーム「電車男」を名乗る主人公は、そんな彼らからのアドバイスを元に、助けた彼女(エルメス

  • 超映画批評『ミリオンダラー・ベイビー』70点(100点満点中)

    『ミリオンダラー・ベイビー』70点(100点満点中) 重厚なドラマ、監督と役者の技量に感服 クリント・イーストウッドが主演・監督し、アカデミー賞主要4部門を受賞した話題作。 主人公は元ボクシングチャンピオンの老トレーナー(C・イーストウッド)。彼は親友(モーガン・フリーマン)とともに貧乏なジムを切り盛りしていたが、そこに一人、熱心に練習する若い女性(ヒラリー・スワンク)がいた。しきりに指導を受けたがる彼女に対し、主人公は当初、相手にもしなかったのだが……。 話題作『ミリオンダラー・ベイビー』は、ボクシングを題材にした人間ドラマだ。『ロッキー』のようなスポ根を期待するとガクっとはずされるが、精緻かつリアルな人間描写は見ごたえたっぷりだ。 表面的な物語は、主人公と女ボクサーがやがて世界を目指して駆け上がっていくというサクセスストーリーだ。ハッキリいって、この筋書き自体は3流もいいところ。ボクシ

  • 超映画批評『バタフライ・エフェクト』99点(100点満点中)

    『バタフライ・エフェクト』99点(100点満点中) 運命に挑戦した男の切ないラブストーリー アシュトン・カッチャー主演のタイムスリップ系サスペンス。アシュトン・カッチャーは米国ではTVのバラエティ番組等に出演し、アイドル的人気を博す若手俳優だが、日ではそれほど知名度が高くない。『バタフライ・エフェクト』は非常にシリアスで感動的な物語であるのだが、多くの日人にとっては主人公役の彼に対する先入観がないであろうから、よりニュートラルに作を楽しめると思う。そうした点まで含めて判断した高得点である。 主人公(A・カッチャー)は少年時代、記憶が時折ブラックアウトする症状に悩まされていた。成人後はすっかりよくなったかに見えたが、ある日当時の日記を読み返した彼は、失った記憶を突然取り戻した。しかもその恐るべき記憶を、彼はあとから変更する事ができるのだった。 さて、現在もこの主人公は、幼馴染の少女に恋

  • 超映画批評『タナカヒロシのすべて』70点(100点満点中)

    『タナカヒロシのすべて』70点(100点満点中) 明日を生きる活力が沸いてくる映画 右翼チックな演説芸で一部にカルト的人気を誇る芸人、鳥肌実を主演にしたシュールな日常ドラマ。 かつら工場に勤める平凡極まりない男、タナカヒロシ(鳥肌実)。32歳で独身、友人も恋人もおらず、実家にパラサイトする退屈な彼の人生が、父の急死をきっかけに急転落しはじめる。ありえない程の不幸の連続に見舞われ、平穏だった日々は終わりを告げるのだが……。 『タナカヒロシのすべて』は、不幸すぎる男に訪れるちょっといい話、というやつだ。淡々とした日常を描くところから始まり、徐々にろくでもない不幸に巻き込まれる主人公の哀れなエピソードの連続へと物語は展開する。その流れの中にさりげなく、心地良い登場人物やイベントを織り交ぜ、決して飽きさせない演出が心憎い。 主演の鳥肌実は、その過激な芸風からは想像もできないシリアスな役柄を好感度た

  • 超映画批評『交渉人 真下正義』70点(100点満点中)

    『交渉人 真下正義』70点(100点満点中) 二番煎じかと思いきや、なかなか格的 フジテレビの人気TVドラマ『踊る大捜査線』シリーズのいち登場人物であった真下正義を主人公にした番外編。このように、ある映画の脇役をメインにした外伝を作ることを専門用語でスピンオフという。またの名を二番煎じ。 地下鉄用最新鋭ハイテク試験車両が何者かにハイジャックされた。犯人は、警視庁初の交渉人でロス市警帰りの真下(ユースケ・サンタマリア)を交渉相手に指名した。東京の地下鉄網を荒らしまくるハイジャック車両の目的は何なのか、やがて関係者に戦慄が走る。 『踊る大捜査線』の映画版は、1,2あわせてのべ2000万人が見たお化けシリーズだ。実写邦画の興行新記録も持っている。そういう膨大なマーケットがあるから、『交渉人 真下正義』もそこそこ話題を呼ぶだろう。 『交渉人 真下正義』は、一言でいうと都市型テロを描いたアクション

  • 超映画批評『英語完全征服』70点(100点満点中)

    英語完全征服』70点(100点満点中) 英語に苦労した人なら爆笑の、明るく楽しいラブコメディ 英会話学校を舞台にした韓国のロマンティックコメディ。 ヒロイン(イ・ナヨン)は地味な公務員。職場命令で英会話を習う羽目になったが、教室で出会った優しげな男の子(チャン・ヒョク)にひと目ぼれ。彼に何とか振り返ってもらうため、苦手な英会話にも精を出すのだが……。 『僕の彼女を紹介します』が日で大ヒットしたチャン・ヒョクの人気にあやかって公開される2003年の主演作がコレ。中身はぶっ飛んだ女性が主人公のロマコメで、雰囲気としては日でもファンの多い『猟奇的な彼女』に近いものがある。 ヒロインは天然かつ妄想癖のある相当変わった性格で、不恰好な巨大メガネや、切りそろえられた前髪がカッコ悪い、いわゆるモテナイ系の女の子。しかしまあ、メガネっ子モノの常で、めがねをはずしたらあら美人、という設定はお約束。人気

  • 超映画批評『フライト・オブ・フェニックス』70点(100点満点中)

    『フライト・オブ・フェニックス』70点(100点満点中) 大画面で見る価値のあるサバイバルムービー 脱出モノ映画の傑作『飛べ!フェニックス』(1965)をリメイクしたもの。 閉鎖された石油探掘所のクルーをのせた輸送機が、砂漠のど真ん中に不時着した。生き残った10人の乗員乗客は、状況から救助の望みが薄いと知る。やがて偶然乗り合わせた設計士の男は、残った部品で小型の飛行機を組み立てるという奇想天外な提案をする。 ジェームズ・スチュワートら個性豊かな当時のスターキャストをそろえ、145分間という長尺で男くさいドラマを展開したオリジナルにくらべ、このリメイク版にはメンバーに女性(ミランダ・オットー)もいるし、上映時間も2時間足らずとコンパクトだ。そして、CGを駆使した冒頭の墜落シーンの恐るべき迫力で観客の度肝を抜き、まずは40年間の映像技術の進歩を印象付ける。ちなみにこの場面の撮影は、実際に座席の

  • 超映画批評『隣人13号』75点(100点満点中)

    『隣人13号』75点(100点満点中) 映画を知らぬ監督が作ったとは思えない いじめられた恨みを晴らそうとする二重人格の少年を描いた井上三太の同名コミックを実写映画化したもの。主人公役は小栗旬(おとなしい来の人格=村崎十三)と中村獅童(強暴な別人格=13号)が二人一役で演じている。 主人公の若者、村崎十三(小栗旬)は、10年前の小学生時代、自分をいじめていた男(新井浩文)のアパートを探し当て、復讐のため越してきた。さらに男と同じ職場にバイトとして入社するも、彼は十三の顔すら覚えていなかった。不良時代と変わらず横暴かつ乱暴な男は、今ではと小さな子供の3人で幸せに暮らしていたが、十三は手始めにそのに接近していく。 原作漫画はかつて何人かの監督から映画化のオファーがきたというが、原作者はあえて映画経験のないCMディレクターの井上靖雄監督を選んだ。アメコミのごとくアクの強い自分の絵柄を違和感

  • 超映画批評『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月』85点(100点満点中)

    『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月』85点(100点満点中) 30代男女に最適な楽しい一 全世界の負け犬女性(30代独身彼氏ナシ)の共感を呼び大ヒットした前作『ブリジット・ジョーンズの日記』の続編。監督は変わったものの、主要キャストの変更はなし。 仕事も恋もダメダメな主人公ブリジット(レニー・ゼルウィガー)にも、ついに念願の彼氏(コリン・ファース)ができた。ラブラブな日々が過ぎ、二人の仲は順風満帆と思っていた矢先、彼氏と美人秘書の仲むつまじい姿を目撃してしまう。幸せな日々は一転、疑心暗鬼にとらわれるブリジット。グッドタイミングで現れた女たらしの元上司(ヒュー・グラント)からの誘惑。ああ、まだまだ当の恋の幸せは遠いのか?! とにかく抜群に面白い、笑いの止まらない第二弾である。飛び出すギャグすべてがクリーンヒット、前作で大笑いした人ならたまらないネタが連発だ。 主人

  • 超映画批評『ナショナル・トレジャー』75点(100点満点中)

    『ナショナル・トレジャー』75点(100点満点中) 大人でも楽しめるバランスいい冒険映画 頭は薄いがインパクトの強いお顔をもつ人気俳優ニコラス・ケイジ(「マッチスティック・メン」ほか)主演のアクション・アドベンチャー。ハリウッドNo.1のブロックバスター(=超大作)請負人ジェリー・ブラッカイマー(「パイレーツ・オブ・カリビアン」ほか)製作の、健全なファミリー・カップル向け娯楽大作だ。 歴史学者&冒険家の主人公(N・ケイジ)は、一族が先祖代々追ってきた秘宝を追い求め、世界を飛び回っている。歴史上の権力者とともにあったこの秘宝は、アメリカ独立戦争時の混乱で行方不明になっていたが、彼は合衆国独立宣言書にそのヒントが隠されている事をつきとめる。 主人公とその相棒は、金髪巨乳美女なのに知性的という、キャラクター的ギャップが新鮮な公文書管理者と協力し、その秘宝を探す旅に出る。歴史学者ニコラス・ケイジは

  • 超映画批評『ロング・エンゲージメント』75点(100点満点中)

    『ロング・エンゲージメント』75点(100点満点中) オドレイ・トトゥのヌード目当ての人も、作品の出来の良さに満足するはず ミニシアター系の作品としては記録的な興行成績を持つ『アメリ』の監督(ジャン=ピエール・ジュネ)と主演女優(オドレイ・トトゥ)のコンビによる、感動の戦争ドラマ。 舞台は第一次大戦下のフランス、主人公(A・トトゥ)は純粋な心を持つ足の不自由な少女。ある日、彼女の元に恋人戦死の報が届く。しかし、彼の生存を信じる彼女は、私立探偵を雇うとともに、私財をつぎ込んで自らも彼の足跡をたどってゆく。 『ロング・エンゲージメント』は、一人の心やさしい少女が、死んだとされる恋人の行方を必死に捜し歩く物語だ。恋人を探すヒロインのパートと、過酷な戦場で何が起きたのかを描く彼氏のパートに大きく分けられ、交互に物語が展開する。 音響効果抜群の戦争シーンは、直接的な残酷描写も含まれる相当リアルなもの

  • 超映画批評『シャーク・テイル』80点(100点満点中)

    『シャーク・テイル』80点(100点満点中) 何も考えず、ただ笑って楽しんで帰る映画 アニメ映画史上最大のヒット作『シュレック2』を製作したドリームワークスによる長編CGアニメーション。 主人公のオスカー(声:ウィル・スミス)は、いち労働者としてさえない暮らしをしながらも、いつか成功を手にしたいと願う小魚。一方、街を牛耳るホオジロサメ一家の末っ子レニー(声:ジャック・ブラック)は、ベジタリアンのためサメ社会になじめず悩んでいた。やがて両者は偶然出会い、オスカーがサメ退治を演じる事で二人の望みをかなえようという話になるのだが……。 『シャーク・テイル』は、海中のある町(?)を舞台に魚たちが繰り広げるコメディドラマで、アメリカでは3週連続1位というヒットを飛ばした。まず、見所はなんといっても豪華な声優陣。ハリウッドスターが多数登場し、人の顔に似せた魚キャラクターの声をそれぞれ演じている。 そ

  • 『香港国際警察 NEW POLICE STORY』85点(100点満点中)

    『香港国際警察 NEW POLICE STORY』85点(100点満点中) ここ10年のジャッキー映画の中では文句なしナンバー1 人気アクションスターのジャッキー・チェンが、久しぶりに香港映画界に復帰を果たしたアクションドラマ。作は、アジア各国で公開され、大ヒットを記録した。 舞台は現代の香港。犯行後、自ら通報して警察との対決を楽しむ凶悪な銀行強盗グループの前に、多数の警察官が死傷した。犯人たちはまんまと逃げのびたかに見えたが、チャン警部(J・チェン)は優秀な部下とともに、彼らのアジトに自信満々で乗り込んでゆく。 彼自身、「自分のアクションの中では最高傑作」と評する往年の名作『ポリスストーリー』の名をひっさげ、ジャッキーが香港映画に戻ってきた。ハリウッドに進出していたここしばらくは、似たような役柄、内容の凡作が続いていたが、この『香港国際警察 NEW POLICE STORY』は相当

  • 超映画批評『セルラー』85点(100点満点中)

