経済学部で,マクロ経済学を担当している西洋です。今回の記事では,私が最近,研究している「履歴現象(あるいは履歴効果:ヒステリシス)」について説明します。 履歴現象とは,物理現象から来たもので,経済学では多義的な意味を持ちます(例えば,経路依存性,初期値依存性,複数均衡と同義的に使われることがあります)ⅰ 。ほぼ共通する意味を簡単化して述べると,現在の状態が過去の出来事に引きずられてしまうことを指します。過去から未来へと一方的な時間の流れで行われるわれわれの経済活動からすれば,これは自明のことですが,経済理論(モデル)においてこれをうまく説明することは,実はあまりなされていないのです。 たとえば,本学の基礎マクロ経済学で学習するケインズ型45度線モデルを想定しましょう。いま,なんらかの需要ショックがおきると,均衡国内総生産が低下します。しかし,その需要ショックが取り除かれると,均衡国内総生産
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