先日、とある雑誌に書評を書いた。大変長い文章になってしまったので読みづらいが、ここにも載せたいと思う。 取り上げた本は、デヴィッド・グレーバー『デモクラシー・プロジェクト ーオキュパイ運動・直接民主主義・集合的想像力』(木下ちがや、江上賢一郎、原民樹訳、航思社、2015)だ。この本は昨年の安保法正反対の運動に対する様々な違和感を理論的に批判しうる視点を色々と投げかけていて実に興味深く読んだ。 本書の最も重要なポイントを挙げるとすれば、運動にいま必要な視点は、運動の戦略ではなく、戦術を問い直すということだ。この戦術は例えば、運動が組織化される際の人々の意思疎通のあり方(合意形成)や、公園の占拠という行動、警察への対応の仕方であり、この戦術(様々な技法)について延々と述べている。そしてなぜこの戦術にこだわるかと言えば、運動の可能性とは何かもっともらしい理念や要求を掲げることにあるのではないとい