    『セルラー』85点(100点満点中) 年間ベスト級に面白い豪腕サスペンス キム・ベイシンガー主演の、アイデア抜群の設定をもつスリラー。これを考え出したのは電話ボックスだけを舞台に映画を成立させた「フォーン・ブース」の脚家、ラリー・コーエンだ。この人は電話で話を作るのがうまいですなあ。 平穏に暮らしていたヒロインの教師(K・ベイシンガー)は、突如乱入してきた男たちに拉致され、そのまま監禁されてしまう。監禁部屋には粉々になった電話機が一台。彼女は持ち前の科学知識を生かして部品を組みなおし、なんとか修理に成功する。しかし意図した番号へダイヤルする事まではできない。やっとの思いで偶然つながった相手は、いかにも無責任そうなイマドキの若者のケータイだった。 ここから先は、文字通りノンストップで息づまるサスペンスが展開する。修理した電話機ではリダイヤルできない以上、この通話が切れてしまうことは、すなわ

  • 超映画批評『火星人メルカーノ』70点(100点満点中)

    『火星人メルカーノ』70点(100点満点中) 残酷描写がクセになる危険な一 アルゼンチン製の大人向け長編アニメーション。 火星人のメルカーノは、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで暮らす無職の宇宙人。ホームシックの彼は、盗んだノートパソコンでネットに接続、ウェブ上にバーチャル火星コミュニティを作った。やがてメルカーノはそこで大手IT企業社長のオタク息子フリアンと出会い、チャットで盛り上がる。すっかり仲良くなったころ、フリアンの父がメルカーノのバーチャル火星に目をつける。社長は火星人の技術力を悪用して、大もうけを企んでいたのだ。 『火星人メルカーノ』は素朴な絵柄ながら、内容は社会風刺を含んだ強烈なブラックコメディで、多数登場する残酷描写も非常に激しい。失業問題をはじめとするアルゼンチンの社会問題を火星人の視点から描いており、かの国のことをあまりよく知らない日人にとっては興味深い内容が盛り

  • 超映画批評『ボーン・スプレマシー』70点(100点満点中)

    『ボーン・スプレマシー』70点(100点満点中) ディテールにこだわったスパイ映画の佳作第二弾 マット・デイモン主演のアクション映画「ボーン・アイデンティティー」の続編。ロバート・ラドラム原作小説3部作の第2作にあたる。 前作のラストから2年、無事逃げ切ったボーン(M・デイモン)とその恋人マリー(フランカ・ポテンテ)は、インドのゴアでひっそりと幸せに暮らしている。だが、ボーンはいまだに過去の忌まわしい記憶から逃れられず、悪夢にうなされていた。そしてついに、彼の平穏な生活は刺客の手により破られてしまう。 極力銃は使用せず(使えば達人並)、知恵と身体能力で敵に対抗するヒーロー、ジェイソン・ボーンシリーズのPART2だ。前作では記憶喪失で登場したボーン、体が勝手に動いて敵をやっつけていたが、今回は最初からエンジン全開。全力のボーンのアクションが楽しめる。 このシリーズの魅力は、非現実的なドンパチ

  • 超映画批評『運命を分けたザイル』70点(100点満点中)

    『運命を分けたザイル』70点(100点満点中) 友達が死ぬとわかっているのにロープを切る勇気があるか? 実在の登山家ジョー・シンプソンとサイモン・イェーツが史上初めてシウラ・グランデに登頂した際に経験した、壮絶極まりない事故からの生還を描いたドキュメント・ドラマ。 1985年、ペルーのアンデス山脈の未踏峰シウラ・グランデの西壁。見事その登頂に成功した二人のクライマーだが、帰り道で遭難してしまう。互いの体をザイルで結び、ゆっくりと進んでいた二人だが、片方が転落、宙吊りになってしまう。共倒れを避けるため、主人公はついにザイルを切断する。 『運命を分けたザイル』は、いわゆる再現型ドキュメンタリーだ。再現ドラマを役者が演じ、人へのインタビュー映像と交互に構成される。ナレーションも登山家人が行っている。テレビでよくある企画だがテレビ番組と違うのは、再現ドラマ部分を実際に雪山でロケ撮影し、かつてな

  • 超映画批評『レイ/Ray』85点(100点満点中)

    『レイ/Ray』85点(100点満点中) ファン以外が見ても楽しめる見ごたえある伝記映画 盲目の天才ミュージシャン、レイ・チャールズの一生を描いた伝記映画。 1948年アメリカ、まだバスには黒人隔離席があった時代。17歳のレイ(ジェイミー・フォックス)はシアトルでピアノの才能を認められ、小さなバンドの一員としてクラブ等で演奏をはじめた。だが、彼が盲目である事をいい事に、バンドの老練な女マネージャーらはギャラを不当に搾取するのだった。 サザン・オールスターズの「愛しのエリー」をカバーした事で日でもおなじみのレイ・チャールズは、ゴスペルとR&Bを初めて融合させたソウルミュージックのパイオニアとして知られる音楽界の革命者だ。既存のジャンルの壁を乗り越え、彼が生み出した楽曲は世界中でヒットを記録し、もちろんこの映画の中でもたくさん使われている。 そうした楽曲の作成過程のエピソードが面白い。彼はコ

  • 超映画批評『レイクサイドマーダーケース』70点(100点満点中)

    『レイクサイドマーダーケース』70点(100点満点中) ビックリ結末!ミステリ好きが満足できる映画化だ 日を代表する(といってもよかろう)ミステリ作家の東野圭吾原作『レイクサイド』の映画化。 中学お受験を控えた3家族が集まり、湖畔の別荘で合宿を行うことに。主人公(役所広司)と(薬師丸ひろ子)は別居中で冷め切っているが、娘のために不仲を隠し参加している。冷静な塾講師(豊川悦司)の見事な指導の元、勉強に励む子供たち。ところが、突然現れた主人公の愛人が殺されたことで、状況は一変する。 人里離れた湖畔の別荘、お受験合宿などといった非現実的な設定、みな一癖もふた癖もありそうな怪しげな登場人物。登場するのはわずか11人。どの要素もミステリファンの心をくすぐるものだろう。いわゆる格ミステリの醍醐味というやつだ。この映画はその魅力を余すところ無く映像化しており、まずは「抜群に面白い!」と言っておこう

  • 超映画批評『ネバーランド』75点(100点満点中)

    『ネバーランド』75点(100点満点中) あまりに感動的な「ピーターパンの出来るまで」 名作「ピーター・パン」の誕生秘話を、半フィクションで描いた感動物語。ジョニー・デップ(「パイレーツ・オブ・カリビアン」ほか)、ケイト・ウィンスレット(「タイタニック」ほか)、ダスティン・ホフマンといった演技派競演による、ピーターパン誕生100周年にふさわしい良質なドラマだ。 舞台は1903年のロンドン。主人公の劇作家(J・デップ)は新作の不評で落ち込む中、気晴らしの散歩中にある未亡人一家と出会う。その子供たちのひとり、なぜか空想の世界で遊ぶことを拒絶する三男のピーター(フレディ・ハイモア)に強く惹かれた彼は、やがて一家と積極的に付き合うようになる。 未亡人(K・ウィンスレット)とその子供たちと度々会うことであらぬ噂を立てられ、との仲がぎくしゃくしながらも、彼はピーターやその家族と深く付き合って行く。一

  • 超映画批評『カンフーハッスル』80点(100点満点中)

    『カンフーハッスル』80点(100点満点中) お馬鹿な見た目と格的な中身を持つカンフーアクション 『少林サッカー』のチャウ・シンチーが、再び監督&主演で送るカンフームービー。 時代は文革直前の中国、舞台は郊外の貧乏アパート。ある日、住民とチンピラが揉め事を起こすが、あっさり住民側が撃退してしまう。やがてこの事件はギャング団とアパート住民の全面カンフー戦争に発展する。 ストーリーは単純明快、アクションはのっけから全開。見せ場以外なし!といわんばかりの大サービスが好ましい、能天気なカンフーアクション映画だ。景気のいい作品らしく、元旦から公開となっている。 舞台となるアパートは、壮絶に貧乏な連中がすむ場所で、何十人もの人間がひしめきあって暮らしている。そこに、漫画としか思えないバカバカしい住民キャラがたくさん登場する。頭にカーラーを巻いたオバサンや、ただのハゲオヤジだと思ってみていると、それが

  • 超映画批評『スーパーサイズ・ミー』70点(100点満点中)

    『スーパーサイズ・ミー』70点(100点満点中) 勝ったのは案外マクドナルド側か? マクドナルドを朝昼晩30日間べつづけるという人体実験ドキュメンタリー。普段はかわいいカノジョ(米国によくいる健康オタク)の自然で暮らしているモーガン・スパーロック監督が、「マックのようなファストフードは当に体に悪いのか」を証明するため、自らこの暴挙に出た。 監督は、この実験をするにあたり、入念な準備をした。医師やパーソナルトレーナーの指示を仰ぎ、変化を数値で表すために定期的に健康診断を行った。そして、「絶対残さない」「マックのメニュー以外べてはだめ」「すべてのメニューをたべる」「スーパーサイズをすすめられたら断らない」などという、ばかばかしいルールを自分に課し、実験に挑むのである。 ちなみにスーパーサイズというのは米国ならではの巨大サイズのことで、頼むとバケツのような紙コップでコーラやら何やらが出て

  • 超映画批評『エイリアンvs.プレデター』80点(100点満点中)

    『エイリアンvs.プレデター』80点(100点満点中) 中盤からの心踊る展開に拍手喝采 恐るべき繁殖力と酸性の血液が特徴のエイリアンと、高度な科学力と運動能力、高い知性が特徴のプレデターという二大異星生物が対決するアクションSF大作。どちらも高い人気をもつシリーズ映画だが、その主人公(?)同士が激突するという、両ファンには夢のような企画だ。 2004年、南極大陸。ウェイランド社の人工衛星がその地下に大量の熱源があることを察知した。社長のチャールズ・ビショップ・ウェイランド(ランス・ヘンリクセン)は、民間のスペシャリストを召集し、調査にあたることを決定。やがて地下施設は人間以外の知的生命体による建造であるとわかるが、そこには謎の生物の卵も大量に生みつけられていた……。 プレデターがある目的のために作った地下ピラミッドに、あわれ人間たちが迷い込んでしまうという話だが、詳しくはいえないものの

  • 超映画批評『戦争のはじめかた』70点(100点満点中)

    戦争のはじめかた』70点(100点満点中) 登場する戦車は、なんと個人が所有するドイツ・イギリス合作の反戦ブラックコメディ。トロント映画祭で絶賛された直後にアメリカで同時多発テロが起こり、その関係で5回も全米公開が延期されたという、時代に翻弄された作品。 舞台はベルリンの壁崩壊直前の西ドイツ、駐留米軍のとある補給部隊。平和でやることのないこの軍隊は、倫理観がすっかり麻痺してしまっている。主人公のエルウッド(ホアキン・フェニックス)は、物資をちょろまかして横流ししたり、軍の機材でヘロインを精製してブラックマーケットに流すなどやりたい放題だ。そこにやってきたのが新任の鬼軍曹(スコット・グレン)。今までと違い徹底的に不正を取り締まる彼に対し、エルウッドは彼の娘(アンナ・パキン)をナンパして憂さ晴らししようとするのだが……。 なぜ『戦争のはじめかた』がアメリカで公開延期されたかといえば、徹

  • 超映画批評『恋文日和』70点(100点満点中)

    『恋文日和』70点(100点満点中) 笑っていたのにいつのまにか泣けてくる、センスのよい恋愛映画 ジョージ朝倉の人気漫画を原作を元に映画化した作品。それぞれ別の監督による、4話オムニバスのラブストーリー。 1の短編を4分割し、その間にそれぞれ3つの独立したストーリーを挟むという構成。最後まで見ると、これがまた絶妙な効果をあげていることがわかるだろう。それぞれの物語は別の監督によるというが、全体のテーマとして「恋文」というものがあり、ムードはほぼ統一されているので違和感はない。 新進監督と若手中心の俳優による4つのストーリーはどれも非常に優れている。肩に無駄な力が入っていない、とてもセンスがよい演出には好感が持てる。たとえばラブストーリーだからシリアスで凝った場面があるが、直後にそれを茶化して笑わせるといった感じで、見ていて気恥ずかしくなることがない。私はこのスマートな映画を、コテコテ演出

  • 超映画批評『コニー&カーラ』65点(100点満点中)

    『コニー&カーラ』65点(100点満点中) 笑いと涙の絶妙なバランス 製作費の50倍近くの興行収入を上げ、2002年のアメリカ映画界を揺るがす大ニュースとなったコメディ映画『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』の主演&脚のニア・ヴァルダロスが、再び主演と脚を担当して作った作品。 将来の大スターを夢見る売れない女性デュオの二人が、偶然マフィアの殺人現場を目撃、逃亡生活をするはめになる。二人は正体を隠すべく、女装した男性(ドラッグクイーン)の歌手に化け、毎夜ゲイクラブのショーに出て生活費を稼ぐが、女性らしいよく伸びる歌声と毒舌トークで、予期せぬ大人気となってしまう。 上記ストーリーも、最後に感動シーンが用意されているところも『天使にラブソングを…』(92年)を髣髴とさせる。そんな『コニー&カーラ』独自の特徴としては、ノーマルな女性がオカマに化けることで、マイノリティの苦労を身をもって知る

  • 超映画批評『オールド・ボーイ』70点(100点満点中)

