2021年6月11日、記者になって3年目、福島県警キャップを務めていた私は、閉廷したばかりの殺人事件の裁判の原稿を昼ニュースに入れようと、蒸し暑い裁判所の廊下で必死にパソコンに向かっていた。 「死体遺棄事件被疑者の通常逮捕について」。近隣の警察署からの発表連絡だった。 「容疑者から、介護施設の入所者がいなくなったとの通報を受けて捜索したところ、介護施設が管理するアパートの室内で女性の遺体を発見した」 なぜそんなところで…? この時感じた違和感が、この事件を半年以上追いかけることになるきっかけだった。 (福島放送局記者・高野茜) 警察署までは車で10分ほど。裁判の原稿を出し終えた私は、署に駆けつけ、すぐ取材を始めた。 亡くなっていたのは80代の女性。逮捕されたのは、郡山市内の介護施設の所長、石田兼也容疑者(当時39歳)。発表文には、「容疑者が遺体を遺棄したことを認めたため逮捕した」と書かれて
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