大阪では、卒業式に君が代を歌っているかどうか口元を調査する教頭がいるらしい。何とも滑稽とも恐ろしいとも言えることであるが、ここには明治以来我が国に固有の問題が現れている。 一般に、近代化とともに諸個人は古い共同体的紐帯から離れ、市場のアナーキーにさらされるにつれて、秩序維持の必要から、以前よりも強力な集権化と軍事力を必要とするものである。したがって「夜警国家」の理想は、常に幻想である。首尾よく近代化を成し遂げた諸国は、いずれもかかる権力を封建的体制に代えて装備している。 近代化に不可欠な強力な権力を、広く人民の協力によって調達するために、民主主義の導入がはかられる。このことは、特に顕著に軍事部門に現れる。幕府軍を圧倒するために、人民皆兵制をいち早く導入した高杉晋作の「奇兵隊」や、ナポレオンへの対抗上近代化の先駆けとなったプロイセンの軍と参謀本部(クラウゼヴィッツはその中心)の例を見よ。近代