    『オールド・ボーイ』70点(100点満点中) 設定と展開が抜群に面白い 土屋ガロンのコミックを韓国が実写映画化し、見事カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品。主人公を演じるのは韓国映画界の誇る演技派スターのチェ・ミンシク(『シュリ』の北朝鮮兵など)。 平凡な暮らしを送っていた主人公(チェ・ミンシク)は、ある日拉致監禁され、なんと15年後に釈放された。いったいなぜ自分はこんな目にあったのか。男は開放時に持たされたいくらかの金と偶然出会った若い女の助けを得て、執念の追跡を開始する。 抜群に面白い設定のエンタテイメントの登場だ。あまりに理不尽な15年間の監禁。主人公はその真実を知るために、あらゆる方面から犯人を探し出す。徐々に明らかになっていく真相を観客が知るとき、そこには驚愕のどんでん返しが待っている。 ……といいつつ、オチはちょいと前から予測がつく。真相発表(?)の演出がじつに大げさな上

  • 超映画批評『砂と霧の家』75点(100点満点中)

    『砂と霧の家』75点(100点満点中) 的確な描写とスリリングなストーリーで見ごたえ十分 一軒の家を巡る争いと人間模様を描いた同名小説映画化。演技派の役者をそろえ、見ごたえのある人間ドラマを展開する。 夫と別れたショックで茫然自失の日々を送る主人公(ジェニファー・コネリー)は、亡き父が残した海辺の美しい家で一人暮らしている。ところがわずか数百ドルの税金を滞納したため、当局に家を差し押さえられてしまう。弁護士に相談した結果、行政の手違いが判明したものの、そのときすでに家は競売にかけられており、イランからの移民一家に買われてしまっていた。 家の新所有者となった家族の長たる男(ベン・キングズレー)は、イランで軍の高官をつとめていたためプライドが高い。彼は家族とともに亡命してきたのだが、米国では最底辺の肉体労働者として屈辱の日々を送っていた。だから全財産をはたいて買ったこの家は、故郷と同等の暮ら

  • 超映画批評『コラテラル』85点(100点満点中)

    『コラテラル』85点(100点満点中) トム・クルーズ主演映画としてはパーフェクト 人気スターのトム・クルーズが悪役を演じる犯罪アクション&サスペンス。 ロスで働くタクシードライバー(ジェイミー・フォックス)は、将来メルセデスを購入し、リムジン会社を設立するのが長年の夢。そんなある晩、一人の紳士(T・クルーズ)を乗せると、彼は破格の値段で一晩タクシーを借り切ると言う。 実はこの、トム・クルーズ演じる金持ち風の男は殺し屋で、一晩に5人を殺すという大忙しの仕事のパートナーとして、話の合うこの黒人運転手を見込んだのだ。やがて男の正体を知ったドライバーはどういう行動をとるのか? はたしてこの有能な殺し屋は仕事をまっとうできるのか。物語は予測できない方向へと転がって行く。(ちなみに後半のストーリーについて、プレス関係者には緘口令がしかれている) 早く先が知りたくて仕方がないほどストーリーは面白いし、

  • 超映画批評『ソウ/SAW』90点(100点満点中)

    『ソウ/SAW』90点(100点満点中) 低予算なのに年間ベスト級の大傑作 新進気鋭の監督作品が集まるサンダンス映画祭でも大好評だったサスペンスホラー。今週は、今年で一番多数の傑作が揃った激戦区の週であるが、中でも私がイチオシにしたいのがこの「ソウ/SAW」だ。 目がさめるとそこはだだっ広いバスルームのような部屋。自分の足は太いチェーンで部屋の隅につながれている。部屋の対角線上には見知らぬ男が同じようにつながれている。そして恐ろしいことに、二人の中間点、部屋の中央部には、頭を打ち抜かれうつぶせに倒れた死体が横たわっていた。なぜこんな場所にいるのか、さっぱりわからないまま、二人に「6時間以内に相手を殺さないと、2人とも死ぬ」とのメッセージが告げられる。 低予算なのに安っぽさはなく、ものすごい面白さ。今年のホラー、サスペンスの中ではダントツの傑作の登場だ。こんなに恐ろしい映画は数年に1あれば

  • 超映画批評『ターンレフト ターンライト』85点(100点満点中)

    『ターンレフト ターンライト』85点(100点満点中) よくぞロマコメでここまでやった、すごすぎる 台湾の絵の原作を、金城武主演で映画化したラブストーリー。ワーナーブラザーズ映画初の中国語作品であり、力の入った一。 主人公のバイオリニスト(金城武)とヒロインの貧乏翻訳家(ジジ・リョン)はアパートの隣同士──だが、お互いの存在はまだ知らない。そんな二人が町で出会い、電話番号を交換したのはよいが、翌日そのメモは雨でにじんで読めなくなっていた。二人はこの出会いに運命を感じて、お互い必死に相手の居場所を探す……隣同士だとは気づかないまま。 これはすごかった。最初はもうなんてアホな話かと、天下のワーナーブラザーズも、ついにこんなくだらない映画を出してきたかと思ったが、(私の想定する)「ターンレフト ターンライト」の正しい楽しみ方を理解してからはその印象はサイコーへと変わった。平たく言えば、この映

  • 超映画批評「トルク」90点(100点満点中)

    『トルク』90点(100点満点中) 大爆笑、最高のバイクアクション映画 アメリカのバカ若者たちが大型バイクで暴走する様子をけれん味たっぷりに描いたアクションムービー。 主人公(マーティン・ヘンダーソン)は、恋人とやり直すためこの町に戻ってきた。ところが町のバイカーギャング(暴走族みたいなもんだ)の中ボスとトラブり、そいつに大ボス(アイス・キューブ)の弟殺しの濡れ衣を着せられてしまう。 私が『トルク』の試写を見たのは、なんと今年の1月だ。著名なスターが出ているわけでもなく、監督も新人。要するにまったく売れる要素がないということか、公開も延び延びになってはや10月である。しかし、この映画ほど私が公開を望んでいた作品もない。早く大画面といい音響でもう一度見たいと願っていた一なのである。 『トルク』は、「スピード感のあるバイクアクションの映画」と聞いて、あなたが想像する10倍はぶっ飛んだ映画だ。

  • 超映画批評『ヘルボーイ』70点(100点満点中)

    『ヘルボーイ』70点(100点満点中) 期待していない人にとっては意外な掘り出し物 マイク・ミニョーラによるアメコミ原作の映画化。その他のアメコミ映画の例に漏れず、お金CGをたくさん使って作られたアクション娯楽大作だ。 ナチス・ドイツの時代に生まれた魔界の生物ヘルボーイは、今は成長して怪物ハンターとしてアメリカ・超常現象捜査局に所属している。そして、その頑健な肉体と超能力で日々戦いに明け暮れていた。だが、邪神の復活を狙う怪僧ラスプーチンが魔界から復活したことで、かつてない死闘が始まった。 日では原作がほとんど一般には知られていないし、著名な大スターが出ているというわけでもないので、市場からはまったくマークされていない。ただ、あちらでは大人気コミックの映画化ということで高額な予算がついているので、堂々大作として製作された一というわけだ。 主人公ヘルボーイは魔界からの使者であり、強力な戦

  • 超映画批評『モンスター』75点(100点満点中)

    『モンスター』75点(100点満点中) 主演女優の情熱が伝わってくる一 全米初の女性死刑囚アイリーン・ウォーノスの半生を描いた衝撃的なドラマ。彼女が連続殺人を犯すことになった直接のきっかけである恋人との関係をメインに、主演女優が脅威の役作りで挑んだ渾身の一。 1986年アメリカ、売春婦のアイリーン・ウォーノス(C・セロン)は、自殺する前に有り金5ドルを使い果たすつもりで入ったバーで、セルビー(クリスティーナ・リッチ)という名の女性と出会う。同性愛者である彼女もアイリーン同様、社会から疎外感を感じていた一人だった。生まれて初めて他者に受け入れられたアイリーンは、セルビーのためにもう一度人生をやり直そうと決意するが、コネも何もない街娼が簡単に復帰できる社会など、どこにもなかった。 母親が父親を撃ち殺したという壮絶な過去を持ち、自身も死刑制度反対論者である主演女優シャーリーズ・セロンの役作り

  • 超映画批評『ポーラー・エクスプレス』60点(100点満点中)

    『ポーラー・エクスプレス』60点(100点満点中) 原作絵を見事に膨らませた クリス・ヴァン・オールズバーグ(『ジュマンジ』原作など)の名作絵『急行「北極号」』を3Dアニメーションで映画化。主人公の少年をはじめ、主要なキャラクター5役をオスカー俳優のトム・ハンクスが演じている(器用ですなぁ)。私が見たのは字幕版だが、日語吹き替え版では唐沢寿明が同じ役を演じるそうだ。 イブの夜、クリスマスとサンタクロースに疑いを持ち始めた年頃の主人公少年(声:T・ハンクス)の家の前に巨大な蒸気機関車が現れる。行き先は北極点だと告げる車掌(声:T・ハンクス)に誘われ少年が汽車に乗り込むと、そこにはたくさんの子供たちが乗っていた。 映画が始まると、きっとほとんどの方は「何だこりゃ、こんなにリアルならアニメである必要なんてあるのか?」と仰天するだろう。いわゆるモーションキャプチャー(俳優の顔や体に多数のマー

  • 超映画批評『僕はラジオ』85点(100点満点中)

    『僕はラジオ』85点(100点満点中) 知的障害の青年を巡る驚きの感動実話 アメリカのスポーツ専門誌に掲載されたある感動実話の映画化。知的障害の黒人青年を中心とした人々の交流を描いたハートウォーミングなドラマだ。 舞台は1976年のアメリカ。高校のアメリカンフットボール部の練習場をいつもうろついて眺めている知的障害を持った黒人青年がいた。ある日、ふとした事で部員が彼にイジメを加えてたことを知ったコーチは、当事者を厳しくしかった上で青年をチームに雑用係として迎えることにした。突然の事に戸惑いながらもやがて彼を受け入れていく部員たちだったが、人気チームである彼らの成績が下がるにつれ、街の人々からの風当たりは徐々に強まっていく。 時代はまだ70年代、知的障害を持つ黒人青年は、人々から気味悪がられていた。そんな彼をただ一人暖かく受け入れたコーチは、最初は周りの理解を得られなかったが、心やさしい娘や

  • 超映画批評「華氏911」70点(100点満点中)

    『華氏911』70点(100点満点中) 現実とリンクした大企画に驚く “戦うジャーナリスト”ことマイケル・ムーア監督によるブッシュ批判のドキュメンタリー映画。あの権威あるカンヌ映画祭にてパルムドール(最高賞)を受賞し、ドキュメンタリーとしては史上初めて全米興行成績第一位を記録した超話題作。 マイケル・ムーアとは『ボウリング・フォー・コロンバイン』の大ヒットで日でもよく知られる、映画監督にして左派の活動家。ユーモラスな雰囲気漂う巨大な体に野球帽をかぶる労働者階級を表現したスタイルで、あくどい大企業や政府にアポなし突撃インタビューするという、過激な取材スタイルが大人気だ。 しかし、『華氏911』ではお得意のアポなし突撃はやや少なめ。彼が画面に出ることはあまりなく、ほとんどナレーションのみの登場となる。 映画の前半は、ブッシュ政権がいかにトンチンカンなことをやってきたか、数々の物映像の迫力で

  • 超映画批評『堕天使のパスポート』80点(100点満点中)

    『堕天使のパスポート』80点(100点満点中) オドレイの熱演とせつないラストが感動的 『アメリ』の、人々に幸せを与えるヒロイン役で人気爆発したオドレイ・トトゥ主演のイギリス映画。彼女が、慣れない英語のセリフで汚れ役を熱演、作品自体はアカデミー賞のオリジナル脚賞にもノミネートされた。 舞台はイギリスのロンドン。トルコからの不法移民であるホテルメイド(A・トトゥ)は、同じ職場で働くアフリカ系黒人男性と、生活費の節約のため同居している。そんなある日、彼が職場のホテルで“あるもの”を見てしまったため、二人の運命が大きく転落して行く。 社会の底辺で過酷な暮らしを続ける不法移民の登場人物たちによるシリアスなサスペンスドラマ。「天使のような」誠実な男と、気高いイスラムの女。魅力的なキャラクターたちが、あまりに残酷な仕打ちを受けながら、それでもはかない夢をみる姿が絶望的に悲しい。 序盤は英国の下層社会

  • 超映画批評『ドット・ジ・アイ』70点(100点満点中)

    『ドット・ジ・アイ』70点(100点満点中) 事前に必要な情報はこれだけで十分 イギリス=スペイン合作のミステリードラマ。「dot the i」とは、「細かいトコに気を使う」という英語の慣用句からきている。この大胆なプロットのミステリーにふさわしい、意味深なタイトルだ。 主人公カルメンは、ストーカーから逃げてきたロンドンで、優しくてハンサムなお金持ちの男性と婚約を交わす。ところが、その晩開かれた女友達とのパーティで出会った男性キットに心引かれてしまう。さらに、それと前後して彼女は、何者かに監視されているような不気味な不安を感じ始める。 ヒロインが女友達と仮装してバカ騒ぎするパーティは、イギリスで俗に「ヘンナイト・パーティー」と呼ばれるもので、この映画では主人公の独身最後のキスを、そのレストランに偶然来ていた男性の誰かを選んでするという企画になっている。そして、その名誉ある相手に選ばれた男性

  • 超映画批評『マッハ!』90点(100点満点中)

