【ベルリン=黒沢潤】ナチス・ドイツの独裁者、ヒトラーが著した「わが闘争」の出版が禁じられているドイツで、同書の注釈本に限って発行を認めるよう求める声が歴史家らの間で強まっている。厳正な注釈本の発行は、これまでも法律上、不可能ではなかったものの、著作権を引き継ぐ南部バイエルン州当局が政治的な配慮から、「機が熟していない」と発行要求を拒んできた。だが、同書の著作権が7年後に切れるのに合わせて、ネオナチが恣意(しい)的な注釈本を出す恐れもあり、歴史家らは先手を打ちたい意向だ。 「わが闘争」は、ヒトラーが1933年に政権を取ると、ドイツで一躍、ベストセラーとなった。終戦後、日本をはじめ、世界中で翻訳が出回ったが、ドイツでは、ナチスの宣伝になるとして、出版が禁じられた。 ただ、教育・研究目的なら例外扱いとされ、注釈本発行の余地はあった。だが、発行には著作権が最大の障害となっていた。 著作権は現在、大