松崎有理さんは、作家になる以前、医学系研究所に勤務をしていた。第一回創元SF短編賞を受賞したデビュー作「あがり」にもその経験が反映されていたが、本書『架空論文投稿計画』からはいささか戯画的とはいえ、かなり生々しい研究者の嘆きや苛立ちが伝わってくる。サスペンス仕立ての研究職エレジーだ。 舞台となるのは北の町にある蛸足大学。主人公は若くして助教授の座についたユーリー小松崎(ロシア系クォーターだが生まれ育ちは日本)。専門はメタ研究心理学である。 さて、ぼくの少年時代を思い起こしてみれば、アカデミックな研究者は宇宙パイロットと並んで「やりたい仕事」の双璧だった。しかし、大人になってみて知った研究者の実態は、かつて憧れたイメージとは似ても似つかぬものである。知りあいに大学の先生が何人もいるが、みなさんシンドそうだ。研究自体はもともと好きでやっているのだから良いけれど、授業やら採点やら会議やら学内の役
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