    『マッハ!』90点(100点満点中) アクション映画史に残るであろう強烈な個性の一 タイの元スタントマン俳優トニー・ジャー主演のリアルアクション映画。今後の映画界を変える勢いを感じさせる、ものすごい一である。 タイの田舎のある村の守り神“オンバク”像の首が何者かに持ち去られた。村の長老は像の奪回のため、村一番のムエタイの使い手である若者(トニー・ジャー)を送り出す。 「一つ、CGをつかいません!」「二つ、ワイヤーを使いません!」「三つ、スタントマンを使いません!」「四つ、早回しを使いません!」 という、時代に逆行した強烈なキャッチコピーによる予告編を初めてみたときは、「どうせチープでしょぼいおバカ系のC級アクション映画だろう」とたかをくくっていた。(公式サイトで見られる特報と予告編は爆笑もので必見だ) ところがどっこい、映画が始まると、そこには観客の予想をはるかに超えた物アクションの

  • 超映画批評『スパイダーマン2』75点(100点満点中)

    『スパイダーマン2』75点(100点満点中) 前作をあらゆる面で超えたアッパレなパート2 アメコミ原作のアクション青春ドラマPART2。世界中で特大ヒットを飛ばした前作のおかげで、今回はハリウッド史上最高額220億円の製作費を投じて作られる事になった。トビー・マグワイア、キルスティン・ダンストといった主要キャストとサム・ライミ監督らスタッフも前作共通である。 前作から二年後。主人公のピーター・パーカーは、大学とバイトとスパイダーマンの3足のわらじ生活が限界に達しようとしていた。愛する人MJとの仲も進展せず、ヒーローとしての正体を誰にも明かせぬプレッシャーから、ついに彼はスパイダーマンをやめようと決心する。だがそのころ、新たな脅威となる敵、ドックオクが登場し、NYを危機におとしめていた。 話題作『スパイダーマン2』は、期待以上のすばらしい出来であった。前作よりはるかにパワーアップした格闘シー

  • 超映画批評『海猿』75点(100点満点中)

    『海猿』75点(100点満点中) ありそうでなかった良質のアクションエンターテイメント 海上保安庁の海難救助エキスパート“潜水士”を目指す若者たちの青春を描いたアクション・エンターテイメント。週刊ヤングサンデーに連載され大人気となった佐藤秀峰の原作を映画化したものだ。 ところで、先日このページで同じ日製青春映画の『下物語』を紹介したところ、実際に見た方たちから「当にすばらしい映画だった」というメールを何通もいただいた。「最近の邦画はつまらないと思っていたがその考えが覆った」という声を聞いたときは、私も嬉しかった。 そんな『下物語』に続き、オススメするのがこの『海猿』である。この映画は、100%エンターテイメントに徹した作品で、製作費は比較にならずとも、その出来は場ハリウッドの大作映画にも劣らない。 空撮やダイナミックな構図を多用した映像、海上保安庁全面協力による物の艦船の迫力は

  • 超映画批評『下妻物語』85点(100点満点中)

    『下物語』85点(100点満点中) 若々しいセンスでさわやかに描いた傑作青春映画野ばら原作、深田恭子主演、茨城県下を舞台にしたコメディ友情ドラマ。「サッポロ黒ラベル」のCMで、スローモーションによる卓球シーンを演出した中島哲也監督の若々しい映像感覚は、作でも存分に発揮されている。地方を舞台にした日映画はどうも垢抜けないイメージに仕上がることが少なくないが、『下物語』にはそれが全くない。このセンスの良さにまず驚かされる。 主人公は、下に住みながらロリータファッションをこよなく愛する女の子。常磐線で片道3時間近くかけて、代官山に通いつめるという固い信念を持つ。しかし、あまりに周りとかけ離れた趣味(と性格)のため、友達は一人もいない。しかもそれをちっとも“嫌な事”と感じていないという、孤高のティーンエイジャーだ。フカキョンの魅力がいかんなく発揮された、まさにはまり役といえる。幼

  • 超映画批評「トロイ」90点(100点満点中)

    『トロイ』90点(100点満点中) 比較的一般人でも見やすい歴史超大作 トロイ戦争を描いた歴史超大作。ブラッド・ピット久々の主演作品で、彼の徹底した役作りも大きな見所だ。 『トロイ』は、ハリウッドで伝統的に作られてきた戦記もの超大作の流れにある作品だが、比較的娯楽要素が強く、万人受けすると思われる仕上がりだ。予告編でも流されている、何万人もの兵や帆船をCGで表現した戦争シーンなどは、『ロード・オブ・ザ・リング』等で類似の場面を体験済みの人にとっては真新しいものではないが、やはり見ごたえがある。 だが『トロイ』の真の見所はそうした大掛かりな映像スペクタクルよりも、伝説の英雄たちの魅力的な競演だろう。中でも映画版の中心となるのが、ブラッド・ピット演じる、無敵のギリシャ戦士アキレスと、トロイ王国の王子にして最強の戦士ヘクトルだ。こちらは190cm近い長身のエリック・バナが演じている。 二人とも、

  • 超映画批評「スイミング・プール」75点(100点満点中)

    『スイミング・プール』75点(100点満点中) ヌードにばかり気をとられていると騙される フランス、プロヴァンス地方を舞台にしたミステリ作品。この監督お気に入りの女優さんを主演に立てた、ちょっとセクシーな要素もある大人向けのドラマだ。 つい先日公開された『ピーターパン』の妖精ティンカーベル役が記憶に新しい主演のリュディヴィーヌ・サニエは、今回その印象をがらりと変えて、自由奔放なセックス感をもつフランス娘を熱演。惜しげなくそのグラマラスな裸体をさらしている。欧米の女優さんには珍しい(?)、ナチュラル巨乳がお見事。 だが、これらの激しい(修正つきの)ヌードシーンに翻弄されていると、監督が仕掛けた壮大なトリックにころっと引っかかるだろう。大胆なプロットには、ミステリに慣れた観客でも驚かされるはず。だまされる快感を十分に味わえるよくできた脚だ。 もちろん、もう一人の主演女優シャーロット・ランプリ

  • 超映画批評「スクール・オブ・ロック」70点(100点満点中)

    『スクール・オブ・ロック』70点(100点満点中) 洋楽ロック大好きな方に 破天荒なロックギタリストが、滞納した家賃を返すため、教員を装って名門小学校のクラスを受け持つというコメディ。厳格な校風のなかで、子供らしい自由な姿を失っている生徒たちに、どこからどうみても“良い大人”ではないロックミュージシャンが“ロックの魂”を教え込む。最初は戸惑う子供たちも、やがて“自由”の意味を学び、主人公とともに成長して行く。 これもまたありがちなパターンの映画ではあるが、まとまりは良い。何より主人公である中年ギタリスト(ジャック・ブラック)の個性が強烈。何度も披露するギターを含めとても芸達者だし、多大なインパクトを観客に残すに違いない。そして、その相手役たる“子供たち”もまた個性豊か。これら登場人物のキャラクターがはっきりしている分、字幕を必死に追わなくともとてもわかりやすい。 劇中で行われる授業には、“

  • 超映画批評「ホーンテッド・マンション」90点(100点満点中)

    『ホーンテッド・マンション』90点(100点満点中) 家族で見れる娯楽映画としてパーフェクト ディズニーランドの人気アトラクションを元に映画化した作品。元のアトラクションがいわゆるホラーハウス、お化け屋敷に属する類の乗り物なので、私も最初、この映画も単なるお気楽ホラーなのかなと思っていた。しかし、実際のところはなかなかの力作、格的な娯楽映画であった。 わずか88分間の上映時間のほとんどは、まさにアトラクションのように楽しいスペクタクルの連続。画面に迫りくるゴーストに対し、子供は素直に泣き叫び、大人は年甲斐もなくビックリしてしまう自分に苦笑しながら楽しめる。このゴーストたち、幽霊の癖にそれぞれ妙に人間味があって憎めない。 運悪くこの幽霊屋敷、ホーンテッド・マンションに閉じ込められてしまうエディ・マーフィ一家は、それぞれ離れ離れになったりくっついたりしながら、数々の試練でその家族愛を試される

  • 超映画批評「グッド・ガール」70点(100点満点中)

    『グッド・ガール』70点(100点満点中) 浮気というテーマに興味がある人にオススメ 低予算映画ながら、ブラッド・ピットの奥さんが主演して高い評価を得た作品。貧しい田舎町のショッピングセンターを舞台に、平凡な家庭の主婦をヒロインにしたドラマが展開する。 夫以外の男性二人が、彼女をめぐってすったもんだするが、3人とも”どこかにいそうな人”ばっかり。主演のジェニファー・アニストンは、もともと可愛い顔をした女優だが、彼女でさえ華のないメイクやヘアスタイル、洗練のかけらもないファッションのおかげで、見事に(?)田舎の地味な主婦になりきっている。そして、そんな彼らの行動や心情には、妙にリアルなものが感じられ、グイグイ物語に引き込まれるのだ。浮気する人間の行動パターンや心理というのは、どうやら万国共通らしい。 先ほど紹介したジェニファーの主婦姿なども、地味でいてどこか魅力を感じさせる。なんというか、男

  • 超映画批評「ドラムライン」70点(100点満点中)

    『ドラムライン』70点(100点満点中) 新鮮な世界との出会いに満足できる作品 大学のマーチングバンドという真新しい題材をメインに扱った青春ドラマ。凄腕のドラマーである主人公の活躍と成長を描く。 とはいうものの、青春ドラマのほうを期待しちゃいけない。スポ根ドラマだが、泣けはしない。 『ドラムライン』唯一にして最大のウリは、ド迫力のマーチング・バンド演奏シーン。アメリカン・フットボールの試合などを見に行くと、こうしたバンドがスティックさばきや行進の隊列の美しさなどを見せてくれるものだが、それだけをここまで深く突っ込んで紹介した映画は初めてではなかろうか。 この見せ方がまた、いかにもアメリカ映画的な派手なもので、画面に登場する黒人バンドの様子は、ただの大学ブラスバンド部(?)の姿とは思えないほどカッコいいし、オシャレだ。大学対抗のドラム対決などと聞けば、一見「小太鼓の技術を競うなんてえらく地味

  • 超映画批評「イン・ザ・カット」20点(100点満点中)

    『イン・ザ・カット』20点(100点満点中) メグ・ライアンの終焉 かつてロマンティック・コメディの女王といわれ、アイドル的女優として日でも多くのファンを獲得したメグ・ライアン主演のミステリドラマ。ミステリといっても謎解き型ではなく、他者を上手に愛せないヒロインがちょいとイイ男に出会って、中年デビューするという話である。よって、この映画の見所は、40代の女性主人公が性と愛に目覚めていく内面ドラマの部分にある。 メグ・ライアンという女優はロマコメで名を売って以来、どうも格派女優に脱皮し損ねたところがあって、いまや年齢とともに人気も衰える一方だ。これを打破すべく彼女は、過去に一度しか披露していないハダカをついに作で解禁した。清純派のイメージを捨て、女優としてのステップアップをはかった意欲作というわけである。 ところが、悲しいかなメグさんは濡れ場の経験が圧倒的に少ない。そのくせ『イン・ザ・

  • 超映画批評「テキサス・チェーンソー」60点(100点満点中)

    『テキサス・チェーンソー』60点(100点満点中) どこかで見た設定と思うなかれ チェーンソーを持った殺人鬼に、若者たちが次々虐殺されるホラームービー。「ああ、よくあるお気楽系ホラーだね」と、誰もが思う設定である。 しかしこの『テキサス・チェーンソー』は、シャレにならないくらいに怖い。この手の殺人鬼もの、サバイバルホラーというジャンルは、たいてい怖いというより滑稽なものと相場が決まっており、出てくる奴ら(たいていセックスとドラッグにふける若者たち)が残酷な殺され方をするほど、観客は思わず笑ってしまうというような楽しみ方をするパターンが多い。 ところが『テキサス・チェーンソー』にそのような”遊び”は一切ない。この殺人鬼が実在した事を知らせるニュース映像が冒頭に流れたときから、映画は不穏な空気に包まれる。 最初から最後まで、ギャグやユーモアのかけらもない、とにかく「恐ろしいだけ」のショックシー

  • 超映画批評「東京原発」80点(100点満点中)

    『東京原発』80点(100点満点中) 低予算ながら、気合の入った力作エンタテイメント 原子力発電所の抱える問題を痛烈に批判した社会派エンタテイメント。広瀬隆著「東京に原発を」を映画化したような内容だ。社会問題に真っ向から挑み、それを見事な娯楽作品に仕上げたこのような作品は、最近の邦画では見たことがなく、高く評価したい。 原発問題をある程度知っている人が見れば「よくぞ言ってくれた!」と快哉を叫ぶだろう。もちろん、興味ない人にもぜひ見てほしいと思わせる力作だ。とくに大都市にすむ人がこれを見たら、案外ショックを受けるかもしれない。公開する劇場は少ないが、もし見れるのなら、見ておいて損のない一といえる。 全編、極端なまでに原発反対の主張を貫き、推進派を徹底的におちょくり、こきおろす。このあたりは、マイケル・ムーアを思わせる。『東京原発』を見ると、どうせ社会問題をやるなら中途半端に中立の立場ではな

  • 超映画批評「イノセンス」70点(100点満点中)

    『イノセンス』70点(100点満点中) 最初の一秒で感じる圧倒的なクォリティ 押井守監督、待望の新作アニメーション超大作。タイトルは『イノセンス』だが、中身は『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』の完全なる続編。情報量が類を見ないくらい多く、格的なSF作品のなかでもとりわけ難解な部類に入るといわれる原作を持つ。この続編も、最低限前作を見ていないと理解するのは困難。抽象的な形で哲学的主張が描かれる。一度見て意味不明なのは当たり前、10回でも20回でも見てほしい……というのが、監督の音であろうと思わせる作品だ。 ところで、2004年はアニメーション映画の年で、このあとには大友克洋監督『スチームボーイ』、宮崎駿監督『ハウルの動く城』と、日のみならず世界から注目を浴びる超大作が公開を予定されている。そんな中、先陣を切って世界に向けて公開されるのがこの『イノセンス』というわけだ。

  • 超映画批評「マスター・アンド・コマンダー」75点(100点満点中)

    『マスター・アンド・コマンダー』75点(100点満点中) 男たちの熱いドラマが見所の海洋スペクタクル 世界的なベストセラーが原作の海洋冒険歴史大作。帆船時代の海戦や船内生活を、ディテールにこだわった格的な映像で見せてくれる。 ストーリーは、圧倒的に有利な装備を持つ敵アケロン号を拿捕する任務を預かったサプライズ号クルーが、常勝不敗のカリスマ艦長のもと、一致団結して戦うという展開。荒くれたベテランクルーに混じって士官候補生の10代前半の少年たちも乗り込むが、海の上では大人と同じ仕事を堂々とこなす。彼らは、見た目の幼さとは裏腹に、腹の据わった一人前の軍人だ。 ほとんどがこの帆船内で繰り広げられるドラマであり、そこに女性の登場人物は一人も出てこない。今どきは珍しい、男たちの骨太なドラマだ。厚い信頼と友情が、そこには描かれている。 オスカー常連のラッセル・クロウが演じる艦長と、個性派ポール・ベタニ

  • 超映画批評「ドッグヴィル」85点(100点満点中)

    『ドッグヴィル』85点(100点満点中) 奇抜なアイデアを見せるための映画になっていない点がよい カンヌ映画祭を騒然とさせた話題作。何がビックリかというと、そのセット。だだっ広い体育館みたいな場所の床に、なんと白線を引いただけ。各区画には「誰々の家」などと書いてあり、椅子など最小限の家具だけが置かれている。壁や屋根は一切無い。その家に入るときは、存在しない「ドア」を俳優が演技だけで表現して開けて入って行く。 ここで3時間(177分)、9章立ての物語が展開する。考えただけで退屈しそうな気がするがさにあらず。非常にエキサイティングなドラマが繰り広げられる。見た目のほうも、カメラアングルや光の具合等でメリハリをつけ、飽きさせない。セットがシンプルな分、それ意外の部分で相当工夫を凝らしているのがわかる。 終わってから考えてみると、この舞台劇のような奇抜な演出アイデアは必然だったと感じさせる。単に奇

  • 超映画批評「オアシス」90点(100点満点中)

    『オアシス』90点(100点満点中) インパクト強烈、美しい恋愛映画 マスコミ用試写室が連日騒然としたという、韓国恋愛映画。たしかに、この映画の衝撃は半端ではない。 韓国だからできたのか、この監督だからできたのか、それはわからない。だが、一つだけはっきりといえるのは、この映画は決してハリウッドや日では作れなかっただろうということだ。 もしあなたがスクリーンから強烈なインパクトを受けるという体験をしたいのなら、今週は『オアシス』を見るべきだ。この映画はほとんど映画界の突然変異のようなもので、今後も似たような作品が現れるとは、私には思えない。 この映画は障害者と健常者の恋愛を描いたドラマである。だが、日で一時流行したようなメロドラマとはまったくコンセプトが違う。『オアシス』に出てくる障害者のヒロインは、なんと脳性麻痺である。口がきけないとか目が見えないとか、そういうレベルの障害者ではない

  • 超映画批評「ニューオーリンズ・トライアル」85点(100点満点中)

    『ニューオーリンズ・トライアル』85点(100点満点中) 緊張感が途切れぬ良質なサスペンスドラマ 見応えのある法廷サスペンスもの。演技派で知られる2大スターがはじめて競演した。 さて、法廷劇といえば、根強いファンが存在する定番ジャンルであるが、この『ニューオリンズ・トライアル』は、ちょいと趣向が変わっている。通常このジャンルは、法廷での弁護士と検事(もしくは敵側弁護士)の激しいバトルというのがメインのお楽しみだろう。もちろんそれはそれであるのだが、作では一方の陣営に、陪審コンサルタントなる聞きなれない職業の人物が登場する。 アメリカの裁判は陪審制(12名)で知られるが、多数の陪審員候補者の中から、自陣営に有利な陪審員を調べるのがこの専門家の役目だそうだ。この職種自体は実際に存在するものだが、映画の中では盗聴やら盗撮、尾行などの裏工作を駆使して候補者の思想・心理等を調べ上げ、自分たちの陣営

  • 超映画批評「シービスケット」90点(100点満点中)

    『シービスケット』90点(100点満点中) 圧倒的な映像に興奮し、感動的な物語に涙する アメリカの大恐慌時代に実在し、庶民の希望として愛された競走馬シービスケットと、その騎手ら3人の男たちの半生を描いた感動ドラマ。 世の中には超大作といわれ、派手な映像をウリにする映画が数多くある。だが、純粋に映像のパワーのみで感動させてくれる作品など、いったいいつくあるだろう。『シービスケット』は決して超大作とはいえない映画だが、その映像の迫力、観客の心に訴えかけるパワーは紛れもない一級品だ。 『シービスケット』のレースシーンの迫力は、工夫されたカメラワークとそれにシンクロする見事な音響、思いきり感情を揺さぶる音楽によって我々を圧倒する。ただの競馬の場面が、ここまでのスペクタクルになるとは、見る前は予想だにしなかった。 たとえば実際競馬場に足を運ぶと、馬たちの走りが地響きとなって腹に響き、えもいわれぬ爽快

  • 超映画批評「DEAD LEAVES」70点(100点満点中)

    『DEAD LEAVES』70点(100点満点中) つまらない部分がまったくないあっという間の53分 わずか53分間の、主にレイトショーで興行されるアクションアニメーション。エログロたくさんありという、まさに不純なオトナ向きの内容だ。原色使いでオシャレなキャラクターデザインは、大人向けアニメというジャンルにつきまとう暗さをまったく感じさせない物で、仲のいいカップルのデートにも向く一品である。適度なセクシーさが夜見るにふさわしい。 監督さんも、「酒を飲んでから見てください」と、なんだかレイトショー作品のときに私がいつも言っているようなことを言っている。それほど、ばかばかしい笑いに満ちた作品というわけだ。 53分間は、すべて笑いとアクションに費やされ、無駄なシーンは1秒として存在しない。日の誇るリミテッドアニメ独特のその恐るべきスピード感、心地よいテンポに存分に酔える力作である。全部のシーン

  • 超映画批評「ドラキュリアII 鮮血の狩人」60点(100点満点中)

    『ドラキュリアII 鮮血の狩人』60点(100点満点中) マッチョ神父とドラキュラの対決の行方は……? ドラキュラとの戦いを描くアクションホラームービーPART2。アメリカではすでに3作目も作られている人気シリーズだ。 新ヒーローとして出てくる神父がいるが、これがどう見ても神父に見えないところが笑える。あやしげな武器を持ち、逃げ惑うドラキュラたちの首を刈る。マンガチックな決めゼリフを持ち、なぜか上半身裸になったりする、マッチョ神父なのだ。 対するドラキュラの大将は、何しろ一回死んでいるのでまるで元気なし。でも、学生たちが用意してくれた血液お風呂に入ったとたん、お肌もスベスベ元気百倍。とはいえ今は、大学教授チームの研究対象として紫外線ライトをガンガンあてられている身なので、そう簡単には復活できない状況。さあ、急がないとマッチョ神父に首チョンパされちゃうぞ。どうするどうする……というお話。 前

  • 超映画批評「チャーリーと14人のキッズ」75点(100点満点中)

    『チャーリーと14人のキッズ』75点(100点満点中) フェミニズム先進国が描く、家庭の大切さ エディ・マーフィ主演のホーム・コメディ。リストラされたエディが保育園を開園して、個性豊かな子供たちに翻弄されるお話である。家族向けに作られた心温まるコメディドラマで、エディ・マーフィはお得意のマシンガン・トークを封印し、真面目にドラマを演じている。日語吹き替え版も同時に公開されるので、子供連れの皆さんも安心だ。 『チャーリーと14人のキッズ』には、一般的な家族連れの観客がコメディに求めるすべてがそろっているといって良い。健全で毒のない笑い、分かりやすい演出とストーリーとテーマ、そしてラストに気持ち良く流せる感動の涙、である。当然米国では大ヒット。すでにパート2の製作も決定している。 こうしたアメリカ映画を見ていつも思うことは、子役たちがとても溌剌として素晴らしい演技をしているということである。

  • 超映画批評「MUSA─武士─」70点(100点満点中)

    『MUSA武士─』70点(100点満点中) わかりやすいキャラたちがわかりやすいストーリーを突っ走る大衆娯楽映画 大きなスケールと迫力のアクションで、大ヒットを記録した韓国映画。 『MUSA武士─』は、邦画ではあまり見られない、徹頭徹尾大衆娯楽に徹した作品である。2時間13分、余計な退屈ドラマへ脱線することは一切なく、凄みのある映像と単純なストーリーで一気に見せる豪快な作品である。深みはないがインパクトは十分。日でもこういうのを作ればいいのにとつくづく思う。 ストーリー展開は、『七人の侍』から綿々と続くコテコテのパターンで、いい奴が仲間のために一人一人倒れていくというわかりやすいもの。主役の2人には飛び切りハンサムな役者をそろえ、『ロード・オブ・ザ・リング』のレゴラスそのまんまなキャラもしっかり配置するなど、大変にわかりやすいキャラの立たせ方が微笑ましい。 戦闘シーンはタガの外れたよ

  • 超映画批評「ラストサムライ」70点(100点満点中)

    『ラストサムライ』70点(100点満点中) ハリウッドが気で作ったニッポンバンザイ映画 ハリウッドのトップスター、トム・クルーズが多数の日人キャストと競演した、武士道精神の美しさを描く時代劇。 アメリカ映画を見ていると、「アメリカバンザイ映画」とも言うべきジャンルに属する作品を目にする機会が多い。UFOを米軍主体で撃退する『インディペンデンス・デイ』や、トンチンカンな考証が笑える『パール・ハーバー』、そして公開中の『ティアーズ・オブ・ザ・サン』などはその典型だ。 『ラストサムライ』は、いわばそんなアメリカ映画業界が日人に向けて贈る、ニッポンバンザイ映画。非常に珍しい作品だ。しかも大作として莫大な予算を投入し、主演には世界が認めるトップスターを起用、スタッフにもアカデミー賞の常連が顔を並べている。あのハリウッドが気で作っている。 渡辺謙や小雪、真田広之といった主要な日人キャストが

  • 超映画批評「ファインディング・ニモ」90点(100点満点中)

    『ファインディング・ニモ』90点(100点満点中) 2004年お正月シーズン最大のオススメ 全米アニメ映画史上最大のヒットとなり、今年の夏シーズン最大の話題作となったアニメーション映画。人間にさらわれたクラウンフィッシュのニモを、ふがいないお父さんが危険な外海を旅して探しに行くという物語である。 一見、子供でもわかる単純なストーリーなのに、なぜ大人が見てもこんなに面白いのか。その理由は、キャラクター作りの巧みさがまずあげられる。ニモは、人間で言えば軽度の障害者で、おまけに過保護に育てられ、社会性がやや不足気味である。そして真の主人公である父・マーリンは、自分が無力だったため、過去に大切な人を失ったというトラウマがあり、まともな子育てができない男である。 ほかにも主要なキャラクターがいくつか出てくるが、どれも単純な絵柄の中に複雑な過去をにおわせる、深みのある設定となっている。そのため、大人が

  • 超映画批評「バッドボーイズ2バッド」80点(100点満点中)

    『バッドボーイズ2バッド』80点(100点満点中) これぞハリウッド超大作 前作の3倍以上の製作費(なんでも100億円以上とか)をかけて作った、刑事アクションパート2。黒人凸凹コンビが、すかしたギャグをかましながらトンデモなアクションを繰り広げて事件を解決するという、今となってはよくあるシチュエーションのハリウッド映画である。 「能書きは要らない。楽しませてくれりゃいい」という人たちにとって今週見るべきは、この『バッドボーイズ2バッド』で決まりだ。 この映画のプロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーというひげのおじさんは、手がけた作品(『アルマゲドン』『パイレーツ・オブ・カリビアン』など)すべての興行成績の合計は、なんと1兆円を超える。つまり彼は、大ヒットする映画=大衆が好む映画、のツボを知り尽くしているというわけだ。 そのブラッカイマーが、腰を入れて製作したこの『バッドボーイズ2バ

  • 超映画批評「フォーン・ブース」90点(100点満点中)

    『フォーン・ブース』90点(100点満点中) 年間ベストクラスの傑作サスペンス 映画が、電話ボックスの中だけで展開されるという、斬新なアイデアのシチュエーション・スリラー。映画の中と実際の時間の経過がシンクロするつくりになっている。 それにしてもすごい映画である。電話ボックスひとつで、立派に映画を成立させてしまった。『フォーンブース』は、制約だらけのちっぽけな舞台へ、これでもかというくらい、たくさんのアイデアをつめこんだ、一級のサスペンスだ。その切れ味鋭い着想と出来映えには、ある種の嫉妬を覚えるほど。 脚家によると、メインアイデア自体は20年も前に浮かんだものだという。そして最近、突然プロットを思いつき、わずか1週間で脚を書き上げたのだそうだ。なるほど、そう言うものだろうと思う。長年寝かせてきたアイデアと、ストーリーの材料となる数々の断片が、あるときを機会に一気に組みあがるというの

  • 超映画批評「ブラウン・バニー」80点(100点満点中)

    『ブラウン・バニー』80点(100点満点中) 70分間の退屈は、すべて最後の10分間のための布石だった ミュージシャンや画家としても名をはせるヴィンセント・ギャロ監督による、一風変わったロード・ムービー。今週は、年間ベストクラスの『フォーン・ブース』という映画が公開されるが、それに匹敵するほどのオススメ作品がもう一ある。それがこの『ブラウンバニー』だ。 映画が始まると、一人の男が出てくる。どうやらこの主人公はバイクレーサーらしい。男はレース参戦のため、アメリカ大陸を横断するように移動して行くが、カメラはただそれを淡々と追って行くだけである。 セリフもほとんど無く、説明的なシーンもまったく無い。観客には、この主人公にはデイジーなる女がいること、そして、どうやら何かに悩んでいるらしい、ということだけが、彼の表情やわずかなセリフ、そして挿入歌の歌詞(わざわざ字幕を振っていることから、歌詞自体も

  • 超映画批評「シャンハイ・ナイト」70点(100点満点中)

    『シャンハイ・ナイト』70点(100点満点中) 徐々に、以前の物志向に戻ってきている ハリウッド進出後のジャッキーのアクションには、「上手さ」はあれど「凄み」は無いというのが私の思いである。作のメインアクションは、『プロジェクトA』にオマージュを捧げたと言う時計台ジャンプであるが、これもCGらしき演出効果が目に付き、「凄み」はない。 同じ時計台からの飛び降りにしても、VFX技術が発達していなかったころ(『プロジェクトA』)のものは、物の香り、すなわち「凄み」があって迫力が違った。それがたとえスタントマンやトリックを使っているにしてもだ。そう考えると、時代が進むほど、物を売りにするジャッキーにとっては不利になってきたというわけか。 ハリウッド・ジャッキーのヒット要因であった『バディ・コメディ』路線も、さすがにマンネリ気味。個人的には、『ファースト・ミッション』のような、ストーリー重視

  • 超映画批評「東京ゴッドファーザーズ」80点(100点満点中)

    『東京ゴッドファーザーズ』80点(100点満点中) 非常にクォリティの高いアニメ、クリスマスにぴったりなおとぎ話だ 『パーフェクトブルー』『千年女優』と、良質なアニメーション作品を送り続けている今敏監督の最新作。クリスマスの夜、ホームレス3人組が捨て子を見つけ、その両親を必死に探す、笑いと感動の物語。 アニメーション自体の製作は、マッドハウスというプロダクションが行っている。ここは世界的にも評価の高いところで、『アニマトリックス』や『メトロポリス』といった作品を見れば、その技術力の高さがわかると言うものだろう。『東京ゴッドファーザーズ』も、全米配給を視野に入れて作ったというだけあって、ジブリ作品と肩を並べるほどクォリティの高い、すばらしいアニメーションとなっている。まさに、日アニメここにあり、と言った感じである。 ストーリーは、「奇跡」をテーマにしたもので、下手をすると「あまりに都合が良

  • 超映画批評「ジャスト・マリッジ」60点(100点満点中)

    『ジャスト・マリッジ』60点(100点満点中) 充分楽しいティーン向けデート映画 アメリカで人気急上昇中の若手俳優二人を競演させたロマンティック・コメディ。 ハイスクールの放課後、ちょっとシャイな男の子が、あまり目立たないけど実は案外かわいい顔立ちの同級生の女の子を、思い切ってデートに誘ってみる、そんな時のための映画である。一言で言えば、ティーン向けデート映画という事だ。 ひょんな事で恋に落ち、スピード結婚した若いカップルが、ハプニング続きの新婚旅行でだんだん気まずくなってゆく。結婚の現実を思い知り、さあ二人はいったいどうなるか? ……という話である。 金持ちお嬢さんに振り回される貧乏男という、白鳥麗子でございます!的シチュエーションのコメディであるが、この手の映画の良し悪しはもう、俳優の魅力いかんにかかってくるといっても過言ではない。ロマコメは、どうせ結末はひとつなのだから、ようはそこに

  • 超映画批評「アイデンティティー」75点(100点満点中)

    『アイデンティティー』75点(100点満点中) 最後の1分まで気が抜けない抜群の面白さ 仰天な結末が話題の、ミステリドラマ。 あなたがミステリファンならば、『アイデンティティー』は最高の映画だ。この映画は、ロジカルに推理を進めながら見ている観客が、最後に鮮やかに騙されて、完全敗北を味わう快感を得られる映画である。(騙される快感こそ、ミステリファンがもっとも期待する要素でしょう?) かくいう私も、画面の端々の怪しげなヒントを見逃さず、論理的に推理しながら、結末を先に言い当ててやろうと気合を入れて鑑賞したくちである。そして後日このサイトで、「ミステリのクセに結末がバレバレだぜ」と得意満面で報告してやろうというわけである。その勇姿を想像して、一人ワクワクしていた。 結果、コロっと騙された。自分、バカ過ぎ。無論、人はロジカルに推理を進めていったつもりだったのだが、完全にミスディレクションに引っか

  • 超映画批評「フレディvsジェイソン」80点(100点満点中)

    『フレディvsジェイソン』80点(100点満点中) 恐くて笑える、爽快なホラームービーだ 『エルム街の悪夢』シリーズのフレディ、『13日の金曜日』シリーズのジェイソン、この2大殺人鬼が対決するという、企画ものホラー映画。ホラー映画史上、もっとも有名なこの2人が1つの映画で大暴れするという事で、ホラーファンにとっては見逃せない一だろう。 一応人間のヒロインが主人公で、彼女は、同時にこの2人の殺人鬼に狙われるという、映画史上、もっとも気の毒な状況に追いこまれるわけだが、そこはそれ、知恵と勇気でこの苦境をなんとか乗り越えようとするわけだ。 そしてまあ、いろいろあってラストでは殺人鬼同士が対決するわけだが、このバトルは実に見応えがあり、満足できる。戦いの舞台設定もいいし(1Rは夢世界というフレディの土俵、2Rはジェイソン有利の”ある場所”で戦う)、2人の対決に人間が絡む事で、ある種の臨場感が加わ

  • 超映画批評「サンダーパンツ!」70点(100点満点中)

    『サンダーパンツ!』70点(100点満点中) 大爆笑の映画だが、後半が惜しい 『ハリーポッター』シリーズのロン役の男の子が主演の、イギリス製コメディ。これも『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』同様、やや子供向けの映画と言えるだろう。ただ、こちらの方が、大人が見ても楽しめる要素が多い。 それにしても、映画が始まって1分間で、いきなりオナラを10発以上聞かせるとは、おそらくギネスブック級の記録であろう。のっけから笑わせてくれる。 オナラがですぎるという主人公の病気(?)は、オナラを動力に変換する親友の発明品(サンダーパンツ)により、やがて世界の危機を救うところまで行ってしまう。 その過程では、やたらと大げさなスローモーションやフルオーケストラの音楽、あまりにばかばかしい使い方のCG等により、腹が痛くなるほど笑わせてくれる。 しかし、物語の底には、「一見マイナスな特徴(オナラ)を、『自らの個性

  • 超映画批評「マッチスティック・メン」85点(100点満点中)

    『マッチスティック・メン』85点(100点満点中) これこそ完璧な脚だと唸らせる 神経症気味でチックに悩む詐欺師と、突然現れた14歳の娘を中心に描かれるドラマ。メインキャストの素晴らしい演技力と、恐るべき完成度の高いストーリーで、まれに見る傑作にしあがった。 笑いあり、スリルあり、アクションあり、そして心震わせる感動ありと、『マッチスティック・メン』には、まさにエンターテイメントの全てがある。 このサイトの趣旨に100%合致した、非常にクオリティの高い娯楽映画である。これをみて頂ければ、私がこのサイトの読者の皆さんに、どういう映画をすすめたいのか、どういうポリシーで運営しているかが、きっとわかってもらえると思う。 病的な潔癖症に悩む詐欺師ロイ(ニコラス・ケイジ)は、相棒のフランク(サム・ロックウェル)と仕事のほうでは日々成果を上げている。そんな2人の前に突然現れた、ロイの実の娘アンジェラ

  • 超映画批評「KEN PARK ケン・パーク」60点(100点満点中)

    『KEN PARK ケン・パーク』60点(100点満点中) 言いたい事は1つだけ、「ボカシを入れないでくれ」 公式サイトのトップ写真がクンニシーンという事からわかる通り、直接的な表現手法を売りにしたドラマ。 少年3人と少女1人、そしてその父母達の日常をリアルに描いている。リアルとは言ってもロサンゼルスの話だから、平均的日人が見たらビックリして飛びあがるくらいの過激さである。 自殺あり、犯罪あり、親子丼ぶり(?)あり、観客が「世も末だねぇ」と嘆くひまも無く、過激描写が次々繰り出される。そんなわけで『KEN PARK ケンパーク』は、日以外ですんなり公開できた国は1つもない。 特に、エロ描写が凄い。もちろんボカシなどという無粋なものがあるわが国ではっきり見られるのは、男がブリーフの上から女優にニギニギされている場面くらいなものだが。 なお私が、そのほかのシーンにおけるすりガラスの向こう側を

  • 超映画批評「ノックアラウンド・ガイズ」65点(100点満点中)

    『ノックアラウンド・ガイズ』65点(100点満点中) 実は面白かった、マフィア版・はじめてのおつかい ハリウッド新ハゲ御三家の一人、ヴィン・ディーゼル(『トリプルX』)が出演するクライムムービー。一言でこの映画を説明するなら、「マフィア版・はじめてのおつかい」である。おつかいの途中で主人公のさっちゃん(5歳)が、あわれ50万ドルを落としてしまいさあ大変、というストーリーである。ヴィン・ディーゼル氏は、弱り果てたさっちゃんを助け、なんとかお金を取り戻そうと頑張る親友役で出演する。 そんなわけで、肝心のディーゼル氏は、どう考えても主演とはいえないのであるが、この映画にはそこしか売りがないためか、まるで彼の主演映画であるかのように宣伝されている。パブリシティ担当者の苦悩がかいまみえる瞬間である。 とはいえ、さすがは新御三家の一画、ヴィン・ディーゼルである。そんな脇役でも、1番目立っているのはさす

  • 超映画批評「ビタースウィート」85点(100点満点中)

    『ビタースウィート』85点(100点満点中) 17歳の純粋さに感動できる、青春ドラマの傑作 性格も家庭環境も全く違う、二人の少女を主人公に、ティーンエイジャーの心を瑞々しく描いたドイツ製青春映画。 監督は、相当な数のティーンたちにリサーチをしたそうで、作は細かい部分までとてもリアルに“今のドイツ少女”たちを表現している作品といえる。製作側が、自身の10代の頃の経験だけに頼らずに描いた点がうまく作用しており、メインターゲットの20~30歳のみならず、当の10代の少女たちがみても、納得できる内容になっているのではないか。 ちなみに、映画の冒頭で、女の子二人が男子部員たちのシャワーシーンを覗く場面があるが、こんな事ホントにするもんかねぇ、と思った私は、ドイツの高校にいっている知り合いに早速聞いてみた。すると彼女いわく、「リアルだ。充分あり得る」だそうである。そう考えてみると、男の子のお尻ばっか

  • 超映画批評「クジラの島の少女」85点(100点満点中)

    『クジラの島の少女』85点(100点満点中) 主役の少女の存在感が、観客を圧倒する ニュージーランドの原住民、マオリ族の族長の一族にうまれた少女を主人公に、男系社会での古い伝統への挑戦と、少女の成長を描く感動物語。 映画が始まって10分もすれば、この映画には“力”がある、と感じることができるだろう。スクリーンから溢れるエネルギーに観客は圧倒され、一気に引き込まれることが確実な、素晴らしい映画である。 古い伝統にこだわり、せっかく生まれた赤ちゃんをすら、それが女だと言うだけで嫌悪する祖父。我々の感覚からすればどうしようもない、ただの頑固親父に過ぎないこのキャラクターだが、単純な悪役というわけではない。 そんな祖父の仕打ちに、1度も泣かず、ただ憂いを帯びた瞳でみつめる主人公の少女は、つまるところこの祖父を愛している。少女は決して逃げたり諦めたりせず、古い伝統さえ受けいれようと努力し、厳しい昔気

  • 超映画批評「ローマの休日」100点(100点満点中)

    『ローマの休日』100点(100点満点中) まったく色あせない最高のデートムービー オードリー・ヘップパーンと、先日なくなったグレゴリー・ペック主演のラブストーリー。ローマ観光産業最大の功労者にして、不滅のデート・ムービーである。最新技術により、当時のクォリティに修復され、公開当時に人々が見たのとほぼ同じものが、今回『デジタル・ニューマスター版』としてリバイバル上映される。 今回の修復作業は、「公開当時のままに」をテーマに進められたもので、これまでのように後から着色したりなどはしていない。ただただフィルムのノイズ等を極限まで取り除き、クリアになった『ローマの休日』は、まさに必見である。 私は、映画館で作を見るのは初めてなのだが、この修復版は想像以上の素晴らしさだった。今までも、素晴らしい作品だとは思っていたが、この名作がなぜこれほど愛される名作なのか、『当時のまま』に修復された作を『映

  • 超映画批評「座頭市」70点(100点満点中)

    『座頭市』70点(100点満点中) 斬新な殺陣に、非凡なセンスを感じさせる 北野武監督が、勝新太郎の代表作を再映画化。監督人による記者会見によると、「勝さんのとはまったく違った物にするけど、それでいいなら」という事で、監督を引きうけたそうである。ベネチア映画祭に出品したそうだが、中身は賞狙いなど無縁のエンタテイメントだ。余計な事は考えず、ただ見て楽しむという映画である。 そんな『座頭市』であるが、なかなかイケているというのが私の感想である。もちろん、日映画関係者にとって、北野作品けなしがタブーだからそう言ってるわけではない。(まぁ、私がそんなタブーなどを気にする人間でないことくらい、このサイトを読んでいる方なら、先刻承知かもしれないが) では、何が良いのかといえば、それは殺陣である。世にアクション時代劇は数あれど、今回の『座頭市』ほどスタイリッシュで斬新な殺陣を見せてくれる映画はそう

  • 超映画批評「レボリューション6」80点(100点満点中)

    『レボリューション6』80点(100点満点中) いつしか道を外れてしまった者たちを勇気づけてくれる感動のドラマ 落ちぶれた左翼運動家たちの、現実と再生を描いたドイツ製ドラマ。 若かりしころ、市民運動や反権力運動に参加して、今は完全に経済社会の負け組となった主人公の二人組。彼らが、仲間たちと15年前にしかけた爆弾が、今ごろになって爆発して大騒ぎになる。慌てて、音信不通だった仲間たちと久しぶりの再会をはたすと、みなは全く違った人生を歩んでいた、……というところから物語は始まる。 『レボリューション6』は、非常にリアルなドラマだ。勝ち組、負け組の落差がハッキリしてきた現在、この作品が描くテーマは非常に現代的だ。主人公たちのように、安定した人生のレールから一度でも外れて、苦労した経験のある人ならば、彼らの辛苦は身にしみて理解、共感出来るはずだ。 特に、敗者復活が難しい日の会社社会では、1度でも就

  • 超映画批評「シェフと素顔と、おいしい時間」80点(100点満点中)

    『シェフと素顔と、おいしい時間』80点(100点満点中) 上品でまっとうな、おすすめロマンティックコメディ ジャン・レノとジュリエット・ビノシュという、フランスの誇る国際派スターが始めて競演したロマンティック・コメディ。 フランスの映画というと、たとえロマコメであっても、ひねった結末を期待する向きは多いだろうが、『シェフと素顔と、おいしい時間』は、比較的アメリカ的な、ストレートなストーリーである。つまり、ちょっとかわったシチュエーションで起こる数々の出来事や会話で笑わせ、最後にはちょっとホロリとさせる、王道の展開である。ロマコメ来のお客さまである、映画なんてせいぜい年に数回程度というライトユーザーを中心に、存分に楽しませてくれる作品といえる。 音楽は、リュック・ベッソン作品でおなじみのエリック・セラ(『レオン』)で、とても感動的なメロディを聞かせてくれる。涙腺の開放に一役買っている。 ジ

  • 超映画批評「アダプテーション」70点(100点満点中)

    『アダプテーション』70点(100点満点中) ニコラス・ケイジがハゲハゲ言うたびに、笑っていいんだか悪いんだか微妙に迷う 『マルコヴィッチの穴』の監督&脚家コンビと、ニコラス・ケイジ(『ウィンド・トーカーズ』)の一人二役主演で送る、奇想天外な構成のドラマ。実在のの脚化を依頼されたが、上手く出来ずに悩んでいるうちに、ヘンな事件に巻き込まれる実在の脚家の話。 主人公のチャーリー・カウフマン(N・ケイジが演じる)をはじめ、実在の人物がぞろぞろ実名で登場する。物語は、現実とフィクションの入れ子構造になっており、この2つが交互に展開するプロットは、非常に凝っている。こんなストーリーを思い付く、カウフマンの頭の中を1度見てみたい。さすが、ハリウッドで当代一の脚家といわれるだけのことはある。 作には、『蘭に魅せられた男』という原作があるのだが、タイトル(アダプテーション=脚色)の名の通り、映

  • 超映画批評「28日後...」70点(100点満点中)

    『28日後...』70点(100点満点中) よく出来た人類滅亡系ホラー映画国イギリスで大ヒットした、終末ホラー。……といっても、明確にジャンル分けしにくい内容で、戦争映画SFの要素も含む、ユニークな作品である。 ただ、純粋な人類滅亡系ホラーとしてみても、充分に面白い。シリアスなので、見ていて気が抜けないのである。描写もリアル志向だから、男の局部もノーカットで出るし、目玉を突き刺す場面もそのままモロに写す。追いかけてくるゾンビ役は、陸上選手が演じてるから脚が早いし、兵士役の役者たちは、皆1週間、物の新兵キャンプに参加して、銃の扱いや軍人としての立ち居振舞いを勉強している。 つまり、決してノー天気に作ったわけではない、性根の座った映画なのである。こういう映画は、たとえ素人の観客が見ても、「なにか違うな」とわかるものだ。 とはいえ『28日後...』は、決してハリウッド映画のように贅沢な

  • 超映画批評「HERO/英雄」80点(100点満点中)

    『HERO/英雄』80点(100点満点中) 深いテーマを恐ろしくリアルに描いた、稀有な娯楽映画 ジェット・リー主演の、ワイヤーワーク満載のアクション映画。 ……といわれて想像するような、お気楽映画とは実は程遠い。『HERO/英雄』は、その見た目の軽さとは裏腹に、実に奥の深い映画である。人間の質を鋭く見ぬき、深く理解した上で描いており、私は大変感心した。 物語の展開は、ジェット・リーが大王へ、敵の凄腕暗殺者を倒したときの武勇伝を報告するという形を取っており、その回想シーンがイコールアクションシーンとなっている。そして、話が進むごとに、新事実が明らかになり、それによって回想シーンも微妙に姿を変えていくという、黒沢明の『羅生門』スタイルである。 だから、暗殺者とJ・リーとのバトルシーンはそれぞれが単発だ。そして、それらはジェット・リー自身が身体を張った見事なアクションや、ワイヤーワーク、水滴や

  • 超映画批評「キリクと魔女」90点(100点満点中)

    『キリクと魔女』90点(100点満点中) アフリカの魅力が詰まったエンターテイメントの傑作 国のフランスではアニメーション映画史上、最高のヒットを記録したという、アフリカを舞台にしたアニメ。アフリカをよく知る監督が、アフリカを舞台に、アフリカの赤ちゃんを主人公に描く、教訓的な話である。 ズバリいうと、『キリクと魔女』は超1級のエンターテイメントである。こんなに面白くて、心に残るアニメーション作品は、久しぶりに見た。 アニメと言っても、ディズニーの優雅なフルアニメーションorCGアニメーションや、いわゆるジャパニメーションともまったく違う。わかりやすく言えば、動く絵芝居といった素朴な味わいである。絵柄も独特で、インパクトが強い。だが、それになれる頃には、このアフリカの雰囲気溢れる傑作に、多くの方がどっぷりとはまっている事だろう。 主人公のキリクは、映画史上最年少のヒーローでもある。何しろ、

  • 超映画批評「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」80点(100点満点中)

    『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』80点(100点満点中) 一級の娯楽サスペンスに大満足 製作にニコラス・ケイジが参加した、死刑制度問題を題材にした社会派サスペンス。……とはいっても、難しい話や堅苦しい雰囲気はまったくない。1級の娯楽作品として成立している、万人向けの今週のイチオシ映画である。131分の長い上映時間をまったく感じさせず、すべてのシーンが面白い。気合のはいった力作であり、私は強くオススメする。 哲学科の大学教授が書いたというこの脚は、まさに2時間の映画のために書き下ろされたもの。だから、複雑で長大な小説をムリヤリ映画化したときのような無理がない。ストーリー展開に無駄が無く、見ていて飽きることがない。結末の衝撃も、凄いものがある。 主演の、冤罪を主張する死刑囚はケビン・スペーシーが演じる。『ユージュアル・サスペクツ』を見た方なら、きっと最初から警戒心を抱きながら彼の行動を見て

  • 超映画批評「えびボクサー」90点(100点満点中)

    『えびボクサー』90点(100点満点中) 落ちこんでいる人必見の、弱者に対する応援歌 巨大えびをボクサーに育て、一攫千金を狙う中年男の話。TVドラマの中で取りあげられるなど、話題のイギリス映画である。動物愛護の観点から、日以外ではほとんど上映されないそうだ。 「えびボクサー」などと聞けば、「いったいそれはなんだ?」と、内容をまったく想像できないのが普通の感覚であろう。私も、鑑賞前はなるべく予備知識を入れずに見るタイプなので、これがいったいどんな映画なのか、さっぱりわからない状況で見た。 結果からいえば、『えびボクサー』は、『フル・モンティ』のような、弱者への応援歌であった。イギリス労働者階級の、さえない頑固オヤジが主人公で、妙に素直な気のいい若者と、H大好きな、浮気もののちょっと頭の弱いそのGFを引き連れ、巨大えびを使って、なんとか一旗あげようと奮闘する物語である。人間味溢れる、憎めない

  • 超映画批評「ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密」90点(100点満点中)

    『ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密』90点(100点満点中) 夏休み最高のイベントになるほど面白い娯楽映画 アイマックスシアターなどの、大型スクリーンの劇場で、3D(立体)上映される 47分間のドキュメンタリー映画。巨大スクリーン上映のため、日語吹き替え版のみの上映となる。 この手の3D映画というのは、日よりアメリカで一般的で、あちらのシネコン(映画複合施設)には、だいたい1つはこうした大型スクリーンの上映館が併設されている事が多い。 さて、作は、ご存知『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督が、物の沈没しているタイタニック号を、小型潜水艇などを駆使して撮影した、ドキュメンタリー映画である。 この映画は、入口で渡される専用のメガネをかけて鑑賞する。人間の視点と連動して焦点距離の変わるカメラのおかげで、通常なら20分くらいで目が疲れてしまう3D映画なのに、47分間という

  • 超映画批評「地獄甲子園」80点(100点満点中)

    『地獄甲子園』80点(100点満点中) まさに漫☆画太郎の世界だ! カルト的人気を誇る漫画家、漫☆画太郎の漫画を初めて映画化した作品。87分の長編と、8分間の短編『ラーメンバカ一代』が同時上映となる。 早速だが、おすすめは8分間の短編のほうである。私はこの原作も読んだことがあるが、ここまで見事に映像化出来るとは夢にも思っていなかった。この監督(新人の山口雄大氏)は、この漫画家の魅力をよほど知り尽くしており、どうやれば面白く映画化出来るか、考え尽くしたに違いない。 もう、爆笑しっぱなしで、私は腹が痛くなった。マスコミ試写室というものは、えてして年齢層が高いもので、こうした若者向けのマニアックなギャグ作品は受けないだろうと思っていたが、隣に座っていた某ベテラン評論家なども、吹き出していたくらいだから、相当な破壊力である。 だいたい、8分間の作品だから、エンドロールも一瞬で終わる。つまり、笑いが

  • 超映画批評「トレジャー・プラネット」80点(100点満点中)

    『トレジャー・プラネット』80点(100点満点中) 子供も大人も楽しめる、これぞ娯楽映画の見 冒険小説の古典『宝島』を原作にした、ディズニー・アニメーション。アカデミー賞の長編アニメ部門を『千と千尋の神隠し』と争った。 『トレジャー・プラネット』は、まさにディズニー、まさにハリウッド、という映画である。一切奇をてらわず、ストレートなストーリーで真っ向勝負、そこがいい。 『宝島』が原作とはいえ、舞台は宇宙。現代的に、設定を少々変更してあるのがミソである。そのアイデアのおかげで、空を飛ぶスノボーや重厚な宇宙船など、絵的に派手な見せ場を作ることが可能になった。話によると、このアイデア自体は17年前に考えられたが、最近技術的にようやく表現可能になったので、作の製作が始まったのだという。 アクションシーンはスピード感満点で、カメラも主人公の目線。だから、まるでディズニーランドのアトラクションに乗

  • 超映画批評「デッドコースター」85点(100点満点中)

    『デッドコースター』85点(100点満点中) 現代の最高レベルの特撮技術で、こんなリアルな残酷シーンを作るのは、もはや犯罪だ マトリックスのアクション監督デヴィッド・エリスが送る、ホラー映画。 いやはや、とてつもなく悪趣味映画である。これほどのホラー映画は、そうそうお目にかかれまい。『デッドコースター』がどういうタイプのホラーかというと、超高画質のリアルなCGで、人間が事故死する場面をスローでバッチリ見せるといったタイプのもの。 世間が、『ザ・リング』だの『ボイス』だの『呪怨』だのと、心理的な和風の恐怖映画に夢中になっているなか、その正反対に位置する『デッドコースター』は、実に新鮮。いいかげん、あの手のグジグジした恐怖映画に飽きが来ていた私にとっては、この映画は久々に観た、現代版悪趣味スプラッターとして、たいへん楽しめた。 しかも私は、六木GAGAの試写室でこの作品を見た直後、そのあま

  • 超映画批評「夏休みのレモネード」80点(100点満点中)

    『夏休みのレモネード』80点(100点満点中) さすがは12000から選ばれた脚だ ベン・アフレック&マット・デイモンが、『グッドウィルハンティング』の脚を、自分たち主演で売りこみ、アメリカンドリームを実現したというのは有名な話である。そんな彼らが、自分たちに続く新人を探すための企画で集めた1万2000の脚の中から、グランプリに選んだ脚映画化した感動作が作である。 主人公である8歳の少年の視点で、死と宗教の問題をさわやかに描いている。ユダヤ教とカトリックという、大人だったら非常にデリケートに扱う、大きな宗教の違いを、彼は子供ならではの純粋さ、大胆さで乗り越えてゆく。 主人公の少年は、白血病で余命がわずかという年下の親友のために、10個の課題を一つずつ親友にチャレンジさせる。無事全種目をクリヤーすると、親友は安心して天国に行けるという設定なのだ。 そして、9つをクリヤーした時

  • 超映画批評「ミニミニ大作戦」60点(100点満点中)

    『ミニミニ大作戦』60点(100点満点中) 可もなく不可もない、ごく普通の週末ムービー イギリスの自動車メーカー、ローバー社の人気小型車、MINIが大活躍する、カーアクション・ムービー。同名作品のリメイクになる。作では、(ローバー社が買収されたため)BMWが製造する新型ミニ・クーパーが登場する。 ストーリーは単純で、50億円相当の大量金塊を、主人公率いる窃盗チームが盗み出すという話。 「狭い所でも走れる超小型車で、建物内へ突入する計画」がミソというわけだが、その肝心の突入計画が実行直前でボツになるという、よくわからない展開のおかげで、観客は「アンタたち、いまさらミニを使う理由がどこにあるんだ?」 と突っ込みたくなる事、間違いない。 だが、おそらくこの映画に10兆円くらいは出資しているであろうBMW社の役員にしてみれば、わが社の新型ミニが活躍してくれないと困るのだから仕方が無い。 実際、『

  • 超映画批評「メラニーは行く」65点(100点満点中)

    『メラニーは行く』65点(100点満点中) 非常に現代的なロマンティック・コメディ メグ・ライアンから『ラブコメの女王』の称号を奪いとった、リース・ウィザースプーン主演のロマンティック・コメディ。 これで現在公開中のラブコメは、『トゥー・ウィークス・ノーティス』、『メイド・イン・マンハッタン』と合わせて3という事になる。 『メラニーは行く』は、そのなかでは、メイドイン……よりは下だが、トゥーウィークス……よりはちょっと上、といった印象である。興行収入と、採点順位が正反対という点が泣けてくる。 さて、話を戻して題の『メラニーは行く』。いったいどこに行くんだか良くわからない邦題だが、あえて原題を隠したというのはなかなか見事である。この文章の意味が知りたい方は、映画を見終わった後で、原題を見ていただければ良く分かるはずだ。 まちがって今見ちゃった人は、とりあえずその原題を脳内の隅に追いやって

  • 超映画批評「マトリックス・リローデッド」90点(100点満点中)

    『マトリックス・リローデッド』90点(100点満点中) 3部作のpart2としては、映画史上まれに見る出来のよさ いわずと知れたSF3部作のPART2。今年の11月には、早くも完結編のPART3『マトリックス・レボリューションズ』が公開される。この2と、テレビゲームの「エンター・ザ・マトリックス」のCGドラマ部分は、全て同時に撮影された。きっと俳優達は、今がいったいどの撮影なのか、ほとんど分かっちゃいなかったに違いない。 で、『リローデッド』であるが、前作のような、「革命的な映像・特殊撮影」は、素人目にはあまり感じられない。これは、あくまでCGの専門家で無い私の目でみて、という意味である。専門的に見れば、相当な進歩があると思われるが、普通に見て感じるのは、「前作ほどの衝撃的な映像は無いな。どっちかというと、既存の技術を洗練したって感じだな」ってな感じである。 だがしかし、このことは全くマ

  • 超映画批評「バンガー・シスターズ」65点(100点満点中)

    『バンガー・シスターズ』65点(100点満点中) 過去に寝た男性の○○○写真コレクションが最高 オスカー俳優3人が共演する、気軽に見れるハートフルドラマ。 まるで、古いアメリカ映画を見るような、懐かしいオープニング。永遠に続くかのような砂漠のハイウェイと汚いスタンドの風景が、ノスタルジックでいい感じである。 そんなわけで、前半は名作の予感がしたが、トリ肉を投げるシーンあたりから、唐突な展開に引き離され、ちょっとダメになった。惜しい。 しかし、ゴールディ・ホーンにはおどろいた。乙葉チックな口元のホクロがすごくキュートで、上目使いがカワイイのである。しかも妙にスタイルがいい。入浴シーンとHシーンには、おもわず見てて反応した。 でも、あとで恐る恐るパンフで生年を見たら、彼女、もう50代だって。ちょっと自分にショックを受けた。トラウマにならねば良いのだが……。 だが同世代の相手役、スーザン・サラン

  • 超映画批評「アバウト・シュミット」80点(100点満点中)

    『アバウト・シュミット』80点(100点満点中) 最後の十秒にこの映画の魅力の全てがある! アカデミー賞俳優ジャック・ニコルソン主演の感動ドラマ。 主人公は、定年退職を迎えた初老の男で、半生を振りかえり、自分の人生は平凡だが、そこそこ幸せだったと思いこんでいる。 ところが、突然が死亡し、しかも遺品を整理していたら自分の親友と浮気していやがったことが分かって、その思いは吹っ飛ぶ。 さらに、仕事ひとすじだったために、ろくに家事も出来ない彼の生活は荒れ放題。趣味も無いので、仕事を辞めたら全くやる事がおもいつかない。 つまり、人生の終盤で、メッキが一気に剥げ落ちた、あわれな男なのである。これは、特に日人のオジサンたちにとっては、他人事ではあるまい。熟年離婚が社会問題になっている今、こうした主人公の気持ちがわかる人は、相当な数いるはずだ。 J・ニコルソンの演技が見事である。彼は、ラスト十秒のある

  • 超映画批評「NARC ナーク」80点(100点満点中)

    『NARC ナーク』80点(100点満点中) 二転三転ストーリーを楽しめる良質ミステリ トム・クルーズが製作総指揮にあたった(出演はしていない)、刑事ドラマ。完成した作を鑑賞したトム・クルーズは大満足し、『M:I-3』(04年夏公開)の監督に作の監督ジョー・カーナハンを大抜擢したという話もある。 コレは非常に面白い。トム・クルーズは最近、そのネームバリューを持って、出演もしていない新作の宣伝に良く利用されるスターだが(たとえば、「トム・クルーズがリメイク権を買った」とか)、確かに彼は、脚を見る目があるといっていいだろう。 この『NARC ナーク』も、彼が脚に惚れこみ、製作を買って出たという作品だが、確かに非常に見応えのある、素晴らしいストーリーとプロットを持った、重厚な作品である。 といっても、堅苦しさは全くない。謎解き刑事ドラマとして、ごく普通の人達が、楽しく見れる映画である。

  • 超映画批評「TAXi3 タクシー3」60点(100点満点中)

    『TAXi3 タクシー3』60点(100点満点中) ただのタクシーがこんなにカッコイイ映画はほかにない フランスでの『TAXI』シリーズは、国民的な大人気映画らしく、プレミア試写にはとんでもない数の人が集まったと聞く。 シリーズ第3弾である作は、これまで同様、くだらないギャグと超一流のカーアクションのカップリングという、独特の個性を持つフランス映画だ。 毎作、非常識さがエスカレートするこのシリーズ、今回は、タクシーがキャタピラを出して雪山を爆走するという、おバカ度満点の展開が売りとなる。 私は、THX認定劇場である五反田のイマジカ試写室で観たのだが、この作品はホントに凄い音響であった。冒頭のドドーンという音が無音の試写室に轟いたときは、10センチほど飛び上がったくらいだ。皆さんも、鑑賞するなら音にはなるべくこだわっていただきたい。 『タクシー3』には、見せ場が大きく分けて3つあるが、最初

  • 超映画批評「メイド・イン・マンハッタン」75点(100点満点中)

    『メイド・イン・マンハッタン』75点(100点満点中) 絶対あり得ないようなハッピー物語を好きな人に勧めたい ジェニファー・ロペスという、歌手としても人気のある褐色の美人と、レイフ・ファインズという、『レッド・ドラゴン』でサイコな役を演じたとは思えないほど優しい顔をした男が主演の、ロマンティック・コメディ。 これは、ロマコメのなかでも、玉の輿系に属する映画だ。つまり、『プリティ・ウーマン』や『ノッティングヒルの恋人』といったあたりで、ウットリする婦女子を対象に作られた映画である。 ……というような事を知り合いの女性(33)に話した所、「あんなもんを好きな女なんているか」と一蹴された。がっくし。 まあ、確かにこういった映画は、普通の神経を持つ人間ならば、チラシのストーリーを数行読んだだけで、プッと吹き出すような、こっ恥ずかしいものがあるわけで、まして私のような男性が、劇場でこのチケットを買お

  • 超映画批評「愛してる、愛してない…」90点(100点満点中)

    『愛してる、愛してない…』90点(100点満点中) 衝撃的で面白い、GW最大のオススメ 『アメリ』で、日でも大人気になった女優オドレイ・トトゥの主演作。これは実に面白い! お洒落で、映像もきれいで、実にフランス映画らしい、素敵な恋愛映画だと私は最初見ていて思った。 ところがどっこい、映画の中盤で信じ難い場面が出てくる。レティシア・コロンバニ監督は、わずか28歳で、実際私も人をみたが、パリを普通に歩いていそうな普通のフランス娘って感じの人で、まさかこんな凄い事をやる人物には見えなかった。 その記者会見で、私はこのシーンについて彼女に質問したのだが、そこでは大して面白い答えは頂けなかった。もしかして天然? っていう予感がするのだが、そのわりにはかなり計算し尽くされたプロットで、非常に見応えがある。 オドレイは、アメリのときのようにキュートで、前半は彼女のあの笑顔のクローズアップばっかりが多

  • 超映画批評「きれいな涙 SPIRIT」85点(100点満点中)

    『きれいな涙 SPIRIT』85点(100点満点中) 真の意味で大人と子供の両方が楽しめる傑作 『きれいな涙 SPIRIT』は王道のストーリーを持つアニメーション作品で、いかにもアメリカらしい一ディズニーの『トレジャープラネット』に対抗するドリームワークスの作品だが、どちらも実によく出来ている。フルアニメーションらしいエレガントな動きとCGの融合は、違和感を感じる部分がだいぶ減り、そろそろ完成の域に達したという感じがする。 カメラワークは、決してアニメっぽくはない、実写のハリウッド映画を見ているようなダイナミックなもので、照明(光源)の凝った様子も合わせて、高く評価したいところ。音楽と映像がシンクロした総合的な演出法は、映画としての完成度の高さを感じさせる。 この作品の面白いところは、主人公の馬を擬人化していないという点。馬は「ヒヒーン」としかいわないし、人間みたいな表情もしない。それ

  • 超映画批評「母と娘」60点(100点満点中)

    『母と娘』60点(100点満点中) 独特の味がある、フィリピン製感動ドラマ 『anak』という、日でも加藤登紀子がカバーしたフィリピンの名曲を原作とした映画。世界中に出稼ぎに行く、フィリピン人メイドを描く。 日では、非常に珍しいフィリピン映画だが、実はフィリピンは映画大国で、自国で製作される映画の数も多く、国内での興行もハリウッド作品に負けないくらい好調という、世界的にも珍しい国なのである。 国民は皆英語をしゃべれるというのに、ハリウッド映画だけでなく、あえて自国語で作られた国産映画のほうを国民が見に行くというのは、とても素晴らしい事だと思う。 『母と娘』の主演女優は、職は市長さんという珍しい経歴だが、フィリピンでは人気女優でもあるそうだ。 作品で描かれるフィリピン人メイドの物語は、たとえフィリピン人で無くとも、子育てで、何かを犠牲にした経験のある人ならば、涙無くしては見れないであ

  • 超映画批評「クローサー」80点(100点満点中)

    『クローサー』80点(100点満点中) スタイル抜群の女の子がワイヤーワークで華麗にアクション 台湾(スー・チー)、中国(ヴィッキー・チャオ)、香港(カレン・モク)の3大スター主演のアクション映画。 『チャーリーズ・エンジェル』との差別化を計るためか、こちらはシリアス路線で行く。でもストーリーは似たようなもん。だから、見所はやはり美女のアクションという事になる。 この映画の美女たちは、モノトーンの衣装しか身に着けないので、色彩的に統一感のある画面作りに成功している。そして、その真っ白なパンツスーツが一番似合うのが、台湾の誇る人気女優スー・チーである。 スー・チーといえば、ちょいと前に、彼女がフランス映画初主演を果たした『トランスポーター』(『クローサー』と同じコーリー・ユン監督)という作品がある。 だがあの時の彼女は、お世辞にも綺麗に撮ってもらったとは言いがたい。あれではいったい何のために

  • Acrobatを使わずにPDFファイルを編集する方法 | 経営 | マイコミジャーナル

    Digital Inspiration: A Technology Blog on Software and Web Applications 閲覧を目的としたドキュメントデータ形式としてPDFが普及している。PDFが普及した理由には、複数のOSやデバイスで閲覧できる、どの環境でも同じように表示される、ファイルサイズが小さい、そう簡単には編集できない、印刷を避けるように設定できる、パスワードを設定できる、プラグインを使えばブラウザからも簡単に閲覧できる、といった理由がある。 閲覧には便利なデータ形式だが、半面、編集はしずらい。「文章のここにちょっとした注釈を加えて返信したい」、と思ってもAcrobat Readerでは編集できない。Manu Manjunath氏がDigital InspirationにおいてHow to Edit PDF Files - Free Tools for Ma